タイトル	:行列のできる組み込みセミナー&ディスカッション〜最強のエンジニア&コンサルタント軍団〜パネル編
コーディネータ	:杉浦英樹(富士ゼロックス)
パネラ		:工藤浩志(IBM)楠部集(横河デジタルコンピュータ)佐藤啓太(デンソー)西康晴(電気通信大学)橋本隆成(SONY)

司会
「新人教育をどのようにすればよいのか?教える内容と時期は?」という質問について

A
こういう悩みは大学側に原因がある.
現状の大学はC言語,ソフトウェア工学,組込みという順番になっている.
言語はC言語のみで構造体やポインタを教えていないので基本的にすべて教える必要がある.
個人的に,教育には知識を与えるという側面とエンジニアとしてモチベートするという側面があると
考えている.

B
これはとても難しい質問.何を学ぶのかが重要だ.
自分の専門領域を決めたら,この人についていったら良いという人を見つけたほうがいい.
またソフトウェア工学だけではだめ,視野を広げる必要がある.
自分の専門性を作ると同時に視野を広げる必要がある.

C
計画的にやるべきことだ.
自分たちの会社はどのようになっているのか?そのときにどのような人材が何人必要なのか?
今の人材で何人まかなえるか?それで新しく何人必要になるのか?

これらを検討すれば,新しく身につけなければならない人が設定できる.

また,今のエンジニアに教えるより,新人に教えたほうがよい.

今後効率的に考える必要がある.

現在はモデリングできる人材が必要だと言われている.
また,センスのあるアーキテクトも必要だが,何人もいらないので選抜する必要がある.
その上で大事に育てれば良い.

D
今の話は不特定多数から選抜するよりも,入れるときから選抜する必要がある.

C
今は,入れてから選抜している.

D
採用する部署と実際に教育する部署が連携できていない.

C
大学では,動くモデルを書ける人はいるが,よいモデルを書ける人は少ない.
こういう人を判別できれば採用時に選抜できる.

D
基礎的な部分を判別できればよいのではないかと思う.

C
選抜時期は重要.入社前なのか入社後なのか?

B
青田刈りをやっている企業もある.
ある一部の企業はスカウティングしたり,共同研究をやったりして良い学生を採ろうとしている.

私は,企業の人からソフトウェアの品質について教えている先生を教えて欲しいといわれたことがある.
理由は,そこの学生を青田刈りしたいからだそうだ.

また,その人の能力を判断するテストを行っている企業もあるらしい.

D
そのテスト問題はコンサルティング会社が作っているの?

B
社内で技術職のエキスパートが作っている.

A
現場ではどのように教えているのか?

E
新人教育の点では自信は無い.どこの会社も新人教育の仕方が違うし,時代背景なども影響する.

今後はインド人などもやってくるのでその人たちにまかせてしまうというのもある.

よくある話としては,大学でオブジェクト指向やPMを教えないのかと言われることがある.
学問として教えるのは可能だが,現場の人間でも難しい.実務を経験しないと難しい.

F
うちは放任教育.
以前は集合教育だったが,業務の多様性に対応できないので変わった.

以前の集合教育はテクニカルな部分もやったが,現在は基礎的な人材教育だけ.
専門は各部署で行う.

会社としての方向性を示さないと新人は考えられない人もいる.

具体的にはどうしても厳しい業種を避ける傾向があり,技術で入ったのに営業を志望する人もいる.

B
組込み技術者は閉鎖的で会社からでない.
コミュニティで得られる情報をメディアから得るということをやっている.
若いうちから人的ネットワークを作ることの大切さを教える必要がある.

G
刺激を与えることがポイントだ.
新人はお金にシビア.給料に差をつけると変わるのでは

ヨーロッパなどでは,いったん就職してから大学に戻る人も多い.

司会
「開発でデバッガを使用しないのですが,デバッガを使うと生産性が上がりますか?」という質問

A
動いていれば別にいいと思います.

デバッグはテスト以前の問題.
動かないものをどう解決するのかという手段.

ターゲット上でのデバッグだとデバッガを使わないと難しい.

H
はじめての上司に言われた言葉で
「デバッガを使わないと分からないようなバグを埋め込むソフトは書くな」
というのがあり,ずっとデバッガを使わないようにしていた.

ようはHWに依存する部文を除き,きっちり書けば机上デバッグで分かるはず.

I
自分の書いたソフトウェアならばよいが,周辺の環境が影響している場合は.

H
本当にデバッガを使わなかったわけじゃない.
デバッガを使うことを前提にしてコーディングするなということだ.

B
昔自動的にテストケースを作ってくれるツールをテストしたことがある.
デバッガを使わずに追えるソースはテストケースも作りやすい.

悪いエンジニアはツールに頼っていて,デバッガのバグやそれから外れたところで
にっちもさっちも行かなくなる.

司会
「組込みシステムにおける分散オブジェクトシステムに必要とされるものは?」という質問

C
組込みは性能の問題で,オブジェクト指向などが組込みなどでは使われなかった.
以前の組込みコルバを使っていた.先進的なもので市場が受け入れられ無かった.

今後は,ユビキタスや車載など適用範囲は広い.

司会
「業務に追われ続け,改善に向かう施策の時間の無い人,部署をどう助けるのか」という質問

J
失敗要因は現場主導でやろうとすること.お金や人が足りない.
企業が利益を上げるためにやること.

経営者がプロジェクトを立ち上げることが必要.

教科書どおりやって上手くいくものではない.企業の風土なども影響.

結果を出すまで持っていくのは時間とお金がかかる.

プロセス改善も改革もその効果を金額に表すことが重要.

C
基本的にはビジネス.
売れないものをつくってもしょうがないと同じでその改善をやる必要があるのかを見極めることが必要.

J
携帯系の話.
現在は6モデル出しており,そうでないと収益を上げられない.

自動車でも今はECUが20個載っている.
来年には50個ぐらいになる.

それをどうやってコントロールするのか?
危機意識を経営層が持っている.
そういうところから始める必要がある.

C
視点を変えるとマネージャが機能しておらず,自分たちでやるしかない.

改善がパターン化されていればいい.
その分下駄がはいているから開発を短縮できる.

そういう道具を提供してやる必要がある.

B

今問題が多発しているパターンと課題を達成しなければならないパターンがある.

僕は今困っているというパターンの話が聞くことが多い.

そういう人たちは,改善に使うと開発が遅れると思っている.

しかし,いったん立ち止まってみると簡単に解決できることがある.

ある企業では毎週金曜日は5時に帰る.そして問題が何であるかを考える.

次の月曜日はその問題の対処を行う.

司会
「組込みシステムに関する教育を大学などでどこまで教えるべきか」という質問

B
ケースバイケースだ.

経営工学科の場合,普通のプログラムになる教育も無理.

情報系ならばある程度可能で,ライントレースカーを走らせる程度できればいいだろう.

SESSAMEやNEXCESSなど.

日本のソフトウェア工学の教育は遅れている.(少ない)
アメリカでは13から14コマある.

企業の側から実践的な教育が必要だと声をあげるべきだ.

使えるエンジニアのための市場原理のようなものを作るべきだ.

D
開発をマクロ的に見てみたいという学生がいる.

広い世界を見せてから設計などの部分を見せるべきだ.

SEになりたいとだけ言われるとどうしようもない.

K
プログラムをやりたい人はその先にどうなりたいのか?
そのうち日本人でプログラムを作る人はスーパープログラマーだけになる.
企業はリーダーとしてまとめていける人を要求している.
そういう人は経営的な能力が必要とされる.
そういうところを刺激する必要がある.

B
私の学生の60人ちゅう3人テストがかっこいいと思っているが,
大体の学生はPMやアーキテクトになりたいと思っている.

大学の先生は,だいたい1人でやるからPMなどは嫌い.
企業から大学へのキャリアパスがあればいい.

学生と企業で話せる場があるといい.

学生は先生より企業の人の話を信用する.

司会
「開発現場で新しい取組みが導入されることが少なくなっていると感じる.新しいチャレンジを行うための動機付け余裕の作り方などの
アプローチのコメント」

C
対症療法ではなく,根っこを考える必要がある.

実際にオブジェクト指向だけ使っても生産性は上がらない.

組込み教育はアメリカでは熱心になってきている.
アメリカの大学では「これを勉強したいならどこ」というものが明らかにある.
一方日本では,偏差値で選ぶ.

大学自体の差別化が必要だ.

J
自分に一番マッチしたモデルを見つける。
自分の武器になる方法論を身につける.

なぜ上手くいかないのかという根本事項.
なぜを突き詰めて問題を共有することが必要.

L
手戻りが結構起きている.
現状の現場でどれだけ非効率なことを行っているのかを調べることが動機付けになる.

B
手戻りがどれくらいある?

大体組込みだと4,5割はある.

同じ製品を同じように作ってはだめ.
付加価値を高めたり,コストダウンを図ったりする必要がある.

マネージャが悪い.

お金で上がるモチベーションはすぐ下がる.
それより,ほめたり,いい環境を与えたりしてやること.

M
現場の中から問題をどうにかしようというものが出てこない.

A
先導するようなキーマンが必要だと現場は思っている.

N
最近組込みソフトの案件が増えている.改善することに対する能力に差が出る.

B
改善し続けるエンジニアがこれだけいるのは日本だけ.
出版社に意見を言ってみたりしてはどうか.

司会
「モデルの最適化,検証に向いているモデルの作成をしたい.良いアドバイス,テンプレートはないですか?」という質問.

C
要求仕様のレベルで検証するものは研究レベルでは多くある.

B
ツール屋はこれができないとは言わない.
一般論だが,売っている人をちゃんと選ぶことが必要だ.中身を知っているから.

A
ツール自体の特性がある.自分たちの設計のステージにあったツールがあるのかを調べる必要がある.

O
課題達成の時にどんなツールを選べばいいの?

B
課題を問題にすり替える.また,ツールとかプロセス改革は縁で相性があるものだ.