セッションB2 : 「組込みソフトウェア徒弟制度」 E会場 30人程度 -> 40人程度に増加 参加者の主な層は指導する側よりも指導を受ける側の方が多いように見受けられる. 途中から流入組が増加.指導する側の比率が上がる. 分科会は,最初に各参加者の師匠自慢(ポジショントーク)を行い,それらを基に 理想の師匠像を推測するという流れで行われた. 分科会の議論は,大きく分けて次の2項目を本筋として行われた. ・師匠は弟子の全てを受け入れるが,全てを教えてはならない - 自分で考えさせるきっかけを与える - どうにもならないときの逃げ場を用意する ・師匠は弟子のモチベーションをうまくコントロールできる - すばらしい師匠であることで弟子のモチベーションも上がる - ある程度のお膳立てをする必要もある (興味を向かせる仕組み, 情報へのaccessability) 以下に師匠自慢の記録を示す. --- 師匠自慢 --- 今井さん : !高田先生自慢 ※ 記録抜け !オークマ 大山さん 舞台回しをする人を育てたい -> マニュアル化はできないだろう !豊橋技科大 若林 「何を言っても真面目に聞いてくれる」 -> 前の師匠は話を聞いてくれない感があった -> モチベーションの低下 -> モチベーションを下げずに取り組めた !ヴィッツ 服部さん 師匠とは 「頑固者とかではないけど,一本筋がある」 -> なにか現象が出たときにはリセットするな あせっている間中,後ろで見てくれていた (仕事への向き合い方) -> 方向性を示してもやり方は示さない 同じ回答を得たときの喜び !ヴィッツ 大西さん !服部さん 「分からなければすぐ聞け」 -> 研修中は非常に頼りにした -> 研修後は放っておかれた -> 導入部への取っ掛かりは与えるけど,その後は自力で !フルノ 岸田さん 外注さんが師匠 「〜してる様子を見せてくれる人」 -> 自分の進め方を伝えずとも,見せることで教えてくれた -> そのとき見たものが自分の糧になっている # やっていることを見せることが教育にもなる !ガイア 田中さん 教えてもできない,教えなくてもできる -> 努力してもダメだとは言わないが,ある一線を越えるには努力が要る ガイア ? 「途中から放って置かれた」は自分もそう -> 自分の中で問題を明確化させる力がつく ? ? ジャンルは関係なく,「良い人」がいい 知識は本とかからでも伝わる(自学自習可能) でも考え方は人間から伝わる --- ソフトウェアに関しては --- 育ってない気がする (機械が専門なので) -> 機械は論理的.コンピュータにも適用できるはず -> ソフトウェアに対するアレルギー -> ソフトウェアを卑下する地盤があるのかも (集団の中のマイノリティ) -------- !豊田高専 仲野先生 興味を持たせることで人生が変わるかも 学生を教えることは大変 (ポテンシャルの差) -> 自分の受けた感動を伝えたい --- 企業にいたときの出荷基準は誰が決めていた --- -> 担当部署があった -> 基準は合意できるものだったか -> 厳しいのは確か -> 仕組みとしての妥当性はある -------- !電通大 西さん 大学と会社の違い -> 問題に対して流されずに問題に取り組めるかどうか (大学の方が優位) -> 大学院に行けば,問題解決に専念できる -> 試行錯誤する前の手助け.上司や友人のサポート 問題の抽象化能力が重要 -> 大学の先生がこの能力を弟子に継げるか -> でもこれを教育で伝えることは難しい モチベーションの専門家 -> 良い師匠を持っている人間はモチベーションが高い !苫小牧高専 阿部先生 師匠には人付き合いのよさも重要 -> 友達とは話せても目上の人とは話ができない学生が多い -> 学生のコミュニケーション能力を鍛えることも必要 北海道公設試 ? 昔は企業にいた.一年間は研修期間で,専門の担当がつく. -> 最初は何でも聞いていいので,何でも聞いた -> 担当が急に異動になって,聞ける人がいなくなった -> 自分で考えるきっかけ 若い人が書いたコードのレビューはしているのか? -> 誰もしていない -> 良くも悪くもチームプレイはない !名古屋市公試 斉藤さん 師匠は一人ではない. -> 親も師匠.はんだづけは親から教わった -> 職場の師匠は...!小川さん? -> 話は良く伝わらなかったところもあるが,考え方は影響を受けている --- TOPPERSのコードから学んだことはあるか --- コードから学ぼうとするのは大変 -> MLを利用すれば... といってもなかなか. m68k依存部はちゃんとしたコメントがある.他の依存部は良くない.これに関しては? -> m68kが分からないのでどうも... -> 書くほうに関しても,コメントが長くなる傾向があるので -------- !二上さん 余談 : 「先生と呼ばれるのは恥ずかしい.だから師匠と呼べ」 最初は変わった人だなという印象 難しいプログラム -> 師匠でも考えるのなら,ものすごく難しいのだろう -> 酒を飲んで考えてみると,実はたいしたことではないことに気付く -> 師匠は微妙なヒント(きっかけ)を与えてくれていた -> これこそ徒弟制度.日本だけのものかも. +-- | 何かバシッと言う人がいないとダメなのでは? | -> 技術力と発言力を持った人間が組織には必要 +-- KVerifierの方 4004の時代.誰も知っている人がいない. -> 自ら学習する基盤ができた 今は一人でやっている -> 何故 弟子を取らない -> 人の顔見るのはイヤ.人の顔を見る技術者はいない. ? ? !高田先生 : いろんな話をする人をまとめる能力に長ける -> 見習いたい気はある (意識はしないが事実上師匠?) 標準化による作業領域の切り分け -> 自分の仕事以外のことはしない NF回路 ? ソフトとハードの溝は深い 聞けばすぐ教えてくれる状況 -> どんどん頻度が低下していく.自分で考えるきっかけ !NF回路 阿部さん ハードウェア屋さんはまずソフトを疑う -> 大体ソフトが悪い -> 自分は踏まないようにしたい ? !井上さん 良い師匠がモチベーションにつながることに同意 -> 若い技術者を育てるのは大変 -> 夢を見せることで代替になれば... --- SESSAMEの話 --- !二上さん 日本の組込みエンジニアにソフトウェア工学の分かっている部分を生かせる環境を -> 教育カリキュラムの提示のお願い -> 企業はOKだが,学校はNGという返事 先生(学校)に問題があるのでは? -> ソフト専門でない先生でも,自分の分野では徒弟制度ができている 一方,ソフトはどうもダメっぽい -> ソフトウェアの浸透速度に先生方がついていってない !オークマ 杉山さん 使用年数の長い製品を作っている(10Y-20Y) 残してあるものの品質が重要 (ドキュメント,ソース) -> これがあるから対応ができる -> 自分がいなくなったとしても仕事が回る -- To:!二上さん 「今の学生に受け入れられない理由が不明瞭なので説明してほしい」 !二上さん RoboCupでも,アレだけ装飾しないと学生の興味を引かない -> 学生の興味を引くのが大変 (味付けをしないと見向きもしない) 会社なら無理強いができる (「やりたくないならやめてしまえ」) -> とはいえ,簡単にやめさせられないから 困る プログラムを組まない学生が増えた -> 既存プログラムの組合せだけで切り抜ける 「RoboCupはチームプレイだから...」 -> ソフトウェアの得意な人に依存する環境 (7-8割の学生はやらない) -> 本当の徒弟制度ではない (ただの分業) それぞれの個人の書いたコードにコメントを与えることができて こそ本物 -------- オリック ? 社風は「動くものを作る会社」 ソフト・ハードの前に,機械作る部門がある これまで仕様をころころ変える風潮があった -> これからはそうは言っていられない -> 自分が担当になったが,マイコンのマの字も分からない状態 -> 詳しい部署に頼って必至で覚えた 自分にとってはソースコードが師匠のようなもの -> ソフトウェア工学に関する知識があったわけではない. それでも必要な知識は身につけられたと思う. -> 対象物に対する知識があったのでうまくいった? ? ? 師匠は直接的な回答を与えない人という印象 --- 師匠が何を求めているか顔を見て分かるか? -> そのときは理解できなくとも,後々分かることは多い ------- 萩原さん 出向して6ヶ月程度.師匠はルネサスにいる. 師匠は人を怒らせるのがうまい人 -> 打たれ弱い人は辛いだろう. -> 「技術は盗むものだ」 -> 今思えばこういう育て方だったのでは?と思う。 ヤマハ !遠藤くん 師匠 : 学生期間は!高田先生.今はいない. -> 現在の職場で組込み関連は自分ひとり -> 分からないことがあっても教えることのできる人がいない エルミック !金田一さん 師匠 : RTOS開発を担当したときの開発者 -> その姿を見て,コードを見て,テクニックを盗んだ -> 責任と達成感を教えてくれた -> 自分も同じ方法で部下を育てる (姿を見せる) -> それと一緒に,新人の出鼻をくじく (過剰な自信の排除) -> 師匠(自分)に対する認識が変化 -> 新人とともにコードを書くことで,知識と達成感を伝えていく アナログデバイセス !西さん モチベーションを与えるにはどうすれば? ・企業が若者をあおる環境が必要 -> 育たない環境になっている (登竜門がない,資料も無い) ・サポートエンジニアに対するモチベーション -> 開発をやりたくてサポートに来た.当然モチベーションは上がらない -> 勉強会を開いてモチベーションを下げずに技術向上を図ることが重要 --- 締め 電通大 !西さん 今年から師匠になった -> ものすごい危機感 -> 部下が育たない 弟子を育てるには...? ・全てを教えてはいけない -> 背中で教えろ -> 無視することではない.道を示すことは重要. ・弟子よりすごくないといけない -> 弟子のモチベーションに関係する --- CLOSE --- --- 記録者所感 今回の分科会を要約すると,師匠がうまく弟子のモチベーションを上げる方法, ならびに,弟子が高いモチベーションを保って問題に当たる方法に関する議論で あったと思う.師匠がすばらしいことと弟子が育つことは等価ではなく,その逆 もまた然りであると感じた.この話は,以前のSWESTで行われた技術者のモチベ ーションの議論と似た部分があると思う. #師匠と弟子は最小構成のチーム 今回の議論で,弟子にとっての師匠の理想像のようなものが見えてきたように思 える.個人的には,次回は「こういう部下がいて困った」とか「こういう上司で は育たない」といった,反面側の話があると面白いように感ずる(今回の逆で, 何が互いのモチベーション低下につながるのかの話.酒を飲んで愚痴話をすれば, 色々と噴出してくださる方も多そう).