*************************************************************************** 基調講演 テーマ:NewSpace時代の民間宇宙ロケット・衛星に求められる組み込み技術 講師:森岡 澄夫 氏(インターステラテクノロジズ株式会社 シニアフェロー) 日時:2023/8/31 14:00~15:20 *************************************************************************** 1. イントロ * 2018年に日本の民間企業が宇宙に到達した。 * この成果で、第9回ものづくり日本代表や経済産業、財務省などから紹介された。 * 今日のプレゼンテーションは、組み込みシステムの開発者向け。 * ロケットについての情報や話題を提供する予定。 * 「インターステラテクノロジー」という企業の「盛岡」と自己紹介している。 * 一般的には「ホリエモン ロケットを作ってる会社」として知られている。 * プレゼンテーション内容は、宇宙開発のトレンド、ロケットの製造方法、そして衛星に関する話題。 2. キーワード: 「ニュースペース」 * 「ニュースペース」は、従来の宇宙開発、特に国家が主導する大規模な宇宙開発(「オールドスペース」とも呼ばれる)とは異なる、民間が主導する新しい宇宙開発の形態を指す。 3. 従来の宇宙開発: * JAXAやNASAなど、国家が主導する形式で進行。 * 長期的なもので、特に2000年代初頭から続いている。 * 国の威信をかけている大規模なプロジェクトが多い。 4. ニュースペースの特徴: * 民間が主導する商用の宇宙開発。 * 5〜10年前から急激に活動が活発化してきた。 * 民間企業によって作られる宇宙船や人工衛星などの開発が進行中。 5. 宇宙開発の事例: * 旧式の宇宙開発: 地球観測を行うランドサットやジェームズウェッブ宇宙望遠鏡など大型の衛星や機器が主流。 * ニュースペース: より小型で、コストも安い。キューブサットなど10cm角程度の小型衛星が増えてきている。 6. 日本の位置づけ: * 日本はニュースペースではパイオニア的な存在。 * 2000年頃から、東京大学や他の研究機関がキューブサットなどの小型衛星の開発に取り組んできた。 7. 分野の状況 * 小型衛星の進化: 衛星が小型化し、1機当たりのコストも安くなってきている。 * 新しい衛星のミッション: 衛星の使い方やミッションの組み方が多様化している。特に、多数の小型衛星を用いたコンステレーションという方法で通信網を構築するやり方が普及してきている。 * スターリンク: SpaceXのスターリンクプロジェクトは非常に有名で、多数の衛星を上げることで高速な通信網を作り上げるプロジェクトである。 * 軌道の変化: 以前は静止軌道が主流であったが、近年では低い軌道(LEO)を利用する方法が増えてきている。これにより、衛星から撮影する画像の解像度が向上してきている。 * 宇宙産業の変化: IT業界のように、宇宙産業もサービス提供が中心になってくると予測されている。また、地球の通信網を宇宙に拡大する動きもある。 * 新しい通信技術: 光通信やレーザー通信など、新しい通信手段が宇宙での通信に採用され始めている。 * 宇宙でのコンピューティング: 将来的に宇宙でのコンピューティングが現実になるかもしれないという予測もある。 8. インターステラテクノロジーについて * ニュースペースを対象とした宇宙ビジネスを行う企業であり、ロケットを製造・運用しているという点でユニークです。 * 実際にロケットを飛ばしている会社は世界でも少ない。 * 民間ロケットを宇宙に到達させた企業として世界で4番目で、国内では最初の会社。 * 宇宙ビジネスをやる上で、ロケットは基本的な土台。 * 衛星を上げる需要は多いがチャンスは限られていることから、大型ロケットではなく、いつでも打ち上げられる小型ロケットのニーズが高まっている。 * 事業の目的として、ロケットのコストを大幅に削減することを目指している。 9. インターステラテクノロジズの宇宙ロケットに関する紹介 * 会社はメディアにも度々取り上げられている。 * ロケットは基本的に2つのタイプを製作。 * 「MOMO」ロケット * メディアで取り上げられることが多い。 * 宇宙空間に到達するが、弾道飛行のみで降りてくる。 * 途中段階・練習段階のロケットとして位置づけられている。 * ロケットの1段目の制御等、難易度が高い部分の練習用。 * 各種施設や体制の構築のための練習も行っている。 * サイズ:約50cmの太さ、重さは車よりやや軽め。電柱の太さに近い。 * 速度:時速4600kmまで加速し宇宙空間に到達。 * 「ZERO」ロケット * 衛星を宇宙に打ち上げるロケットとして開発中。 * サイズ:全長約25m、直径2m、重さ約30T。 * 速度:時速約28,000km。 * このロケットの開発には高度な組み込み技術が求められる。 10. インターステラテクノロジズの所在地 * インターステラテクノロジズの本社は北海道の大樹町に位置する。 * 帯広から南へ1時間ほど。 * JAXAの施設も近隣に存在する。 11. インターステラテクノロジズの発展と体制 * 2017年には約10人のスタッフで活動していた。 * 現在は約120人のチームで活動しており、急成長している。 * チームの年齢層は20代から60代まで幅広い。 * 職種としては、IT系の人間、メカニック、材料系の人など様々。 12. 協力関係とパートナーシップ * ロケットを打ち上げる活動は1社の力だけでは難しい。 * そのため、他の企業、大学、研究機関との共同研究や共同開発を積極的に行っている。 * JAXAは競合ではなく、支援してくれる存在。 13. 宇宙空間での運用: * 衛星:基本的に宇宙空間で運用を継続するもの。 * ロケット:主に飛行目的に使用され、通常は1時間程度しか運用しない。 14. ロケットと衛星の違い: * 衛星は安全性というよりは、主にIT系の話が多い。 * ロケットの製作や運用には安全性への配慮が必要。 * 電気系の組み込み技術や作り方においても、ロケットと衛星で異なる考え方や方法がある。 15. ロケット技術の困難性: * ロケット技術は高度であり、失敗は避けられないものとして認識されるべき。 * JAXAの失敗についても、それは技術の本質的な困難さからくるもので、JAXAが気を緩めているわけではない。 16. インターステラテクノロジズのロケット成功率: * インターステラテクノロジズのロケット「MOMO」は、これまで約7回の飛行を行い、成功率は約50%。 * 失敗の原因は様々で、それぞれ異なる要因によるもの。 17. ロケットの技術の現状 * ロケット技術はまだ成熟していない。 * 多くの人々はロケットが安定した技術であると思っているが、実際にはそうではない。 * スペースシャトルは135回飛行したが、2回失敗している。 * H2ロケットは18年で40回飛行し、1回失敗している。 18. 一般の乗り物とロケットの違い * 一般的な飛行機は1日に約3000回飛ぶが、大事故はほとんど発生しない。 * 飛行機の安全性はその試験頻度と成熟度の高さに起因する。 * ロケットの特殊性は公開実験が多いことと、少ない飛行回数で市場投入されること。 * ロケットの開発は非常に高コストであるため、未完成の状態での運用が求められることが多い。 19. ロケットのテストと問題 * 完全なテストを行うことが理想だが、実際には難しい。 * MOMO2号機は打ち上げ直後にエンジンの問題で落下した。 * 原因は地上でのテスト時と実際の飛行時の配管の配置が異なり、これが燃料の混合比を変化させ、燃焼温度が上がったこと。 * ロケットはギリギリの設定で運用されているため、少しの変更が大きな影響をもたらす可能性がある。 * 理想は実物をそのまま模倣してテストすることだが、これは難しい。 * 実際の試験の設備は巨大になり、JAXAの風洞のような設備や、モーションエミュレーター(センサーや他の部品を動かす設備)の例を挙げている。 * このようなツールは市販されており、特定の環境を作り出すことは可能だが、フライトの条件を完全に模倣することは非常に困難。 * 例として、ある方向に振動をかけながらの動作は現在でも再現できない。 * シミュレーションも多用されているが、うまくできる部分とできない部分がある。 * 宇宙機が大気圏を出た後の挙動は物理法則に従って比較的予測しやすいが、エンジン内の燃焼効果などはシミュレーションが難しい。 * このような難しい部分は自動化では対応できず、手動での対応が求められる。 * このような課題を持ちつつも、多くの関係者が商用ベースでの宇宙技術の進展を目指している。 20. チャレンジの本質: * 新しいスペース関連の事業やプロジェクトは、失敗が許されない環境での動作が必要とされることが多い。特に国のプロジェクトでは、税金が使用されるため、失敗は許されない。 * 宇宙関連の装置や機械は、その特殊性から試験や品質保証が厳格化する必要がある。 * 厳格な要件から、製品が特注・一品物化する傾向がある。これが結果的にコストを上昇させる要因となり、さらに失敗が許されない状況を生む、というサイクルが続く。 * このコスト上昇のサイクルを打破することが、新しい宇宙関連の事業やプロジェクトの大きな課題となっている。 21. ニュースペースのアプローチ: * 民間が宇宙関連の事業を行う場合、完全に失敗が許されないわけではない。速やかに問題を修正し、市場に投入するアプローチが取られることが多い。 * ただし、このアプローチを取る場合も、失敗の頻度や程度には限界がある。例えば、ロケットの成功率は95%以上が求められるなど、一定の品質が必要。 * このような微妙なバランスをとる必要性が、新しい宇宙事業での大きな課題として存在する。 22. オールドスペースの開発方法: * JAXAの典型的な開発はウォーターフォール式。 * 研究から運用までの順序を経る。 * 開発の各段階で基本設計からゲートを通過して進行。 23. ニュースペースの開発方法: * アジャイル的な手法が取り入れられている。 * しかし、ロケットは機械系で大型設備が多いため、アジャイル開発が難しい面もあるとの議論が存在。 * どのような方法が最適かは現在も探求中。 24. スペースXの開発スタイル: * スペースXはガンガン失敗を繰り返しながら開発を進行。 * 失敗した箇所を修正して即座に次のフライトを行うスピーディなアプローチ。 * スターシップという大型ロケットは失敗を経験しながらも、高いサイクルで開発を進めている。 25. NASAとスペースXの開発スピードの比較: * NASAはスペース・ローンチ・システムという月行きロケットを10年かけて慎重に開発。 * スペースXは短期間でスターシップを開発し、失敗を繰り返しながらも迅速に改善。 * スターシップはNASAのロケットよりも先に進行する可能性がある。 26. 宇宙開発の技術進展 * 従来の宇宙開発技術は非常に進んでおり、それが他の分野にも利用される「スピンオフ」という流れが主流であった。 * しかし、ニュースペースでは「スピンオン」という流れが主流となり、他の業界で開発された技術や信頼性の高いものを積極的に宇宙分野で利用することが強調されている。 27. 特殊部品の利用 * NASAやJAXAも特殊部品の利用を避ける方向性。 * トレンドとしては、市販品の利用や試験された信頼性の高いものを使用することが強調されている。 * JAXAもこの方向性を推進している。 28. ニュースペースのアプローチ * ニュースペースは、既存の基準よりもアグレッシブかつ柔軟にアプローチしている。 * 車載部品など、信頼性が高く、事前に試験が行われているものを宇宙分野でも利用する動きがある。 * 自ら試験を行うとコストが高まるため、事前に試験が行われているものを導入することが基本的な流れとなっている。 29. インターステラテクノロジズのロケットについて * ロケットの電子系の役割: * ロケット内部の電子系は「アビオニクス」と呼ばれる。 * アビオニクスは飛行機やロケットの制御系、コンピューター関連の技術を指す。 * ロケットの制御について: * 単純な模型ロケットのようなものには制御がなく、どこに飛んでいくか制御できない。 * 我々のロケットは制御が必要で、正確な飛行軌道を持って飛ばすためにコンピューターを利用する。 * ペットボトルを用いた説明: * ペットボトルに水が入っている状態をロケットの例に使用。 * ロケットもペットボトルのように中に液体が入っており、エンジンを利用して真っ直ぐ飛ばす。 * エンジンは微細に動かしてロケットの姿勢を制御する。 * エンジンのコントロールレート: * ロケットのエンジンは細かく動かすことができ、それにより姿勢を制御する。 * コントロールのレートは約100Hz、0.1度刻みでエンジンを制御する。 * 安全性の重要性 * 宇宙関連の製品を作る際、最も重要に考えていることは安全性。 * 製品が成功するかどうかよりも、安全かどうかが優先される。 * 落下制限区域の設定 * ロケットが海の方向に飛ぶ際、定められた範囲を絶対に越えないようにする。 * 範囲を越えそうになった場合、直ちにロケットを落とす。 * ロケットの位置の把握 * ロケットが日本の外を飛ぶ可能性があるため、他国の領域を通過する際の安全確保と位置把握が重要。 * 緊急の場合、ロケットを確実に落とす必要がある。 * エンジン制御の困難さ * ロケットエンジンの制御は、問題が起きやすい部分である。 * 大量の燃料を流し込み、極低温(マイナス193°C)の燃料を使用する。 * エンジンの点火タイミングが遅れると、爆発のリスクがある。 * 時間の制御の重要性 * ロケットの起動や操作において、ミリ秒単位の精度でのタイミングが必要。 * シーケンスやバルブの操作タイミングを正確にコントロールすることが求められる。 * 軌道とロケットの飛行方向 * ある軌道に沿って飛ばす技術は意外と数値計算的な側面が強い。 * コンピュータービジョンのように、ロケットがどの方向を向いているか、どの位置にいるかの計算を行う。 * ジャイロと座標系 * ロケット内部ではジャイロを利用し、多数の座標系(地球の座標系やロケットの座標系など)との相互変換を行いながら、ロケットの姿勢や位置を判別する。 * ハードウェアの設計規模 * ハードウェアの規模は小さい。 * 多数のセンサーやアクチュエーターを持ち、例としてセンサーは約300個、制御バルブやその他のものは3-10 kHz程度。 * プロセッサーとファームウェア * 約50個のプロセッシングユニットが存在。 * ファームウェアは非常に小さいもので、C言語で約3万行、HDLで4万行程度。 * 約3-4人の設計者で開発しており、将来的には設計規模が数倍以上になる可能性。 * アーキテクチャと接続方法 * ロケットのアーキテクチャは車と似ており、データ伝送にも車と同じCAN (Controller Area Network)を使用。 * 2本のCANバスに各ユニットが接続されている。 * 古いロケットはバス構成ではなく、PTP(Point-to-Point)接続が主流だった。 * コンピュータの仕様: * 昔の宇宙船のコンピュータは大きな装置で、ディスクリート部品を使用。 * 現代では、よりコンパクトなマイコン基盤が使用されており、AMDのZynqというチップを採用。 * 一枚の基盤で飛行のメイン制御が可能。 * ソフトウェアはベアメタルを使用しており、RTOSは使用しない。 * 様々なセンサーやエンジンの周辺デバイスの制御のために、小さなボードが50枚程度載っている。 * STMなどの一般的なマイコンも使用されており、ロケットの制御には十分な計算能力を持っている。 * 小型化のメリット: * 環境試験が楽になる。特に振動への耐性や壊れにくさなどの環境対策が容易に。 * 小型化は部品選定時の要因としても重要。 * 部品の選定基準: * 性能、飛行環境での動作、小型化可能性。 * 部品が継続的に入手可能か、セカンドソースの存在。 * 古いプロセッサの使用を避け、将来的な供給を確保。 * チップにバグがないかの確認も重要。 * ソフトウェアの開発: * 一般的に使用されているものを採用し、特殊なものは使用しない方針。 * センサーやアクチュエーターなどは一定の周期でデータを読み取るか制御する必要がある。 * 一つのプロセッサーで多重に動かすのは難しく、代わりにデバイスごとに並列に動かす設計にしている。 * IPコアをデバイスごとに割り当て、専用カードで制御する形式を採用。 * IPコア内部にはセンサーの演算や制御コントロールのシーケンスなどを組み込む設計を行っている。 * 一般的にはマイコンのペリフェラはインターフェース部分だけだが、インターステラテクノロジズではセンサーデータ処理などもIPコアに一体化して組み込む。 * Cベースの設計を積極的に取り入れている。 * センサーに関する課題 * ロケットにおいてセンサーは重要な部分であり、特に姿勢を検知するジャイロが難しい。 * ジャイロの歴史的な背景 * 旧来のロケット(例:V2, アポロ)では機械式のジャイロを使用。 * 機械式ジャイロは、地球ゴマの一定の方向を向く原理を利用していた。 * 新しい技術の導入 * 近年のロケットには電子的なジャイロを使用。 * 我々は更に進化した技術を使っている。例えば、スマホにも使われるジャイロよりも高い安定度を持つものを採用している。 * 位置測定のモジュール * スマホのGPSと同じようなモジュールを使って位置を測定。 * 技術の進歩によるメリット * センサーやコンピューターの小型化・高性能化により、低コストでのロケット製造が可能に。 * 飛行制御センサー * 飛行制御のためのセンサーは厳格なテストが必要。 * 他にも、温度環境を測定したり、映像を撮影するセンサーがある。 * 一般的なセンサーの利用 * 市販のものや、ドローン用の振動センサー、カメラ、ラズベリーパイなど、特殊な改造を必要としない製品も利用されている。 * 宇宙環境の厳しさ * ロケットが大気中を飛んでいる時が最も厳しい。 * 宇宙空間外部はそれほど厳しい環境ではない。 * 放射線の影響 * 宇宙空間での放射線の強度は、年間で変化する。 * 地上で使用されている半導体は、宇宙空間でも大体使用可能。 * しかし、バンアレン帯を越えると放射線の状況が変わる。 * ロケットの環境 * ロケット内では振動や衝撃が主な問題。 * 振動のイメージとして、ダンプカーが砂利道を走る感覚よりも強い。 * 加速度は4-5G程度。 * 温度は、通常の電子部品の保証範囲からやや逸脱するレベル。 * 実際のロケット内の問題点 * ワイヤーなどの部材がケースの角に接触し、振動で破損するリスク。 * ロケット内でのケーブル敷設時は、接触を避けるための距離を確保するなどの対策が必要。 * 情報系の話: * ロケットの情報系には冗長性の概念があるも、無闇に冗長性を増やすとコストが増大する。 * すべてを多重化すると必ずしも信頼性が上がるわけではなく、トレードオフの考慮が必要。 * システムの冗長性とコスト、トラブルのリスクをバランス良く取り扱う必要がある。 * 安全性: * インターステラテクノロジズは安全性を最優先に考える。 * 例: 無線から飛行停止の指示が送られた場合、それは絶対に実行されるシステムが組み込まれている。 * 冗長性の実装: * 無線の受信機の位置を変える、異なるソフトウェアを用意するなど、ソフトウェアやハードウェアのバグを回避するための施策が取られている。 * 電気系の冗長性: * 電気系が全滅しても飛行が止められるような設計がされている。 * 燃料バルブの設計: * 燃料バルブは、何も操作しないと自動で閉じるタイプを使用。これにより、電源トラブルなどが発生しても飛行は絶対に止まる。 * 放射線試験: * 東北大学の協力のもと、放射線試験が行われている。使用するデバイスの安全性を加速器を使って確認している。 * ロケット技術の失敗事例 * アリアン5ロケット: 既存のアリアン4のソフトウェアをそのまま利用し、飛行時の環境条件や振動の数値で問題が発生。 * ロシアのプロトンロケット: ジャイロの向きを間違え、ロケットがひっくり返る事故。 * 火星探査機: メートル法とヤングフォード法を混同し、失敗。 * 失敗事例は多く、見かけ上初歩的なミスもあるが、それに気をつけてもなお発生する。 * 開発中のバグ・問題点 * 計算の誤りやパラメーターの間違い。 * ビット数や小数点の表記不足。 * インターコネクトのデータ転送のバグ。 * ジャイロの3軸データのパケットがバラバラでデータが混在。 * 制御コンピュータの間の時計のずれ。 * 地上試験の課題 * バグの発生頻度が低いため、原因の特定が困難。 * 機械との結合テストでの問題が多い。 * 予期せぬ事象により、テストが困難。 * 技術改善のアプローチ * 設計のリバイスやテストを効率的に実施する方法を検討中。 * 同期やメッセージ交換のスケジューリングなど、地道な作業の実施。 * 他の産業(例: 自動車業界)でも同様の対策が行われている。 * 社内の取り組みとして心理的安全を重視 * マネージメントでの問題やバグ発生時に、個人を追求しないというルール * 追い詰められた状況での開発を避けるための注意点 30. 未来の技術開発の方向性 * 世界的に宇宙通信網の拡大が進む。 * 宇宙基準でのコンピューティングが増加。 * 今後のミッション内容は多岐にわたる可能性が高く、通信やリモートセンシングはもちろん、エンターテインメント領域の利用も考えられる。 31. 宇宙機上でのAI技術の利用 * 宇宙機上でのAI利用はすでに始まっており、リモートセンシングでの活用が進んでいる。 * 目的: 衛星上で画像認識を行い、ダウンリンクするデータ量を減少させる。 32. 衛星の通信の課題 * 地上とのデータの送受信の帯域が限られており、高解像度のデータ送信が困難。 * AIを使用して特定の重要データだけを選択して送信する方法が模索されている。 33. ハイパースペクトル画像の利用 * リモートセンシングでは多波長の画像が使用される。これは観測対象や目的に応じて変わる。 * ハイパースペクトルの画像認識と通常の市場の画像認識は異なる。 34. レーダーセンシングの特徴 * レーダーを利用したセンシングは天気の影響を受けず、地上の映像を取得できる。 * この技術には独自の画像認識の方法が必要。 35. 衛星の技術的課題 * 電力供給が限られている。 * 高速で移動しているため、独自の技術が求められる。 * 地上での学習が常に可能ではない。 36. 衛星の量産:今後、1万機などの大量の衛星を生産する方向性が強まる。 37. フォーメーションフライト:小型の衛星を近い位置に集め、まとまった機能を果たす技術。例:多くの小型衛星を集めて巨大なアンテナを作る。 * メリット: * 個別の衛星の故障があっても全体としての機能回復が可能。 * 規模の拡張が可能。 * 一つの衛星に高い信頼性を要求する必要性が低減、コストダウンが期待される。 38. 衛星の小型化:技術進展により、多くの機能がワンチップに集積される傾向。 39. 大量生産の実現:宇宙機や衛星用のチップが大量生産されるようになり、宇宙機の製造コストが下がると予想。 40. 組み込み技術の利用:今後、宇宙機や衛星の量産に伴い、組み込み技術がさらに重要となる。 41. 宇宙ミッションの柔軟性 * 以前は一つの衛星が一つのミッションだけだったが、それが変わるとの予想。 * 一つの宇宙機が複数のミッションをこなせるような技術が注目されている。 * 地上から宇宙機の機能を変更やコンフィギュレーションする技術が普及しつつある。 * 実際に日本で、地上からFPGAの内容を書き換える実験が行われている。 42. 宇宙機の通信技術 * 光通信技術が今後普及すると予想されている。 43. セキュリティ技術 * 宇宙での通信セキュリティの要求が増加してきており、地上と同じようなセキュリティ技術が必要との見解。 44. 放射線やシミュレーション * 宇宙機に関する放射線の研究やシミュレーション、テストについての取り組みは従来から続いている。 * これらの技術の重要性は増しており、特にシミュレーションの技術はコスト削減の面で重要視されている。 45. 宇宙開発の商用化 * 近年、SFのような話だった宇宙開発が現実的になってきている。 * 過去5年間で急速に変化が見られる。 46. ニュースペースの要点 * エンジンや機体の進展はもちろん、情報分野の進展が特に顕著。 * コンピュータ、センサーなどの進化。 * これらの技術が一般的にアクセス可能になり、手頃な価格で提供されるようになった。 * これにより、宇宙開発が商用の分野で進行するようになった。 47. 組み込み技術の役割 * 普通の組み込み技術を利用して宇宙機の製造が可能に。 * 未来(例: 10年後)には学生でも宇宙機を製造できるようになるとの予想。 * 組み込みの知識や技術が、この分野での重要性を増している。 48. 終わりのメッセージ * 宇宙技術の開発は夢があり、興味深い。 * 技術開発を継続していく意向。 49. ロケットや衛星の無線の周波数、距離、強度に関する質問。 * 周波数と距離 * 無線の周波数に関する具体的な回答は示されていない。 * ロケットが視界に入る際、確実に通信が届くように設定される。 * 通信の強度の設定に関して、「何W」という感じで設定される。 * 衛星を打ち上げる場合、通信の距離は約3000kmに設定する必要がある。これは、地平線の方向に沈んでいくロケットの位置を考慮したもの。 * 通信の設計ポイント * 通信の強度をどのくらいに設定するか(回線設計)。 * 通信内容が正確に届いているかを確認するためのエラー検出機能。 * その他の情報 * 落とすための通信(破壊指令)は、ロケットや衛星を意図的に落とすためのもの。 50. ロケットのトラブル発生時、フライトレコーダーのようなデバイスを使用して原因を特定できるか、それとも他の方法で原因を特定しなければならないか。 * フライトレコーダーの存在と利用 * 理想的にはフライトレコーダーのようなデバイスを使用して原因を特定したいが、それは難しい。 * センサーによる監視 * ロケットには多数のセンサーが取り付けられており、それらのセンサーからのデータを地上に送信している。 * センサーからのデータを基に、何か異常が生じた場合には、その前の状況やセンサーのデータに異常がなかったかを調べる。 * 異常の起きた時間帯を遡って、どの部分に問題があったのかを調査し、根本原因を推定する。 * 課題 * 上述の原因特定のアプローチは理想的であるが、実際には難易度が高い。 51. コストと信頼性のバランスについて。宇宙関連の技術では信頼性が非常に重要であるが、その一方でコストを下げたいという要望もある。これらの要件をどのように取り組んでいるかについての質問。 * 信頼性とコストのジレンマ * 信頼性を高めるための対策をしすぎると、費用が高くなる。 * 逆に、コストを削減しすぎると信頼性が低下するリスクがある。 * 現状の取り組み * このジレンマについて、どのポイントでバランスをとるべきかの決定は難しい。 * インターステラテクノロジズだけでなく、多くの企業もこの問題に悩んでいる。 * 最適なバランスを見つけることは難しく、現在も課題として取り組んでいる。 52. コミュニティベースでの宇宙航空機やロボットの調整や品質保証などに関しての動きや取り組みについて。特にオープンソース的な取り組みや国際的な連携の可能性、ミッション系や衛星バス系の部分に関する考えや取り組みについての質問。 * ロケットと衛星の違い * ロケットは安全性の確保が困難で、オープンソース化は難しい。 * 衛星の方がオープンソース的な文化と馴染みやすく、国際的な連携が可能。 * ソフトウェアとの違い * ソフトウェアコミュニティとは異なり、国の制約はなく、国際的に普遍的に使える技術や知識が存在。 * 衛星の部分 * 衛星の作成における「バス系」という部分(電源系やコントロール系)は普遍的で、共同での制作が考えられる。 * しかし、ミッションの部分はそれぞれ異なるため、各団体や組織が独自に取り組む可能性が高い。 以上