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セッションS5c ワーク
テーマ:お客様に満足していただくソフトウェアを開発するには?
    〜人間中心設計とUXデザインワークショップ〜
講師:水本 徹(NPO法人 人間中心設計推進機構 副理事長・関西支部長/
        株式会社島津製作所 総合デザインセンター
        デザインユニット マネージャー)
日時:2019/9/6(金) 14:10-15:20
参加人数:14名
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<自己紹介>
コナミ(プログラマー/企画)
シスメックス(SE/プロジェクトへの人間中心設計の導入・教育)
NPO法人 人間中心設計推進機構
島津製作所(UXを重視した製品開発)


<UIとUXについて>
・UI(ユーザインタフェース)とは
機器やソフトウェア、システムなどとその利用者の間で情報をやり取りする仕組み
ユーザーの要求を満たすための仕組み

・UX(ユーザエクスペリエンス)とは
ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験の総体
利用中だけではなく、利用前や利用後の体験も含まれる

<Command-Line InterfaceとGraphical User Interfaceについて>
・Command-Line Interfaceとは
コンピュータに対して、英語の命令文で処理を指示する

・Graphical User Interface(GUI)とは
対象物に対して、それが反応できる動きをジェスチャで指示する


<オブジェクトベースUIについて>
・現状は
ほとんどがタスクベースUIになっている
これをオブジェクトベースUIに変更することにより様々な利点がある

・オブジェクトベースUIとは
ユーザーの関心の対象であるオブジェクトを中心に操作設計されたユーザインタフェース
Object→Verbの順序でユーザーが操作できるようにする

・タスクベースUIとは
オブジェクトベースUIと対の考え方
まずタスク(やること)を選び、引数として対象物やパラメータを指定する
ナビゲーションはタスクを手がかりにする
Verb→Objectの順序でユーザーが操作できるようにする
対象オブジェクトを選択する必要がない場合や定型の入力手続きだけを提供する場合のみに
有効なUIである

・オブジェクトベースUIの効果
UIが示す機能や情報が、ユーザーにとってより分かりやすく意味のあるものになる
操作効率、学習効率、業務効率、拡張性、保守性の向上
複雑度、操作手順、画面数、開発個数の減少

・タスクベースのよくない実際の例
ある配達サービスのスマホアプリの例(ログイン後、今すぐ配達というボタンが表示されるので、既に対象物を選んでしまったのではないかと不安になるもうメニューを選んでいるという誤解を生む)
カメラの液晶のメニュー

・タスクベースUIになってしまう背景
オブジェクトベースUI(GUI)の設計方法が明文化されていない
前例をまねていることが多い
Command-Line Interfaceの設計スタイルを引きずっている

・モードレスとは
モードはユーザーの自由な選択を奪う
→モードレスなデザインを目指すべき

・モードレスデザインの原則
モードを終わらせるための手続きをつくらない
直接的かつ可逆的な操作
すべてのオブジェクトはリアルタイムにその状態を反映する


<ワークショップ>
・オブジェクトベースUIの設計を体験する

・オブジェクトの抽出
1.ユースケースの例からオブジェクトになる「名詞」を抽出する
2.「名詞」とそれらの関係を抽出する
3.ことばのゆらぎをなくすために、「名詞」を汎化し粒度を揃える
4.「名詞」の関係性を繋げ、オブジェクトを特定する
5.オブジェクトの中で主となる「エンティティオブジェクト」を特定する
6.「エンティティオブジェクト」の情報を補足する


<ビューとナビゲーションについて>
・基本のビュー形式の種類
コレクション(一覧の画面)
シングル(紹介の画面)

・エンティティオブジェクトに「コレクション」と「シングル」のビューを与える
・画面遷移であるコレクションとシングルの呼び出し関係を検討する


<レイアウトパターンについて>
・レイアウトパターンの種類
ドリルダウンの方向性
単一オブジェクト
グループ化オブジェクト
複数オブジェクト

・オブジェクト同士の参照関係を踏まえてレイアウトパターンを適用し、統一する
・冗長な遷移を圧縮し、ラベルをユーザーが思い浮かべるメンタルモデルに合わせて、
 調整する


■質疑応答
Q.オブジェクトの抽出の作業はエンジニアには分かりやすいがデザイナーには分かりにくい
 のではないか
A.勉強すればエンジニアかデザイナーかはあまり関係しない。

Q.タスクベースのUIをオブジェクトベースのUIに移行したいが、GUIを単に変更するだけではなく
 内部の仕様を変更する必要があるか
A.場合によるが、まずワークショップでの手順を実行したらよい。

Q.ウィザードは悪なのか
A.決まった手続きなどはそのような設計でもよい

Q.ペルソナをどのように利用するのか
A.メンタルモデルはペルソナを参考にする


■まとめ
素晴らしいUXを提案されたとして、それをUIに展開する方法について講義が行われた
オブジェクトベースUIはユーザーにとってわかりやすい意味のある設計になっている


以上。