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セッションs3a 講演・チュートリアル
テーマ:オムロンセンサーの"ラズパイ対応"が拡げる世界
講師:小島 有貴 氏
日時:2019/9/6(金) 10:30〜11:40
参加人数:35名(終了時)
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■はじめに
○自己紹介
・太陽光発電のシステム開発をやっていた
・イノベーション推進本部に移って現在は活動している
・プロトタイプ開発をしたりベンチャーと協業したりしている
・マイコンが好き
・趣味でモノづくりしたりする
○アジェンダ
・オムロンとイノベーション推進本部の紹介
・センサのオープンプラットフォーム対応について
・ラズパイ対応を進める上での話
・新規事業を始める上でどうするか
・時間があればハンズオン
■本編
○オムロン
・様々なコンポーネントを提供
・EMCでの家電向けのセンサをラズパイやArduino向けに検討している
・イノベーション推進本部では事業部門からの話を加味しつつやっていく
・仮説検証。なぜうまくいったかどうかなど細かなことについて知見を貯める
・MEMSのセンサや顔を認識するIPなど。天井につけて人の位置を測ったりすることも
できる。
・気圧を測るセンサは±5くらいで測れる。階段をあがったかどうかや、部屋の中での
ドアの開け閉めでも検知できる。ファンの詰まり具合などを調べたりすることもできる。
米粒より一回り小さいくらいの大きさ。はんだ付けするのは大変。
○オープンプラットフォーム
・高性能というよりはつながりやすさについてのニーズが多い。ちょっと試したいと
いうお話をいただくこともあるが実際に提供するのがチップになるのでそれだけ
渡してもおそらくなかなか進まない。そこをどうやっていくか。
・どんな機能があるかの勉強会を開いたりそのコードをGitHubで提供したりしている。
・ハードウェア面では、はんだ付けレスでできるようにチップのみではなくHATの
提供などをしている。
・センサ評価ボードを使っていろいろ試しやすいようにしている。
・D6Tという非接触温度センサの紹介。温度の分布を測ることでエアコンの温度管理や
カメラを使わずプライバシーに配慮した人の認識、工場の異常監視など。先ほどの
コネクタを使えば実装しなくても試すことができる。
・感震センサ紹介。SI値(建物の被害と相関が高い地震指標)が一定以上かを判定する。
・環境センサ紹介。これはもう少し複雑なもので、様々なセンサがついていて
Bluetoothで通信できる。
・USBに挿した環境センサのデモ紹介。温室度、照度、不快指数、熱中症危険度、VOC
(有害なガス)濃度、CO2濃度、加速度などいろいろ見れる。オフィス環境のチェック
などのお声もいただく。気圧についてはパソコンを持ち上げたり床に置いたりする
だけで変わるので人が転倒したかどうかもわかる。
・いろんなことを実際に試していただく勉強会などの集まりを通して、チップを
サンプル提供するだけではたどり着けなかったような世界が見ることができていると
実感している。
○ラズパイ対応の試行と挑戦について
・センサ評価ボードは最終的にオムロンブランドとして発売。
・EMCではマーケットの世界でこう広がっていくならこうやりたいという声があり
立ち上がった。
・ラズパイってそもそもなぜ売れててそこにオムロンの製品がどう絡むのかという
話から始まってなかなか社内で進みづらいところがあった。
・ラズパイHATやコネクタ付きのものを作って行きましょうと言っても、基本的に
ある程度まとまった個数が受注されているのが基本だったので今までのセンサとは
根本が違った。売り上げがどこまで行くかわからないものだった。
・R&Dでの取り組みとしてのテストマーケティングでの方向から進める。
・ジョイントプロモーションがしやすくなるという利点もあった。
・直接やり取りがむずかしいような商社さんを通さなくても、個人が入手しやすいように
プラットフォームの準備を進めた。
・結果としてオムロンでは本来扱うことが難しいものだったが5か月くらいで市場に
投入できた。
○新規事業を進める上でのノウハウ
・既存と違うことをやるときは指標が異なる。
・0から1にするときは顧客がいるのかといったところなど検証するところが全く
異なってくる。
・数値モデルや意思決定を重要にする。
・インキュベーションのモデルだと撤退しないといけないのでそういうことも考える。
どこまでだったら撤退するのかなど。
・プロトタイプを作ったうえでSIerやベンチャーが欲しがっているのか。モジュールが
いるよねといったように徐々に進めていく。
・エンジニア側からすると面倒かもしれないが経営側がどう考えているかも考えながら
やる必要がある。
・最初は批判されると思ったが意外と味方が増えていったので正面突破していく。
・正論をちゃんと言ってやっていけば進んでいく。360度いろんなところからいろんな
ことを言われるので心が折れそうな時もあったけれどもそこを乗り越えていくから
こそ得られる世界があった。
・ロジックなしに実現したいと思っている人と、実現するために何が必要か考えている
人と、それを作るためにはどうやったらいいかを考えている人などを集める必要がある。
○まとめ
・皆さんといろいろな形でやっていけたらと思うのでよろしくお願いいたします。
■質疑応答
質問1
社内調整について、具体的にチームは何人くらいか
(回答)
徐々に増えたが最初は一人の思いを持つ人とその思いを受け取ったマーケッタの一人と
いう感じで2人。最終的に4名で利害関係の調査などもろもろ進めた。
質問2
小島さんのモチベーションは何か?また最初のマーケッタの方のモチベーションは何か
(回答)
個人的に技術の民主化がキーだと思っている。なかなか触れられなかったSSDなどが
触れるようになったりしていろいろ触れるようになってきている。オムロンとしても
そういう人たちに届くべきものが届いていないのをなんとかしたいという思い。
マーケッタの人は、シェアや売り上げを上げたい、いろんなベンチャーからくる話も全部
断っていたがそういったところを開拓していきたいという思いからスタートしていった。
質問3
オープンプラットフォームのコミュニティの中で予想してない使い方などはあったか
(回答)
センサを入退室管理にそのまま使いたい。CO2で農業系について使いたい。農家の人たちが
導入するとなると大変なので環境センサをはんだ付けしていったりなど。
質問4
ここまでいろいろやってきて振り返ったときこの時こうしたらよかったという点はあるか
(回答)
社外でやるという話にかじを切らないといけないときはどんな時かの基準がなかった。
結果論でいうと早いうちから社外でやると判断してオブザーバの立場で進めることが
できていればもっとスムーズだった。Gitの運用などは知識的にみんながみんな知って
いるわけではなかったので少し強引な運用になっていたかと思う。
質問5
オムロンは会社向けに製品を出していてその品質保証もかなりしっかりやられていると
思う。個人向けのラズパイでは同じレベルの保証なのかそれとも個人向けということで
少し異なったのか。
(回答)
ラズパイなどの方はすべて品質保証はしてない。基板むき出しだしオムロンとしての
保証はなし。オムロンブランドのセンサ評価ボードについては、Pi HATは下の温度も
影響を受けるのでその点で温度センサはどうなのかなどそういったチェックはしている。
が、それにとどまっている。
質問6
センサ評価ボードはセンサ単体で売るというアイデアはあるのか。HATを作ったりArduinoに
乗せたりすると金額が上がってしまうと思う。例えば1000円以下で売れるようなもので
あれば需要も変わって来ると思う。
(回答)
オムロンのオフィシャルな内容では営業さんが担げるようなもの(モチベーションと
異なるようで申し訳ないが)。まずはセンサ業界で使えなかった人に受け取ってもらえる
ようなところからスタートしているので、管理がしやすいという点でHATという形から
スタートしている。秋月さんでディップ出力のものを出して欲しい気持ちは個人的にも
ちろんあるのでそういった話はオムロンとしてどうやるべきか。あるいは秋月さんと
一緒にやるのかとかいろんなことを考えていくべきと思う。
質問7
新規事業をやる上でIXIの観点でいくと手を挙げた人がやれるのか。どうメンバを決めるのか
(回答)
基本的にテーマ化は手上げでやる仕組み。事業部側でやりたい人がいたらIXI側に移る形で
人でその人たちの人材プールのような形になっていて知財の人や戦略書くだけの人とかが
いる。その人たちのリソースを見ながら調整。
質問8
その仕組みは今は回っているのか
(回答)
最近できたものであって個人の感想としてはうまく回っていると思う。
よくあるのは新規事業が外にあって既存事業からはお手並み拝見目線でリソースもお金も
ないけど社長から目標だけ降りてくるというのはあるがそれは少し苦しい。
今回は事業部側にリーダーがたっていてコミット前提で進むような形だった。
■各自興味のある方はハンズオンセッションに移る。〜解散〜