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セッションs1c 分科会・パネル
テーマ:お笑い数学講座から考える未来の技術者教育とは
コーディネータ:星野 利夫(株式会社ヴィッツ)
日時:2019/9/5(木) 21:00~22:30
参加人数:32人
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概要(事前web公開):
このセッションでは、まず、タカタ先生のお笑い数学講座を受けて頂きます。次に、もし、この講座のエッセンスを何らかの形で取り入れることができるならば、これからの技術者教育にどのような形で取り入れることができるか、参加者同士で議論します。最後に、これからの技術者教育の新たな可能性について、まとめます。時間が許せば、参加者のみなさまの数学ネタを披露する時間を設けたいと考えております。

実行委員からの推薦文:
SWEST実行委員の星野です。今回のSWESTでは、お笑い芸人と高校の数学教師、二足の草鞋を履くタカタ先生を紹介します。タカタ先生の授業からは、タカタ先生がどれほど数学が好きなのか、タカタ先生がどれほど子供が好きなのかが、伝わってきます。数学とは、こんなにも美しく、とてつもない威力があり、そして、面白いものなのかと。タカタ先生の授業を受け、数学の印象が変わった子供、数学が好きになった子供は多いのではないでしょうか。数学が嫌いだった子供は数学が好きになり、数学が好きな子供は数学がもっと好きになる。タカタ先生の授業には、そんな力があります。SWEST参加者のみなさまにも是非タカタ先生の授業を体験して頂き、新たなアイデアを持ち帰って頂きたいです。よろしくお願いします。

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プログラム:
1 オープニング
2 タカタ先生による数学授業
3 ワークショップ
4 クロージング

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1 オープニング

概要:
・タカタ先生の講演「歌詞パクり疑惑の真相・ミスチルと歌詞がかぶる確率」
・タカタ先生自己紹介
・このセッションの流れの説明

2 タカタ先生の数学授業

概要:
・西暦和暦返還方法
・交換法則
・数学におけるルールとは、プログラミングにおけるルールとは
・正n角形についての考察

3 ワークショップ

概要:
・本セッションには、何らかの形で技術者教育に関わっている方が参加してくださっていると考えている。
・そして、技術者教育の中で、様々な課題を抱えている方も多いのではないかと考えている。
例 真面目に取り組んでくれない。
話を聞いてくれない。
直ぐに分からないと言う。
答えを聞きたがる。
現場に戻ったときに、教育で得たことを活用してくれない。
・タカタ先生の数学授業を実際に受講して、課題解決のヒントを見つけた方もいるのではないかと考えている。
・そこで、以下について、テーブルごとに参加者のみなさんと話し合って頂きたい。
3−1.タカタ先生の数学授業を受講しての感想、気付いたこと
3−2.新たに教育に取り入れてみたいこと
3−3.(時間があれば)新しい数学ネタ
・上記2.と3.について、テーブルごとに発表して頂きたい。

話し合ったことの発表:

3−2.新たに教育に取り入れてみたいこと

・教育現場にタカタ先生本人を取り入れる。

・「安全に、楽しく、ためになる」を教育に取り入れる。
オリンピック選手のコーチだった方からの受け売りだが、これはスポーツトレーニングの三大原則と言われている。
安全でないと、二回目に行きたくなくなる。
楽しくないと、やらない。
ためにならないと、リピータとして来てくれない。
基は商売の原則だが、スポーツトレーニングも同じで、これを満たさないとトレーニングにならない。
「安全」というのは、物理的安全だけでなく、心理的安全も必要である。

※タカタ先生解説
「興味開発」では、「安心安全」を一番大事にしている。

・「結果からプロセスを考える」という思考ルーチンを取り入れる。
今の講義は、原因があって、だから今、こういう技術がある、という進め方である。
例えば、ベースとなる技術があって、次に追加技術がされて、という説明を受ける。
これだと、覚えるだけになってしまう。
「結果からプロセスを考える」というのは、結果に対しどんなプロセスが良いか考えてみて、実際にチャレンジしてみる。
その方が、より意欲的に挑戦できるのではないかと考える。

※タカタ先生解説
「演繹型学習」と「帰納型学習」がある。
演繹的な授業では、「できる快感」を与えることができる。
演繹的な授業が、効率が良い。
学校や塾には時間的な制約が存在し、どうしても演繹的な授業を選択することになる。
「興味開発」では、帰納的な授業を選択している。
子供たちが自分でプロセスをいろいろ考えて、実際に試してみる、ということをやっている。
帰納的な授業では、「発見する喜び」を与えることができる。

・「車輪の再発明」を認める。
ライブラリが存在するのに、そのライブラリを開発したい、ということがある。
ライブラリが完成したときの喜びは大きい。
「ライブラリがあるんだから、それを使えば良い」と言うのが嫌、言いたくない。
二次方程式の解の公式を教えるより、二次方程式の解の公式を見つけてくれた方が、自分も嬉しい。

・失敗を認める。
「車輪の再発明」するときに、失敗するとする。
失敗すると、社内で「なんでそんなことをやらせたんだ」という話になる。
そうなると、やる気が無くなる。
そうではなくて、「それは良い気付きだったね」と言った方が、どんどん伸びる。
やはり、それは必要なことなのではないかと思う。
余分な工数かも知れないが、その人そのもののモチベーションアップに繋がる。
過去に開発したものを使えば良い、という考え方は、効率しか求めていないと思う。
それは、興味をスポイルする悪の元凶としか思えない。
この業界には「車輪の再発明」はしたらアカンという雰囲気がある。
「再発明したいんだ」というのが、技術者魂にはあるんだと思う。
無駄なのかも知れないが、これをやらないと楽しさが分からない、というジレンマがある。

教育こそ、「車輪の再発明」をしたら良いのではないか。

正にその通りで、演繹的な教え方の方法論はインストラクショナルデザインなど、様々あると思うのだが、帰納的な教え方の設計の仕方というは、全然無い気がする。
もし、あったら教えてほしい。

Lispという言語の教科書がある。
一通りやると、Lispについて全部分かったぞ、という気になる。
しかし、言語が出来なければならなかったのか、というモチベーションから説明している本は無い。
なぜこの言語が発生したのか、という議論が、日本は抜けているのかも知れない。

インスタンスはあるが、方法論は無い気がする。
というのが、自分の問題意識として、ある。

・議論する。
今までのやり方では、先生のルール、先生のルールの解釈しか聞けない。
しかし、議論すれば、例えばこのテーブルならば七人のルール、七人のルールの解釈を聞くことができる。
自分と異なる意見もあるし、何が一番合理的か考えることもできる。
日本は、そのようなディスカッションの機会が、海外と比べて少ない。

・楽しさ。
楽しいというのは凄く良い。
引き込まれる。
つかみというのは凄く重要で、新人研修も同様だと思う。
「会社の研修だから」と思ってやってもらうよりも、興味を持ってやってもらった方が良い。
興味を持ってやるために「何か」があれば良い。
しかし、その「何か」がすごく難しい。
「何か」があれば、ブレークスルーが発生するのではないかと思っている。
「何か」があれば、みんな勉強が好きになるのではないかと思っている。
スキルアップが飛躍的に高まるきっかけが、今日の授業ではないかと、思っている。

3−3.(時間があれば)新しい数学ネタ

・5/2角形のブラッシュアップ
抽象化と言う概念、ルールが決まれば答えが決まる、というところを全部取り入れた上でブラッシュアップ。

・集合論
ネタではなくて、リクエスト。
クラスとインスタンスは混乱しがち。
インスタンスの集合が持つ共通の属性と言うものを理解してもらえるような教え方があれば。
コンピュータサイエンスの文脈でなくても良い。
楽しくてためになる集合論。

・男女のヒストグラム
大学時代に彼女ができなくて辛かった。
同世代の男女の数はだいたい一致している。
一人の人間が惹き付ける異性の人数は色々で、適切な分布があるはずで、そのヒストグラムが知りたい。
お金も同じで、少ない人が多額のお金を持っている。富の不均衡。

・人生は畳み込み
欲しい物をいつ買うか。
早く買うと高いけど、得られる経験は大きいかも知れない。
線形計画法かも知れない。
自動車で言うと、新車を買うか、中古車を買うか、かも知れない。
これは、価値観かも知れないが、価値観を定量化、または、モデル化すればできるかも知れない。

4 クロージング

タカタ先生:

みなさんの意見から、凄く勉強になった。
同じことに問題意識を持っていることが分かった。
この後も時間があるので、朝まで頑張りたいと思う。
お越し頂いて、ありがとうございました。

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以上。