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セッション S1C
テーマ :MBSE時代の開発手法(効率よく開発して働き方改革!)
講師 :兼平靖夫
日時 :8/30(木) 21:00〜22:30
参加人数:約20人
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■概要
複雑巨大化した現在の設計開発は開発ツール抜きには不可能であるが、たとえ同じツー
ルを提供しても、ある会社では成果が出、ある会社では出ないなど、結果が正反対の事
がある。
近年、製品が複雑化するにしたがって、製品の開発能力と開発ツール使いこなしの能力
には乖離があるのではという問題意識をもっている。

後半はディスカッションを実施。
ディスカッションするにあたり必要とする個人的条件
 ユーモア(誰かがぼけたら突っ込む)
 問題点を探るためにダメな点を強調するが、それを改善していこうとする気概
 解決のための精神論ではなくロジカルシンキング


・講師自己紹介
もともと半導体開発で車載を含むDSP/MCUの開発を行い、
設計のためのソフトなどを自社開発、徐々に組込み開発の世界に入っていく。
その後、英国、フランスの組込みソフト会社の社長を歴任
現在、 ダッソーシステムズ株式会社 CATIA Systems CoE シニア・テクニカル・マネ
ージャ 横浜国立大学 成長戦略研究センター 企業連携研究員
横浜国大では開発にはどうしても組織の対応が必要であるとの問題意識から


・製品開発における変化
今日の製品開発の状況で最近起こっている変化として、開発するシステムに変
化が起きており、自動運転やIoTなど多様化してきている。
またシステムだけでなく開発面においても変化が起きており、例えば車載、ハ
イテク製品のシステム開発などにもMBDやMBSEの導入などで変化が起きている。
システム開発能力とツールをうまく使う能力は実は違うのではないかと問題意
識を持っている。

・企業関係の変化
企業関係にも変化が起きており、特に最近ではサプライヤーに多く起きてい
る。その変化に対して内部で対応していくことが重要である。
企業ごとにその変化は異なる。
また企業の在り方も変わってきている。ある技術を使うのにmakeの企業、buyの企業
と対応が分かれ、それぞれで求められるケイパビリティは異なる。


・こういった変化にMBSEとして何をやっていけばいいのか。
例えば車においては、様々なシステム間の、組み合わせやすり合わせが必要に
なってくる。
今までは企業において優秀な人がやっていたが、そうではなく企業間のすり合
わせ、既存システムと新しいシステム間のすり合わせで新しいシステムを作る
場面が増えてきている。そのための一つの手段がシステムズエンジニアリング
であり、海外では導入されている。
今後において必ず必要となってくるため、導入しなければならない。

<質疑応答>
質問:自動運転においてシステムエンジニアリングがなぜ必要となってくるか
の説明がいまいちわからない。
回答:国や会社によって違ってくるため、絶対必要となるわけではない
       一般論でいうとシステム間のすり合わせを行っているが、日本人はそのすり合わせがうまい
   海外ではシステムズエンジニアリングで対処しているような開発も比較的器用に行ってきた
   その限界がADASあたりで出始め、自動運転では各社が検討し始めたという経験知による。



・MBSE 
どこまでを目標として分類するかなどは難しく、もちろん会社後ごとに分類の
仕方は異なってくる。これらは考え方なので紙と鉛筆ですぐできる。
実際にポストイットなどで分類している会社なども海外では珍しくない。


・困難なコラボレーション
製品が複雑になってきている中、それに対処する方法の一つがMBSEである。
問題意識としては最近便利なツールが増えてきている。
便利であるが、扱うことが難しくなってきている。
数ある複雑なツールをつなぐため一つのプラットフォーム上で動くようになっ
てきているがそれがまた難しくしている。
難しくなることでバグが増えやすくなってしまう。
またツールが増えたことにより企業が使用するツールも多様化している。
企業間でコラボする際ツールが異なってきてしまうといろいろと不具合が起き
てしまう。
こうした、複雑化するツールが増えてきた中で、企業ごとで使うツールが異な
ってしまうこと、データエクスチェンジなどの共通化が行われていないことで
企業コラボがやりにくくなってしまう。 


・世界有給の日数と、働き方改革
有給の数においてドイツ、フランスと比べると日本の有給日数は少ない。


・日本と海外を比べた際の国での違い
海外では専門家が多く、比べて日本は多能工の文化である。
例えば中国において企業は多産多死である。大きい会社はそうでないが小さい
会社はダメになることが多い。
一方日本では比較的そういうことはなりにくい。海外の例と比べると存続しや
すい。このように小さな組織はダメになりやすいが、再構築しやすいという
特徴がある。

<質疑応答>
質問:中国は多産多死というが、会社、組織の死亡率とはどんな感じになって
いるのか。
回答:詳しいデータなどはないが、やはり大きい組織などは比較的大丈夫だが
、小さい組織は変化に対応できずダメになりやすい。


・事例について
大きな企業として稀にみられるのが特徴としてNIH症候群(Not Invented Here
syndrome)で、また事例の紹介を求める企業も少なくはない。
事例に関しては成功事例、他社でうまくいった事例の紹介を求めるものである
が、ある組織にとっての成功事例はあくまでその組織にしか意味をなさず、
他の組織においても成功するとは限らない。

■ここからディスカッションにうつる
議題
【これから複雑な製品を作っていくうえで何が障害となってくるか】


質問:何を話せばいいのかいまいちわからない。議題を明確にしてほしい。
回答:新しい技術を開発するために何をすればいいのか?何を導入する?何が障害か?とする。


質問:議題の新しい技術ってなにか。従来技術は使うのか、それとも使わないやつなのか。
回答:従来技術を組み合わせた結果、生まれた新しい技術として捉えてもらって大丈夫です。

意見:何を作る立場からみればいいのかわからない。システム全体を作る立場からなのか、
それともシステムに必要な部品となるものを作る立場からなのかで、だいぶ変わってくるのではないか。

議題の内容についてではなく、議題自体についての意見が多く出てしまったことやセッションの時間も限られていることもあり、
ここで議題自体についてのディスカッションを切りあげコメントペーパーの紹介にうつる。


議題についての意見を各自がコメントペーパーに書いて提出、提出されたペーパー内容についてのディスカッション
を行う。
以下はペーパーに書かれた内容と、それについてのディスカッションで行われた内容の一部である。

・複雑なことをするには、やはり頭の良さは必要になってくるのではないか。
MBSEってのはある程度スーパーエンジニアじゃなくてもスーパーなことができるツールかと思っていたが、
そうではなくスーパーなエンジニアがもっとスーパーになれるツールである。
頭の良さはあまり関係なく誰もができるようなツールというわけではなく、やはり複雑なことを
する上で、頭の良さはある程度必要になってしまう。


・ツールを使うとこれまで解決できなかったものが、あまり理解していなくても比較的簡単に解決できるようになった。
これで解決してしまうと次の新しいシステムを作るうえで難しくなってしまう。
また便利さゆえに、どう使えばいいかよくわからないままツールを使えつか
えとなりがちだが、これはおかしくないか。
ボトルネックが決まっているなら必要となる組織というのが自ずと決まってくる。
改善していくと過去にあったボトルネックがまた新しいボトルネックに変わっていく。それぞれの
ボトルネックに必要なツールを見極めることが必要である。