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セッション: 基調パネル
テーマ : future = SWEST(&you) + dream;
パネラ  : 平鍋 健児, 高田 広章, まつもと ゆきひろ, 木谷 友哉,
コーディネータ: 高瀬 英希
日時   : 2018/8/30(木) 13:10 ~ 14:55
参加人数 : 約240名(終了時) 
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■ 参加者
・ SWEST20, ESS2018, LED-CAMP6の参加者

■ 講演形式
・ SWEST20回記念としてパネルディスカッション形式で実施
・ 過去のSWESTで基調講演された方々をパネラとして集め、組込みのこれまでに
 ついてふりかえり、これからどう変遷していくかについて意見・提言を頂く

■ アジェンダ
・ パネラの紹介とパネラそれぞれの視点から見るこれまでの20年
・ 今後どう変遷していくか これからの組込み技術者・研究者が学ぶべきもの大切にするものは何か
・ まとめ


■ 導入
・ コーディネータの高瀬が自身の観点から自作した20年の年表で、これまでを振り返った
- 1999年にSWEST1開催
- 2000年代 ~ 2010年代
- 組込みシステム研究会・シンポジウムが始まった
- 組込み技術者不足という話が出てきた
- サマースクール等を開催し、技術者育成の試みが多く行われた
- 組込みOS・プラットフォームとしてTOPPERSが開発された
- 年表は人によってさまざまな見方ができるので注意が必要である
・ 20年史を作成して高瀬が思った事
- 組込みシステムの需要が増大
- IoTの進展が大きく関係している
- 組込みシステムの個数も爆発的に増加した
- ネットワーク化で新たな価値創造される時代になった
- maker movement
- ArduinoやRaspberry Piといった機器の登場によって組込みシステ
   ム開発の難易度・敷居を下げている
- 組込みに詳しくない人でもIoT・組込みシステムを作れる時代に
 なった
- 他方で、開発技術も爆発的に進展し、組込み技術は複雑化している
・ コーディネータ紹介
- 高瀬 英希
- 基調講演コーディネータ 兼 SWEST20プログラム委員長
- 大学院1回生の時にSWEST(SWEST9)に初参加


■ パネラ紹介とスローガンについて
・ future = SWEST(&you) + dream; について
1. =と+を合わせると 20(にじゅう)と読める
- 20年を振り返ってもらう
2. SWESTという関数の定義は何か考えてもらう
- 組込みと読み替えても良い
3. dreamとfutureを謎掛けとして、組込み技術のこれからを議論する

□ 平鍋健児さん
・ 永和システムの社長 兼 チェンジビジョンのCTO(Chief Technical Officer)
・ 2007年のSWEST9で基調講演
- プロジェクトファシリテーションについて講演
- 現場力を高める手法
- "アジャイル"といいたかったが、当時の組込み業界では良い捉え
 方をされなかった
→ 名前を変え、マイルドに"プロジェクトファシリテーション"とした
- プロジェクトファシリテーションとして紹介したこと
- 振り返り手法としての"KPT"
- タスク可視化の手法としての"かんばん"
- 手法を組み合わせて、アジャイルのもともとの手法と関係なくやっ
てきたと紹介
- 業界を3Kから3Dになるようにしたい
- 3K : きつい・こんき、…といった事
- 3T : 定時帰れる・高い給料・楽しい

・ 20年を振り返ると、アジャイル開発が普及
- 特に組込みにおいて技術力は必要だが、ひとりでの開発は限られてきた
- チーム力も必要
- astahというUMLモデラを18年ほど作ってきた、これからも開発を続けていく
- 30歳代の頃に海外からエンジニアリングの書籍が多く出てきて、日本に広め
 たいと思い翻訳本を多く出版した
- C++マルチパラダイムデザインやC#のオブジェクト指向向けの本
- XP(エクストリームプログラミング)にのめり込んだ
- 日本ではじめて出されたアジャイル開発の本
- チームデザイン
- どのタイミングで何を話して、どのような役割を
 したらよいかといったコト
- チームデザインとソフトウェアデザインは相似形だという
 ことが分かった

・ futureというテーマについて
- 10年間関わってきてテクノロジーは変わった
- テクノロジーを作る・使うのは人間であり、人間は変わってない

・ 高瀬さんから平鍋さんに対するコメント
- 組込みが一通り分かってきて、大変だと思っていたころに平鍋さんの講演
 を聞いた
- 元気にあふれた話を聞いて楽しい組込みができると感じた

□ 高田 広章さん
・ 名古屋大学教授、SWESTのステアリング委員長
・ SWEST10で基調講演
・ 20年の歴史をひもとき、組込みシステムの研究について振り返る
- 1999年8月にSWEST1開催
- 大学にいながら組込みシステムの研究開発に取り組んでいた
- 大学で組込みシステムの研究を行う仲間はいなかった
- 企業側も組込みは泥臭い分野で大学がやるものではない
 というイメージを持っていた
- 組込みシステムにおける産学連携に危機感を持ち、1999年5月に
 情報処理学会のインタラクティブエッセイに
 「組込みシステム分野における産学間のギャップを埋めよう」と
 いう趣旨の内容を投稿
- 当時は組込みシステムの学会は国内に全くなかったが、大学で
 行っている組込みシステム研究を活性化したいと思っていた
- 企業側の情報がないと大学で組込みの研究が出来ないのが難しいところ
 アプリケーションが企業で作られており、その要素技術だけを大学
 で研究するは、ニーズが分からないので難しい
- 東芝の方とSWESTを共同企画し、産学連携を柱に据えて下記の目的で開催
- 大学における組込みシステムの要素技術の活性化
- 企業における大学研究成果導入の促進
- 学生・企業の若手で組込みシステムの方向性を議論を開始、
 これを基にいろいろな変遷をたどる
- 2005年に組込みシステムグループを設立
- 研究会の前身を高田さんが発起人となって設立
- 情報処理学会に組込みシステム研究のユニットを作ることは難しい
 と思っていたが、産業界から学会として"組込みの名前の付い
 たものをつくるべき"の要望があった
- 2006年に組込みシステム研究会に移行
- 情報処理学会の理事の先生に研究会の設立を相談、後押しにより設立
- 定期的な研究発表会に加え、組込みシステムシンポジウム(ESS)を開催
 - 2006年まではソフトウェア工学研究会のソフトウェア工学シンポ
  ジウム(現:ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム)と共催
 - 2007年から組込みシステム研究会単独主催でESSを開催

□ まつもとゆきひろさん
・ Rubyというプログラミング言語を開発
- Rubyについて
- 1993年もUNIX系スクリプト言語として使えることを目的
- perlと同じようなことができる言語を目指した
- シェルスプリトの代替ではなく、ウェブアプリケーションの分野を
 中心として普及した
- Ruby on Railsによって、ウェブアプリケーション開発にあたっての
 重要な選択肢として世界に君臨
- プログラミング言語ランキングは世界で10位前後として評価されて
 いる状況

・組込みとのかかわり
- もともとはUNIX系のプログラマだった
- 組込みに近いところにはいなかったが、2010年にIT産業振興で
 組込みに近い業界と関係を持った
- 経済産業省の地域イノベーション創出研究開発事業に応募・採択
- 福岡県で組込みに近い事業に従事している知り合いがおり、助けられる
 ものはないかと考えた
- 2010年時点から未来を考えた時、コンピューティングパワーが
 上がる、システムにおけるソフトウェアの割合高まる
- 需要を踏まえ、組込みソフトウェアのための生産性の
  高い言語があるべきと良いと考えた
- ハードウェアをつくる事業が多いなかで、mruby(当時:軽量Ruby)を
 つくったらどこに設置する?といわれた
- Rubyの生産性をLuaのポジションでも使えることを狙い、OSSとして公開
- Lua : 組込みのハイエンドで使われていた言語
- mrubyの適用先
- 2010年には5年後には組込み向けのデバイスに搭載されるメモリや
 CPUは増えると予測したが、思ったよりも向上しない部分があった
- CPUの性能向上は思った通りだがメモリが増えない
- マイコンのメモリは16KBといった低容量、価格が問題
- mrubyは予想と異なる使い方がされた
- ウェブサーバーへの組込み
- http2
- nginx
- ゲームへの組込み
- 低言語デバイスへの組込み
- マイクロ人工衛星のコントローラへの組込み
- mrubyによって組込みの世界に対して違うアプローチを提案していきたい

□ 木谷 友哉さん
・ 静岡大学 准教授
- 最近は大学発ベンチャーを始めた
・ SWEST18で基調講演
・ 自己紹介
- Bikeinformatics(二輪車情報学)と名付けた二輪車のITSをする研究
- 二輪車のセンシングと交通システムの基盤を研究開発する
- Augmented ambilationと名付けた身体延長型のパーソナルモビリティの
 普及・活用の研究
- 二輪車を単なる乗り物ではなく、人間の体を強化していく体の
 延長型として考える
- 2004年の博士課程2年時にはSSESTに参加
- 学生の頃にはモデル検査や形式検証に取り組んでいた
・ 現在の取り組み
- 組込みの基礎研究ではなく、面白いことをしようという考えのもと、
 組込み技術の応用研究に着手した
- 対象として日本が世界をリードしている「バイク」に着目
- 日本が明らかに世界をリードしている二輪車産業 
 → 日本の長所を伸ばす
- 組込みも世界をリードする部分がある
 → 組込みを使いさらに世界を引っ張っていく
- 二輪車と自動車の違いについて
- 「自動車をやってから二輪車をやらないのか」という質問がある
- 自動車と二輪車は運動性能が違う
- 台数ベースで考えて二輪車と四輪車と比較すると、
 利用者数は変わらない
- 二輪車は日本車のシェアが大きく、これからもアジアで伸びていくと
 考えている
- コンピュータを使うのであれば、二輪車だけでなく人間の身体能力の理解にも
 挑戦したい
- 身体の延長としてのパーソナルモビリティも考えている
- 自身は人間系の研究者ではない
 高等専門学校出身ということで手も動く(ものづくりができる)ことから
 データを集めようと考えた
- データを集めるときに使えるデータにするにはどうしたらよいか
- ビックデータというバズワード
- ビックデータといってもジャンクデータはいくら集めてもジャンクデータ
- 高精度な位置と時刻の情報 → リッチなデータとするための付加情報
- 位置情報・時刻を精度よく取得しようとしても、既存のデバイスでは
 うまくいかない
- 既存の組込みの知識を使いつつ、今までの組込み技術の
 組み合わせを応用して行っている
- ラピッドプロトタイピングについて
- 研究を始めた2012年の頃は、mbedやarduinoとMEMSセンサを使っている
 程度だった
- その後1~2年ほどで手軽な組込みプログラミング環境が発展した
- ハードウェアに強くない・知識のほとんどない人でもそれ
 なりのデータを短時間で取れるようになった
・組込み業界とSWESTについて
- 二輪車のセンシングを行う際に組込み技術の恩恵に授かっている
- 他分野からきた人も暖かく受け入れてくださった
- 組込み技術を相手方の提案通りにつくるのだけでなく、こちら
 から提案をすると喜んでもらえる
- 機械系から二輪車の研究でなく、情報系から二輪車の研究をして
 良かった
- 組込みの知識が深まったのはSWESTのような会に参加できたからである
- ひとりで黙々と技術を発展させるより、横のつながりを持つ事が
 大切だと感じた
・ スローガンについて
- "dream"は自分の夢か皆さんの夢かどちらかであると思う
- "you"というのはSWESTの中に自分が入っている
- 周りが変えるのを待つのではなく、自分が変えてやるんだというの
 が今回のテーマに込められているのではないかと思う
- エンジニアの一番良いところは自分の手で未来をつくれる、設計者になれる
- 組込みエンジニアリングの端っこに居られるのは幸せなことだと思う


■ これから組込みのモノ作りはどのように変遷していくか
・ 議論テーマ:IoT化が進み、プロトタイピングが簡単になったという大きな変化が
 あるが、これからさらに組込みのものづくりはどうなるかを話し合っていきたい

□ モノ作りはこれからどうなっていくか
・ コーディネータより
 - ものづくりの柱のひとつは実装技術であり、つまりはプログラミング言語であるといえる。
 - これを踏まえて、まずはプログラミング言語のトップリーダーであるまつもとさんに
  これからのものづくりがどうなっていくかという話を聞きたい

・ まつもとさん
- 2010年mrubyを作り始めた時点で組込みの領域は、ソフトウェア開発
 という広い業界の中でコミュニティの分断が見える
- コミュニティの分断
- web・オープンソースの人
- エンタープライズ系・受託開発の人
- 組込みの人
- 分断の種類
- 人的交流・コミュニティ
- テクノロジーの選択
- コミュニティの分断に繋がったと思われる背景
- 組込み業界で使えるデバイス性能やリソースが限られて
 いたので異なる技術を使うしかない
- PCで使われるようなリソースがないこと、UNIX
 サーバのようなリソースがあるわけでないことが
 影響
- 組込みはケガや死人が出る、updateができないので
 信頼性が求められる文化
- これから先はこの分断が無くなるのではないかと考える
- コンピュータの性能やリソースが改善していく中で
 デバイスの制約による分断は低減
- 組込みに求められる信頼性はweb・エンタープライズの
 人たちも学ばなければいけないので技術的な分断は減少
 していくと考える
- アクセスが集中したときに何msに応答しなければ
 いけないソフトウェア単位の要求が出てくる
- コンピュータの性能が上がり様々なことをやりたくとなる
 と、組込みシステムにおけるソフトウェアの割合が高まっていく
- ソフトウェア、正しいソフトウェアや信頼性の高いソフト
 ウェアは作るのは大変
- プログラミング言語など、支援するツールを作る
 必要がある
- これがmruby開発の基本背景
- メモリは消費電力が大きく容量が増えるとバッテ
 リーの減りが大きいので、組込みシステムでは
 容量が増えなかった
- バッテリー業界に劇的な変化が最近無い
- 世の中にメモリはたくさんあるがなかな
 か使われなかったため、ruby万歳という
 世界になれなかった
- 最近のmaker movementでは性能や電力があまり気にされない
- Raspberry piなど、メモリは何MB、OSが
 動く、本家スクリプト動くもので良いと
 いう人が多くなってきた
- STM32のような性能的に大きめなマイク
 ロコントローラーや、M5Stackという3イ
 ンチ程のディスプレイがついた楽しいデ
 バイスが登場してきた
- ホビーレベルに使える制御・IoTデバイ
 スの領域であればmruby出番があるが、
 現状はmicroPythonのほうが強い
- ソフトウェア開発の大統一が起きつつあるのではないか
- エンタープライズでOSS使う、組込みの世界でも使える限りOSSを
 使えるところに使う、webも信頼性を求めるために他の分野技術を
 使う
- 共通で使えるプログラミング言語が増えてきている
→ 組込み業界の人が持っているスキルセットをwebやエン
 タープライズで使えるという未来がある
- ツール提供者としても、いろいろなところで使えるように
 投資して開発していく必要があると考えている
- 分断された世界はオープンソースの世界から一緒にやりましょう

・ 高瀬さん
- テクノロジー分断が統一されていくのは賛同
- IoTはデバイスしか一般的には想像しないが、クラウド・エッジの部分とい
 ったすべてが揃ってIoTと呼べるので、その横断ができることは重要

・ 高田さん
- まつもとさんの言われることはソフトウェアエンジニアとしては分かる
- 1000円台のマイコンでメモリ10倍、性能10倍となることで普及することもあ
 るが、安いマイコンが登場して応用が広がって使えるという面もある
- 100円や10円といった低価格になり数を出せることで使える世界も
 あるのではないか?
- リソースがシビアな製品もIoT分野で再度注目されてくるのではないか?

・ まつもとさん
- 高いマイコンがなくなるかは、値段のことや消費電力のことを考えると、予想
 できる5年や10年で消えることは無く心配しなくてよい
- テクノロジーそのものは使えないかもしれないが、開発手法やソフトウェア
 開発の要素技術がオープンソースになるといった文化的影響が出てくると考
 える

□ これから開発プロセスはどのように変わっていくか
・ コーディネータより
- 平鍋さんが基調講演された時代から比べて、アジャイルは組込みの中で広まってきている
 - LED-Campでもアジャイルを題材とした実習を行っている
 - 次は開発プロセス・アジャイルの観点から
  これからのものづくりがどうなっていくかを、この分野の第一人者である
  平鍋さんに聞きたい

・ 平鍋さん
- 「何がアジャイルか」という定義はアジャイルソフトウェア開発宣言だけで
 ある
- プロセスやツールよりも個人と対話を、包括的なドキュメントより
 も動くソフトウェアを…
- 左よりも右のほうが重要と聞こえるが、左が重要だと十分説明したうえで
 右も重要なのだと説明している
- やりかたとしてのソフトウェア開発は変わらなくなるとまつもとさんが仰っ
 たが、作り方の大統一があるのではないかと考える
- 開発のソースコード絡みのオープンソースといったこと
- 動くものが重要だと分かっているので、どのようにしたら早く動く
 状態に持っていけるかということ
- アジャイル開発のポイント
- どのようにチームのコミュニケーションを作るか、チームがsyncするか
- チームをどう分割・統合するか
- どのように継続的にインテグレーションしていくか
- ソフトウェアの結合・分割するか
- 組込みの業界でも十分に効く領域があるので統一されるのではないか
- アジャイルは現在3周目に入った
1. イノベーター: 2000年代はじめの頃に若いエンジニア活用された
- アジャイルを使うと品質が高く良いものを早くつくれる、
 お客さんとの話し方も変わると気づいて使われた
- ただし、ビジネス構造と合わないとも言われた
- 契約・工数・テストコードで予算が増える
- ペアプログラミングすると工数が2倍になる
- ソフトウェアのマネジメントの話とエンジニアリングの話を
 混合させると危険
- 技術的にはアジャイルだが、お客さんと契約は
 ウォーターフォールという形をとることがあった
2. アーリーアダプター: 2010~2015年にITサービス企業で活用されはじめた
- WEBをコアテクノロジーとしてサービスする企業で利用された
- リクルートやcookpad
- 内部でエンジニアが在籍し、良いものを作ればそ
 のまま会社に貢献
- ビジネスとソフトウェアをつくることの両面が会社内でも価値に
- 資産としてのソフトウェア
- 良いコードを書けば評価される
- コードが価値を生めば、企業の価値に繋がる
- ソフトウェアハウスにいても、仕様書通りに作れば良いとはならない
- 消費者からみて良いもの、価値を生むことが必要
- 日本の中でアジャイルを活用している企業の7割は、
 ITサービス企業に該当するものと思われる
3. アーリーマジョリティ : 2016年頃から大企業での導入が始まりだした
- アメリカで始まったスタイルである、小規模プロトタイプを開発して
  リリースし、売れたものに予算を付けるスタイルが日本にも広まった
- CTOがいない、ITがコア技術でない既存の大企業で
 アジャイルを採用しはじめた
- 10人以下の小さな規模でチームを多く作ってスタートアップのような
  体制で走らせて社内ファンドとして支援するような制度が始まった
- ビジネス企画、データ解析, UI作成,
 ソフトウェア開発といった担当をもつメンバーで構成
- 順次メンバーを増強
- 日本でもこのスタイルが導入され始めてきた: DX (Digital Transformation)
- ユーザをどのようにUIとセンサの仕掛けをどのよ
 うに設計するかといった事は仕様書を書いてもわ
 からない
 → 実験をし、その結果を基にサービスをデザイ
  ンというデザイン思考とアジャイル開発を組み
  合わせた手法
- なぜアジャイルが良いのか
- どんなものをつくるかと何を作るかは、にわとりと卵の関係
- 新たな顧客に対して新たなモノを作るとき
 「これをつくれば売れる」と分かればそれを一生懸命作る
 それが分からないので作らないといけない、作らないと調
 査できない
- イノベーションでは、小さいものを作って製品とし、新たな顧客に
 新たなモノを見せるという中間があることで解決
- 顧客開発と製品開発をおなじチームに(ループ)にいれる
- マーケティングと開発を一つのチームにする
- アジャイルの具体的な導入例
- デンソー
- 既存の開発部隊を統合して大きな組織をつくることでは駄
 目だと大企業は気づいた
- 既存の部隊とは切り離してアジャイル開発とイノベーショ
 ンづくり、既存のV字モデルとは別の部隊でスタートアップ
- 従来型 : 企画 → 開発 → ベンダ → 下請け と一方通行
- ヘビープロトコルのコミュニケーションから切り
 離し、組織(会社)横断で全部門が参加
- 営業、データ分析、UX、
 マーケティング、品質保証
- ビジネスづくりと製品づくりを一緒にやることが
 今後のトレンドになるのではないかと考えている
- ドイツのコンサルによる2015年の資料から、自動車業界で
 アジャイルがどのように使われているかをみる
- マルチメディアが多いが、パワートレインでも20%採用され
 ているというのはすごい
- どのフェーズでのアジャイル仕様が多いかというとソフト
 ウェアデザインインのインテグレーション、ソフトウェア
 のインテグレーションが多い
- ハードが絡むと難しい
- スタビライゼーション(組織の安定化)まで入っている所
 もあるので、急速に進んでいると見てとれる
- アジャイルの適用が自動車業界に入っている
- イノベーションの観点
- 品質を求められる部分
- アジャイルは単に仕事の進め方
- scrumはソフトウェア開発と切り離されて定義
- カリフォルニアのワイナリーが高品質スパークリングワインを
 はやく消費者に届けられるか検討した例
- バックログ・優先順位つける・担当者わけ・週1回
 ミーティング・解析
- スクラムボードを作りヴィジュアライゼーション
- スクラムを取り入れるとき、二つのことに絞って
 バックログとして書いた
- 会社の利益を上げる
- 働く人の幸せを上げることを書く
- 楽しいことは重要、 働く人がいいものをつくるにはいい
 環境にすることが重要

・ 高瀬さん
- デンソーさんの「元の開発体勢に戻れない」という話は衝撃的だと思った
- maker movementの流れでものづくりの敷居が下がっている昨今だと、
 アジャイルと組込み開発の親和性はより高くなってきていると思う
- システムレベル・ハードウェアレベルのの開発にアジャイルを導入するのは
 まだまだ困難であるように思えるが、その辺りはどのように考えているか?

・ 平鍋さん
- 本当はやれるとよいが、ハードウェアの開発にはかかる時間が圧倒的に大きい
- 量産前のアイデアをメーカーが圧倒的な速さでハードもソフトを開発する事
 はできるのではないか
- そういったことを行う小さなスタートアップはある

・ 木谷さん
- 組込みソフトウェアのエンジニアが足りないというのがある中、
mrubyがでてきたという話やマイコン速度が上がってきたという話しもあり、
組込みエンジニアでないエンジニアが入ってこれていると思っていた
- 話を聞くと、コアな組込みをしている人からするとそうでもない
 のかという感想を持った
- 車だとクリティカルな制御をしなければいけないが、IoTだと人間のデータを
 取る・ちょっとしたデータの提示といった事が求めらる.その場合、時間制約が
 そこまできつくないと思われる
- 今まで組込み分野で処理していたアプリケーションを、個々の
 ソフトウェアエンジニアができるようにならないか
- 組込みの仕事が減ってみんなが幸せになるのではと思ったが、
 現状を教えていただきたい

・ まつもとさん
- メーカーが一生懸命開発しているなかに、他の分野から流れ込んでくることは
 あった
- これまでは、組込みは特殊な技術者の特殊な技術という感じだったが、
 技術者も外から流れ込んでくるというものはプロトタイプレベルで多くある
- 飲酒運転防止用の車載用のアルコール検査機
- 組込みの経験がない会社がRaspberry Piにセンサを
 繋ぎ、プラスチィックボディを3Dプリンタで作り短期間で
 完成させた
- KickStarterをみると、組込みシステムの技術者ではないがで
 はないがarduinoやRaspberry piなどとセンサをつないで製品を
 作ったものが山ほどある
- コストを下げるために小さいマイクロコントローラーにするといった分野では
 違うが、大きめのマイクロコントローラの千円程度のもので性能が十分に出る
 のが良いという分野であれば、業界外からの参入もある
- 業界全体でそれがどれほど占めるかは分からない

・ 木谷さん
- mrubyが出てきた時と違い、状況が変わりやっと時代が追い付いてきた感じ
 なのか

・ まつもとさん
- 組込みと呼ばれる業界でmrubyが使い物にならないというものはあるが、
 KickStarterなどにはプロトタイプに毛が生えたものはたくさんあり、
 その部分では十分に競争力がある

・ 平鍋さん
- 垣根感がなくなってきている
- appleは音楽業界、決済など
- googleは、自動運転やロボットなど
- 産業界を超えたことを易々と行われる現状がある
- 日本の組込み業界は、自分たちの仕事にプライドを持っており、品質は
 渡せないという考えを持つ
- 組込みだからという考えでいると、一気にひっくり返されるのではないか
 という危機感がある
- 市場検証の時点で売れるかどうかをつかみ、磨いたり、削ったり、
 コスト安くしたりした上で、製品を出さないとというモデルが行わ
 れている
- そこで勝てなくなるのではないかと危機感

・ 木谷さん
- 家電業界では日本は品質が高いものをつくるが、東南アジアとかは基本的な
 シンプルな機能で十分と考えられる
- 開発手法でも、「この開発手法を使えばこのような良い面がある」を理解し
 て使うと良いが、上から押し付けられてやると良い手法でもダメになると
 思う
- 日本製の製品を買うとどう幸せになるかという具体的なイメージ・説明と
 合わせて東南アジアで売る事で、高付加価値でまだまだ日本企業は生き残れ
 るのではないか
- 説明と合わせる、説得する事が大切だと思う

・ 平鍋さん
- 物語や言葉などでイメージングをつける事、"dream/夢"成分が日本は弱い

・ まつもとさん
- 典型的な話としてApple製品があげられる
- iPod Classicが発売されたとき日本メーカーが分解して、HDDを
 緩衝材なしに販売するのはありえないと言っていた
- iPhoneについても日本では売れないだろうと言っていた
→ 今や日本製の携帯デバイスはほとんどない
- こだわりは素晴らしいが、新しいものが来ている事を自覚したほうが良いと
 思う
- 「壊れたら壊れたらいい」といった妥協しているものなど
・ 平鍋さん
- iPhoneを見た時は、"落としたらガラス割れるのに"と思ったが、それが日本
 でも売れる事に驚いた


■ これからの組込み技術者・研究者が学ぶべきものや大切にすべきものは何か
・ 議論テーマ:スローガンの"you"の部分について、特に教育的観点からこれから
 学ぶべき/大切にすべきものを話し合っていきたい

□ モノ作りはこれからどうなっていくか
・ コーディネータより
 - まずは大学における教育者・研究者の立場として、木谷先生と高田先生に話を聞きたい

・ 木谷さん
- KickStarterによくありそうな車載IoTシステム
- OBDからCAN経由でデータを集め、電源を取り、Soracom等のWioLTE
 など通信モジュールを使い、GPSデータ等も合わせてクラウドに送
 信し、データ処理する構成
- このようなシステムををつくるとき、デバイスを作るということを考えるだ
 けでなく、未来をデザインするというのを考えることが必要
- 大学などで"高等教育をうけた"といえるように、世界・社会・未来をモデル化
 できると良い
- 例 : GPS情報がクラウドに送信できて自分のログ・みんなで共有が
 良い、というだけで終わってはいけない
- カーメーカーはデータを取っているがサードパーティーは
 取りづらい
- サードパーティー製品ナビ、ドライブレコーダー、etc、それぞれに
 simカードを入れてもらうのは現実的でない
- 通信ハブを付け、デバイスを繋げてデータの収集システム
 を提供することを考えるとプラットフォーマーになれる
- Googleのように無料で提供する代わりにデータをもらう
- 通信ハブとしてデータ収集環境を無料で提供する
 ことで、様々な機器のデータをもらうといったよ
 うな考えまで考えられる
- 良い製品をつくるのだけではなく、インフラ・プ
 ラットフォームを作るといったことを考えていく
- 自動車等への乗車時間は人生の4%と言われているが、この4%を上げ
 ることを考える
- 自動運転になると車が売れないと考えるのではなく、車が
 パーソナルスペースになると考えられないか
- 自分の部屋を持てないひとにとって自動運転車は、自分の
 パーソナルスペースを確保できると気づくことができる考
 えを目指してほしい
- 大学発ベンチャーを始めているが、大学をやめてベンチャーに専業することは無い
- ベンチャーが上手くいく理由は大学教員であることで、最先端の
 事情がわかっているからだと考える
- 学生も自分の専門分野を活かして世界を見られるようになることが大切
- 例 : 時刻同期
- GPSを利用(マルチGNSS)することで誤差3mで位置
 が取れていることを考える
- 光の速度で考えると3mは10ナノ秒となり、衛星内の原
 子時計と10ナノ秒で同期できるという事になる
- 遠距地で時刻同期をしたいときに、そのようなことに気
 づいてそれを応用できると良い
- GPSの精度をさらにあげる最新技術を研究しているが、ベースは
 「枯れた技術の応用」
- 不確実な研究成果ではなく、確定的に高い精度を出せる研
 究成果を利用
- それに最新の研究の成果をちょっとだけスパイスとして追加
- 組込み技術を応用すれば、インフラを自分で構築できることに繋がる
- 上記のような目線で世の中をみつつ、将来の夢を創造するとよい
- 未来を予測する最善の方法は自分が作り出すこと
- 静岡大学における教育の紹介
- 浜松にはモノづくり企業が多くあり、産業界と連携して学生を育て
 るプログラムを開講している
- 大学は知の拠点であるので、大学を有効に使うことをやってほしい
- 若手エンジニアに限らず、中堅エンジニアも大学に戻り、最新の研究を知る
 と良い

・ 高田さん
- プラットフォームは重要
- プログラミング言語・ソフトの作り方も重要だが、プラットフォー
 ムがソフトウェア開発効率化に貢献できることは大きい
- ソフトウェア人材が足りない現状に対してのプラットフォームの役割
- 2割3割足りないのであれば育てるが、2~3倍足りないので人材を育て
 るというのは難しい
- 作る量を減らすことが解決策になる
  → 共通化できるものは共通化する必要
- 何十年も前からソフトトウェアクライシスと言われていた
- これまでは何とかなってきたが、問題の解決が行われて
 きたのか疑問
- これまではWindowsの果たした役割は大きく、作らなければ
 いけないものが減った
- アプリケーション開発者はアプリケーションだけ
 こだわることができる
- プラットフォームをやりたいひとが出てきてもらいたい
- 日本はOSは全敗するなどプラットフォームに弱い
- 客の要望に応えるのは強いが、要求が見えない開発には
 日本は弱い
- 将来の要望に応えるようにしないといけない
- いろいろな勉強・知見に基づいた想像力が必要
- きれいな抽象度のモノを作らないといけない
- どう育成するのかという方法論は難しいが、人材
 を育てる方法を考えなければいけない
- プラットフォームは協調領域にする
- 日本は携帯が10数社がつくっており、それぞれプラット
 フォーム作っていたが、現在のスマホでは解決している
- 技術者の分散を防ぐ
- 自動運転で個々にベースを作ると海外に負けるので、協調できる
 部分は協調してやるべき

■ まとめ
・ コーディネータより
 - これまでの議論を踏まえてまとめつつ、スローガンの"future"について
  パネラの皆さまの考えを聞きたい

・ まつもとさん
- 言語もプラットフォームといえると思うが、Rubyと同じようなものをつく
 る、世界へ発信するといった人に会わないのでもっと出てきてほしい
- 変化が強制され、方法も変わっていくので今までと同じところに安住してい
 られず、海外に席巻される可能性は大きい
- 組込み業界は同じとを繰り返していれば良いという業界ではなく、変化に
 対する対応は宿命である
- 自分が変化を生み出す人になって欲しい

・ 木谷さん
- 若いエンジニアの方と一緒に頑張りたいので声をかけてください

・ 平鍋さん
- SWEST関数のyouはポインタなので書き換えられるかもしれない可能性を考えた
- holsteeマニフェストというニューヨーク小さい会社が事業計画を書かない
 といけないときに銀行に提出したもので、素晴らしいので平鍋さんが翻訳
- パッションを持っている人と関わらないと人生を無駄にする
- パッションを人に話し、他の人のパッションに気づき、
 一緒に仕事を仕事をすることで次が始まる
- 今日が、あなたを変えてくれる場所であることを願う

・ 高田さん
- 変化への対応力がとても大切
- 今ではAIブームが来ており萎んでしまえば無いかもしれないが、
 AIが世の中を変えると考える
- 大学を出た後も変化に追従できるよう、継続的に勉強してほしい

・ 高瀬さん
- パネラの皆さまありがとうございました。
 平鍋さんのおっしゃるとおり、SWESTで皆さんが新しく書き換えられる場に
 なることを願います。
- SWEST20はまだまだ始まったばかり。
 このパネルの議論成果を下地にしつつ、懇親会や徹夜部屋、金曜のセッションで
 おおいに議論して、dreamとfutureを語り尽くす2日間としましょう!


以上