分科会2A: 「大学と企業における組み込みシステム技術者教育」 会場: 会議室1+2 参加人数: 40人強 使用機器: ホワイトボード * 大学教官(JABEE関係者) ポジショントーク-------------------------------------- 情報処理技術者試験が現在はマイコン中心だが、来春から組込み技術を視野に入れた 方向性になる。マイコン応用技術者試験は、テクニカルエンジニア試験(エンベデッド システム)となる予定。 人材の育成が難しい理由として、 . 組み込み技術というのはちゃんと定義できない . 一つの科目で教えるべきか、分けるべきかなどの定義が難しい . それを教える教授がいない . 組み込み技術に対する認識を統一するのが難しい などが挙げられ、組込みシステム技術に対する認知が重要である。 また組込み分野に限らず、大学で獲得できる学生のレベルが下がる傾向にあることも、 非常に憂うべき事態である。 * 大学院生 ポジショントーク--------------------------------------------------- 学校が用意するカリキュラムは(企業側の意向も含まれているのかも知れないが)、 学生から見てみると興味を引かれない。 また受けたくもない授業をレポートだけで単位が取れるという理由で受講し、 「成績表!=優秀さ」となるので会社側には「学生は使えない」と映るのでは。 そこでスペシャリスト教育を提案したい。(授業にでることで単位を認定する のではなくて、先生が直接認定するような制度) しかしながら、興味があることを調べ、知るには授業だけでは不十分である。 即戦力になるような人材が企業には必要だと思う。 * ベンチャー系企業経営者 ポジショントーク------------------------------------- 独立後3年。社員数47名、毎年10数人の新規・中途採用。 毎年中途採用はいるが、大手ではないので即戦力はいない。この状況では社員を いかに育てていくかが重要であり、育てることに心血を注いでいる。 経営者自身も、最初の頃は全然この業界のことを知らず、ボードやICEを使って コンピューターを理解していった。リセット後のゼロ番地から学習していった経験を 踏まえ若い人を教育していきたいと考えている。 採用には、こちらの言ったことを理解してくれる能力があるかどうか、という ファクターが重要であり工学部出身者かどうかは無関係である。 毎日一日8時間ずつ数ヶ月やれば大体理解してもらえる。大学で同じ時間やっても 密度が薄いのではないか。 Cは分かるけど設計ができない学生さんが時々いて、悪循環になってしまっている ことがある。 機械語を見てもアレルギーにならずに、真剣にコードを追っていける心構えのある人 が、いわゆる「できる人」であると考えている。 * TRON協会関係者・ポジショントーク-------------------------------------------- TRON協会では、企業と連携してリアルタイムOS(μITRON)入門セミナーを開催し、 いろいろな企業がやってることを紹介する事によって、業界を元気づけようと している。 * チェアマンによるポジショントークまとめ-------------------------------------- ここで、参加者のポジションペーパーをまとめて「どんなことが問題とされているか」 という内容のプリントがチェアマンから配布される。 紙の内容に関して説明: ここで問題にされていること: ・学生が社会人になったときに使えない、使える人材が欲しい。 要望を大学に出しているけど噛みあっていない。 ・大学の中ではカリキュラム指向というのがあって、大学の中で の評価システムによって評価されて学生は勉強している。 それと別に学生が企業に入っていったときに評価される。この時の 尺度として即戦力、研究指向の2種類がある。 企業にいい人材が来ないので、大学にカリキュラム改善要望を出すが、 とりあえず仕方がないので再教育して企業に組み込む。 ・大学の評価システムと企業の評価指標が一致してれば問題は生じないが 実際は評価の仕方が違うのではないか?。一致させたられないのか?。 もしくはそもそも一致させるべきではないのか。 ・企業から大学に出すカリキュラムの要望は、そもそも大学として 取り組むべき事なのか。 組み込み技術はカリキュラムとしても確立しないので、大学の中で 実現しようとしても無理があるのではないか。 そもそもこのようなこと(即戦力になるような人材を出すカリキュラム) を大学に求められても、それは非常に困難である。 ・企業として教育をしたいのだが、費用(時間)的に無理になり つつある。 ある技術を持っている人が部署に1人か2人かだというのに、 そんな貴重な人材を全体の教育に携わらせてしまっていいのか。 ・教育をビジネス化してしまおう。 認定としては情報処理試験。 ・カリキュラム指向とは別に スペシャリスト教育(先生に認定してもらう、徒弟制度)。 つまり、評価システムとして違うものを。 * 議論に突入----------------------------------------------------------------- ======================================================================== 土木の世界(ダムの建築、発電所の建設など)では競争が激しい。資格保持者 (然るべき機関から認知を受けた大学の出身者)が在籍している事を国際入札 の資格にしてフィルタリングする事が行われている。 大学はこの国際的な認定を取らなければ、学生が獲得できない。 同様の事が、今後組込みシステムの分野でも行われる事は、想像に難くない。 国際的には、学部の下に学科、学科の下にプログラムというのがある。 このプログラムを国際認定の対象にする。このプログラムできちんと単位を 取った人に資格(を取る為の第一ステップの試験免除)を与える。 極端な話では、技術者がパスポートをもって日本の税関を通ろうとするとき、 このような認定がない技術者は入れないようにする、というような事も考え られる。 米国ではすでにこのような認定基準がある。イギリス、オーストラリア、 カナダは認定の制度をすすめている。 日本では文部省、通産省が作ったJABEEという組織が、大学の認定をする 試行が始まっている。今年は二つの大学がこれを受けようとしている。 大学では、まず一般教養があり、その上に共通基礎(数学、物理のようなもの) 専門基礎、専門、そして卒業研究がある。 一般教養、共通基礎に対してはEC2000という基準をパスしないとだめ。 専門基礎に関してはCC2001、専門に関してはソフトウエアはSWECC。 プログラムをクリアしたという認定書を与えるという機構が必要で、 この認定を受けた学生を優先的に企業は採用したり、給与に反映すると 良いと思う。 現在、就職においてスキルは要求されず、人格などでとられる。 だから学生は勉強しない。 これからはスキルを要求して、こういうもの(試験)をクリアした学生をとる。 総じて学生のレベルアップを図る試験である。 ======================================================================== それは、(誤解を恐れずに言えば)ISOのような貿易障壁として、使われる のではないか?というより、貿易障壁として使いたいが為に、そのような 制度を設けているのでは? ======================================================================== 1)カーネギーメロン大学の先生が作った、企業に求められている第三者的 評価がある。これによると、質、工程、応用を軸とする3次元空間の どこかに企業が位置付けられる。 2)スタンダードに添う形で仕事を運ばないと疎外される。国際競争できない。 3)教育には4つの層がある。1.知識、2.他人の力で知識を活用(つまり人 に聞きながらやる)、3.自分の力で知識を活用、4.創造、である。 これを3回くらい回さないと(4年か5年たたないと)一人前の人材が育たない。 4)米国と比べてカリキュラムが絶対的に少ない、教科書が全然違う。日本は 教育があまく、カリキュラムがなっていない。教育の本質論において考えれば、 何か解が出てくるはず。 ======================================================================== 今までの意見を聞いていると二つの側面が気になる。 ・知識偏重 ・二者間契約に縛られているのではないか。 知識偏重について: 確かに即戦力が入ってくるとうれしいが、我々民間企業がやっているのは 非常に狭い領域。大学では教えられる筈がない。大学はもっと広い領域を 教えるべきであり、学生はその中で自分のやりたいことを選んで欲しい。 (それが企業のニーズに合うはずはないので、即戦力は有り得ない。) 二者間契約について: 階層構造なり軸なりが一般論として成り立っている気はするが、 米国のベンチャーはこれがあてはまっているのか。 ある会社と契約しようと思ったとする。その時評価基準があるのか。 教育について: 何かの基礎知識は必要、問題発見能力は絶対必要。 問題分析能力と分析したものを評価する能力。 色んな視点でものを見る能力、というのも重要。 即戦力でなくとも二年もすれば戦力にはなる。 ======================================================================== 即戦力を求める職場に行く学生と、もう少し余裕のある所に行く学生がいる 行き先によって状況が違うのでは? 問題発見・分析能力が問われるのは、研究指向の職場だけであろう。 ======================================================================== 企業は甘くはない。ベンチャーかどうかや国に関わらず会社組織を運営する のは厳しい。日本の大学教育は甘すぎる。カリキュラムの見直し等、大学を 変えるべきである。 大学の教授は組込みの最前線を知らないと思われるので、企業の人材を非常勤 として採用するなど,方法はいろいろあるだろう. ======================================================================== 企業の厳しい現実を大学は認識すべきだ。 ======================================================================== 教育は、教えて、育むものだ。 アメリカで教授は、学生と一緒に企業に行って、ノウハウを吸収して、 モチベーションとして消化して、学業にむけている。 日本の学生が勉強しながらどうやったらモチベーションをもちうるか。 大学だけではなく、中学校、高校というあたりから、モチベーションとして 何を学べばこういう人間になれるか、というのをクリアにするという 形態があるべきではないか。 ======================================================================== 大学から見ると、どの学生が企業に就職して何をやるのか分からないため、 オールマイティな人材を育てようとする。ひととおりやらせて、「これを やりたい」というのを学生が見つければ、その方面へ行くなり大学院以降で 勉強すればよい。 組込み分野の即戦力を求めるなら、例えば携帯電話開発ツールセットを大学に 低価格で提供するなど、企業側でアイディアを出せばよい。大学ではお金の 問題もあるため、即戦力を求めるなら企業に欲しい分野の技術提供をして欲しい。 また、学生も厳しさは感じているだろうし、教官もそれなりに言っているので、 企業としても学生の能力を見てうまくとって欲しい. (この発言に対して拍手が起こる) 遊んでる学生は就職できないという事実に、もう少し現実味があれば良いのでは? ======================================================================== とはいえ、それでも人を入れないといけないという現実がある。 ======================================================================== インターンシップの経験では、ほとんど何も教えられず、自分で解決するという ことを覚えた。 その時にやったことは物事のアプローチのしかたとして役に立っている。 大学でやっていることでは、こういう厳しさはない。 ======================================================================== 会場の雰囲気: 時々、話の途中にかぶせて発言するシーンがみられ、議論が白熱する瞬間も あったが、全体的には各人が淡々と発言することの繰り返しで終始した。 発言した実人数(のべ人数ではなく)で10人くらいいたが、司会の方がうまく 話の流れをまとめ、話の流れがまとまっていた。 ただしある人の発言はまったく話のつながりが見えなかった。 (ので上でもその部分は話のつながりが見える形になっていない) 特に盛り上がった議論: 欲しい分野の技術提供をしてしまうという話など、いろいろな提案が次々に出る という点で盛り上がっていた。 個々のトピックについては、話し込むと終わらないからであろうか、司会の方が うまく仕切ってすぐに次に進んでいた。 方向性や結論: 結論らしきものはつけられなかったが、学生の質を上げようという方向性で いろいろな提案がみられた。 以上