********************************************************************** セッションs1c 分科会 テーマ:ベストポスター賞への道 ~学生・エンジニアのためのプレゼン設計の基本~ コーディネータ:木元 峰之(きもと特急電子設計) 日時:2016/8/25 21:00-22:30 参加人数:約20人 ********************************************************************** <概説(21:00)> K氏:「ベストポスター賞への道 ~学生・エンジニアのためのプレゼン設計の基本 ~」ということで、プレゼンをどのように設計すれば、期待した効果が得られるのか。それがこのセッションのテーマです。  ここでは、プレゼンのツールやテクニックではなく、プレゼンのゴールとは何か、そのためにどんな準備をしないといけないのかを説明します。  具体的な例を出しましょう。皆さん、今日のたくさんのポスターセッションで印象に残った発表、プレゼンを覚えていますか?覚えている方と、覚えてないという方で半々ぐらいですね。  プレゼンというのは万人向けの発表ではないので、見た全員に覚えてもらう必要はありません。ですが覚えてほしいターゲット、例えば企業の製品紹介のポスターならば買ってほしい相手、には必ず覚えてもらわなければなりません。  なので、今日のポスターセッションで一つも印象に残らなかった人が半分もいるというのは、プレゼンとして非常にまずいことなのです。  もう一つ例を挙げましょう。皆さんは家電製品店の店員で、あるお客さんに「どのパソコンを買ったらいいのか」と聞かれたとします。店員の皆さんは、お客さんがパソコンでどういったことをしたいのか、話を聞いて、良いと思うパソコンを紹介するでしょう。  ですが、これがゴールではありませんよね?そうです、本当のゴールは「パソコンを買ってもらうこと」であって、説明はあくまでそのための手段にすぎないのです。  2つの例からわかるように、プレゼンというのはゴールに到達するための手段の一つです。これを前提として、自分が設定すべきゴールは何か、そしてゴールを達成するためにどのようなプレゼン、準備をすれば良いかについて、グループワーク形式で時間の許す限りやっていきたいと思います。  ------------------------------------ <グループワーク内容(21:15)> K氏:これから皆さんには実際にグループで、ある資料からプレゼンを作ってもらいます。対象のものとして、皆さんの後ろに過去のSWESTのポスターセッションの資料を置きました。直感で構いません、皆さん個人個人で好きなものを選んで取ってきてください。  取ってきたらチーム内で回し読みし、チームでその中から一つ、これと思うものを選んでください。 <ゴール、ターゲットの設定(21:30)> K氏:まずプレゼンを作るにあたって決めなければならないことがあります。それはまずゴール、そしてターゲットです。   ・ゴール:何を達成したいのか   ・ターゲット:誰に訴えるのか  例として、社会人の場合のゴールを考えてみましょう   ・ゴール:商品を売りたい  これは簡単に思いつくかもしれません。では少し難しい例を考えてみましょう。SWESTのポスターセッションで発表をしている学生の場合はどうでしょう。   ・ゴール:就活に生かしたい、共同研究してくれるところを見つけたい、など    ゴールはいろいろ考えられ、それによってターゲットも変わってくるのがわかると思います。そこで皆さんでまず、チームで選んだ資料について最終的なゴールとターゲットを考えてみてください。      <ゴール、ターゲットの発表(21:45)> ・チーム1   ・テーマ:U社の、組み込みシステム開発における性能設計評価ツールの研究開発   ・ゴール:開発したツールを売りたい   ・ターゲット:システム開発を行っている企業 コメント:ターゲットはもう少し具体的なほう(人、物など)がいい → ターゲット:システム開発を行っている企業のエンジニア ・チーム2   ・テーマ:テストカバレッジ100%への旅   ・ゴール:プログラムテストへの問題提起を行う   ・ターゲット:企業のプログラマー コメント:ゴールを具体的な結果として表せればより良い(プログラムテストへの問題提起を行った結果、誰がどうなるのか) ・チーム3   ・テーマ:アンドロイド端末を用いた画像処理による障害物認識   ・ゴール:視覚障害者に使ってもらう、共同研究をしてもらう   ・ターゲット:視覚障害者、共同研究をしてくれる大学、企業の研究者 ・チーム4   ・テーマ:GPU制御用ファームウェア開発環境   ・ゴール:GPUメーカーに採用してもらいたい   ・ターゲット:GPUメーカーのエンジニア  <差別化(21:50)> K氏:これまでに各チームごとに様々なゴール、ターゲットを考えていただきました。ですがいくつかのチームでは、まだ明確に捉えきれないぼんやりとしたものを感じていた人もいました。  実はゴール、ターゲットに加えて、これらをより明確にするためのもう一つの重要な要素があります。それはマーケティング用語で「差別化」と呼ばれるものです。いわゆる、「この技術は今までの技術とここが違いますよ」というポイントです。   そこで、次は各チームごとに、差別化のポイントは何か、そしてその差別化を評価してくれるターゲット、ゴールとは何か考えてみてください。 Q:今までなかったのができたという場合の差別化はその一言でいいのか? A:今までなかった時のデメリット、または出来たものを使うことのメリットを引き合いにするとわかりやすくなる Q:発表者の状況(就職したい、共同研究したい)などいろいろ考えられるが、それはどうすれば良いのか? A:その部分についてはあまり深く考えすぎず、現実的な範囲で適当に仮定して考えて良い <差別化の発表(22:10)> ・チーム1   ・テーマ:U社の、組み込みシステム開発における性能設計評価ツールの研究開発   ・差別化:システムが完成する前の段階でも、エラーを逐次検出し修正できる   ・ゴール:開発したツールを売りたい   ・ターゲット:システム開発のエラー修正で困っている企業のエンジニア ・チーム2   ・テーマ:テストカバレッジ100%への旅   ・差別化:今までのテスト手法と比べてより簡単にテストを行える   ・ゴール:より多くのプログラマーに開発した手法を使ってもらう   ・ターゲット:そのテスト手法に関心を持っている、またはその問題で実際に困っているプログラマー ・チーム3   ・テーマ:アンドロイド端末を用いた画像処理による障害物認識   ・差別化:特別な機械を使わずに、低コストで障害物を認識するツールを提供できる?(まだ意見がまとまらず)   ・ゴール:まず、共同研究をしてもらって、その研究の成果として最終的に視覚障害者の手助けとなるツールを開発する   ・ターゲット:共同研究をしてくれる大学、企業の研究者 コメント:共同研究をしてくれそうな研究者にとって、どんな差別化に設定すれば一番魅力的に感じてもらえるか考えてみると良い ・チーム4   ・テーマ:GPU制御用ファームウェア開発環境   ・差別化:今までになかったツールを新たに開発した   ・ゴール:GPUメーカーに、開発した新技術を採用してもらいたい   ・ターゲット:GPUメーカーのエンジニア ------------------------------------------------ <まとめ(21:25)> K氏:皆さんどうでしょう。どんなプレゼンを作るのか明確になってきたでしょうか。冒頭にも言いましたが、あくまでプレゼンというのはゴールに到達するための手段の一つです。それを前提とした上で、皆さんにはテーマ、ゴール、差別化という3つの観点からプレゼンの方向性を決定する方法を実践してもらいました。時間の関係上、一旦ここで終わりにして、もしより興味がある方は後で続きを行っていきたいと思います。 それではありがとうございました。