********************************************************************** ワーク S1-b テーマ:開発現場で使う傾聴。その実践と可能性 講師:酒井 卓也 (産業カウンセラー協会) 参加人数:18名 (途中から2名追加) ********************************************************************** ■準備 ・講演者からレジュメが配布された。 ■はじめに ・講演者の自己紹介 ・このワークで行うこととワークのねらいの紹介  行うこと:傾聴を経験し、気持ちを感じ取る・聴き取る  ねらい:実際の開発現場・学校などの生活の場で使えるよう、悩みも共有しながら進める ■オープニングワーク ・バースディリング  話さずに、誕生日の若い順に1列に整列する。  ジャスチャーはOK。 ・感想:言葉を喋らないと恥ずかしい、難しい。 ■講演者からのお話① ・IT技術者の悩みの事例  QCDが顧客からも上司からも要求される  無理・ムダを強いられ、現実的な議論を許さない   →理屈はわかるけど、どうしようもない。そういうことがある。   →こういうときに大きなストレスを溜め込んでしまう。  職場で孤立した時にわからないことを相談できない人がいる。  リーダーは気を使って動いているのに、部下がちゃんと動いてくれない。 ・悩みを解決できればよいが、不条理はたくさんある。  自分もしくは誰かが煮詰まった時に、どうすればいいのかということを考える。  絶望に陥りそうな人を少しでも楽にできることを体験する。 ■ワーク1 ・ワークの内容  誕生日順で2人1組になる。  話し手と聴き手にわかれる。(じゃんけんで勝った人が最初に聴き役をする。)  話し手は、楽しかったことをとにかく話す。 (1分間)  聴き手は、聴きたくないという態度をとる。(言葉では聴きたくないという態度を示さない。) ・ワークの様子  話し手は、とにかく楽しそうに頑張って話していた。  聴き手は、たとえば相手の顔すら見ず、手元のレジュメを見つめているなど、つまらなそうに聴いていた。 ・ワークの感想  虚しい  時間が長く感じた  話していて、こんな不毛な時間はない  話している側に申し訳ない  話さないと気まずくなりそうだから、とにかく話した ・講演者のコメント  相手に拒絶されていると、とても長くて辛い時間に感じるだろう。 ■ワーク2 話し手と聴き手をワーク1と入れ替えて ハマっていること 普段通りに聴いてみる(2分間) ・ワークの内容  ワーク1のペアで、再度話し手と聴き手にわかれる。  話し手は、最近ハマっていることをとにかく話す。 (2分間)  聴き手は、普段通りに話を聴く。 ・ワークの様子  話し手は、楽しそうに話していた。  聞き手も相槌を打ったりしながら、話を聞いていた。 ・ここまでのワークの感想を、4人1組で話し合う。  ワーク1の後だとワーク2がとても楽しく感じた  ワーク1では、心が折れ、喋ってるうちに何を見ればいいかわからなくなり、  不安や寂しさを感じた。  また、ワーク1のような態度を取られたとき人間関係において、  友達じゃなくなるだろうし、不愉快である。また、身内だと多少腹が立つ程度だが、  上司などにやられるととても怖い  ・講演者からの質問  ここまでのワークの感想について、グループ内で自分以外の人が何を話していたかを覚えているかどうか  1グループ目:ほとんど覚えていない  2グループ目:1グループ目よりも覚えているが、よく覚えておらず、メモを見れば思い出せていた。 ・続けて講演者からの質問  話を覚えられていなかった時の感想はどうだったか。  思ったよりも話を聴かれていなかった  個人で誰が何を話しているか覚えていなかったことを実感した ・講演者のコメント  メモは記憶としては優秀だが、実は個々の相手が何を話していたかは、思いの外覚えていない。  本当に興味をもって、真剣に聴かないと相手の伝えたいことはわからない。  このワークでは、このことを体験した。 ■ワーク3 ・ワークの内容  講演者があるセリフについて演技をする。そのときの気持ちを感じてもらう。 ・セリフ1  不安そうに「今度、あの噂のプロジェクトの担当になったんだ」   →回答者1:嫌そう  元気に「今度、あの噂のプロジェクトの担当になったんだ」   →回答者1:楽しそう、嬉しそう ・セリフ2:参加者がセリフを読む  沈んだ様子で「・・・あの、えーと報告したいことがあるのですが。」   →回答者2:「なんでも聞くよ」と返す   →セリフを読んだ参加者「何でも話します。」  元気に「あの、報告したいことがあるのですが”」   →回答者2:「なになに?」と返す   →セリフを読んだ参加者「何でも話します。」 ・セリフ3:講演者がセリフを読む。設定:講演者は上司である。  上司が元気無さそうに「社長指示だから逆らえないんだよ・・・」   →回答者:辛そう・悔しそう・・・  上司の飄々とした雰囲気で「社長指示だから逆らえないんだよぉ」   →回答者:他人行儀・無責任・・・ ・講演者のコメント  表面の言葉だけではその人の気持ちはわからないが、声のトーン、表情だとか、態度など、  その人から発せられるすべての情報を受け取って、はじめてその人の気持ちが理解できる。 ■傾聴のポイント ・ポイント1  うなずきやあいずちで返す。  ただし、ワンパターンにならずに実行すると、これだけでも話をしてもらえる ・ポイント2  相手が言ったことを返す。  言ったことを短く返す=聴いているというサイン  聴いていなければ、そもそも返すことができない ・ポイント3  まとめて返す  相槌を打ち続けると相手はどんどんしゃべる  相手が言っていることをまとめて要約すると更に良い。 ・ポイント4  気持ちの言葉、喜怒哀楽が出たら、それに応じた言葉をかえす。  例)嬉しいんだねなどと、相手に逃さず返す ・ポイント5  相手が言いたくても言えなそうな話題うちあけられるように聴く。  相手が、話すことを「怖い」と思うと、中々言えない。  話し手が「怖い」と感じている様子を、聴き手が感じ取りそれを伝える。  すると、相手が「この人はわかってくれた」と気持ちを理解された体験をする。  話し手に理解されると、話し手が話しだし、「理解者が1人でもいる」という安心感を得ることができる。  ワーク3の3つ目のセリフの上司だと、言い回しによって部下の信頼度が大きく変わる。  やりたくなさを滲み出させると部下と上司の信頼関係ができる。  多少何かがあっても、対応できる。必要以上に沈まなくて済む。 ■質疑 質問1:オウム返しで会話をされると頭にくるのんですが。 回答1:オウム返しだけするのではなく、相槌や要約をして、     重要なことを返す事が重要である。 質問2:後輩に話をしていて、その後輩が自分の話を聞いていない様子だったらどうするか 回答2:後輩がその態度をとっていることで、自分がどのような気持ちになったかを伝える     例)「話を聞いてないことが、悲しいと思ったよ」と怒らずに伝える。     まずは上記のように表現してから、それでも改善がなければ、怒る場合があってもよい。     後輩にも、どうしてそのような態度をとったのか、気持ちを伝えてもらう。 質問3:相手の感情がわからないときは?話は聞いてるん様子だけど、何を考えているかわからない。 回答3:そのとき、質問者はどう思うか、その「沸き起こった気持ち」をとにかく伝える。     出発点は、とにかく気持ちを伝える、気持ちを伝えてもらう、ということである。 質問4:傾聴は難しそうだと思っている。ポイント5が特に難しそうで、     話し手が背景として思っていることを、本当に自分が理解できているか。     言語化したいと思っていることを的確に理解する上でのポイントはあるか。 回答4:非言語のテクニックとして表情や話し方などに集中する。     もし話し手のことを勘違いしたら、話し手の気分を害するのでは?と思ってしまうかもしれないが、     まずは話し手がどう思っていそうか、聴き手が感じたことをぶつけてみる     「~~~~だと思うけどどう?」と聞く。     すると、話し手は「ちがう」もしくは「そう」と返事をする。     また、ここから話が続いていく。 質問5:質問形式によって、会話を進めても良いか 回答5:やりすぎると、相手を追い詰めることになる。     そのため、「どうなの?」と優しく聞く。     自分の感受性を訓練しないと上手く相手の気持ちを感じ取れない。     「自分の感受性」を理解しないと上手くできない。 質問6:要約するときに相手の考え方と間違ってしまったらどうしますか。 回答6:聞き手の問題。聞き手の表面しか理解できていない。     ポイント3大筋からずれると相手も萎える。     ポイント3と2を組み合わせる。     話し手は自分が言っていたことを整理できる。     まとめ返して伝えるだけで、互いに会話の内容がまとまるが、     相手に「それは違うよ」と言われるのは聴き手の問題。 ■ワーク4 3人1組になる。 ・ワークの準備  役割分担をする:(2分)   ・聞き手   ・話し手   ・観察者 ・話し手は2分間で、職場などでの悩みを具体的に話す。   企業の方は、かなり具体的な職場の悩みを話していた。 ・聞き手は話し手の話を親身に聞く。   最初の人は、頷きで返す人が多かった。 ・観察者は、聞き手の傾聴の様子を観察する。 ・講演者の指示  (1)聞き手に対して:話し手の伝えたかったことを気持ちを中心にうまくグループに説明する  (2)観察者が見ていて思ったことをフィードバックする  (3)話し手が話してみての感想を述べる。    感想の例)    親身に聞いてくれた    会話の中で度々自分の意見を言って欲しい    →頷いてくれるのは嬉しいけど、そのほうが親身に聞いてくれている感じがする。 ・以降、役割を変えて全員がすべての役割を経験する。 ■おわりに ・参加者の感想  聴く難しさを感じた  聴いてもらうためにはどう話すべきかを体感できた  傾聴って人が何かを求めているの?って思ってた  話し手が言いたいことを上手くアウトプットすることが大事かと思っていたが、  言いたいことを理解して、それを話し手に伝えることが大事だと感じた ・講演者  言える環境を創るってこと。そうすると一緒に考えていくことができるのかと思いました。  これを機会に傾聴に興味を持って欲しい。  職場だけではなく、家庭などいろいろなところでも使える、基本的なスキルが傾聴である。  コミュニケーションをとることは武器になる!今後の活動に活かして欲しい。  すべてのITの技術者が幸せになるように!  煮詰まったら誰かに相談しよう! 以上