********************************************************************** セッション s1-b 分科会 テーマ:良い開発文書を書くための拡散思考・収束思考トレーニング 講師:山本雅基さん (ASDoQ/名古屋大学)    森川聡久さん (ASDoQ/ヴィッツ)    小林直子さん (ASDoQ/アヴァシス) 日時:2013/08/22 21:00 ~22:30 参加人数:30名 ********************************************************************** (議事録本文) ◆講師紹介 ASDoQという、「システム開発文書品質研究会」のメンバーでございます ◆セッションの説明(山本さん) 「デザイン思考」   ちょっと有名になってきています   iPadなど、Appleが製品を出してくるときには、デザインファースト   デザインで新しい製品を作っていこうというような考え   「デザイン思考」のことを研究しているグループがある   日本では、慶応大学が有名   デザイナー達が新しい製品を考え、エンジニア達が製品を作っていく   「デザイン思考 慶応大学」で検索すると、色々な資料が出てくる   デザイン思考でものを開発していく時の、いくつかの必要なテクニック   その中のテクニックとして、拡散思考と収束思考というのがある   拡散思考とは、物事を展開して、発展的に考えること   収束思考とは、それを整理整頓して、まとめていく考え方   みなさんも、システム開発文書を書くとき、要求仕様書を書くときに、 多分拡散思考と収束思考を繰り返してやっていると思われます   要求仕様を考えるときに、お客さんが喜ぶような仕様をいっぱい考えて、 それを軸を決めてまとめていく、設計もそうだと思うんですね   要求を満たす設計を考えていく時に、いろんな設計が思い浮かんで、 あれこれ考えて、その中で整理していって、「この設計にしましょう」と   常にクリエイティブな仕事では、拡散思考と収束思考が繰り返されています   良い文章を書くためのテクニックとして、もちろん日本語力を鍛えるというのは あるのですが、もうすこし踏み込んで考えると、どれだけ発想ができるか、   どれだけ技術的に優れた設計ができるか、あるいは、コンシューマがびっくり するような要求分析ができるか、そこにかかってくると思うんですよね   要求工学や設計論は色々言われているのですが、今回は、発散思考と収束思考 というのをざっくりと体験いただこうというセッションにしたいと思います   筆記用具とか用意しなきゃいけなかったんですが、用意が無いので   皆さん白板を使って、思いついたら勝手に書き込んでいって、 「あっ、この人おもしろい発想したよね」というような人を最後に一人選んで もらいます Google Glassの説明   まずは、Google Glassの動画を紹介   Google Glassは、もうすでにいくつかの会社に配られています   皆さんに今回発想してもらおうと思っているのは、このGoogle Glassの アプリケーションです   (動画の再生)   http://www.youtube.com/watch?v=v1uyQZNg2vE   「ok glass」と言っているのは音声認識です   この言葉を言った後の命令を認識して、動画を撮ったりします   ほかにも、ナビゲーションをしたり、カメラと音声認識機能がついていて、 ネットワークにつながる自動翻訳もできる   Google Glassを例に挙げましたが、要はウェアラブル・コンピュータを 考えたいと思います 組込み業界の現状   組込み業界は結構まだらな経済状況になっている   名古屋地区は、自動車メーカ・部品メーカなどは元気   その先は、コストカットを求められたり、厳しい状況になっています   車業界ですらそうなので、電機メーカ・半導体業界はさらに厳しい状況です   みんなで新しい製品を考えていく、こういった製品を世の中に問う、 ということを、どこかのメーカに先導してやってもらいたいと思っています   そのための一つとして、組込みシステムの一つである身にまとうコンピュータに ついて考えていきます   Google Glassは、メガネにコンピュータを搭載しているが、ほかにも いろんな内臓のしかたがある   アクチュエータも、モータを使うとか色々考えられると思われるので、 もっと自由な発想ができると思います   最後の議題としては、発散思考で新製品を色々考えていただくということに なります   思いついた方は、黒板にどんどん書いていってください   白板を見ながら、グルーピングをしたり、収束思考を試みようと思います   ワークを始める前に、スライドを使って説明をします ◆スライド(山本さん) ASDoQの紹介   会員になるのは無料   会員にならなくても、活動成果を見ることができる   「文章品質とは?」などの用語定義や、要求仕様書のサンプルなど   9/27に、名古屋大学でASDoQ大会やります 益川教授のノーベル賞   どんなふうに発想されたかを、紹介   益川先生は、素粒子の研究をされている先生   益川先生と小林先生で研究をされていた    益川先生がアイデアを出し、小林さんが数学でアイデアの検証・確認    益川先生のアイデアを確認してみると、ほころびや矛盾が出てきてしまった    「その日益川さんは、クオークの可能性について考え続けていた。クオークを    4種類と仮定するそのモデルでは、どうやってもCP対称性の破れを説明できる    ものはない。ひょっとしたら自分には思いつかない可能性があるかもしれないが、    小林さんと連日考え続けたのだから、これはもう無理もない。仕方がない、    4次元クオークモデルでは、CP対称性の破れは説明できないという論文を書いて、    この研究を終わらせよう。なんとも格好の悪い論文だと思い立ち上がり、    湯船をまたごうとしたその瞬間、頭のなかで何かがはじけた。ガラス窓の向こう側が、    曇が一瞬にして解け、窓の向こうの景色が目に飛び込んできたように、    全てが溶解した。そうか、クオークが4種類ではなくて6種類のモデルを    作ればいいんだ。」   これが、ノーベル賞が出た瞬間なんです   益川先生は、諦めて、湯船をまたごうとした瞬間にアイデアが出てきた   すごいアイデアとか、すごい発想というのは、考えて考えて、もうダメだ   というときに出てくる   とりあえず私達は今日何も考えていないですが、お酒を飲んで、湯船をまたごう   としている瞬間には居ると思うのですよ   Google Glassや、それを凌駕するウェアラブルコンピュータが誕生する場面に   立ち会えるのではないかと期待しています 開発文書について   ASDoQは文章の品質を追求している     プロセスには、V字モデルがあったり、ウォーターフローがあったり     アクティビティはどのモデルをとっても、入力も文章、出力も文章です     文章がインタフェースになっている     出張報告とか、Eメールとか全部文章として位置づけられている     開発文章の「品質」とはなんだろう、ということを追求しています   文章を言語化して、紙の上に表現することは「見えるようにする」ということ     「見える化」から、いろいろ始まる     ソフトウェアも見える化をするべき ソフトウェアエンジニアの生み出す価値   入力文章を取り入れて、出力文章を書く   「考えて」そして「書く」を徹底的にやる必要がある 開発文章を書くために必要な能力   たくさんあります   要求定義の担当者は、要求工学の知識が必要   設計担当は設計論の知識が必要   テスト担当者はテスト技法についての知識が必要   SysMLは、文法を理解して、図表を書いていく能力が必要   それぞれ、研究会などが作られて、研究が進められている      デザイン思考   数年前からちょっとした動きがある   「技術的に実現可能なものやビジネス戦略を顧客価値や市場機会へと    転換可能なものと、人々の要求とを一致させるために、デザイナの感覚と    手法を利用する方法、である。」   デザインというのが結構クセモノである   形のデザイン、機能的なデザイン   結構上流工程の話になると思います   プロダクトデザインは、PDCAを回して、どんどん思考を繰り返すこと      TED 2009     ティム・ブラウン「デザイナーはもっと大きく考えるべきだ」     デザインシンキングというものが世の中に出てきている      「デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド」     検索するとすぐに出てきます、予稿集にも書きました     「アイデアの拡散と分類」     なにかあるネタをふくらませて、いろんな発想をするのが拡散思考     他方、軸を立てて整理をして、ドキュメンテーションにしていくのが     収束思考   各メソッドをちゃんとやらないと、デザインシンキングにはならない      今回は、39メソッドのうちの一つの、「拡散と収束」を取り上げます グループ分け   収束のためのメソッド   いろいろ有るものから、似たもの同士をまとめる   KJ法などを使われる人もいる   ポストイットに書いて、模造紙に貼って、似たもの同士を近いところに寄せていく   こういった方法でグルーピングを行う      グルーピングの方法が多数提案されている     ロジックツリー       階層化、因果関係       Is-a has-a 関係など     マトリックスにして、過去-現在-未来、大-中-小で分けるとか     どういう軸に着目するかによって、グループ分けのセンスが出てくる     うまい軸が建てられれば、すごくシンプルな議事録になる      2次元の軸建てをした分類がうまく出来るようになると、パワーポイントの   資料が綺麗にできる   横軸、縦軸をどうするか   でてきたアイデアをどのように軸にするか      センスが重要、何度もやらないといけない   うまいプレゼンター、たとえばTEDなどを見ていると、プレゼン資料の   作り方が体得できる   プレゼン資料の作り方みたいな本を読んでみたのですが、上手くはならない.     ピアノのレッスン本読んでも、ピアノは弾けないですよね     ゴルフのレッスン本とか、設計論の本とか、読んでも、よくならない   良い文章を書けるようになるためには、多くのトレーニングが必須   良い物をたくさん読めば、良い物ができるのではないだろうか     良い論文とか、良い仕様書とか、たくさん読むことが必要     TEDや、TV放送されるようなスライドを参考にするのがおすすめ     ニュース報道なども、池上さんの建てる軸などは大変参考になると思います 収束思考と拡散思考   分析は収束思考、収束に持っていく前に、拡散思考が必要     文書を書くことを目的にすると、ろくな文章がかけないと思う     定められた表とか、企業で用意された目次とか、定義されたものに     当てはめて作った文書は、中身が考えられているかは,疑問     作法に従って整理することは重要、でも作法に従うだけの人は、     考えていない場合が多い.人材育成上は、大きなミスリード     だれでも書けるような文書を書いてても、付加価値は生まれない     よく発想して、拡散して、考えることが大切   「こんな製品があったらいいよね」とか、驚くような要求、設計は拡散思考を   したときにしか出てこない   穴埋めをしている限りは、優れた発想は生まれない   ここ5、6年、驚くような新製品を見ていない.拡散思考ができていないのでは.   拡散思考や収束思考は、様々な手法が提案されている     常識をはずして発想しようという考えに基づいて行われる     どうやったら常識を外して発想ができるかということについて、     「オズボーンのチェックリスト」があります    オズボーンのチェックリスト   HAZOPなどにも用いられる、「ガイドワード」を使って、思考を広げる方法   転用、応用、変更、拡大、縮小など、多くのキーワードがある      たとえば、マッチ棒の応用をして、他の用途に使えないか考える   「マッチ棒で家を作ったら楽しいよね」とか   応用というのは、今すでにあるものを想定して「箸立ての中にマッチが   入っていれば面白い」などといろいろ考える方法   何か人が発想をしていくときに、そのガイドワードとして「転用」や   「応用」といった言葉を用いる       ウェアラブルコンピュータによる拡散思考   普通コンピュータはウェアラブルにしないです   コンピュータをウェアラブルにすると言った時点で、新製品になる   大学でも研究が行われているし、企業も密かにやっていると思われる      隣の人と適当に話し合って、ウェアラブルのコンピュータを考えてみる   たとえば、「帽子にコンピュータをつけたらどうなる?」といったような   それで、誰かがお題を出して、どんどん語っていく   Google Glassの応用でも良い Google Glassの概要   耳のところにコンピュータがあり、マイク、カメラがついている   たとえば、ナビができる     ヘッドマウントディスプレイで、ナビ画面を表示できる     スキーのコースをナビするとか面白いですよね   両手を使いながら、写真やビデオが撮れる   Google Glassをきっかけにして、ウェアラブルコンピュータを考えて欲しい   でも,もし、本当に売れそうなものが出てきたりしたら、   権利の問題もあるので言っちゃだめです      あと40分ほど時間がありますので、近くの数人で、アイデアをご歓談ください ◆グループワーク 近くの人数名で集まって、自由にアイデアを出し合うグループワークが行われた。 議事録担当が参加したグループでの議論は以下のとおりである。 [発言A] 拡張現実を利用したゲーム   体を動かして戦える(ちゃんばらができる)   映像だけでなく、衝撃をアクチュエータで再現など     拡張現実で五感に影響を与えるゲームというのは面白そう     遊園地でやってるアトラクションみたいな感じ     日本が強い産業の一つでもあるし、ゲームという観点で考えるのは、     面白そう [発言B] メガネをかけたら、建物が違うものに見えて、冒険ができる   バーチャルRPG [発言C] メガネをかけているだけで録画ができる   ドライブレコーダをわざわざ設置する必要がない   メガネに地図を表示させたりとか     これらはまだまだGoogleGlassの普通の用途ですね [発言D] 両手がふさがっている状況で、ジェスチャーのみでドアを開けることができる   ジェスチャー操作でドアを開けるというのは、どこかの車のメーカで   やってるところがあった [発言E] プロ並みに操作ができる手袋   料理、楽器、技術など   一連の動作を、手袋が覚えておいて、装着するだけで同じことができる [発言F] 映像日記   メガネをかけている人の一日をカメラで記録しておいて   思い出したいことがあるときに、過去の映像を再生して確認できる ◆グループワークの報告 その後、グループワークで出たアイデアの報告会が全体で行われた。 報告されたアイデアは以下のとおりである。 [発言者A] Tシャツにセンサを付ける   たとえば、スポーツのテレビ実況など   選手の状況を実況中のテレビ局などに提供して、   サッカーのPKのときに、選手が緊張をしているとか   心境を、いまは実況者が予想して話しているだけですが、データで実際に伝える [発言者B] 個人情報集積タグ   ユーザの行動を集積   それがいっぱい集まると、ユーザの嗜好や、何を望んでいるかがわかる   たとえば、接客をするときに相手が何を望んでいるかといったこともすぐに   わかる   ウェアラブルだけじゃなくて、周りがそういうセンサデバイスで溢れかえった   状況も考えられる   サービスが普及することで、組込みデバイスの需要が増え、組込み業界も潤う      [発言者C] 差し歯   歯をウェアラブルしよう   歯や口の中をきれいな状態に保ってくれる   食べたものを確認できれば、健康管理も     差し歯から小人が出てきて歯を磨いてくれるとか    マウスピース   スキューバダイビングで意思疎通をするのは現状難しい   マウスピースにコンピュータを仕込み、意思疎通を行えるようにする [発言者D] 脳波スキャン   クラウドに送り込んで、論理的に整理をしてもらって、どこかにある   スピーカーで発言してくれるとか   考えてることをスキャンしてくれる     ウェアラブルにクラウドが付いてくると、おもしろいですよね [発言者E] バーチャルの銃を使って、リアルなARゲームを実現する   触覚センサなどを用いて、衝撃もリアルに体感ができる   今よりももっとアクティブにゲームができるようになると面白いなと思います     ウェアラブルコンピュータでゲームというのは相性が良いでしょうね     日本の強みでもあるし、クールジャパンでいけそうですね [発言者F] バイオセンサを利用   赤ん坊が泣いてた時に、どこが苦しいかわかる     おなかが痛いのか、足を怪我しているのかなど   犬の心境がわかる など      ペットのウェアラブルは楽しいかもしれませんね     バウリンガルを超えるものを目指すとか [発言者F] プロの動作を実現する手袋   料理とか、ピアノ演奏とかを、プロ並みに再現する   握力を増強する      それも、すごくいいと思います     普通のコンピュータの使い方は情報処理ですが、彼の提案は     アクチュエータを中心に考えてる [発言者G] 空中にあるボタンを押すのではなくて、ちゃんとボタンの感触があるインタフェース キネクトやLeapMotionは、手があることを認識できている ある場所で手が止まるような設計にする   Lexusの車     画面のインタフェースの操作系はハプティックデバイスで行う     指で触ると、反力が起きる     使ってみるとわかりますが、すごく自然に操作できる   ウェアラブルをこうやって議論していくと、Google Glassでは利用していない   触覚を利用したアイデアも多く出てきますね [発言者H] ウェアラブルディスプレイ   頭にかぶって利用する   バーチャルでいろいろできる ◆まとめ 発言者Eさんのゲームの話ですが、クールジャパンで、ウェアラブルでというのは 結構いけると思うんですよね ゲームにも、いろんな種類が有りますからね セッションとしてはこれで終わりです、皆さんありがとうございました