********************************************************************** セッション S5-d ワーク テーマ:ASDoQメンバと一緒に「あいまいな日本語表現」を体験しよう コーディネータ:山本 雅基さん (ASDoQ/名古屋大学) 演習担当者:  森川聡久,原田亜矢子,後藤隼弐(以上ASDoQ) 日時:2012/08/31 14:30 〜 15:50 参加人数:20名程度 ********************************************************************** (議事録本文) -14:30 講義開始- ◆会場の雰囲気 グループワークセッションのため、長机を2つ繋ぎ合わせて、向かい合せになるように座る。 一つの長机をグループとして、参加者はそれぞれの立場で「あいまいな日本語」をテーマ に意見を出し合った。 グループワーク中、議題に関して談笑する声が聞こえてくるような、和気藹々とした雰囲 気で進行した。 成果発表の際も、発表に対して参加者からコメントが入るなど、積極的な議論が交わされた。 ◆セッション内容 ASQoQ紹介(10分) なぜ、あいまいさが良くないか(10分) グループワーク(60分) ◆ASDoQの紹介 ASDoQ = システム開発文書品質研究会 2011年7月に設立された任意団体 2012年10月5日にASDOQ大会開催 研究会の目的  1.文書品質の提案  2.計測技術の研究  3.文書品質の普及 ソースコードはよく品質が議論されている 仕様書や設計書の品質は、うまくテストできていないのではないかということから設立さ れた団体です ◆なぜあいまいさが良くないか 最近のロボコンのモデルは細かく書かれている  ここで品質の尺度として掲げられているのが、UML、シーケンス図など   はたして設計書というのは、それだけだろうか   おそらく図だけでは説明できないことがあるはず 仕事で作成する設計書などには、多くの日本語を書いていく必要がある  お客様との打ち合わせ事項など しかし,言葉をつかっていくにあたって、どうもあいまいさがある  そこで,技術文書の品質研究を開始  今回は,表記の適切性にフォーカスをあて、あいまいさを体験する あいまいな文章、下手な文章を書く程度の人は、合目的な文章は書けない  いい設計書は書けない  私は論文を指導教官に差し戻された経験があった   「あなたのようにあいまいな文を書く人は,論文を書くことはできない」 あいまいさの定義  「複数の解釈を認めてしまう表現」のこと  ずるさやごまかしを含む可能性が高い 経験上、一番のポイントは、論のポイントを書き換えること  話がぐちゃぐちゃになってきて、ロジカルに話がつながらなくなってきたら、話の構成  の仕方をすべて変えています  文を短くするという方法もある  かなり大胆に文章を書き換えることで、あいまいさはなくなっていく ◆演習の説明 今回の演習では、3人のチームを構成して、あいまいな日本語を書いてもらいます 前半は他動詞に対する必須格の書き忘れ  日本語はかなり高水準な言語である   多く主語・目的語が省略される表現が利用されている   そのような、目的語を必要とする動詞の例文を書いてもらう   例:Aシステムが送信する(どこに送信する?) 後半は接続後  「また」は非常にルーズな表現である  殆どの技術者が「ために」という言葉を使っている   二種類の意味に捉えられる   「ので」に書き換えられるならば、変えるべきである ◆グループワーク (1) - 3人のチームを構成する - 「あいまいな文章」を模造紙に書いていく - 1回目は他動詞をテーマとして、進めていく 議事録担当者のグループでは、会社や学校での経験から、あいまいな表現につまずいたこ とのある文章を一人ずつ列挙していった。 ◆発表・コメント [発表1] 「Aシステムによって、Bデータが処理される」  学生が書いた文章です  受動態は罠が満載ですよね   自信の無さによって受動態を利用するケースが多いように思います [発表2] 「サーバが了解メッセージをクライアントに送信する」 「エラーメッセージを出力する」  名詞+する、ですね  「どこに出力する」のかわからない [コメント1] プリンタの設計書を読む経験がありました  動作が書いてあったのですが、全然わからなかったんです  あれは必須格の欠落でした [コメント2] アプリケーションに対する知識がない人に理解しようと読んでもらい,理解が困難なとこ ろを指摘してもらい,そこを修正することは,大きな効果があるのではないかと思います [発表3] 「BタスクがAタスクの完了を待つ」  その後の動作が抜けている  「完了」がどのような状態かわからない   テストケースを作ろうと思うと、「完了」の状態がわからないと作れない   (テストという観点から、そういう見方もある) [コメント3] 英語の仕様書は、あまりあいまいにならないと思う  そもそも,教育の影響が大きい  学校で習う国語は文学性の大きい文章で、解釈が人によって異なる文章が多い  だから、「技術的に」日本語を習っていないんですね   ASDoQの阿部先生が全く同じことを言っていました    小学校の時代から、まず感想文の書き方を教えている    しかし、誰かにはっきりと指示を出すような文章を書く練習をしないんですね [コメント4] 明確な文書を書くときは5W2Hが足りているかを気にするようにしています. でも,まだまだ,足りない自分が気になります ◆グループワーク (2) 2回目は接続詞をテーマにグループワークを行ったが、すぐに発表形式へ移行となった。 ◆発表・コメント [発表1] 「〜するために」の意味を考える 「お客にエラー情報を伝えるために」  これが本当の「ために」の使い方  「ので」には書き換えられないですよね [発表2] 「雨が降ってきたために、傘をさす」 あるいは「状態Aの処理のために、処理Bを行う」など  ために、というのは、帰結、目的と二種類の意味を持っています  「ので」よりも「ために」を使いたがる傾向がみられる [コメント1] 日本語において、濁点のある言葉は使うのを避けたがるのでは? [コメント2] 私たちは「ために」を多用するが,あいまいさが生じるので,「ので」と書けるところは 「ので」を使うべきである [コメント3] 「ので」は口語的?  そういう解釈もあるということですね.しかし,論文でも「ので」を使います. 「ために」は良いことのために 「ので」は結果が悪いときにも使える  そういう解釈もあるということですね. [コメント4] 「また」は仕様書に使わない  秩序なく,物事がどんどん追加されてしまい,構造を乱す [コメント5] 「なお」書き  「なお」は短い文章の付け足しに利用する  (長い文章に使わない) [コメント6] 「おり」「し」などを多用すると,文が長くなる.  全部「。」で区切ってしまって、そこからさらに詳しく丁寧に述べていくと良い -15:50 講義終了-