********************************************************************** ワーク:S1-a テーマ:実践HAZOP実習 コーディネータ:小川 清(名古屋市工業研究所) 日時:2010/09/03 21:05 〜 22:30 参加人数:7名(終了時) ********************************************************************** (議事録本文) 21:05 講義開始 ●会場の雰囲気 部屋の大きさはそれほど大きくなく、6人掛けの机が4つ配置されている。 各机には、お酒とちょっとしたおつまみが置かれ、 少人数ということもあり、個々の積極的な発言が多く見られた。 非常にフランクな雰囲気で、ワークが進められた。 ●主旨 事故などのニュースが報道されると、「それは想定外でした」といった説明が見受け られるが、その想定外をなくすことを目的としたものがHAZOPの考え方である。 そこで、あり得ないことをどれだけ想定できるかどうかが重要となる。 今回のワークでは、参加者にできるだけたくさんの想定外なことを書き出してもらい、 新たな発見をしてもらいたい。 ●ワークの流れ はじめに、ワークで使用するプリント・スライドを印刷した紙・ボールペンが配布される。 ・HASZOPの概要と事例の説明 10分  - ワークの主旨の内容と進め方が説明される。 ・一人HAZOP 20分  - 今回はエレベータの扉を分析対象として、設計者・利用者・保守担当などのいずれ   かに立場となって、   あり得ないこと(想定外のこと)を列挙する。   その際、何もない状態から想定することは困難なため、誘導語(guide word)に基づ   いて列挙する。   guide wordには、   無(no)、逆(reverse)、他(other than)、大(more)、小(less)、類(as well as)、   部(part of)、早(early)、遅(late)、前(before)、後(after) の11種類がある。   無(no)の考え方に基づいた場合、もしエレベータの扉がなかったら、どのような想   定外なことが起こるだろうかと考える。   想定外な例として、人が落ちてしまうなどが考えられる。  - 思いついたことは、必ず書き出すようにする。  - 間違ったと思ったからといって、消す必要もない(そのためボールペンのみ配布し   ている)。  - 自分の経験に基づいたことから書き出してもいいし、普通に考えれば絶対にあり得   ないような妄想に基づいて考えても良い。   それが、論理的に起こりうるかどうかは問題ではなく、想定外なことを網羅できる   かどうかが重要。  - guide wordの分類が間違っていても、班で集まったときに入れ替えればいいので、   気にする必要はない。 ・班活動 45分  - 3〜4人で一つの班を作り、座長・記録係・発表者を決める。  - 一人HAZOPの各自の結果を順次確認する。  - 出された意見から、同一のもの・類似のものを分類する。  - 少しでも表現が異なるものは各自の思いの違いがある可能性があるので、消さずに   残しておく。  - 議論の途中で思いついたことは発言し記録しておく。  - 最後の5分を用いて、班で出された意見や全体をふりかえる。 ・報告 15分  - 分析結果で自分が思いつかなかったこと、作業で普段気づかなかったこと、班でふ   りかえった内容などを報告する。 ●一人HAZOPの作業の様子 各自が、誘導語に従い想定外のことを列挙する作業を黙々と行っていた 会場には、HAZOP初心者の方もいたため、以下のような質疑応答が見られた Q.HAZOPをまったく知らないが、このワークに参加しても大丈夫か? A.問題ない。guide wordに従って思いついたものをどんどん書いていけばよい。  間違っていないかどうか気にする必要もないし、積極的に書いてほしい。 Q.想定外なこととは、困らなければいけないのか? A.困る必要はない。困らなければ、対策を立てる必要はないという結論が得られて終了。 Q.すべての項目を埋めなければならないのか? A.できるだけ書いて欲しい。 Q.どのカテゴリーにも分類されない想定外はどうすればいいのか? A.他(other than)に書けばよい。  O氏「今日、もっともあり得ない想定外なことを考えた人には、HAZOP賞として     ナンシー・G・レブソンが著したセーフウエアの翻訳本を差し上げます。」 HAZOP未経験の議事録者は、利用者の立場にたって以下のような想定外なことを書き出した  無(no) → 人が外に落ちる  大(more) → 扉が開かない  早(early) → 扉を開いても箱がない  後(after) → 景色が見えない ●各グループでの作業の様子 まず、各自の自己紹介を行い、HAZOPの経験者かどうかで役割分担を決定する。 各自がどのような立場で対象を分析したかを記録し、 guide word別に、各自が書き出した想定外なことを班で出し合う。 その想定外が起こっている状況や、どのような意味で書いたのかを、 微妙な表現の違いに気をつけながら、お互いに誤解がないように話し合う。 原因、検出方法、全体への影響、対策については、時間の都合上で議論は割愛された。  O氏「誘導語には、早と遅のように対称な関係になっているものが多く、     対象物の立場を変えると、意味が同じになる」 22:15 報告開始 ●グループ発表内容 各班で出された想定外なことや感想などを、総括して発表。 ・発表された想定外なこと  無(no) → ドアがない、階数表示がない  逆(reverse) → 上に進むはずのエレベータが下に進む  大(more) → 扉が二枚ある  小(less) → 扉の高さがたりない、箱が小さくて人が乗れない  部(part of) → 扉の一部分のみ開く  早(early) → 扉の速度が速い、扉が開いても箱がない  後(after) → 景色が見えない ・参加者の感想  - 分析の作業に、数式などが出てこなかったのが良かった  - guide wordの構成が、想定外なことを効果的に見つけ出すのに適しており、   大と小、早と遅などのように対称になっている点も頭の中で物事を整理しやすいと   感じた  - HAZOPの存在を知った ●質疑応答 Q.HAZOPは何回ぐらい繰り返せばよいのか? A.だいたい3回ぐらい。  1回目は、外れ(想定外なこと)の検出。  2回目は、原因と検出方法。  3回目は、対策  の部分までやるとよい。 22:30 講義終了 ■まとめ 経験者が数名いたので班のリーダー役となってもらいなんとか実習を進行することができた。 今回のワークでは、エレベーターの扉を題材として想定外なことを書き出す実習をして もらい、今までにない想定外の意見がいくつか出されたことが、収穫だった。 以上。