********************************************************************** セッションS1-de 分科会 テーマ:古今東西 雑誌編集者へ言いたい放題 コーディネータ:佐藤 洋介(デンソー) 日時:2009/08/27 20:40-22:30 参加人数:約50〜60人 ********************************************************************** ◆本セッションの主旨 読者からダイレクトに編集者・編集長に雑誌に対する要望を反映してもらう 本セッション内で具体的な企画が出れば、参加者の中から執筆者を選抜 雑誌の取り組みに対する読者の生の声を反映 ◆本セッションの参加者構成 コーディネータ ※以下O1と表記 雑誌編集者2名(CQ出版編集者 インターフェース担当) ※以下O2,O3と表記 その他参加者(うち、約10名が執筆経験有り。その他は純粋な読者) ※以下発言順からABC順 O1:ウェブで何でも見れる状態で、雑誌は苦戦している。インターフェースが技術者 としての全うな立場を保ちつつ、売れる雑誌にしたい。 ◆参加者全体へ「いつからインターフェースを読んでいた?どれぐらいの頻度で 読む/買うか?」 A:1990年代から読んでた。 B:インターフェースを知って7年。必要な特集記事があるときだけ買って部屋に おいておく。 C:他の雑誌に比べて、インターフェースは面白い広告が少ないのが残念。 O1:読者層(学生、新人、玄人)・製品ドメイン・領域の差がある。 近年、組込みを取り扱った雑誌が増えている。他の雑誌との住み分けが必要。 CQ出版がどこに価値を見出して、どこに進もうとしているのか。 C:Webと紙面雑誌の住み分けも必要。 O1:CQ出版で新しい取り組みをしている。SWEST/SSESTについて連載していた記事を どれぐらいの人が読んだか? 挙手10名程度。 O1:SSESTでライントレースカーをやっている。モデリング言語で実装。 SSESTの活動については8月号から連載。 (1)製品企画〜SW/HW強調設計、必要なファクターは何か。 (2)システム設計を受けてSW・HWの設計をどうしたらいいか。 (3)検査する上でどうしたらいいか? (4)差分開発をどう孤立的に実施しているか。 次に、雑誌のあるべき姿を議論したい。 ◆「学術論物とどう使い分けしているか?」 B:論文と雑誌の使い分けはしていない。しかし、雑誌にあって論文にないことも あれば、論文にあって雑誌にないこともある。 D:論文が良く分からない。ハードルが高い。そういう時、雑誌の記事を探す。 雑誌は、開発現場の技術を記事にしているところが、論文と大きく違う。 そういうものが学会の学術論文になればよい。 E:明確に使い分けてない。雑誌には、主な使い方が2つある。 (1)調べものにするときの参考書・入門書。論文は敷居が高くて、取っ掛かりにくい。 (2)時間があるときに読むための読み物。 O1:時間があるときに読む読み物は沢山ある。何で選ぶ?キーワード? E:Webか紙面かで見る。移動中は紙媒体。パソコンの前にいるときはウェブで 見ることもある。調べものは紙ベースの方が好き。 B:時間は限られる。時間を有効活用するために、紙は便利。時間があるときに パラパラ見れる。 O1:今のインターフェースのサイズは大きい。 E:切り取れると更によい。 A:雑誌を章ごとに切り分けて持っている。 O2:スキャンしてiPhoneで見る。しかし、iPhoneは画面が小さいのがネック。 F:雑誌は、パラパラ見られるのがいい。 O1:人間の認識能力的には、パラパラめくるほうがいい。 G:パラパラしながら他のキーワードが見つかる。PDFのキーワード検索で出来ない点。 B:記憶に残りやすい。あの時に買ったあの本!と言う感じ。 O2:表紙など、パターンマッチングで雑誌を覚えていることが多い。 H:紙媒体は、書きとめておけるのがいい。 ◆「雑誌は買ってるか?」 挙手20名程度 O2:時間つぶしのために雑誌を買うことが減った。読みたいものだけ買うようになった。 O1:個人で自由に書いたWebの記事と、編集者が編集した雑誌の記事と比べて、 何か感じたことは? I:雑誌の方がまとまりがいい。Webは面白いことが連続して書かれている。 J:Webは間違った情報や誤字が多い。 I:雑誌は執筆者が厳選されている。ちゃんと査読もされているため、整っている。 J:ポータルになる。トピックがあるから読みやすい。その後でもっと知りたいこと だけWebで調べる。 E:「もっと詳しく読みたいならWebのここを読むといい」、とリンクを書いてあるといい。 H:古いリンクが切れていると困る。 O2:Webで面白い記事を見つけるのは大変。編集者の仕事は、面白い記事を見つけて 編集すること。 ◆編集者へ「いい雑誌作りのために気をつけていること」 O1:いいテーマを見つけるためにどうしてる? O2:最近はまずはWebで探す。昔は情報格差があったが、今はみんなが同じ方法で 探している。しかし、最終的には、展示会などで足で探すと言うのが今でも有効。 筆者と実際に話すことが重要。 B:展示会に行かないとトレンドやキーワードが拾えない。雑誌を買うと知らな かったことが分かる。 O2:マクロな視点で取り上げることが重要。マクロなトレンドは単発の記事を 読んだだけでは分かりにくい。 O1:キーワードだけ追っていると他社とかぶる。どう対策してる? O2:これといった対策はしていない。 A:組込みプレスは人間の話が多い。 O2:活性化のためには、もっと雑誌の種類が増えると良い。 ◆「どんな雑誌を買っているか?」 A:組込みプレスを買ってる人? 挙手10名程度 A:インターフェースを買ってる人? 挙手20名程度 H:自分で買うのはインターフェース。 A:雑誌を何も買ってない人? 挙手20名程度 D:出るたびに買うと惰性になる。「付録がある=欲しい!」と言うときに買う。 H:基板がついているときだけ買う。 D:メールマガジンが沢山来る。そのタイトルだけでトレンドを判断する。 コマーシャルネームやESECやETのセミナーネームも。 ◆「メルマガを読むか?」 挙手約10名程度 K:タイトルに面白そうなキーワードであったら開けて見る。さらに、面白そうな キーワードを見つけたらちゃんと記事を見る。 H:日課としてちゃんとメールを読む。最低タイトルは読む。 A:仕事とメルマガのメールを同じアドレスで受ける。 K:朝最初にメールはチェックする。 A:メールの奴隷になっている。 D:メールはほとんどみない。時間がつぶれる。 A:メルマガにもっと注意を引くタイトルをつけると良い。例えば「!」を増やす。 一度テストして見たら?インターフェースのiを!にしてみるなど。 O1:インターフェースのタイトルで検索すると、他のページがかかる。見つけにくい。 A:デザインウェーブは競合がない。 O2:同じような内容の雑誌がないから、なくなると困る人が多い。 ◆編集者へ「他社と比べて、うちはいいというところは?アピールポイントはどこ?」 O2:SWもHWも出来るというのが1番大きい。HWが出来ないことを前提にすると、 記事を書くのが大変。インターフェースは読者がHWを分かることを前提に書いた記事を 載せてもいい。 A:付録にボードをつけるのはなぜ? O2:実際に試してできると言うのが嬉しい。非常に意味がある。 A:基板付属号は赤字? O2:黒字。\1000アップだが、コストを下げるように色々工夫している。 A:ボードが載ってる記事を出したら、Amazonの在庫がはけた。 O1:4ビットマイコンの雑誌を買った? 挙手2名 O2:付録商法は大変。雑誌の内容の方も頑張る。 A:雑誌が基板の付録をつけれるという点で、Webよりアドバンテージがある。 Webの記事が基板を送ってくるのはおかしい。付録を使って生き残るのも重要。 F:秋月にいけない人のために、部品をAmazonで買えるようにしてほしい。 A:インターフェースの5月号は全部部品がついている。 O2:サイズは雑誌のサイズを越えなければよい。厚さは良い。付録の強度の問題は、 1tの重さに耐えられないといけない。 ◆編集者へ「なぜ編集者になったのか?」 A:O2,O3はもともと技術者だったのに、なぜ編集者になった? O2:M製作所でディスクマガジン、SW/HW、OSをやっていた。色々やったが会社が もたなかった。そのとき編集社から声がかかった。SW/HWを両方分かる編集者が 求められていてた。 O3:転職サイト経由でお呼びがかかった。開発が途中だったから、1年ぐらい待って もらって転職した。編集者になる前は、基地局設計の下に入っているシステムの設計 をやった。絶対に止まっていけない、違法電波を出さない、限界を超えたら自分から 止まる、何があってもだんまりをしないシステムを作らないといけなかった。田舎で だんまりになると誰も死んだ基地局を見つけられない。基地局には人の名前や フルーツの名前をつけているところもあった。 ◆編集者へ「紙媒体の雑誌の強みについて」 O1:レイアウトで売りにしているところは?査読をかけることで読者にどんな メリットがある? O2:筆者の記述の質が悪いわけじゃないが、査読は必須。 A:締め切りギリギリで書くと、て・に・を・はの誤字が多かった。 O2:タイトルと見出し付けで読みやすさが変わる。 O1:雑誌とwebでは、内容を重視する度合いが違う。 H:Webの記事でも誰が書いたかによって、信頼度はぜんぜん違う。オフィシャルに 書いたものか、ブログなどに書かれたものか。 A:無記名は怖い。アメリカはブログでも実名で書いてる人が多い。 O1:新しい人をどうやって見つけるか? ◆編集者の悩みなど A:困った執筆者はどんな人? O2:締め切りを守らない人。 A:本当の締め切りはいつ? O2:本当に印刷直前だと、校正ができなくなる。編集作業の1週間ぐらい前には出して 欲しい。印刷・インクやノリが乾く期間・配送の期間も必要。付録にCD-ROMを付ける 場合は,台湾でプレスしているので余分に1週間は欲しい。 A:リアルタイムで役に立つというよりは1年前ぐらいのものが本当に役に立つ。 バックナンバーが欲しい。 O1:8年前の記事が役に立った。普通、自分の方法論を形にすることはない、 実際に執筆したことで、自分の能力を残せたと言うことはいいこと。読者にとっては どうかわからないが。 A:書いてみて勉強になった。 O1:雑誌に記事を書いても読者の反応が返ってこないのが残念。雑誌のアンケート と本人から直接帰ってくるフィードバックとは違う。 O1:CQのセミナーはすごい。非常に勉強になった。 O2:安すぎて問題だった。 L:バックナンバーを買えるようにしてほしい。 O2:Tech Iに掲載されるまで待つ人が増えると、雑誌が売れなくて困る。 B:雑誌を買った人が嬉しいように、Webの記事とかぶった分だけ安くしてほしい。 A:CD-ROMの販売は便利。 D:どんな状況で仕事してる?デスク周りはどんな感じ? O2:ごちゃごちゃしている。資料は何でもかんでもスキャンする。 ◆雑誌の記事の賞味期限について L:本の賞味期限は?インターフェースは比較的長いと思うが、編集者はどう考えて いるか。 O2:意識的に設定しても読者がどう見るかによる。5年くらいはもつといいとは思う。 旬のネタすぎて半年しかもたないものもある。雑多なのが雑誌のいいところではある。 L:雑誌が5年ももつのか? O2:98年の記事で未だにコピー注文が来るものもある。旬の記事にすぐ飛びつくより は、少し定着してから取り上げる。 L:デバイスの入手のしやすさが上がっている。トレンドが短くなる中で雑誌は どうなる? O2:デバイスが変わったら使えなくなるような記事は、賞味期限は短い。 そこに振り回されないような記事を目指している。 ◆これからの雑誌のあり方について M:雑誌は1年で捨ててしまう。CDは欲しい。 O2:毎号PDFで売れないかと言う話はあるが、企画倒れ。 M:「続きはWebで」というように、雑誌とWebを両方活用するのも良いと思う。 O2:Webの記事で原稿料を取るのは難しい。決済の仕組みがない。 M:CQ出版の雑誌は現場の設計者向け。他社との役割分担が出来ていて良い。 B:小・中・上級レベル向けにインターフェースを分けたら? O2:やりたいとは思っている。入門書が今ほとんどない。 A:購読者層は? O2:30代後半〜40代ぐらい。毎年1歳ずつ上がっている、つまり、購入者が変わらない。 A:いつメールを出しても返事が返ってくるのが驚き。いつ仕事してる? O2:執筆者の仕事の時間をはずすことが多いので、9-17時以外や土日に打ち合わせを することがある。忙しいが命の危険を感じたことはない。前の会社はあった。 ◆編集者の位置づけについて P:自分で雑誌を買わない。たいていは会社にあるものを読んでるだけ。Webはつまみ 食いする程度。検索しやすいからWebで検索するが、まとまった情報は雑誌から。 O2:全くその通り。RSSリーダと紙媒体の雑誌で同じニュースを見ると違いが良く分かる。 デザインの違いは大きい。Webでは取捨選択されていないから、どれが重要かわからない。 多くあれるほど重要という意味では、数で重要度を測るしかない。 A:Googleニュースも数で重要度を測る。 O2:2ちゃんねるからリンクが張られていると、ただ面白いというだけで検索の上に 来ることもある。 P:Googleの中でGoogleニュースは失敗作の部類。 K:Webの記事の検索は、Webの記事がすごいと言うよりGoogleが偉い。Googleへの 依存度が大きい。 O2:日本人でも検索エンジンの優秀な人はほとんどGoogleへ行ってしまった。 Googleに対抗できるのか? P:Googleがみんな優秀な人材を引き抜いてしまうのか?ソフトの危機。 Q:ネットの普及によって個人が情報を発信するようになった。世界で情報を編集する 人より、創造し続ける人の価値が上がる。編集者の価値が落ち続ける。どういう価値を 生み出し続けようとしてるか? O2:編集者はDJ。DJはいなくならない。RSSで1日500件読んでいてもいい記事を見逃す ことがある。重要な情報を抑えるDJが必要。 Q:どういうマーケットを抑えるか、DJがどこに情報を発信しているかが重要。 問題としては、 (1)ターゲットを複数にしていくこと。 (2)雑誌に慣れている30代以上の人と、Webが情報収集の1番手短なツールである20代 の人ではパラダイムが違う。情報を収集するコストを編集者が減らせる努力をして いるか?提供する情報と情報をどのように入手させるのかのビジネスモデル。 パラダイムが違う読者層にどうやって情報を送るのか。携帯にどっぷり浸かった世代 と30代以上は違う。 O1:外から見て論理的に論じている編集社はあまりない。 ◆情報の整理などについて P:大学の看板を介して企業の人に話を聞こうとすると、非常に構えられてしまう。 素直な意見を聞けない。色々な笑い話の端々で目新しい話が聞ける。それぞれの リッチな情報が新鮮。こういう情報の好感がこの業界の基盤。 O1:会社に入ると率直な意見を交換できない。 R:最近雑誌は読まない。まとまった記事として頭にインプットしやすいのは紙。 手触り感がある。重要なものは紙で読みたい。しかし、情報が多すぎて未読が いっぱいある。ためて一気に捨てることの繰り返し。読者が求めているものを感じ 取って欲しい。カリスマ的な情報の采配を期待。編集者は求められているものを 言い当てる能力がある。Webが普及すると、誰でも情報を発信できるが、うまく整理 できない。私たちの代わりに情報の整理をして欲しい。自分では、結局は役に立た ない情報ばかりをつかんでいる。 ◆編集者のカリスマ性などについて R:CDを買うのは、アーティストに対するお布施のようなもの。宗教的。音楽の 世界は流通は変わっても、根本的な仕組みは変わってない。雑誌においても、 アーティスト対ファンというような形を築けるのでは? O2:特定の編集者を追いかけて、その人が編集した記事を読むということはやる。 R:avex=CQ出版,アーティスト=編集者。 O2:普通の人が読むと編集者の違いは分かるか?雑誌の記事を読むとき筆者の名前 を意識しているか? B:雑誌は人を引っ張る力がある。流行っていないものも流行にしてしまう力。 カリスマ組込マーを持ち上げて作る?学生が組込みに行きたがらない、女性が少ない、 などいろいろ問題がある。もっとこの業界を盛り上げるために、メディアは大きな力 を持つ。 O2:理系離れの問題は簡単に解決できる。待遇をもっと挙げればみんな来たがる。 O1:10名のSWエンジニアの中に綺麗な女性が1人いれば、生産効率は1.8倍。 A:女性が沢山いると、やる気は出る。 O2:組込みに限らず、汎用的に使える。 ◆まとめ O1: 編集者には、情報をスクリーミングする力を求める。 紙媒体のメディアの方が検索効率がよい。 雑誌とウェブの上手い住み分けが必要。雑誌ならではの、生の情報をフィルタリング 無しで伝えていくところが重要。 出費津者として、Webに比べて信頼性の高い記事を書いていきたい。 O2: ものを書く立場として、出版までに時間がかかることを考慮しないと古いコンテンツ が混じる。 その時差を認識した上で、書くほうも書かないといけない。 雑誌の信頼性を上げるため・保つために、今後も査読には気をつけてやっていく。 読者が編集者を信じていることを念頭に、その責任として読者と執筆者との橋渡しを するように努める。 最後に、今日の自分の意見は、あくまで編集者としての一意見であることに留意して ほしい。 以上。