********************************************************************** セッションS5-d 分科会 テーマ:Hamana-5 〜育成につかえるか?〜 コーディネータ: 大西 秀一(ヴィッツ) 日時:9/5 15:20-16:50 (予定では:15:10〜16:40) 参加人数:開始時:約20人 終了時:約30人 ********************************************************************** /*-------イントロダクション-------*/ O氏:今回の分科会では,Hamana-5がエンジニアの育成に生かされるのかどうかを    ディスカッションしていきます. ---------------------------------------------------------------------- Hamana-5とは? ・V計画により実行される,モデルロケットを使用した環境観測をするプロジェクトのこと. ・真の意味はエンジニア教育 ← これが今回の一番の話題 ---------------------------------------------------------------------- O氏:また,Hamana-5は,シーラカンス二上,酒パワー松本,ハッタリ服部によって    組織されるHaman元老委員会により構成された.    組込みシステム開発技術者を育成するためのプロジェクトでもあります.    元々,大きな視野を持ったエンジニアを何とか育成したいという願いから    できました.    このプロジェクトによってエンジニアの卵に対して学習環境の提供を行う    というわけです.    また,モデルロケットが飛行中に観測した環境の各種情報の解析も行います.    観測は,GPSやジャイロ,加速度センサを用います. ---------------------------------------------------------------------- Hamana-5のGoal ・本来は100点満点なのだが,満点以上の点数も取得できるものとする.    1) 複数チームによるコンペティションの成功 → 50点    2) モデルロケットによる環境観測の成功 → 80点    3) 参加全チームが開発を終了すること → 100点    4) 教育効果が認められる成果が実践される → 200点    5) 自律飛行に応用可能な技術が開発される → 300点    6) 宇宙開発に応用できる技術が開発される → 500点 ---------------------------------------------------------------------- O氏:では本題に入っていきたいと思います.我々は目標を達成できたのでしょうか.    次の議題について討論していきたいと思います. ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 議題①:Hamana-5は有効だったか? → 参加団体を中心にディスカッションを行う. 議題②:Hamanaプロジェクトは有効だったのか? → 取り組み内容と結果の報告から,このプロジェクトは使えるのかどうか討論する. ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ /*-------議題①:Hamana-5は有効だったか-------*/ ↓---参加団体が順次プレゼンテーションを開始---↓ <プレゼンテーションを行った団体> ・両刀使い(株式会社ヴィッツ) ・うさぎとはち ・チームTMR(東海ソフト株式会社) ------------------------------ プレゼンテーション1 発表者:両刀使い ------------------------------ 以下,発表の流れから詳細までF氏が発表. ・発表の流れ   背景→目的→システム構成→開発工程→ペイロード基板とは?→詳細   →リアルタイムOS→デバイスドライバ→制御アプリケーション   →実験→今朝の結果→まとめ→感想 ・背景   新入社員研修の一環として参加 → 新入社員のみで開発を行う. ・目的   飛行中のモデルロケットから,加速度,温度,気圧のデータを解析 ・システム構成   加速度センサ,気圧センサをH8/3069fボードと接続   リアルタイムOS:TOPPERS/ASP 1.3.1 ・開発工程:   従事者:7人   開発期間:4ヶ月   モデルロケット製作 → 試射 → ペイロード基板製作 → 再び試射 ・ペイロード基板とは?:   円形基板を4枚積み重ねて実装    → 省スペース化と軽量化を実現   質量は50gほど ・詳細:   4枚積み重ねた円形基板について   ・上から1枚目には気圧センサ   ・上から2枚目にはシリアル通信用のコネクタピンを搭載 → PCとの接続用   ・上から3枚目には加速度,温度センサを搭載   ・上から4枚目にはEEPROMを搭載し,ここにデータを格納する ここからH氏が発表. ・リアルタイムOS:   デバイスドライバ,制御アプリケーションの設計容易性,再利用性を考慮して使用した.   使用したカーネルはTOPPERS/ASP1.3.1で,これをH8/3069fに移植した.   最初はカーネルのことがよくわからず,そこから調査を開始した. ・デバイスドライバ:   ・A/Dコンバータ   ・EEPROM(Page Write 64byte 通信速度1M[bps])    ・UART(パリティビットなし ストップビット1bit 通信速度38400[bps])   ・LED   新人教育なので,UARTを自力で作成することになったが,かなりの苦労を強いられた. ・制御アプリケーション:   ディップスイッチで切り替えて使用する.   動作確認モード:以上なら赤,正常なら青が点灯する仕組み   フォーマットモード:ROM初期化   データ転送モード:シリアル通信でPCに転送   データ計測モード:センサからの値をROMに記録 ・実験:   ペイロード基板を搭載して実際に打ち上げ    → パラシュートを搭載して,落ちてきたときに機材が壊れないようにした. ・今朝の結果:   計測条件   ・使用エンジン:B6-4   ・サンプリングタイム:0.02s   ・計測時間:40s   解析結果   ・逆噴射直前が最高到達点になる → 解析の結果:130.618m   ・加速度センサは逆噴射,着地時,回収時に値変動あり   ・温度はきちんと取れているが,気圧に変動が大きくて少し怪しい?   O氏:温度は安定していないと言ったほうが良いのでは?   H氏:ノイズと解釈している. ・まとめ   ・加速度データの計測→成功   ・気温のデータの計測→成功…と言いたいが,"?"をつけたほうがよいか?   ・気圧データの計測→成功? データが取れたという意味では評価ができるのではないか ・感想:   プロジェクト全体の流れを学ぶことができた.   情報共有の難しさを痛感した 再ミーティングや仕様変更などをたびたび行うことに   正確な気圧データ(あと温度も)の取得ができなかったので,   10月の最終発射までに原因を究明したい. <以下質疑応答> Q.マイコンとROMを分けたのはなぜか? A.消去法で最終的にこのようになってしまった(スイッチは一番下じゃないといけない,等)   Q.センサ自体は定常状態で実験してみたのか? A.氷などにあてて確かめてみた.少しノイズらしきものがあり,  今回の実験でもノイズと決め込んでいた. Q.気圧のデータが取れていなかったとはどういう意味か? A.今までは,ほとんどが他の値に比べて異常に小さい値だったり,  ずっと0だったりで,気圧センサが壊れていたのかと思っていたが  今回きちんと取得できていた. O氏:ありがとうございました. --------------------------------- プレゼンテーション2 発表者:うさぎとはち --------------------------------- M氏:それではこれまでの経緯を説明していきます. ・Hamana5に参加するぞ!という勢いで参加することになった.  → 予算確保もでき,CPUボートも手に入れて,5月末に参加表明をした. ・6月はじめにキックオフミーティングを行った.  → 何をやらなければいけないのかを3名ほどで決めて実行. ・しかし,実際にはなかなか進まなかった. ・毎週ブログに状況を報告するはずが,  8月はじめの時点で書き込みがたった2回のみ.そして進んでないことが書いてあった. ・上司に怒られて,リタイアをほのめかされてどうしようと思ったが,そのまま進めた.  本業が忙しいとの言い訳を行って,上司を説得.  → そして再開したが相変わらず進まず. ・この結末は,根性で完成!?リタイア!?こうご期待!!?? <以下質疑応答> Q.ブログを使っているとあったが,情報共有手段はこれだけか? A.そもそも情報共有手段などについて明確に決まってない. Q.プロジェクトマネージャーは決まっていたか? A.それは決まっていた.役割分担は伝えた上で開始はしている. O氏:ありがとうございました. --------------------------------- プレゼンテーション3  発表者:チームTMR --------------------------------- 以下,チームTMRによるプレゼンテーション ・プロローグ   ・なぜHamana-5に参加したのか.     <理由>     ・ロケットを飛ばすと気分がスカッとする.     ・物を動かす楽しみがある.     ・みんで作り上げる楽しみや苦労が経験できる.     ・安全や品質を考える体験ができる. ・目的   ・新人教育の一環として活用した.     <内容>     ・ペイロード基板作成によるハード面の学習     ・V字モデルのソフト開発の学習 ・感想   ・マイコンを扱う際に必要な情報収集の大切さを実感   ・組み込みの知識が深まった   ・担当者間の意識合わせの重要性を認識   ・頻発する不具合の調査や対応から柔軟な業務を体験   ・自分たちでいろいろ調べたのでいい勉強になった   ・(指導者の感想)面倒役側からすると,教育の面で勉強になった ・今後の課題   ・ペイロードの動作が不安定で回路の見直しが必要   ・デバッグができていないので,デバッグをきちんと行っていきたい.   ・割込み処理に異常がある可能性があるので,それらの見直しを行う.   <課題解決の方針>   ・クロスチェックを行う   ・デバッグの使用方法の確認   <来年に向けて>   ・紫外線計測,高度計測などの観測機能の追加を行う.   ・発射台,着火装置を購入したい.   ・ロケットのカラーリングにセンスが感じられない→改良したい   ・引継ぎを行えるようにドキュメントの作成と保存を行う. ・まとめ   ・新人教育の材料として有効に活用できたと思われる.   ・来年の新人教育にはまだ課題があるが,ぜひ活用していきたい. <以下質疑応答> Q.プログラムのデバッグが進んでいないというが,ロケットは発射できたのか. A.プログラム完成は一昨日であり,デバッグを行おうとしたが  ハードウェアが原因で行うことができなかった. Q.動作はきちんとできているのか. A.LED点灯はできているが,さまざまな割込み処理が未だにうまくいっていない. ↑---参加団体のプレゼンテーション終了---↑ O氏:ありがとうございました.    発表の中で様々なキーワードが出てきましたが,    まとめてみるとこのような感じになるでしょうか.    --------------------------------    <キーワード>    ・一生懸命やっているチーム    ・できていないチーム    ・システム構成    ・開発工程    ・開発期間    ・デバイスドライバ    ・制御アプリケーション    ・リアルタイムOS    ・加速度センサ    ・気圧センサ    ・紫外線    ・来年もやりたい    --------------------------------- O氏:それでは議題①に入りたいと思います.    Hamana-5の参加チームの状況からHamana-5を分析していきましょう.    まずは,みなさんに率直な感想をお聞きします. <以下,感想と質疑応答> 1)Q.エントリーは5チームあったはずだが,残り2チームはどうなっているのか?  A.名古屋の企業だが最近音沙汰はない.   たぶんできてないのではないか.   とはいえ最終打ち上げには持ってくるとのこと.   もう1チームも詳細は知らないが完成はしていないとのこと.   今日現れなかったので,これ以上のことはわからない.   キーワード的には「できていないチーム」があてはまるか. 2)今日の発表を聞いて,ヴィッツは一生懸命やってるのかなと思った.  やらされていると考えられたが,自分からやってるような感じなのがよかった.  今年の新人さんは事前に知識を持っている人がほとんどいないので,  開発期間4ヶ月は短くあっという間に過ぎるもの.ものすごく大変だったのではないか.  経験と学ぶものが多いプロジェクトではあると考えられるのでは.  体力は相当使うだろうが,その経験のおかげで役に立っている部分は多いはず. 3)Q.一通り体験するという意味ではやりとげるのは重要.新人ならまだしも   経験のある人間ができてないのはなぜ?  A.(うさぎとはちM氏)なんで進まなかったのかは自分でもわからない.   進行については私は手を出していない.    プロジェクトマネージャーにきちんとやらせたかった.   本当にやる気があるのかなとも思った.  Q.進まない理由として,仕事が忙しすぎたのではないか.   月20時間与えられても仕事の優先度の関係でやらないことだって十分ありえるのでは.  A.(うさぎとはちM氏)それでもスケジュール管理などを行ってきちんとやって   ほしいというのが自分の考えではある. 4)(O氏)新人さんって大学でこういう経験は本当にあるのかな?あるという方,  挙手を願います.      → 一人もいなかった  (O氏)このプロジェクトの欠陥が見えてきた気がしますね. 5)そもそも,開発期間や場所の制約が厳しく,それらがプロジェクト全体の  ハードルを上げているのではないか? 6)Q.シミュレーション環境を提供するのはどうなのか?   もちろん本番は飛ばすわけだが,シミュレーションを用いるだけで変わる   ところもあるのではないか.  A.室内で完結できるようにすればなんとか進められるのだろう.   関西で衛星を打ち上げるプロジェクトはあるが,テストはやはり実機でやるべき.   あと,シュミレーション環境を導入するコストを考えても,やはり実機でやる   のがよいだろう.   ただし,検討する余地はあるだろう. <議題①のまとめ> O氏:チームによってばらつきが激しく,気にはなるがチーム事情もあるので    やむを得ないのではないでしょうか.    ただ,5回まわしてきた以上,そろそろやり方の工夫を考えるべきかもしれませんね.    有効だったかと言われると,あいまいでしょうか.有効であるところは有効であるが,    有効でないところもありますね.    進んでないところは実行委員のバックアップが必要というところでしょう. /*-------議題②:Hamanaプロジェクトは有効だったのか?-------*/ <以下,ロケット打ち上げの話題> O氏:今朝9/5に実際にロケットを打ち上げてみました.    基本的なハードウェアは両刀使いさんと一緒です.    気圧や加速度を検知することができます.    ソフトウェアは両刀使いさんのものをコピーしているので,    違う部品があるとバグが得られることになります.    -------------------------------------------- 今回の取得した値  最高気圧 1015.9288 Pa  最低気圧 1009.4184 Pa  高度差 54.2190 m  最大加速度 9.12 G    --------------------------------------------    また,秋田県の能代市でジャクサの宇宙イベントがありました.    そこでの結果は次の通りでした.    --------------------------------------------    宇宙イベントにて取得した値 最高気圧 1009.418403 Pa 最低気圧 990.272222 Pa 高度差 161.10852 m 最大加速度 13.98 G    -------------------------------------------- O氏:今回をあわせて今まで5回Hamanaプロジェクトを行ってきました.    ----------------------------------------------------------------    <過去のHamanaプロジェクト>    Hamana1:有志チームによる運営を行った.    Hamana2:参加チームは3チーム.         位置状況を取得することができた.    Hamana3:参加チームは3チーム.         加速度センサ,ジャイロセンサによる位置変化を取得    Hamana4:参加チームは3チーム.         自律帰還を目指した非行型ロケットの開発を行ったが,         成果は芳しいものではなかった.    Hamana5:参加チームは5チーム.         ロケット開発だが,全部は無理と考え,部分的な作成にした.         気圧変化や紫外線の値を取得することを目的とし,         環境観測の目的を前面に出した.    <活動報告>    Hamana1:浜名湖に向けてロケットを打ち上げ,浜名湖水上でカヌーで回収.    Hamana2:地上で回収するようにしたが,打ち上げに失敗.         しかも,台風が通過.ペイロードの完成率が悪く,課題が残った.    Hamana3:打ち上げは成功し,データも取得できた.    Hamana5:中間結果と能代宇宙イベント,SWEST10で打ち上げ成功.         予定:10/5に中田島砂丘にて実施.    <Hamana-5の活動について>    4/3 計画発表    4/6 参加チーム募集    5/31 締め切り    <われわれ実行委員会は>    本当にエンジニアを育成できたのか → 経験値は上がったがレベルは本当に上がってるのか? → そもそも経験値ってなんなのか?    プロジェクトのなかで技術を身につけたか? → 技術は大変すごいと思う → だが,これは本当に組み込みシステムに必要?    <O氏の所感>    どうも…     → (参加者ではなく)O氏のためにステージを用意してないか? → 実行委員会だけで盛り上がってないか?    ---------------------------------------------------------------- O氏:それでは議題②に入りたいと思います.    Hamana-1〜5を俯瞰した結果,どうだったでしょうか? <以下,感想と質疑応答> 1)打ち上げの結果だけではわからない.  実行委員会は事前にチームとどういうコミュニケーションをとっていたのかを  知りたかった. 2)O氏から全員に質問  a)ロケットの打ち上げを見た人は何人いますか? → セッション参加者の半分ほど  b)楽しかったと思う人は何人いますか? → セッション参加者の半分ほど 3)ロケット打ち上げは楽しいと思うが,中にセンサなどを入れると格段に難易度が  上がるのではないか. 4)私はこのプロジェクトで技術力は向上したと思う.そういう意味では成功体験といえる.  しかし領域が広く,プログラムだけをやった人間に対して,物理学など他の学問を  含めて四ヶ月で作らせるのは無茶かと思う.  そのあたりの負荷をもう少しコントロールできると良いと思う.  もう一押しをして,ここでやめないで欲しい.  Hamanaは小さいプロジェクトとはいえ,やはり複雑であることは忘れないで欲しい. /*-------結論-------*/ O氏:結論ですが,やはりHamana-Projectは継続すべきであろうということなのでしょう.    理由としては,エンジニアたる心構えなどを伝えることができることがあげられます.    未来に向けて,当初の目的を失わないで組込みシステム開発者育成を継続して    いきたいと思います. O氏:これでこのセッションは終わりです.    ご清聴ありがとうございました.