********************************************************************** 夜の分科会 S1-a テーマ:地方発の技術を盛り上げるには? コーディネータ:山崎進(北九州市立大学) 日時:2007年8月31日(金) 8:50〜10:30 参加人数:13名(開始時) ********************************************************************** 20:30 開始 ■コーディネータによる前説 ○地方の盛り上がり 最近,地方に関するニュースが多い. 産業界でも地方に対するニーズは高い.  でも人材難? ○疑問点 疑問点1:技術的なニーズはあるのか?  自治体単位の活動の話は多いが肝心の技術論が少ないように感じる. 疑問点2:どうしたらうまくいく?  資金面,人材面の課題.  悩みを共有して,よりよい方向に向かう方向性を見いだしたい! ○想定している参加者像  実際に地方で研究されている方.  地方で一旗あげたい! ○議論の進め方  ポジショントーク   地方での活動紹介   都会の方は,どんな技術を求めているか.   割込み大歓迎   本音でぶっちゃけましょう. ■コーディネータの自己紹介 ○北九州市  沿革   古くから工業都市   海運業が発達   八幡製鉄所  九州初の100万人都市   平成の大合併(5市が合併),政令指定都市に.  長期凋落傾向   昔は栄えていたが,近年は産業誘致に重点   新日鐵はいろいろ努力したが(IT産業など),芽が出なかった.   今は人口100万人を切っている ○北九州カーエレクトロニクス構想   自動車関連産業に注力   エレクトロニクスがもともと強いので,そこをのばす   アピールポイント    アジア都市が近い    工業系大学が多い   長期的な視点では,生産拠点から設計拠点に!   国内の自動車メーカ各社に呼びかけている ○カーエレクトロニクスセンター   マルチな人材を産学官で連携して育成する   カーエレクトロニクスに重点をおいたカリキュラムを組んで,人材育成    自動車工学概論    組込システム実習    車載向けLSI設計遠州    対故障性/信頼性/機能安全性概論   当初は大学研究のシーズからカリキュラムを構成するが,ニーズからの要望も反映  サポート体制   実践的派遣教育(インターン)の実施   大学    九州工業大学,早稲田,北九州市立大学 ○研究開発の取り組み   幅広い研究開発を産学共同で実施   1.シーズ探索   2.連携促進型   3.マッチングファンド型   4.自立型  自動車メーカ,半導体メーカなどの企業と大学間をカーエレクトロニクスセンタが仲介 (以下,Q:質問,A:回答,C:コメント/意見,P:ポジショントーク) Q:これからどういう議論をしていくのか分からない. 学会の地方分会を立ち上げるようなイメージ? どこから議論の出発点にするべき? A:学会を立ち上げるというのは考えてなかった. 話の軸は,これからの様子をみて. Q:地方発に特色があるのでは? 地方の特色があるので,その辺を知りたい. それぞれ自分の地方の特色がありそうなので,聞いてみたい. A:地方毎に特色はいろいろあるはず. 例えば東海地方は自動車産業が特色である,など. いろいろな地方の特色を知りたい. それぞれの地方の特色を挙げて欲しい. いろいろな地方から,参加者があるか,よく分からないので,自己紹介を聞きましょう. 参加者に対して質問 都会から来たのか地方からきたのか?  都会から:半分くらい  地方から:半分くらい P:□福岡の取り組み: 組込みソフトウェアコンソーシアム立ち上げ(QUEST) NPO法人化した タイトル:ソフトウェア関連企業への投資組織に関する提案 ○九州ソフトウェア産業の現状  2次請負化産業  人材供給基地(育成しても流出)  自動車業界の進出→ここも人材流出  シリアルアイランドの拡大  今後製造から設計拠点としての成長を期待 ○九州ソフトウェア企業の実体  九州に1200社あり,技術者数3万人弱  良い技術者は多数存在するが,IT技術者はほぼ飽和状態で成長が見込めない ○実体分析  強み:3万人のソフトウェア技術者,大学による人材輩出, 自動車半導体産業の集落,人件費が安い  弱み:人材派遣の請負的中心,資金力不足 ○九州ソフトウェア企業のあるべき姿  豊富な資金  高い技術力 ○技術面で支援する仕組み  エンジニア同士のネットワーク 地場企業間での技術交流・補完・支援・協業の関係を構築できる「場」の提供が必要 ○資金面で支援する仕組み  地場金融機関と企業を結びつけ,企業価値に見合った資金調達ができる(融資)仕組みが必要 ○組織のイメージ 九州の中でお金が回る仕組み作りの「場」を提供する活動を行う ○結びつけの「場」を提供 以上 山崎さん: 「現在「場」の結びつけはできつつあるが, 自分たちの要素技術の確立,引きつける魅力がまだない」 九州以外の話も聞いてみたい! P:■信州大学の取り組み  キャンパスが分散しているため早くから遠隔教育が取り入れられている  工学部は長野市  組込みシステム技術者養成コースの設立 オンライン教育の提供 社会人向け 塩尻インキュベーションプラザ (地方のインキュベーションブラザはどこもキレイ)    そこを開発室として利用    組込みに特化した開発施設(他地域からの入居OK)    塩尻市が,組込に積極的.エプソンの本社がある.フットワークが軽い.    小さな都市なので,フットワークが軽く,自立心が強い.地場産業の一環.    塩尻市市長は,エプソンOB.(北九州市長は理系出身ではない)  エプソンと協力  しかし,それほど強くはエプソンは意識していない  (エプソンから人も入っていない) Q:地方のインキュベーションセンタはどこもきれい. それぞれが誘致に積極的で,大企業と連携できるという魅力がある. 塩尻ならエプソン. A:大企業との連携や,場所はあまり関係なく,自分で仕事をとってきて開発している. セミナを開くと,意外と遠くの方がいてびっくりする. 下請け中小企業からの需要は結構ありそうな印象. C:ロボコンなどをみると,北九州市は協力的.福岡市はがんばらないと. Q:地方発というのがテーマなのに大きい企業をどうやって 勧誘するかの話ばかり.大企業に媚びてる印象. 地方に特色な技術例:新しい冷凍技術 何年も新鮮に保つ冷凍技術は,地方(港)で役に立つ. 地方の活発化につながる. 地方のニーズを考慮していないことに不満. A:仕事(受注)は東京.業務は地方というのが多い. これだと中国・台湾と同じ土俵. C:その視点だと中国や,海外で仕事を出すことと同じ. A:(塩尻インキュベーションプラザの話に戻って) カリキュラムにOJT 人間力=コミュニケーション能力.この能力が大事. 技術力以外にこの人間力育成にも重点. C:コミュニケーション能力ができる人間は都心に引かれていくのが現実.  地方に人材が残る仕組みを作らなければいけない. C:工場に対するインフラを,どれだけ地方が提供できるかで勝負した方が良いのか. 単に教育では,インドに負ける.言語の違いだけでは,将来的には負ける. 同じ土俵なら,都市や海外に負ける. 組込は現場が大事なので,そこに注力した教育が大切. 地方に仕事を出すメリットを明確にしないと,仕事が出ない.賃金が安いではだめ. たとえば,仕事の完成度,技術が必要だろう. A: カリキュラムにOJTを入れている. 半年間実施. 人間力(コミュニケーション,ドキュメンテーション力)の開発を注力. C:そういう教育では,人材が都市に逃げてしまうのでは? 人材は,物事が動いているところにとられてしまう. そのような人材が,地方に残れる仕組みを作らないといけない. A:確かにそのとおり.九州では自動車の工場があるので少しは良いが,次の展開として, 人材を引き留めるポイントが必要. C:工場の人間(またはその上の人)にアピールする必要がある. 地方で,現場に密着した仕事ができる状況を作り出す. (本当にそこでなければできないものを作る)ことをしないと, アピールできない.人材が集まってこない. A:まだ,その技術を模索している.地方の決め球がない.この意見は正論なので同感である. 言うのは簡単が,実際に何が良いのかはまだ,分かっていない.他の地方は? Q:地方のニーズをどのように取り出すか A:組込は生活である.今までの技術を使えば,地方の生活を改善できるのでは? (売れるものではなく)自分たちの困っているものを解決する技術をみれば, 何かが見えてくるのでは? C:お酒の製造とかありそう. P:■岩手県立大学の取り組み 岩手は主要産業がない.160名中130名卒業.半数は都市圏. 新卒は首都圏だが,県内は中途(即戦力)がほしい. 今は自動車(T社関連子会社)が良いので,大学でも取り組み始めている. 東北地方に残るとしても、仙台. 岩手県は農業県.農業情報の情報化の開発などがある(しかし,元気はない). C:ある自動車関連企業が岩手に開発拠点を作る. 実際に行ってみたら,岩手で開発したいというニーズは多い. 愛知に来いというのはなかなか厳しいので,地元で活動したいという場を作った. 地方と協力して,良い仕事ができるよう取り組んでいきたい. A:地方で就職できないと言いつつも,地元に戻りたいという人は多い. 地元で技術を受け継ぐ会社や仕組みがあれば,良いのでは? ソフトハウスは平均年齢が若い. 東北の会社は,東京や愛知から遠いが,離職率が低い. 地方では離職率が低い→それが技術の売りの一面になりうる. C:会社間の仲間意識という面もある. 単なる下請けならいつでも切れる. しかしパートナーは大切にされる. 離職率が高い会社はパートナーになりにくい. だから地方の離職率の低い会社はパートナーになりやすくなるかもしれない. Q:他に地方で仕事を獲得するヒントは? A:40代か50代で働きやすい場所があれば,地方に帰るのでは.安心して働きたいと いうキャリアパスもあるのでは. A:セミナーをやると,結構40代なども参加者が増えている. 最近は高齢の方が組込みを始める機会が増えているかもしれない. 地方としては再教育をして盛り上がることが考えられるのでは? A:ハードを作っていた方が,プロジェクトマネージャとして入社する例がある. ソフトがかけなくても,組込分野でマネージャはできると思うので, 高年齢の技術者を地方で,マネージャとして雇う方法をあるのでは. ■参加者みんなにしゃべってもらおう! P:N社関連企業に所属し,神戸で働いてる.各地で分散開発をしている. 分散開発はお金がかかる.地方でやるメリットがあまりない. Q:地方での分散開発の効率化を目指すのはどうか. A:組込では,ハード依存があるので,分散開発が難しい. PCのシミュレータではダメで,最後は実機が必要. P:ツールエンジニア.会社大阪.客は,関東,東海地方が多い. 仕事は地方には少ないのでは. P:名古屋で組込み関連企業.すんでいるのは岐阜. 岐阜でも少しずつ組込に関する取り組みが進んでいるが,名古屋にかなわない. 岐阜は画像処理が強いので,そこを生かしたいと考えている. P:一年前,テレビ開発を経験.人月で開発を見積もる場所だった. これからは中国・インドだ! P:地方出身の都会の大学生 学生をみても,地方出身者は,地方に帰りたいという意志がある. 出張で地方にいくと,少し元気がない. ではどうすればよいかを考えるが,良いアイデアはない. 分散開発を効率化する方向が良いと思うが,アイデアはない. C:現実問題として組込みは分散開発しにくいのが原因では. C:地方に根付いた技術があるはず.それを伸ばせばいいと思う. P:東京で仕事.九州出身なので,九州に戻りたいという希望はある. 九州に対して仕事を出すメリットがないので,仕事を出しにくい. 地元に密着した技術,ニッチ分野をのばすという意見に同意. P:東京で仕事.今は愛知に転勤中.話の感想を言うと,地方に仕事を投げる インセンティブがなければ,受託になってしまうのは仕方がないのでは. 技術力などで差別化する必要があると思う. 技術開発ではお金がいるので,悪循環に. P:福岡にいる.半導体関係のEDAの会社を立ち上げる. 今は,ニーズに基づいて半導体を開発する会社に. そこでは,技術を買ってもらえた. 経営者が悪く,技術者がまとまって辞めた. 今は,別の会社でシミュレーション関係の仕事. シミュレーションのソリューションを提供できる人材ができる人は非常に少ないが, 福岡で探したら結構いたので,意外と地方でも技術(ソリューション)がある人は いるのでは?という期待を持っている. P:名古屋で就職,新人.昨年までは学生.大学の教育は,都会と地方は関係ない. むしろ,田舎(岐阜)の方がクリエイティブだったと感じた. P:新人.出身は岐阜.岐阜では組込は発展していない. 地元ではなく,名古屋で仕事がしたかった. 自分も含めて地方から人材流出している. 地方に残る魅力として,何かがあれば,地方に人材が残るのでは. (水がきれい,空気がきれいetc). P:群馬からきた.みなさんがどのような話をするかに興味があった. 今までの議論は,大きな会社を誘致することに必死だが, 地方で結集して,どのようなことがやりたいのかを明確にすることの方が 重要なのではないか. P:北九州在住. その地域にはこの技術があるというのを確立する事が大事. P:?氏(女性) 新人.外からお金をとってくるのであれば,地方特有の技術を発展させるべき. 日本以外でも,成功している事例をみるべき. P:愛媛出身.横浜在住.高知唯一の単科大学出身. 高知は第一次産業ばかりなので県知事が率先して情報系大学を設立. 地方でも,技術を発展させようとしたが,卒業すると,都会に人材が流出. これまでの話を聞くと,宮川さんに同意で,地方の独自性があるかないかで 決まると思う.ちなみに,自分も高知にメリットを見いだせない. 高知は陸の孤島? 地産地消的な発想が必要 P:茨城から来た.つくば市在住.地方がうまくいく問題定義の時点で, 「うまくいく」の定義は三者三様だということを感じた. 一山当てるのか,大企業を誘致するのか. 「一発当てる」には(都心・地方の)場所に関係ない. 純粋に技術力だけがものをいう. 筑波でも良い人材がある. 待っているおかげで,良い研究拠点になっている. 北九州市については,製鉄,造船が良いのでは. P:北九州在住電機メーカー.モータやロボットを担当.出身も就職も福岡. 人混みが嫌い.やりたい仕事が地方にあったので就職. 福岡周辺では,ロボットが一時期ブームだったがいつの間にか自動車に. お互い協力しているようで協力してないように思える. このことは,もったいない. P: 東京の出版社勤務.川崎在住.地方に対してあこがれがある. 地方の良さを生かした方向を模索してほしい. P:和歌山の電機メーカーに就職.2年目.分散開発の大変さを実感. コミュニケーションをとろうとしても,分散開発では難しい. 和歌山の良いところを考えると,観光が多い.大学も観光に注力. そういう流れの中で,組込をどう発展させるかのアイデアはない. さらに,若手を育成する場所が和歌山にはない. P:大学生.参加した理由は,ためになる話が聞きたかった.出身は岡山県. 就職活動をしたが,地元はダメだったので,東京で就職することに. なぜ,地方で就職できなかったのか,その理由のヒントをつかみたかったが, できなかった. P:大学生.山梨県在住.地方で会社を探すのは大変.職種・業種の種類が少ない. 学生の立場からすると,都会に人材が流れるのは仕方がないと思う. 地方におもしろい会社があれば良いのでは. P:静岡在住.成功したものが,その地方の流れになる. 成功するのは大変だが,地方発の技術開発にはお金が必要. P:北海道旭川出身 北海道の良いところは夏でもエアコンが不要. 電気代がかからないというメリットがある. 土地が広いため,会社をすきな所に建てられる. でも交通の便は悪い.通勤ラッシュもほとんどない. Q:北海道は組込みの成功地域と思うが札幌に就職する気は無かった? A:今の会社の人が説明会を開いてくれたので,そこ(別の場所)に決めた. P:宮崎在住 地方に技術があるとすれば,アピールが足りないのかも. 宮崎は東国原知事のおかげで(前を変わらないのに)売れるようになった. マーケティングは重要. P:神奈川県出身  横浜は,海外では南東京といわれている.  特色もないので,これから特色を見いだしたい.市も産業面に力を入れている. P:神奈川県在住,東京の計測器メーカーに勤務 実は横浜は組込み産業が多い地域. ET出展者の約半数は横浜の会社. (地元だから出展が優遇されているという訳でなく実際に多い) 地方技術のアキレス腱は,ブランドとして売れ出すと, 偽物開発や名前先行になってしまう可能性があること. 技術力にスケーラビリティがあるかどうかも,よく検討する必要がある. それらをふまえて,会社選びや起業を検討すべき. 北九州市とQUBEは近いところで似たようなことをしている.切磋琢磨しているの(笑)? 独自性があればすぐに産業になるか,ということは考えなければいけないこと. 東京で100人集まるセミナーをやると,大阪では10人しか集まらない. これくらいの違いがある.大阪もある意味地方? 一極集中と言うけれど,アメリカに比べて日本は狭い. 狭い範囲で,地方・都市の議論をしたら笑われる.やはりコンテンツ重視でいく. (東京と九州だってすぐ近く!) あまり「地方だ!都心だ!」ということに,こだわらなくてもいいのではないか. 地方はどうやってその固有の素材がいかせるかが勝負. たとえば温泉巡りをすれば,絶対に東京に勝てる素材があるはず. P:福井出身,福岡在住. 田舎に住み続けているので,逆に田舎のメリットが何かわからない 地方のメリットを生かせるような教育を. ■北九州在住者と福岡市在住者で,仲直りの握手 C:個人的には,親しいんですけどね P:長崎出身,都会の企業 地銭を稼げる街の組込み屋さんを目指そう! 町の電気屋さんが潰れないのは,そこにに要求があるから. グローバル化が進んでいるので才能がある人はどこにいても大丈夫. 町の人とつきあえる組込み屋さんを目指す. ■まとめ 地域に支える力がないという指摘は大事. 地方の魅力を引き出すことが必要. また,地域が若手を支える仕組みがない. 都市も地方も技術開発の面では同じ土俵. 地方のマーケティング力,売り方,アピールの仕方が必要. 今後は,コンテンツ力を磨きましょう. 地方に期待!