********************************************************************** セッションS5-b 分科会3 テーマ:【ブレスト】少子化・工学部離れ時代の子供達に対して我々ができる事 コーディネータ:渡辺登氏(IPA/SEC, SESSAME) 日時:2007/8/31 15:10〜16:50 参加者:20名 ********************************************************************** ---概要--- コーディネータである渡辺氏が、最初に少子化・工学部離れが起こっている現状と どのような問題が起こっているかをまとめたものを講演した。 その後で、会場にいる人でブレインストーミングを行った。 特に小学生〜高校生の子供たちに対して、何ができるのか?ということについて、 議論を行った。 ---渡辺氏の講演--- ○問題の整理 それぞれ教育現場・開発現場における不安・問題点 高等教育:カリキュラム不足と産学ミスマッチ、教員と専門分野のミスマッチ 大学全入時代による学生の基礎力低下 初頭・中等教育:基礎学力の低下、技術教育の不足 ○高等教育 組込みのカリキュラム:最近ようやくできてきたがまだ不十分、今後も不安がある ○カリキュラム不足と産学のミスマッチ 産学会の欲する人材と、高等教育機関が生徒に対して提供する教育のミスマッチ *専門技術・スキルの教育 組込みソフトなど現場で生きる技術の教育がなされていない *ヒューマンスキル 社会人基礎力に関する検討や、YESプログラムにおけるエンプロイアビリティや コンピテンシの考え方が存在する 現場で欲しているところと教育の現場とのギャップ ○教員と専門分野のミスマッチ *教育の専門能力の不足 「産業競争力向上の観点から見た大学活動評価手法の開発について」によると、 多くの大学のIT系分野の研究活動は、産業界の関心と大きなギャップがある ネットワークなども共通に求められる技術 産業期間における人工知能などのかつての花形領域への関心が根強い ○大学全入時代における学生の基礎力低下 *18歳人口は減少する一方 大学では学生の獲得合戦となり、少々低いレベルの学生も受け入れる 基礎知識の観点で先生のフォロー作業が増加・手が回らず、教育の質は低下 *授業で直面する問題 基礎学力の問題:年々増加 *2005年度:新卒者採用に関するアンケート調査集計結果の概要 基礎学力の低下 ○初頭・中等教育 *基礎学力の低下 *技術教育の不足 *理工離れ ○基礎学力の低下 *ものづくりの基礎的な考え方を学ぶ物理についても、指導要領が変わるたびに 受講者が減少 社会環境の変化によって生まれた「情報」も、多くの高校で指導要領に沿わない教育 が行われている *物理や情報が大学の入試科目に課されない 早い時期に文理分けが行われる高校増加 *ゆとり教育による影響 ○技術教育の不足 *ソフトウェア開発などのIT系ものづくりに関しては、情報の時間で取り上げられている しかしここで教わることは技術の利用方法(エクセルの使い方程度) JAVAなど高校の先生では教えられない *技術・家庭科:実習時間の減少 *コンピュータをプログラミングのために使っているケース :日本4% 韓国9% イタリア30% ○理工離れ *工学部離れが著しい 電気・電子・情報系が特に減少 バブル崩壊後は右肩下がり 医師・保健などの人気が増加 *開発現場において即戦力となりえる専門教育を受けた若者の減少は、人材不足の 解消において大きなマイナス要因 収入やかっこよさといった観点のイメージが良くない ○組込みソフトウェア技術者の意識 *現状マイナス点:非常に忙しい *プラスの点:将来性がある・社会の役に立つ・おもしろい・充実感がある・ やりがいがある・知的である ○3K現場 高いエンジニアはそれなりに給料も多い 社会貢献・仕事の面白さ:どんどん現場の人たちがアピールしていく 見た目のイメージ:現場・表現方法を改善 技術者の価値が不明確→技術者の立場が低い ○専修学校の問題 大学進学率の増加 専修学校の進学率は右肩下がり 情報系の人気が低くなってきている 大学のみならず、専修学校も対象に考えていくべきである ○理系選択は、高校1年 大体夏休み前から夏休み後・年末までに文理決めをしている 高校1年の夏前までに興味を持たせないといけない ○発達に合わせた情報の提供 高校:将来設計の立案、進路の現実吟味 中学:職業観・勤労観の形成、生き方や進路の探索 小学:関心・意欲の向上、夢や希望の獲得 ○開発基礎力の不足 *組込みソフトウェア開発の基礎力不足 技術教育に関する現場の需要は常に大きい *組込みシステムや組込みソフトウェアの開発に冠する技術習得は時間と手間がかかり、 開発現場が求める量と質の供給に至っていない状況 スキルを発揮し成果を出すまでには数年かかる ○質と量の人材不足 *約19万人に対して約50%の不足 *不足するスキルレベルに関する調査項目においては、指導が必要なレベル1には 不足感はなく、高いレベルのスキルの不足感が高い *少子高齢化は現在から将来に向け、人材不足に対して向かい風が吹いている 忙しい職業→うまく負担が減少されないまま、やめていく人が多い 現場で1番多い30代が上のポストがあかないまま年を重ねるが、若手も入社しない →逆ピラミッド型 ○少子高齢化、人口減少 生産年齢人口・年少人口:減少 75歳以上の高齢者:増加 開発現場への不安 ○ビジネスの問題 *開発スキルの空洞化 アウトソーシング:仕様は決めるが実際に作るところは子会社や海外の会社 脱自前主義 管理コストの減少 当事者意識の低下 *コスト増加・品質低下につながる コア技術はきちんと保持する方法を考えるべき ○品質問題の顕著化 電子制御が増加した自動車において、組込みソフトウェアの不具合によるリコールは 少ないが、サービスキャンペーンと称したソフトウェア更新は年に数回は行われている ○関係省庁の動き 文科省:情報A・B・C、理工系教育、専門職大学院、理科支援教員等配置事業(研究員や ポスドクが小中学校の理科の授業を手伝うなど) 経済産業省:情報処理試験 大学評価 厚生労働省:YESプロジェクト ポリテクセンタ ジョブカフェ ○問題の相関関係 Global化:開発スキル空洞化・品質問題 短期開発:人材不足(質・量) 組込みの重要性増加:組込み開発基礎力不足 少子化高齢化:大学全入時代 価値観多様化:基礎力低下 景気依存性・開発の魅力:工学離れ ---質問--- *質問1 工学部離れは、全体人数が減っているから、工学を選ぶ人数が減っているのでは? W氏(渡辺氏):可能性はある。現在調査中。工学部の数自体が減少中。 *質問2 昔の3Kは建築・土木系だ。 W氏:厳密にはIT系が3K。明確に組込みが3Kだとは言われていないが、 組込みもITと変わらない。 *質問3 介護・福祉なども3Kだと思う。3Kだからといって人気がないことにはつながらない。 W氏:景気の依存性が強い。介護などと比べて違う点。 *質問4 大学の教育とのギャップ。必ずしも出身学部は情報とは限らない。自分の職場を見ても、 他の部門に比べて専門学部出身の率は低いのではないか? W氏:IT業界は工学・情報よりも、文系・経済からの流入率が高い。 現在、経済産業省は一般の人がどんどん受けられるように情報処理試験の見直しを している。 初級シスアドがなくなり、ちょっと勉強すれば受かるような簡単な試験を導入して、 この業界へ入りやすくする事を目的としている。 ---議論--- A氏:そもそも専門の教育を受けていなくてもやっていける業界ならば、工学離れを 気にする必要はない。 その状態が良くないから、ちゃんと専門教育を受けた人たちで集団を作っていこうと 言うならば、今自分たちが想定している集団と違ったものになるのでは?どのように 人をひきつけるのか?単純に離れているのをつなぎとめるだけとは違う問題。 B氏:組込みエンジニアの漫画を描いて、人を引き込むのはどうか? C氏:漫画はいいと思う。どんな漫画ならいいか? B氏:漫画の影響力が大きい。我々が思っているほどこの業界が悲惨などではない。 だましてこさせようとしてはいけない。自分たちが前向きになることが重要だ。 W氏:自分がレポートを書く時に、3Kと書かないようにしてる。認めたくない。 B氏:いいイメージを与えることを考えている。 D氏:アメリカのエンジニアは自分の息子に同じ職業につけたいと傾向が強いが、 日本は弱い。これは国民性かもしれない。今組込み技術者は求められているのに、 給料が低いのはおかしい。 E氏:安くていい労働力を求めようとしているのは間違っている。 W氏:組込みの仕事でどんなことをしているのか、見える形に出す。 E氏:マスコミにどんどん出ていかないといけない。 F氏:その世代の人で、取り上げられる人(アイドル的な存在)が必要。 A氏:そもそも組込み業界全体の問題を解決しようとするなら、少ない人数で質のいい 仕事をして、高い給料をもらえばいいのではないか。単純に人を連れてくるかだけで いいか?解決方法は色々ある。なぜ子供たちをこちらにひきつけたいのか?ものづくり の面白さを伝えたいとか、違った目的があるのでは? W氏:具体的な体験をさせることで、子供たちは生き生きしてくる。そういう経験を もっと与えたい。将来的に工学離れはどうなるかという不安もある。 A氏:ソフトウェアの面白さを伝えていくためにはどうしたらいいのかを考えていく 必要がある。プログラマーの漫画もある。人気がないわけじゃない。 G氏:普段の日常生活の中で、多くの人に使われているものを分解させて中を見せたら どうか?身近なものがどうなっているのか実際に見せる。 E氏:あけてもチップが出てくるだけ。プログラムが見えない。 C氏:エンジニアの世界に女性が増えるべき。もっと女性を引き込むことが大切。 B氏:子供のレベルで見える、スタープログラマを作る。 A氏:どこから子供を引き込むか?他の職業から引っ張ってきて、組込みに連れてくるか? E氏:フリーターを引き込むのはどうか? A氏:他の業界も人手不足に悩んでいるはず。現在フリーターになる人が多い。 そこからうまく取ってこれたら良いが、競争率が激しい。他にも魅力的な職業は いっぱいある。どういう戦略が必要か? W氏:厚生労働省の取り組みは、フリーター対策でもある。就職先の斡旋もしている。 E氏:IT系の受講者が組込み系に流れている。 H氏:IT系の会社が儲かってそうに見える。儲かってるように見せる。 E氏:業界に女性を増やすところにもう少し力を入れるべき。 B氏:肉体的なハンディがないから女性でもできる。そこをもっとアピールしても いいと思う。 D氏:かっこよさ・社会貢献など、ポジティブなイメージが少ない。そういう部分の 魅力が抜けている。 C氏:学校の先生はマスコミたたかれているが、教員志望者は減っていない。 社会的な貢献度合いが高い。 W氏:きつくても、社会貢献してて、仕事の中身が見えることが大切。子供たちは 日報を書いてる警察官に憧れるわけじゃない。 I氏:企業イメージを上げるようなCMがない。 J氏:直接エンドユーザに接する機会がない事も要因の1つ。 K氏:講師として小中学校に組込み技術者を送り込んでは? 少なくとも、そういう体験をした子供たちは興味をもつ。 B氏:自分の会社では、小中学校へ技術者を送り込んでいる。 D氏:実際に働いている人が見えないから、身近に感じられない。組込み技術者をもっ と前面に出す。ボードを見せたりすると興味を持つ子供も多い。理系だけじゃなく、 文系の学生をひきつけるような工夫をすべき。 W氏:文系と理系でひきつけられる要因が違う? D氏:違いはあるかもしれない。 B氏:現実的には日本の経済は製造業が支えているのに、そこが見えにくい。 それをもっと社会貢献としてアピールするべき。 H氏:子供の頃身近じゃない職業は専門性が強い。ロールモデルを作ってしまう。 身近に触れられる仕掛けを作る。 B氏:子供が触るおもちゃが複雑化しすぎ。分解して原理が分かるような単純なものが あってもいい。ものづくりという観点で、理系離れを防ぐだけでも意味がある。 F氏:ソフトウェアはエコだというイメージを前面に出す。 W氏:組込み技術は低消費電力など社会貢献している。そのあたりを子供たちは 分かっていない。 D氏:DSのソフトは組込みだといえるか? W氏:組込みソフトとは言わないが、ゲームソフト自体がゲーム機の価値を決めている。 D氏:ゲームソフトへの関心を引き出し、組込みへ引き寄せる。詐欺だといわれない 程度にアピール。 E氏:子ども達に与えるイメージが変える。イメージが重要。 B氏:ユニフォームがかっこいいと思えればいい。 E氏:ユニフォームがいいと思えるには、スターが必要。 W氏:ユニフォーム自体をかっこよくリファインすればいい。 L氏:工専の女子の人数を増やすために、制服を変えたという実例もある。 B氏:エンジニアと経営者では格差が大きい。エンジニアがどれだけ給料をもらっているか。 K氏:世界を相手に戦う人がいると印象が強い。 B氏:日本製の製品は海外で人気があるが、作っている人が見えにくい。これは1番だ! ともっとアピールしていいのでは? W氏:知的であることをアピールすることは難しい。逆にマイナスイメージになってしまう。 E氏:忙しいのにかっこ悪い・儲からないというイメージが悪い。 F氏:子供に擦り込みをするためには、保護者への組込み教育が大切。 E氏:安定した職業についてほしいというのが保護者の希望。役所系が増える。 理系離れに拍車をかける。 W氏:国の見通し・サポートをもっとしっかり得られるようにしたい。 C氏:この業界が廃れるとは誰も思っていない。本当に給料が安いのか? 半分自虐的ではないか。 E氏:専門知識を学んだ人で、少数の高い技術を持った集団を形成。実際にプログラム を組むような人材は、どこからでも調達できるような体制を作り、専門知識を持った 小数集団が全体をコントロール。専門教育に対するライセンスを確立し、ライセンスが ないといいポジションにつけないようにする。希少価値を高める。 W氏:これらの意見をまとめて、新たな取り組みの提案として考えたい。