********************************************************************** 分科会1 S1-a テーマ:素敵な上司の素敵なリーダーシップ コーディネータ:山本雅基 参加人数:40人強 ********************************************************************** 20:33 スライド(素敵な上司素敵なリーダーシップ_2.pdf)について説明した後, 皆さんから上司自慢を行うと説明. 国民生活白書(http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/index.html)の回覧 20:36 ■ 司会の説明 何故このような,くだけたテーマを取り挙げたかについて. 私は,過去,D社でソフトウェア開発をしていた.自身も上司として働いた後, 現在は名古屋大学で組込みソフトウェア教育に携わっている. これまでに様々な上司に出会ったが,その中でも特に素敵な上司がいた. D社の厳しいソフトウェア開発を乗り切れたのは彼のおかげと言える. その経験から,会社生活では,上司の働きが大きいと考えている. 良い上司に恵まれることはとても幸せなことである.では,良い上司とは何か? 午後の基調講演では,具体的なツールを適用していかにHAPPYにこなすかについて 述べられた.しかし,新入社員にそれを言っても,効果が無い. まず,リーダーが適切なリーダーシップを発揮しなければ,何も始まらない. 失敗学にみられるように,失敗から学ぶというアプローチもある.しかし,失敗 からは,カイゼン事項が学習できるがそれに留まる危険性がある. 今日は,圧倒的な成功事例を皆に発表していただき,共有したい. 最初にスライドを説明し,次に,皆さんに上司自慢をしていただく. 20:40 ■ 山本さんのスライド リーダーシップの定義はなにか?(リーダーシップ学に関する本の引用) 「リーダーシップは,リーダーによる影響力の行使のこと」 リーダーとマネージャの違い. ・リーダー:旗を立てる人.目標すべき場所を示すことができなければならない. ・マネージャー:旗を目指すために組織の序列を決める人. 資源や人を割当て,QCDを管理する. 良いリーダー = 良いマネージャ であるべき しかし,実際はどうか?そもそも,リーダーシップがとれているか? ・子会社は親企業のメーカーの言いなりになってないか? 旗を親会社が立てていないだろうか? ・メーカーのソフトウェア部門はどうか?士農工商メカエレキソフト. 良いリーダーがソフトウェア業界にいるか? カオスな状態に秩序を見出すことがリーダーシップだが,ソフト業界でできてるか? 部下にすべてを任せるのはリーダーシップではないと私は考える. 独裁的でも旗を立てることが必要.リーダーは決断することが仕事. カリスマ性について 組織が非常に困った状況にあるとき,新しい目標を立てて導くことができる人. 高田先生にもカリスマ性があると思う.組込みRTOSでのオープンソース活動. リーダーの型: 縦型 圧力でコントロールするリーダー. ある時は成功するが,長い目で見れば失敗するのではないかと思える. 横型 横のつながりを目指す.時代としてはこちらにうつっている. 変革型 組織に新しいものを導入するが,行き過ぎると失敗する. 国民生活白書「つながりが築く豊かな国民生活」: 国民生活白書によると,職場の人間関係が良いと答える人ほど,業績が 上がっていると考える割合が大きい. 会社の業績を上げるためにも,上司との人間関係がうまく構築できているか? 白書では,4人に1人が若手の育成に手が回らなくなったと感じている. よくない状況である.組込み業界においても考えなければならない. よくない上司の類型化(分類:天外): ・マイクロマネージメント:細かいことばかり管理 ・馬頭観音型:怒ることしかしない ・ヒラメ型:自分の上司ばかり見る ・逃げまくり型:責任転換 ・放任型:我関せず ・改革かぶれ型:コンサルの言うなり 21:03 ■ Aさんの事例 一部の人間の見方としてお聞きください.上司のHさんとの出会いは,SWEST3のとき 同部屋だったことである.展示会で会ったときの印象が強く,会う機会が何度も あった. 他の社員に対しても,Hさんについて事前にアンケートを取ってみた. ・いい意見:ほかの会社でできないことをやらせてくれる ・悪い意見:理想は分かるが現実も考えてくれ. 自分だけ面白いことをしてるのではないか? 普段の上司は,いつも会社にいない.子供のようであるが,時折ものすごく悩んで いる模様である.しかし,部下からの不満は少ない. では,なぜ皆が彼についていくか? ・彼が面白いことをやろうとしている. ・自分も楽しもうとしている. ・脱線気味なところもOKである. ・モチベーションの向上につなげつつ.ビジネスにつなげてゆく. ・「とりあえずやってみろと」言ってくれる. ・大切なときはしっかり言う. ・前向きに仕事をできる良い環境をつくってくれる上司である. 21:10 質疑応答 B:厳しいことは言わないのか? A:方針が違いすぎるときは厳しいアドバイスをする. B:飴と鞭を使わないといけない.鞭の人がいるのでは? A:Hさんの部下Aがその部下Bを見ている.部下Aは部下Bに甘いことを言わない. B:それは役割分担をしているのでは?上の人が甘いことを言い,下の人は厳しく 言っているのでは?そのリーダーシップは一人で完結するものでないのでは? 厳しいことを言う人は人気がないのでは? A:愛情を持って怒るので,不満はない. B:それは理想的ですね A:私はそういうのが良いかと思います. C:Hさんはムードメーカーではないのか?技術的にサポートする人がいるのでは? B:どうしたらそのようなチームができるのか?だとすると,リーダーシップだけで 完結しないのでは? C:うらやましい組織である D:飴鞭について.叱られても愛情を感じるのがポイント. 怒られても気持ちを受け取っていると感じている.気持ちの表現の仕方が間違って いると鞭の人は嫌われる.コミュニケーションは情報のやり取りだけでなく気持ち のやり取りである. A:その通りである.その人のことを考えて,的確に言う. 司会:ほかの上司自慢はありませんか? ■ Eさんの事例 E:ハードウェア屋だったが,現在はFAコントローラを作っている. 上司のおかげで好きにやらせてもらっている(放置).最初は放置できついとは 思ったが,そうすることで自分が伸びると見込んで(わがままな自分を見抜いて) 放置してくれていた. ■ Bさんの事例 B:意識的にわざとやっているという人もいるだろう.たまたま相性が良かったから よかったのでは?技術的なアドバイスや方針がある訳ではないが,自由にやれて 良かった. ■ 放任型リーダー 司会:これまでの話によると,組込み業界では放置された方が幸せな人もいるのかも しれない. F:SWESTに来ている人は優秀な人が多いので,放置型でよいかもしれない. 忙しい時はかわりに電話を取ってくれるような,さりげない気配りをしてくれる 上司が素敵なのではないか.邪魔をしないが,気配りをしてくれているような, しかし,そうでない人にはアドバイスがある方が良い. 司会:守ってくれるとはすばらしいですね. G:やりたいといえばやらせてくれる上司について・・・ H:人間が出来ている上司の下で働けるのは幸せ. ■ Iさんの事例 I:直属の上司が社長になった.社長だから厳しいのかと思っていたが放任型で 平和主義であった.最初は自分が仕事を失敗したこともあったが,社長と いうこともあってフォローもしてくれた.技術と営業の両方をやっていて, 尊敬できる.社長になりたいとは思わないが,こういう上司は憧れる. 放任型されることで自分が生きると思っているので,そういうのが合っている 人には適正ではないか. 司会:今までの話では放任型が支持されている.自分が上司になったとき, どこまで部下を信用できるかがポイントになりそう. 部下が失敗したときに自分が責任を取れるかどうかが重要. おそらく,放任主義で紹介された皆さんの上司は,失敗したときに責任を とってくれる人ですね. B:そこまでは思ってないのでは? そこまで責任を取らないから,本人がしっかりしなければという気持ちが 芽生えるのを狙ってる.ピープルウェアでは次のように言われている. 「上司が目的を指示した場合はモチベーションが上がらない」 自分で目標を設定するとやる気がUPする.(目標を)アナライズしてあげると さらに良い.もっと良いのは,目標すら設定しないときである. 司会:皆さんが優秀だから放任型を受けてOKと感じるのではないか. 放任型以外の話で,引っ張ってくれる上司の経験をお願いします. ■ Dさんの事例 D:上司ではなく下の人の話になります.プロジェクトを任される責任者として, 緊急事態のときに先陣を切って火を消す姿が素敵であった. 緊急事態では放任でなく,強引に素早く指示するのが良い. 司会:賛成します.ほかに,どんな事例でもよいのでどうぞ. B:緊急事態にならないようにするのがもっと上なのではないか. あまりにも完璧すぎると有り難味がなくなるが,順風満帆に思わせていて 危険を予知しつつ導くのが本物である. ■ 技術とリーダ 司会:私がナビの仕事をしていたとき,我々はデジタル地図を開発していた. 難航し,リリースのめどが立たなかった.そのとき,H社がアナログの地図を 使ったナビを先に市場に出した. 私は,デジタル地図開発は時間がかかりすぎるからアナログ地図にしよう, と提案したが,却下された.今となってはデジタル地図を狙って正解だった. 上司は,私の浅はかな技術的な考えを修正してくれた. 素敵な上司は,人間的だけではなく,技術的にも進んでいるのではないだろうか? ■ Cさんの事例 C:入ってすぐの時に先輩上司がいた.技術的に詳しくお手本にしたい人だったが, 何年かすると,技術から管理に移り,技術的に疎くなった. すると,素敵とは感じなくなってしまった. 司会:私も実は,素敵な上司がいなくなったから,今ここにいる. ■ Fさんの事例 F:上司というより兄貴的存在がいた.技術的な面で優れる人である. 自分はSWで兄貴はHWの技術者であった.それから何年もたって先輩と同じ歳に なった時,自分はあの時の先輩のようになれているだろうか?と考える. 司会:そういう謙虚な姿勢は大切ですよ.天狗になっちゃいけない. F:自分の中では上司と師匠を区別している. そういう意味では,部署が違えども師匠は師匠である. 司会:午後の講演にあったように,ようやくSW分野にも過去の製造工場での成功事例 的なやり口がでてきた.そういうのを定着させるのは上司の働きかけが必要. 今の日本は,リーダーとマネージャーが,良く理解されないで混在している. もっと,上司としての働きかけを勉強せねばならない. ■ Kさんの事例 K:今まで仕事をしてきて尊敬できる上司はいなかった. 半分上司と言えるが,仕事上での上司という認識が無い.印象的な人はいた. 先輩という立場でありながら議論をしてくれ,良いところは良いと言ってくれる 上司であった.同僚のような先輩とも言える.年齢的に,自分は良いリーダーに ならなければならないが,そうではない気がする. 司会:実は自分が追い込まれる体験を最近した. 親友が病気にかかってショックを受けた.そのような混沌とした状況で指針が 見出せない自分が嫌であった.これが仕事であればすぐ会いに行くが, 「今,会うことができない」と言われれば,プライベートな場合では会いに 行くことができない.こういう追い込まれた時こそ,天涯孤独なリーダは結論を 出さねばならない.しかし,プライベートなことになると出来ない自分が嫌である. 縁があって一緒の会社になったなら,ぜひ,部下を守ってほしい. 部下の能力をチアアップするリーダーシップが組込みSW分野では有効である. 個人的に思い悩んでいたが,この分科会を聞いて気持ちが楽になった. 放任主義というリーダーシップの形があることが確認できた. ■ Bさんの事例 B:放任の話ばかりが強調されたので,その逆について. 厳しいことを言いながら励ましてくれたリーダーの話である.アイデアを挙げると 最初は「ぜんぜん駄目」と言い,その理由を説明してくれないことがある. 最初はとっつきにくかったが,この人はもっと先を見ていることがだんだんと 分かってきた.この人をうなずかせるような提案をしなければならないと 思うようになった.それまでは,落ち込むことも多かったが,気持ちを切り替える とモチベーションが上がり,まともな意見が提案できるようになった. 単に罵倒するだけではなく,忙しいのに時間をかけて細かく指導しながら熱心に 目を向けてくれる.それを感じ取って頑張らなければと思う.その人を 納得させようと頑張った結果,自分の技術力が上がったので感謝している. 一人でリーダーシップが完結するものではなく,色々な価値観を持った 色々な人を観て育つのが重要である. D:理想だと思うのは,放任的であったり細かく指示したりと,その人の状況に 合わせてかかわり方を変えること.たいていは複数人であるが,それが一人で できればPerfectではないだろうか. B:いや,一人の人がコロコロ変わると安心できない.「この人はこんなことを言う」 というのが崩れては,昨日と今日でぜんぜん違うようではいけない. 必ずしも,一人の人が何役もやらない方がよいのではないか? M:プレッシャーをかける時にその人の能力に合わせるのが大切である. 80%では怠ける.120%ではつぶれるかもしれない.どこまで耐えられるかを 見積もらなければならない. C:放任にもいろいろ種類がある.放置はよろしくない.コントロールされた放任. こういう人は良い上司.責任を持たせる.なおかつ,多少のチャレンジング. このような経験をした時,良い上司であると思えるのでは F:優秀な人は放任されても進捗の報告がある.だから安心されて放任されるのでは なかろうか.そうでない人はケアをするというような,人によって対応の仕方に メリハリが必要ではないか. E:スペシャリストは必要である.自分よりもスキルの高い人に教えを請うのは必要. 師匠がないと何も成り立たない. マネージャーに対しては明確に求めるものがあるが,リーダーに対してはどうか? 逆に,下の視点から上司を観て,皆は上司に何を求めているのかと聞きたい. 答えられないなら,上司が誰でも同じなのではないか? ここに参加している人は素敵な上司になりたい人だろうけど, 気張りすぎるのもどうかなぁと思う. N:部下に対して求めることとして,信頼関係は大きい. 部下が上司に対して求めるのは,存在が認められることである. 放任の前提は「認められること」に基づいているのではないか? つまり,自分が認められているという確信を上司に求めています. 司会:誰しもが認められたいですよね.上司に誉められたい. 「NHKのプロフェッショナルたち」でモバゲーが取り上げられた時, 「社長が残業しろといわれれば喜んで残業します」という社員がいた. これが日本の会社の強みなんだろうと思う.何のために仕事をするのかは人 それぞれであるが,「上司が好きだから」というのも理由としてアリなんでは ないか. 紹介した本には,アメリカの例として「私はこの上司が好きだから仕事をする」 とあった.日本では公に言うのが恥ずかしいという文化があるが, これからは言ってもいいのではないか? 日本では兵の力を信じて戦争を戦った.兵隊は部下である.部下を信じる人が ビジネス戦争に勝つ上司. 部下の幸せが自分の幸せと感じられる上司が良い.親は,自分の子供の幸せは 自分の幸せだと感じられる.それが会社でもできればよい. 小泉首相以降,過度の競争が好まれるようになり,良い上司が居なくなった. 昔の文化を大切にしたい. ■ Oさんの事例 O:制止力を発揮する時に上司としての魅力を感じる.何年かすると自分の意見が 通るようになるが,そういった中で間違いを正してくれる上司にリーダーシップを 感じる. ■ Pさんの事例 P:思い出に残る上司について.会社を辞めた後に次の仕事に悩んでいる時にSWESTを 紹介してくれた上司である.自分のスキルを知っていて,適切なアドバイスを くれた. ■ Qさんの事例 Q:若いころ好きだったのは放任主義の上司である. 楽に出来た一方,勉強にならなかったかもしれない. R:ビジョンを定め,それに向かってどうもっていくかに重点を置きたい. それができれば,人格が悪くてもゆるせるかもしれない 司会:部下と上司の関係は,自分と親との関係に似ているかもしれない. 私は,物心がつかない子供のころ親を無条件に尊敬していた.しかし, 変な知恵がついてくると親を疑うようになりある時から親を尊敬しなくなった. 今は亡くなった父親に対する自分の態度を後悔している. 生まれて始めてのリーダーシップを感じるのは親ではないか.リーダーシップを 考えるとき,両親との関係を思い出すとヒントが隠されている. 社会人教育を通じて,実は,上司と部下は理解しあっていないことが分かり始めて きた.上司と部下は,もっと話し合いをして,理解を深めるべきである. 子供が親ともっと話しをするべきであることと,同じように. ■ Lさんの事例 L:DAシンポから来ていて,2時間しか寝ていないので,最初の方の話は覚えていない. 司会の話がとても印象に残っている. 結論として言えることは,司会はさぞすばらしい上司である!ということである. ------------------------------------------- 後日のまとめ(山本): もう一つの議事録にも書いたが,技術とリーダーシップの関係について,まだ 明らかになっていない. 今後,技術進歩の早い組込み業界におけるリーダーシップのあり方に関して 考察を深め,組込みソフトウェア会社における理想的なリーダー像を提案したい. 野球のチームを見ると,野球技術的に優れた選手が,優れた監督になるわけでは ない.しかし,少なくとも,多くの場合,監督は野球選手としてはプロであった. 組込みにおいても,リーダーには職業技術者としての経験が必要かもしれない. リーダーシップは,毎日の仕事が応用問題である. 仕事以外に,子育て,友人との交流,自治会の交流など,全てが勉強の場である. 権力だけが拠り所のリーダーよ,さようなら.おそらく,権力だけのリーダー シップをとってこられた方は,会社を辞めたら自治会活動すらできないのでは ないか.産業や時代が要求するリーダーシップは,今,変化の時. 横型,変革型,技術主導型...さまざまな理想的なリーダーシップを皆様が追求する きっかけとなれば,今回の分科会を開催した意義がある. 多くの気づきが共有できた.出席者の皆様に,感謝する.