********************************************************************** SWEST/DAS 基調講演パネルディスカッション テーマ:現場力を高める見える化手法プロジェクトファシリテーション 〜モチベーションアップのツールと場づくり〜 パネリスト:高田広章(名古屋大学) 吉田裕司(富士通) 服部博行(ヴィッツ) 平鍋健児(チェンジビジョン) 司会: 山崎 進(北九州カーエレセンター) 日時:2007/8/30 14:40〜15:40 参加人数:約150人 ********************************************************************** 14:55 司会:まずポジショントークを話していただこうと思います。 服部: まずは会社の背景などについて話す。 ヴィッツは組み込み系では新参の会社である。 人材はほとんどが新卒入社で、教育に力を入れながら会社運営をしている。 教育の一例として、最近は模型ロケットの作成をプロジェクト形式で新人研修を行って いる。この研修の目的はヒントを得る方法を身につけること。 私はもともとハードの工作がすきで、昔からやってきた。 そこで得たものはソフトにも通じるものがある。 今回のテーマ:技術者が自分の仕事に誇りを持つ瞬間とは? ソフトウェア技術者だから特別ではない。 どんな仕事でも誇りを持つ瞬間があり、それによって仕事へ誇りが持てる。 最近は実体験ではなく、擬似的な体験が多い。幼稚園のお遊戯でもみんな主役を演じる。 苦労、失敗を通していろいろなことを学ぶ。 私も失敗も多くあるが、興味があって楽しみがあるからやれる。 したがって興味を持つことが大切となる。 企業の人材育成では、プロとして利益を上げられるようになれば育ったといえる。 人材育成では興味を持たせることが大切。 年をとるとドキドキ・ワクワクがなくなっていく。そして、携帯電話の普及で昔のよう なドキドキがなくなっている。 最近は3年ぶりの模型ロケットでわくわくしている。スイッチは私が絶対に押そうと 思っている。このようなドキドキわくわく重要となる。 興味を利用した、モチベーションアップの場づくり。 まずは、子供になって興味を持たせる。 その後に大人の教育者を見つける。私の場合は高田先生。 楽しんでいるおじさんを見せて、興味を持たせる環境をつくる。 15:00 吉田: タイトル:技術者のモチベーション向上 まずは自己紹介。 入社以来、メインフレームのCPUの設計。ハイエンドのプロセッサの開発に携わって きた。演算回路の設計から今はマネージメント。半導体テクノロジーなどの開発の統括。 部下は120人くらい。 ハードウェアの現場は開発の人材不足。 人材獲得+人材育成−人材損失(定年退職+離職) 理系離れにより新卒の人材が不足している。 今いる人材による組織の生産性の向上を図らなければいけない。 向上策: モチベーションの源泉は期待。期待を満足することに価値観を持つ。 期待−コスト=個人にとっての組織の価値。 期待とはお金や報酬かもしれない。 しかし、エンジニアはパンののみに生きるものではない。 探究心・向上心・達成感がエンジニアにとっての重要なモチベーションとなる。 活気ある職場には人材が育成され集まる。 キーワードは組織の活性化。つまり、コミュニケーションの活発化。 職場内技術発表会や積極的に質問するなど技術論をすることを推奨。 他の人から興味を持たれていることを実感するとモチベーションがアップ。 方法としては“教えてください”と質問するなど威圧感を与えない。 自由闊達な組織風土の醸成。 ・タバコ部屋トーク。タバコを吸うためだけの部屋で、肩書きを越えて気軽なトーク。 (最近減っている。) ・遠山の金さん。肩書きによる遠慮がある。勝手に入っていってコミュニケーションを はかる。 ・自由に面談する。今は逆指名でやっている。時間を決めてもオーバーして楽しかった といわれるとうれしい。 15:10 高田: 人が大事。日本のものづくりは人の意識やモラルで持っている。 日本のソフトの品質は高い。ソフトの教育は他国に勝っても負けてもいない。 今の学生は大丈夫か? 技術者が自分の仕事に誇りを持つ瞬間は・・・ ・成果が世の中に役に立ったとき ・自分が成長したと感じるとき よく知っている先生からでも人からほめられたとき 育つというのはどういうことか ・新しいことを発見したとき。 ・過去に書いたプログラムを見て変わったと感じるとき 人を育てるとは・・・ モチベーションを持たせること。 手助けとしてヒントを与えること、ほめてあげることが非常に重要。 批判も重要だが、頭から批判しないで、自分で問題に気づかせることが重要。 モチベーションを持ったらそれを利用して育てる。 つまりモチベーションを持たせるにはどうしたらよいか? 日本ではハングリー精神が使えない。 個人個人へのテイラーリングが必要。 ・全体での教育は難しい。 ・成功体験が重要。 ・自分の仕事を誇りに持つこと必要。 例えば研究室の方針 テイラーリングができないから、テーマを提示し学生に対して逆指名させる。 平鍋: youtubeでメッセージビデオを・・・ 司会: ポジショントークありがとうございました。 ほかのパネリストに言いたいことは? 成功体験というキーワードがあったが、高田先生と服部さんは逆のことをいっているよ うに見えるがどのタイプの成功体験がモチベーションアップにつながるのでしょう? 高田: 偽でも良いと思う。長い期間の努力が身になったということしかない。 よかったと思えるということを学生に持たせたい。 服部: スタートが偽でも、努力が本物ならOK。子供に努力をさせず、良い目だけを見せるの では、努力もなく華やかな部分だけをできると思ってしまう傾向があるのがだめだと思う。 司会: 達成欲というのがゆがめられたように見えるのだが?(努力がない達成なのでモチベ ーションがあがらないと思ったが、達成欲と関係するのでは?) 吉田: 今の議論の成功体験は人格形成にはよいと思う。職業上では人格形成のためではないので、 成功体験ではなくみとめられたということの積み重ねがモチベーションアップへつながる のではないか。 みとめてあげることで、モチベーションがあがるのではないだろうか。成功体験まで大 きなものではなくても声をかけてあげることでOKだと思う。 平鍋: 声かけが仕事の途中で自然に出てくるとモチベーションアップになる。 服部: 人間関係が大事。信頼関係があってはじめて声かけが有効となる。 一番初めは信頼関係を気づくことが大事。 司会: 信頼関係を気づくのは日常の細かいことが大事?それともテクニックがある? 吉田: 両方ある。テクニックとしては日常からいっしょにいるということが大事。仲間として 接して、普段からコミュニケーションを。何かあったときに態度が変わるのはよくない。 平鍋: 最初に作らないといけないのは信頼関係。 吉田: 新しい人がチームに加わったときが大事。新しい人には連続して話しかける。連続して 押しかける方が効果がある。集中的に話し合うと、信頼関係が気づけ、その後間をおい た声かけでも信頼関係が築ける。 服部: 会社で信頼関係ができているかはわからないが、まずは友達になりたい。どんな人でも 普通に話す。信頼関係とは、まず自分を知ってもらい、理解してもらう。それによって、 信頼していると思われることが信頼関係を気づくはじめとなる。 平鍋: 服部さんのように楽しんでいる人がたくさんいるといい。 服部: やったことないことは興味がない。小さなことでもやってみる。それから興味がわく。 人がやっていることはできる。人がやっていないことをまずやってみて面白かったら紹 介する。それが大事。 司会: 最近の学生はやりたいことを前に出さない人が多いが、信頼関係を築くには? 高田: 興味を引き出すには、まずは参加させる。 知らないと興味はもてない。少し理解してきたらディスカッションして役に立つといわ れたことを学生にふる。うまくいっているかはわからないが・・・ 吉田: モチベーションをなくす方法とは?モチベーションを下げる方法のほうが逆より簡単。 それ以外をやればモチベーションがアップすると思う。 私はその方法は、情報を遮断することだと思う。単に作業としてやらせるとモチベーシ ョンがダウンする。 高田: ころころ意見を変えるのは信用できない。逆に、一貫している人が信頼できる。本気 でしゃべれば内容は一貫し信頼できる。谷から突き落とすと上がってこない学生が多い ようなので、落とさないように。頭から否定しないようにしている。 平鍋: 先ほどのビデオでもあったように影で人を笑ったり、検討もせずに提案を却下する。仲 間がいない、自分のことを気にかけてくれないことが信頼ダウンになる。 服部: 同じ会社の違うセクションでは離職率が高い。セクション間での違いは、リーダーが軍 隊のトップのように暴力的な発言や、発言の禁止をする。一番上が強い力をもって将軍 のようになってしまうと、モチベーションもなくなる。 高田: 決定の方針を言わないのはモチベーションが下がる。 吉田: 参加意識が持てるかどうか。参加意識が持てないとモチベーションが下がる。 平鍋: 前回のプレゼン内容は情報共有やモチベーションアップなのでよかったのでは。 15:45 司会: 会場からの質問をどうぞ。 質問者1:私はプロジェクトを統括している立場であり、教育者なのだが人材育成に根 本的に必要なのは上司のカリスマ性だと思う。いかにカリスマ性を身につけられるのだ ろうか? 吉田: 上に立つと人望が必要。演技は見透かされるので、自然体が必要。人を変えるのは無理 なので、変化を楽しむと、周りもついてきてくれる。苦労よりは楽しいことをみせていく。 服部: カリスマ性とはどういう意味か理解できていない。もうちょっと含んだものが人間力だ と解釈する。カリスマ性とは一定方向では能力を持っているが、人からの意見を聞く意 識が薄いとすると、上司としてはいまいちではないか?周りからの意見や、下からの意 見を阻害してしまうので向いていないのではないか。 質問者1:ここで考えるカリスマ性とは浜崎あゆみのような存在。周りに影響を大きく 与える存在。下からまねされるような存在であるというのがカリスマであると考える。 平鍋: 人の重要性を考える。ソフトウェアを作るうえでも属人性が残る。教育の部分でもそう いう部分がとてもたくさん残ると思う。 高田: 浜崎あゆみのようなカリスマ性は誰もがもてるのではないので、ここでの議論はむなし いかもしれない。職人として、アドバイスして当たるとカリスマになれるかもしれない。 司会:ありがとうございました。これで終わります。