第8回 組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST8)議事録
分科会2 S2-4-1
「行列の出来る組み込みシステム開発ワークショップ &
パネル・ディスカッション2006 〜World Embedded Software Classic In
SWEST〜 PartⅢ」

日時:2006/07/14 15:30-17:00
場所:遠鉄エンパイアホテル(静岡県浜松市) 会議場E・F

(以下、敬省略)
司会:中村 憲一(米Upwind Technology)
パネリスト:杉浦 英樹(富士ゼロックス)
      西 康晴(電気通信大学)、
      佐藤 洋介(デンソー)
      橋本 隆成(Hashimoto Software Consulting)
      川口 晃(アクティビティ・デザイン)
      Nalin Advani(ソリッド)、
      藤懸 英昭(ロジック・リサーチ)
      安部田 章(九州日立マクセル)
参加人数:28名(分科会開始時)

分科会概要:
----------------------------------------------------------------------------
日本の製造業および組込み業界は世界一と言う高い評価を得ている。さらに日本の製
造業は製品だけでなく、QC活動、トヨタ生産方式など品質保証・管理活動、生産手法
なども世界に常に影響を与え続け、海外諸外国で模範とされてきた。一方、ソフトウ
エア開発にあたっては、全く事情が逆のようである。
本セッションは、日本の企業および大学、専門学校などの教育機関がどのようなこと
が組み込み業界で必要とされているのかを、「開発手法」、「プロジェクト管理」、
「品質保証・管理」、「教育」などの切り口でセミナーと聴講者参加型のパネルディ
スカションを連携企画し、セミナーによる学習とケーススタディオ及びQ&A形式のパ
ネル・
ディスカッションを用意する。
参加者への事前アンケートに書かれた質問をベースに、議論や意見交換を行う。挙手
による質問も受け付ける。
----------------------------------------------------------------------------

司会(参加者からの質問):日本の組込み開発は20年持つか?

S氏:4ビットの時代から問題を克服しながらきている。続いてアスペクトの本格化な
どがでてきているが日本がどこを世界に誇れるかすっきりしていない。ものごとが複
雑化しすぎて、達成の度合いがはっきりしない。精神的に問題があるのではないか?
セットメーカーの技術者としては、なにもやらなかったらもっていかれると感じる。
中国・韓国のやる気は感じる。なにもしないでいたら持っていかれる。

司会(参加者からの質問):開発効率が重要という意見があったが、平凡なプログラ
ムについてどのように考えているか。平凡なプログラマが平凡なシステムを作ってい
るのではないかと考えている。

N氏:いいものを作ってきたのは、スーパーエンジニアではなく平凡な人がみんなで
集まって努力することが普通にできたから。技術的な未来と客の未来を見出せること
ができるならいいが、平凡な人が集まってできる総合力を生かすことができないとま
ずい。それを生かせるような方向にもっていく必要がある。

S氏:効率がいいのが、ホントにいいのか?開発プロセスの効率化のためにプロセス
を削減しようとする。以前の手順でやると、ある程度罠のような仕組みがあること
も。出てこれない人はだめで、でてくること自体がプラクティス。いらないからやら
ないと、安直にいってしまうと品質が下がる。開発プロセスの改善は安直には行えな
い。

H氏:商品に売るには、品質だけではなくブランド価値でうるなど何が強いかってい
うことになる。単純に何がいいか、わるいか、それらを考慮する必要がある。

K氏:何が平凡で非凡かは相対的な関係によって決まる。開発効率の高いからいいと
か、悪いとか、コスト、他のものとの兼ね合いを考える必要がある。

N氏:QCDの他にも、重要なパラメータが存在し、これらを達成しつつプロジェク
トを推進することが大事。テストの現場では、ゲーム感覚でランクの高いバグをみつ
けたり、効率がいい悪いではなく、その人たちにとって幸せな解決方法を探すとよ
い。

S氏:開発部隊と顧客の距離が離れていっている。幸せをなかなか感じられない現状
があるが、開発メンバーのモチベーションが大規模なプロジェクトに対して保たれる
のかが懸念される。

司会(参加者からの質問):ソフトウェアの設計のよさについて。デバイスソフト
ウェアの設計にかかわっています。上司や部門長にソフトウェアのよさを説明しづら
い。バグやリアルタイム性について定量的に説明できるが、フレームワークそのもの
のよさをアピールできる方法がみつからない。何かいい方法はあるか?

A氏:ベンダーが使うものを買うなら、ベンダーに説明させるべきでダメならきる。
それをできるなら手伝う。自分でやるときに、できないなら本当によさがわかってい
るのだろうか?装置が単独のものでないから台数・モデル数などから計算できるもの
もある。品質であれば、特性などから。計算できるものと、そうではないものをはっ
きり区別して説明するべき。本当にいいものだという熱意があるならば、絶対に説明
できるはず。

S氏:従来のデータとの比較はしているのか?
質問者1:見積もりをたてているが、それがホントに妥当なものかを疑われている。
S氏:上司の方の知識は?
質問者1:SW専門ではない方に対する説明が難しい。チェックポイントが通じな
い。
S氏:前段階で必要な知識などを説明しないとわかりづらいと思う。
質問者1:うまく話せていないかもしれない。フレームワークの導入自体は方向付け
されているが、そこから先の話がうまくいっていないという話。

S氏:上司の求めていることを先にキャッチアップしなければばらない。例えばバッ
クアップや新しい技術、QCDなどをアピールする。フレームワークという言葉がそも
そも曖昧なので、非常にやさしく説明する必要がある。バックデータは絶対に必要
で、少ない測定でもいいので想像の元となるようなものなど用意する。成功するとモ
チベーションにもつながる。プレゼンテーションする相手が本当に知りたいことを理
解するのが大事なこと。

A氏:会社のほうが、フレームワークをおしつけて、現場がなんとかするのが普通で、
この事例は逆であると感じる。上の方にわからないような人がいるなら、その人は不
適格である。

質問者2:技術ばかりやってきたものが、人数の問題で課長に3人。マネージメントを
知らない上司をどうやって変えていけばいいのだろうか。

S氏:人事システムのほうに、小さくてもいいからグループリーダーの経験が必要で
あるといった仕組みが必要である。

S氏:品質システムは誰のためかというと、自分達のためのものである。監査員が定
期的にくるはずなのでしかるべき措置を講じるべきである。

N氏:人事上では、また別の問題になるので難しい問題。その人たちの、現場に近い
人で尊敬されている人がいればうまく話しをしてもらう。一目置かれている人とコ
ミュニケーションを円滑に。

質問者3:道具の話に関連。パネラーの考える理想の道具、こだわりの機能というの
はありますか?

H氏:オブジェクトオリエンテッド、クロスコンパイルで落とすといった機能は当た
り前ですが、ツールは大抵汎用的にできている。必要以上にカバーしているツールの
ほうが多い。ツールベンダー側からいうと、例えばeclipsをオープンにするなど、コ
ミュニティに巻き込もうという考えもある。

S氏:2点求めるものがある。1つ目:そのツールを使うと仕事を教えてくれるものは
道具としてよい。2点目:はやりに関係なく、現場で行っているもの問題を解決する
ための道具。人が中心で考えて、そこに合うようなツールがベスト。ツールに使われ
るようではまずい。

A氏:よくするために、道具は自分で作るという位置づけもあると思う。ちょっとし
た変換のツールなどは日ごろから作っているはずなので、それらが固まってきたとき
にツールにするっていうのもあると思う。

A氏:御輿をかつぐ者もいれば、乗る者もいる。それらのわらじを作る人もいる。道
具を作る人もいれば、それを使う人もいる。早く作るための手段か、安く作るため
か、安全に作るためか、性能をよくするためか、これらを実現するための手段であれ
ば、必ず評価されるものである。逆にこれらを忘れると、消えていくツールになって
しまう。ツールとは手段である。

F氏:ツールベンダーの使い方を必ずしも信頼しない。他にも使えないかという潜在
能力を探す。ツールベンダーのいうことも知った上で、それ以外の視点も持つという
考えもある。

N氏:ツールベンダーの営業は、信頼しすぎるとまずい。ツールベンダーのエンジニ
アは、ベンダーが決めた使い方やアーキテクチャしかしらない。ツールのことしかし
らないようなものでなく、方法論をいう。いいベンダーは自分のツールでなくてもい
いけど、これはできないけど、ということを教えてくれ、なにをするべきかというこ
とを教えてくれる。ツールはアウトプットと関連する。効率をあげるためにツールを
いれたがる場合があるが、その前の方法論が成熟してからにするべき。

質問者4:文系の大学に関っているのだが、組込み関連の企業に就職(波形)が決
まったらしい。アドバイスがあれば教えていただきたい。

H氏:一般的に入社までどこに入るかわからない。大学で組込みシステムを教えてく
れるところは少なく、ソフトウェアの生産性の講義はない。特に組込みに初めて関わ
ることへの心配はないだろう。キャリアパスを明確にもっているなら、転職を含めて
考えるべき。

S氏:SSESTの実行委員になるといいと思う。ETでもなんでも、業界に人脈を作って勉
強するとよい。

S氏:特に最近珍しいことではないと思う。理系との違いが何か、図面の読み方など
そういったところからはじめるとよい。

N氏:転職などを考慮しつつ、自分の価値を高めるようにする。コミュニティにいく
こと、外に出ること。常に考え続けること。なんでそうなるのか、どうやったらそれ
ができるのかということを考えるのが重要。