セッション名	:SWEST/DAS共同招待講演2
タイトル	:EDA in and beyond late CMOS era:2015年の設計を考える
講演者		:井上隆秀 (University of California, CITRIS Institute)

*ムーアの法則
1965年,ゴードンムーアは「今後半導体は,微細化技術の発展により,2-3年の周期で,
同じ面積(同じ価格)に2倍の素子を集積し,(かつ性能向上(1.4倍)と低消費電力化
(半分)を実現して)発展する.」と予言した.

*ムーアの法則の功罪
ムーアの予言は法則化され,今やSoCに集積されるトランジスタの個数は1億を超えている.
ムーアの法則に牽引され,半導体産業は成長を続け2000年では世界で20兆円の売り上げを
挙げている。日本は,最もシェアが大きかったときに50%近いシェアを占めていた

*Technology Outlook
微細化の限界に近づきつつある.プロセスの視点からは,加工限界やコストの問題があり,
設計の視点からは,電気特性のスケーリングの問題などが挙げられる.

例として,トランジスタのゲート長のばらつきによって,性能が30%向上すると,
リーク電力が5倍程度になってしまう.

*Late CMOS
微細化を進めることによって,性能のばらつきが大きくなる傾向にあり,最悪ケースでは
微細化の低い設計より性能が低下してしまう可能性がある.

また,微細化が進むとランダムな欠陥にかわって,光学系や素子,配線のばらつきなどSystematic
な歩留まり低下が見られる.これらは設計技術によってカバーできると見込まれている.

*微細化依存からの脱却
過去40年間,ムーアの法則に代表される微細化によって半導体は発展してきた.
しかしながら,技術,ビジネスの両面でムーアの法則が機能しなくなっているように見える.

Technology
・LinearScalingの終焉
・Scaling頼みのPerformance向上の行き詰まり
・バラつき制御の行き詰まり.
・信頼性低下
Business
・設備投資の巨大化
・製品開発費の巨大化
・製品開発リスクの巨大化
・開発期間の長期化
・巨大な投資・巨大なリスクに見合う商品群の発掘
・新規競争参入者による競争の激化

今や,半導体にはムーアの法則に変わるパラダイムが必要になっている.

*2015年の半導体

IEEECAS参加の組織CANDEと相乗りで10年後の予測アンケートを行った.
*シリコンバレーでのアンケート結果

1.ムーアの法則は相変わらず半導体技術とビジネスの牽引車ですか??
海外,国内ともに2/3がNOと答えており,YESと答えた回答者も広義の微細化を前提としている.

2.2015年の半導体業界の構造は今と同じか?
海外,国内ともにビジネスモデルは変化すると答えた.国内の大半は分業化,海外シフトが
進むことを挙げているが,海外はこれらはすでに織り込み済みでconsolidation(連携,統合)
という表現で変化すると指摘している.

3.2015年の社会は,大局的に現在と同じですか?
海外は,ボーダレス化の進行を指摘し,それをポジティブに捉えているが,日本は民族宗教
国家間の摩擦が増えると悲観視している.

4.あなたのお子さんの世代に,半導体分野を職業として勧めますか?
海外は60%勧めると回答し,高収入の期待は少ないものの,イノベーションの源泉であること,
人とのつながりが素晴らしい社会であるという意見を持っている.また,ボーダレス化によって
国籍での差異,メリットがなくなることを"どこにいっても働ける"とポジティブに捉えている.

日本は,20%が勧めると回答し"労多くして益少なし","淘汰産業である"といった意見があった.

・半導体イノベーションの源泉は?
国内はアプリケーションドリブンで,家電やユビキタスが源泉になると答え,
海外は同じアプリケーションドリブンであるものの,エネルギーや環境,医療などの
社会インフラが源泉になると回答している.

*DASでのアンケート結果
1−3は他の結果と有異差がないが,4は一般の日本人より勧める人が多く,
勧める理由として,技術的発展がまだまだあることなどが挙げている.

イノベーションの源泉は応用中心で通信ネットワークであると回答している.

*SWEST7でのアンケート結果
1−3は他の結果と比べてあまり差はない.

4に対しては22%勧めると回答している.勧める理由は好きであることや充実感,基幹産業
になると予想されることなどを挙げている.勧めない理由はデスマーチであること,社会
とのつながりが薄いことなどを挙げている.

ここで質問タイム

Q.米国のシリコンバレーとヨーロッパでは考え方は違うのでは?
A.中国とかでは結果は違うかもしれない.ただ,回答者はアメリカ在住のヨーロッパ人や中国人をふくんでいる.

Q.シリコンバレーは日本で言うと田舎から出てきてがんばっている人のイメージがありますが...
A.このアンケートはワークショップ@シリコンバレーにおいてドクターや研究者や技術者に質問しました.

Q.インテルなどマルチコア化進めている.今後どうなるか.クロックは上がっていくか?
A.シングルプロセッサでも微細化による高速化が可能だった.インテルは壁を感じており,
複数プロセッサに進んでいくだろう.

*パラダイムチェンジ

Technology out から Market in 発想へ転換する.微細化,製造,国内,勝ち負け中心
思想では行き詰る.

製造絶対思想からサービス重視発想へ転換し,勝ち負け中心より協業共生を重視する必要がある.

*IT技術が社会経済に与えるインパクト
例として,センサネットワークの規模は2010年には3兆円程度になると言われている.

*まとめ
・今こそムーアの法則の呪縛を解く時である.
	−益より害のほうが大きい
・3段論法
	−半導体の3年先は分からないというが,一方社会を考えるとき10年先だと短いと感じる.
	−半導体ITは社会のあり方に深く関わるようになった.
	⇒社会文化から考える半導体ITの10年ヴィジョンは肝要ではないだろうか