分科会F3 オープンソースは組み込みシステムに適用できるか? C会場 参加人数20人程度 司会:SWEST5実行委員 宿口さん ■オープンソース - 世の中で言われているほどには普及していないが... - 使われている例) COCOON,ZAURUS おそらく、「あらゆる意味で手の内にない」という点が不安 たとえば、「他人のプログラムは絶対使わない」という開発者がいるが、 これは「何か起きたときに責任が持てない」ことの裏返しであろう。 ■疑念 ------------------------------------------------------------------------------- ソースコードの品質について ------------------------------------------------------------------------------- ・ Reviewer - スキルが高くなければレビューの意味がない - (スキルを持った人間をアサインして品質を高める) ------------------------------------------------------------------------------- 保証について ------------------------------------------------------------------------------- - 何かしら瑕疵が発生してきたときに、誰が責任を負うのか ------------------------------------------------------------------------------- 継続性について ------------------------------------------------------------------------------- - 開発コミュニティーがある - メンバーのモチベーションをどこまで保持できるのか - 10,15年メンテナンスをしていかなければならない - そのコミュニティにつきあっていくだけの力があるか - 学生が作っていて、その学生が就職されると忙しくなってバーションが止まっている  フリーソフトウェアがある(例) ------------------------------------------------------------------------------- 知的財産権問題について ------------------------------------------------------------------------------- - コチフォントの問題 15年後に発覚 - わからないままに法律違反を犯していることがありうる - 企業としては怖い ------------------------------------------------------------------------------- 開発環境について ------------------------------------------------------------------------------- 実はコミュニティーに依存してしまう 例) eclipse ------------------------------------------------------------------------------- オープンソース==フリーソフトという誤解 ------------------------------------------------------------------------------- (偏見かもしれないが..) 企業だからまともにやってくれるだろう フリーソフトウェアは自由なソフトウエアである 無料とは観念が違う ------------------------------------------------------------------------------- エンジニアAさん: ばりばりに使っている 業務用の携帯の端末を作っている 最近値段的な 適用している分野を作っていこうとしている 自社製品に使用できるか 製品レベルで使えるもの ・TOPPERS 「オープンソース==使えるだろう」の肯定的な立場から 1.品質面 2.守秘義務 についての議論 1.品質 どの程度のものでいくか(保証) 人の目に触れるほど品質が上がっていくのではないか ~~~~~~~~~~~~~~~~~ これをreviewというかどうかわからないが, 品質はオープンソースの方がよい,と考える 2.オープンソースと守秘 下の方のドライバは法的に保護されない方向にある アプリケーション開発など,収益の"軸足を上に"移しつつある 「今後はオープンソースに流れるのではないか」 ------------------------------------------------------------------------------- 内藤さん ■オープンソースを使っていて困った話 newlibcを使っていて,最初はライセンスによって自由に使えると利用していたが, 気が付いてみると20から30のライセンスが全部並列に並んでいた. -ライセンス的に危ない 微妙に違うライセンスのオープンソースが寄り集まっていくのに伴い別の問題 「オープンソース自体の未来はあると思うが、それがより集まってきたときに別の法的な 問題が露呈するのではないか」と危惧している. ------------------------------------------------------------------------------- 邑中(もなみソフトウェア) オープンソースを広くとらえ,シェアードソースを含める もともとソースを公開していることが多く,親和性が高いと考えられる オープンソースの利用には正直苦戦している いろいろな理由があるが,オープンソースが成り立たない、という意味ではない オープンソースは利用しているが,現状では売り上げの2%未満である オープンソースがどんどん進んでいくと,プログラマの分類が製造業ではなくサービス業 になる 酒屋に近いかもしれない - 造り酒屋のようなもので - 流通が発達していくと,お酒を売っていたり, - もともと製造業だったのがサービス業に転換. - しかしお酒に関する知識は必要 オープンソースが発達すると、パラダイムシフトが発生する可能性 法的な面で,懸念があるようなので,ELTの江端さん ------------------------------------------------------------------------------- 江端さん(ELT): ・オープンソースであること ・ライセンスがフリーであること は別々である ソースコードがオープンであることがよいこと 通信プロトコル関係はソース持っているところが多い 「何かあったときに,ソースがあればなんとかできる」 万が一責任が取れなかったとしても,版権(はんけん)で責任を取れる オープン・クローズにかかわらず,自分自身で責任を100%持たないといけない ■ディストリビュータの意味合い ・素性のはっきりしたものをパッケージングする ・メンテナンスしていく の二点 ■ディストリビュータをどう利用するか 保証、瑕疵、侵害 100%ではないが、クローズドに近くなる ■フリーの意味 あまりフリーを積めてしまうと、モチベーションをどれだけキープできるか ■コミュニティーについて コントリビューションはある程度利用する側でも持たないといけないのではないか 広く,薄い範囲で金銭的な財源をキープできることが望ましいのではないか ------------------------------------------------------------------------------- オープンソースを「使ってしまった」立場から 清原さん(SHARP) ■オープンソースを利用した商品開発例 オープンな環境でのソフトウェアのつながり ・Linux ZAURUS daemonの部分にオープンソースを使った GUIはQtのEmeddedバージョン(半分GPL) アプリケーションはオリジナルのものが多い JavaはSunと共同 あちこちでオープンソースを利用 ☆Linuxの特徴 1.安定性 - いろんな使い方や移植で踏み固められた土台 2.メンテナンス性 - いざとなったら、システムに合わせて改良 - バグに対しては素早いレスポンスがあり、修正、リリースが速い 3.自由なカスタマイズ - 組み込み機器では重要な機器や用途に応じた最適化が可能であり、OSベンダー の意向に合わせる必要はない ☆Linux採用の課題 ・ザウルスの発想 4畳半に、あるときは布団、あるときはちゃぶ台を出して限られたリソースをうまく 使う。 LinuxはUNIXを源にしており、サーバやPC用として発展してきたため、モバイルツー ルとしての最適化が必要である「少ないリソースをいかに使うか」 ・Linux/Java採用のPDAが少ないため、商用アプリケーションソフトウェアが少ない ☆コミュニティーの活性化 ・品質と保証がない ・オープン化するための作業と対応が馬鹿にならない工数 ・着眼点が異なるので、ここはお家芸の貧乏人育ちの生き方を注入する ・GUIツールをPC向けLinuxと同じqtをプラットホームとして採用し移植の流れを作った ・日本企業の得意な分野,品質レベルを向上しないと商品にはならない,これが一番大 ☆開発環境 SLシリーズのザウルス一台で,C,C++.Javaの3つの主要開発言語が使える ☆どうねらったか 商品を出すということで、以下の循環を目指した。 ↓ --------------------------------------- | オープンな環境、ソースコード公開 | --------------------------------------- ↓ オープンソース開発者による投稿 ↓ --------------------------------------- | ソフトウェアの増加、改善 | --------------------------------------- ↓ 公開情報とソフトウェア資産の蓄積 ↓ --------------------------------------- | 開発者、ユーザ増加 | --------------------------------------- ↓ 用途の広がりと新しい需要の創造 ↓ --------------------------------------- | 異なるセグメントの開発者の増加 | --------------------------------------- ↓ 新たな製品ニーズの高まりと送出 ↓      (はじめに戻り循環) --- 現段階での、PDAにおける活用事例でした [質問] 法律、知的財産の件はどうしましたか [回答] GPLというもの,外よりも仲間を説得するのが難しい 「なぜこれまで公開しなかったものを公開するのか?」 法律の問題にいては社内の専門のスタッフにお願いした 当初はdistributerを使っていた(lineo社) そういうのを経て商品として出せるものになった ------------------------------------------------------------------------------- 若林さん(TOPPERS) ソースのコード品質,責任は痛いところをつかれている 自分たちが使っておもしろいものを作りたい 個人でおもしろいと思えば,全力で取り組むだろうし、 企業とは違ったメリットがある ・自分のモチベーションを技にする ・義務感でやっている,と思うと進まない ・周りから刺激を受けるとやりがいとなる [質問] 財源がないことについては? [回答] 先生は職員なので,給料が出ている 学生はソースコードと授業料を提供する 生活費と授業料がもらえないと在学することもできない ------------------------------------------------------------------------------- 石川さん(SIA) 先ほどのZaurusの話を聞いて,動いているものを見せて「やった」ということを見せる 方が印象が強い,と感じた ・適用できるか,はお客さん次第 ・外的環境に左右される,という現実的な問題がある ■「フリーソフトウェアと自由な社会」(ストールマン講演集)より ストールマンが何を考えてフリーソフトを始めたか、がわかる --- もともとソースコードは公開するものだった ↓ ストールマンのところにXeroxのプリンタが納品され,それが度々紙詰まりを起こしたた め,Xeroxと共同で開発を行っていた大学の研究室を訪ねた.しかし,Xeroxとの契約に よりソースコードを見せてもらえなかった ↓ お金をもらっていることでプログラマがお互いにソースを見せあう,といったことが できない ↓ 「プログラマが分断されてしまう」危惧 ↓ フリーソフトウェア財団を設立した --- 違った企業の人が話をする機会がこれまでなかったが,話し合える場があるとよい。 ------------------------------------------------------------------------------- 小川先生(名古屋市工研) ザウルスが出たときに,開発させてほしいという旨をSHARPに伝達したところ,4ヶ月 近く返事が返ってこなかった。 [質問] ZaurusOSをなぜ公開してくれなかったのか、 [回答](清原さん@SHARP) 前のソフトウェアをどうするか、はどんなシステムにでもつきまとう 社内的にはMIザウルス互換ライブラリを準備(特定法人向け)しているが 立場としては徐々に移っていただきたい,と思っている [質問] なぜ旧ZaurusOSをオープンにしなかったのか [回答](清原さん@SHARP) うまいシフトの仕方を見いだせなかった,というのが正直なところ --- 公的な支援機関、企業などが入って参加メンバーがお金がついて集まってくるパターン ではうまくいかないのか,モチベーションを維持できるかが心配. [例] Vz-editorの開発者はWindows版を作りたくない,といっていたが情報が公開されていな くてあきらめた 「移植していけるかどうか_」 次のプラットホームに対しうまくいくかどうか? 公的研究機関にはテストができるメンバーがいない - このようなソフトウェアの品質保証は公的機関でやりたいと思っているが,公的機関 というものは「やれ」言われなければやらないものだ ------------------------------------------------------------------------------- 中島先生(Emblix, 早大): ■オープンソースに対する感想 1.オープンソースベースのソフトウェア開発 - 安定したソフトウェアを作る - 新テクノロジに追従 - 成果を共有する - もしgccがなかったら? - 問題はいっぱいある - 複雑なソフトウェアを安価に作っていくという点では他にいい解決法がないだけ 2.オープンソースの問題点 ライセンス,特許,責任の問題 最も大きな問題は革新を起こしにくいこと - 10年後のOSをオープンソースによる既存のOSの進化として作ることは難しい 3.仮想マシンを用いたアプローチ               App   App |_______|_______| 付加価値コンポーネント → | linux | uTron | | | | --------------------- 仮想マシンモニタ 信頼性、セキュリティ、安定性の強化 4.結論 オープンソースを進化させるのは難しいのではないか オープンソースコミュニティとアカデミックコミュニティは乖離している アイソレーションのサポートは複雑化に対する有効な解決法 オープンソースはどんな場合に有効? →共有することに効果がある場合は有効 ■TOPPERS-JSPを利用した開発環境 ・国の予算でやっている->成果を公開する 研究が終わった後,実際に商品とすると,「サポート」がいちばん問題となると 思われる→こちらが不具合に対応できるか? →実際にカーネルのコードを書いていないので,悩ましいところではある 利用している人間に対し,開発する人が少ない! →コミュニティを作っていくのが難しいことを危惧 [質問](中島)TOPPERSをやっている人に質問: 大学には組み込みシステムの開発をやりたいと思っている人は多い ミドルウェアがない,ということが問題 そこをうまく解消すればコミュニティが育つのではないだろうか [回答](回答者不明) 製品展開できていないところが問題 端末機器、市販機器が出回りはじめたところなので,これからTOPPERS-JSPを 使う企業は増えていくと予想される ミドルウェアがないから,について - 広域コンソーシアムではTOPPERS用TCPスタックを作成 - 企業がいるとお金にならないとダメ ToppersがNPO法人を作ったのに直接関係あるかどうかわかりませんが, 種はあります 来年?再来年? コミュニティが育たない,について - その通りという部分があって反省 - Toppersに限らずオープンソースコミュニティの人たちはばりばりで周りの人  たちが退いてしまう - 周りにウォッチしてくれる人がいるということで温かく見守る必要がある ------------------------------------------------------------------------------- エンジニアAさん: ■組み込みこそオープンソースであるべきではないか? 普通のソフトウェアと異なり、装置がいくらでて、成り立っているところがあるので 組み込みが一番オープンソースに向いているのではないか,と. やはり,「使える」のではないかという意見が大勢を占める. 使う上では問題が山積しているのではないか 責任をとりたくない - 製造者責任、ということがはっきりすべき - ここに一つのオープンソースの適用の問題があるだろう ■オープンソースをどう使うか ソースコードを共有していくことでその先に明るい未来があるのかな(?) 以上 記録者自身の感想: 議論が活発だったので記録の方が追いつかず抜けてしまった部分も多々ありました。 すいません。その後もSWEST-DISCUSSで議論が続いているようですので,議論のきっかけ を思い出す手助けとなれば幸いです.