チュートリアル2 セッション C3 タイトル: 「使用する側から見た Real Time OS の現状と要望」 Real Time OS (ITRON) の基本のキから新しいプロジェクトの提案まで チューター:岸田昌巳 会場   : E会場 80席 参加者  :40人程度 ----------------------------------------------------------------- 発表の流れ 1) Real Time OSの特徴 ・組込みとは?からRTOSの機能まで 2) 製品としてのRTOS ・おすすめのRTOSと競合製品 3) RTOS への要望 4) リソース ・ソフトウェアのソースや解説図書など 5) まとめ 6) 質疑応答 −−−−− 1) Real Time OS の特徴 ・組込み分野ってなに?  コンピュータらしくない外観を持つ制御システム   工業製品から娯楽・教育機器まで   製品によって時間的制約は様々 ・Real Time OS ってなに?   必要な処理を即時に処理できるOS   即時処理を行うための工夫があるOS ・適応範囲   Real Time OS の適応範囲は,おおよそ数マイクロ秒から数百ミリ秒までの間   ・要求される処理時間が短い(数マイクロ秒以下)→ CPUでの処理が難しい   ・要求される処理時間が長い(数百ミリ秒以上) → RTOS でなくてもいい   シングルタスクによるリアルタイム処理の破綻   ・相次ぐ仕様の追加により,初期(仕様追加前)のシステムで設定されて    いた制約条件が守れなくなる.   ・ピーク時に必要とされる(ハードウェア)性能を満たさないと,最優先    の処理すらも遅れる RTOS を使うメリット  タスク(機能)ごとに優先順位を設定可能   ・無駄な処理が明確になる   ・改善すべき点が明らかになる  ピーク時に優先順位の低い処理が遅れるが、   ・優先順位が高いタスクは遅れにくい   ・最優先のタスクは遅れない  上記より、より少ないメモリ,より低クロックでも十分動作可能となる  RTOS の特徴的な機能   優先度ベースのスケジューリング手法    実行可能状態で最も優先順位が高いタスクを実行    ※優先順位の低いタスクは全く実行されない  OS(ITRONの同期・通信手段)の各々の利点/欠点  ・イベントフラグ,メールボックス(通信手段)    起動トリガをかける側,処理をする側が明確  ・セマフォ(同期手段)    トリガをかける側,処理する側に分かれていない    他のタスクを待たせるので、タスクの優先順位制御に問題が生じる。 2) 製品としての RTOS  RTOS はいまだ一般的ではない → 地道に状況を改善中  使うなら ITRON がお勧め    国内では採用例が多い    書籍,情報,教育環境などが整っている.  ITRON の使い勝手は?    μITRON 3.0     ・特に不満はない    μITRON 4.0     ・オーバーランハンドラなど,欲しかった機能がついた    今後の期待(要望)     ・タスク群を対象にしたシステムコールの追加     ・大規模な開発を視野に…  μITRONの競合製品   RT-Linux, RT-Mach    利点     ・POSIX互換→ UNIXAPIを使用したアプリが流用可能     ・TCP/IPをはじめ,通信(ネットワーク)に強い    欠点     ・全てが Real Time ではない     ・OS自体が大きいので保守管理が大変   NetBSD    利点     ・POSIX互換     ・通信に強い     ・Linuxに比べ頑強な(といわれる)カーネル       例:同CPU,同負荷の状況でNetBSDとLinuxを比較すると、         Linuxは優先タスクが落ちることがある     ・ソフトウェアの構造が整理されている     ・Linux の割込み応答は、今一つ遅い    欠点     ・RTOSではない   OSEK/VDX(自動車制御用途、ヨーロッパで仕様策定)    利点     ・テスト仕様が明確(テスト仕様も規定されている)     ・CAN(Control Area Network)の仕様を定義      (CANのためのOS仕様)     ・構成規模に対する柔軟性が高い    欠点     ・実績,情報,教育の面で不利   Enea OSE(携帯電話用途)    調査中 3) RTOS(μITRON)への要望  ドライバの充実    新しいデバイス用のドライバ  プロトコルスタックの充実   IPv6, USB, Bluetooth, IEEE1934  解説図書,資料の充実  良質なサポート    教育    設計    コンサルタント     利用者には部品として提供されるOS とターゲットとのマッチング     が判りにくい。 4) リソース  RTOS   約100社から発売中 → 売り物のRTOSは数多い   Free な ITRON も存在する    豊橋技術科学大学(TOPPERS/JSP)  解説図書   インターフェイス '93.12←お勧め  コンサルタント   合資会社もなみソフトウェア (http://www.monami-software.com/) 5) まとめ 組込み分野では ITRON が有望 ユーザから見て,欲しいものはそろいつつあるが,まだ足りない.  ドライバ,プロトコルスタック等のソフトウェア  資料,解説図書  サポート/コンサルタント ----------------------------------------------------------------- 質疑応答 Q: C++ + ITRON では,たとえばデバッガで変数が見えない等,開発環境  が未熟だと思うのだが,何か適当なツールはないか? A: C++が組込み分野で広く使用されていないこともあり、適当なC++の  デバッグに適したツールは見当たらない。  統合環境としては、eSol(旧ERG)のeBinderが有力。  今後の展開に期待したい。 Q: タイミングの保証のためには,シングルタスクで割り込みを使うのが  確実である.RTOS を使ったとき,割込み処理と,最優先のタスクのみ  しかタイミングの保証がされないのではないか? A: ご指摘の点は正しい。しかし、各処理の最悪処理時間が判れば、優先  度の低いタスクの遅延時間は、それよりも優先度の高い処理時間の和  である。この遅延時間が要求を満たすのなら問題は無いでしょう。 etc. かなり以前のインタフェースが紹介されているが、CQ出版ではコピー サービスを行っているとのこと。詳細は各号の編集後記辺りにあり。