********************************************************************** セッション: SWEST 基調講演 テーマ:二輪車情報学 Bikeinformatics   〜自動二輪車によるセンシングデータの収集基盤の構築と課題〜 講師:木谷 友哉(静岡大学 准教授) 日時:2016/8/25 13:20-14:50 参加人数:約200名 ********************************************************************** アジェンダ □導入 □世界の交通の中の自動二輪車 □社会インフラとしての二輪車センシングデータの活用 □二輪車車載センサによるセンシングインフラとビックデータの創出 □まとめ □質疑応答 ----------------------------------------------------------------------- □導入 ■情報科学的二輪車研究Bikeinformatic バイオインフォマティクスをもじった。 当時、googleで検索したところヒット0件だったので採用。 ■自己紹介 木谷 友哉 奈良高専から大阪大学編入(博士取得) 教員として、奈良先端大→静岡大学 研究分野:組合せ最適化をベースに、FPGAのフロアプランやネットワークトポロジなどへ応用。 その流れで無線ネットワーク、センサネットワークから高度交通システム(ITS)の研究へ。 ■二輪車センシング基盤 全ての二輪車にセンサをつけて、 そのインフラから得られたビックデータを活用できる基盤づくり。 ①二輪車センシングのHW&OSの開発 ②電子基準点のデータや車体運動データを用いた測位高精度化 ③地図や気象などの外部のオープンデータを用いたデータアノテーション ④オープンデータとして利用可能なAPIの提供 □世界の交通の中の自動二輪車 ■交通の中の二輪車 四輪車とくらべて事故時の重症率5倍、致死率2.5倍と危険。 車体が小さく、費用も限られておりITSデバイスを搭載できない ■生産台数と国内メーカーシェア 二輪車も四輪車匹敵する生産台数がある。 アジアを中心に人気。 国内メーカーシェア:49% ■国内の二輪車 原付の販売台数が大幅に低下。軽自動車の台頭。 未舗装道路が多いアジア地域は軽自動車より150cc以下の小型二輪が人気。 ■新興国(主要市場)での二輪車 一人あたりGDPが3000ドルを超えると自動二輪車が普及しだし、 1万ドルを超えると車にシフトしていく。 自動二輪車は現在インドで需要が急増。 中国は経済発展に伴い低下気味。 結論:自動二輪の四輪車に匹敵する販売台数と国内メーカーシェアの高さを活かす。 ■二輪車が変える未来の交通 - 四輪車と異なる運動特性があり、乗り物としてだけでなく、身体能力の延長としてのポテンシャル。利用者の健康寿命を延ばす。 - パーソナルビークルとしての開発。 - 進化の方向性:脚の延長。転倒制御。 - 既存の交通機関と組み合わせる。加えて、省エネ。省スペース ■二輪車研究の現状の調査 自動車技術会:二輪車関連はセッション1/99,発表4/499 結論:かなり少ない。 ■ニーズ:二輪車の車体安全 二輪車のライダーを含む運動の計算モデル化が必要。 四輪車向けのITSが流用できない。 特性:ボディがロールする車体(船や飛行機もそう。四輪車だけ例外。) ■自動車技術会二輪車WGによる計測実験 テスト機材が高価、重すぎる。 ■二輪車車体運動計測について 新しいアプローチ:安価で低確度・定速度のセンサを利用して、 ビックデータ化して行う方が○ □社会インフラとしての二輪車センシングデータの活用 ■例:浜松市の道路維持 道路維持に莫大な費用。 道路が壊れる前に直して、利用期間を伸ばしたい。 問題点:いつ壊れるか分からない。 解決策:一般自動車にやスマホによる計測。二輪車でのセンシング。 ■総務省「ビックデータの活用による路面管理の高度化」実証実験(2014) バスやタクシーなどの公共機関にカメラと加速度センサをつけてデータ収集 精度十分:IRI,ひび割れ。 精度不十分:ポットホール、水たまり ■二輪車でセンシングする意義:センシング能力 二輪車は面的に走行し、センシングしやすい。 郵便局や金融機関でよく二輪車が使われ、毎日網羅的に収集可能。 □二輪車車載センサによるセンシングインフラとビックデータの創出 全ての二輪車にセンサをつけて、 そのインフラから得られたビックデータを活用できる基盤づくり。 ①二輪車センシングのHW&OSの開発 ②電子基準点のデータや車体運動データを用いた測位高精度化 ③地図や気象などを用いたデータラベル付け ④オープンデータとして利用可能なAPIの提供 ■二輪車の研究の必要性 四輪車システムが流用できない。 - 搭乗者の重量の相対的な大きさ - 操縦中の搭乗者の重心の大きな変化 移動性の違い:道路を面的に移動するため高度な測位精度が必要 価格:車体価格に比べて相対的に計測機器の価格を抑える必要あり ■どうやって/どんなデータを二輪車から得るか 方針: 二輪車の車体運動を考慮した最低限のシステム構成の中で高精度化 センシングシステムの開発: 親機:GPS/GNSS、データログ、子機:IMU×4 スマホは熱暴走や取り付けに問題があり、サブセットとして利用。 ■ビックデータである前にリッチデータであれ JSAEの二輪車WGと提案システムの比較: 誤差が累積する評価項目では精度が悪い(オフセット誤差、ホワイトノイズ等)。 逆に、累積しない項目ではJSAEのWGで使っている計測装置に匹敵。 IMUとGPSで補完しあう必要がある。 二輪特化の高精度(cm級)車線内位置推定:次世代高精度測位(RTK-GNSS)環境を準備 浜松キャンパスに基準局を設置し、浜松市内でcm級位置推定ができるように。 準天頂衛星のおかげで高さ方向の測度精度が向上。ただしオープンスカイでないと精度が出にくい。 基準局は大学が提供、移動局用受信機も低価格で試作: 3万円ぐらいでRTK-GNSSの受信機。 ■これからの二輪車情報学の道のり - オンライン化 - CANや操作入力の追加 - 画像、動画データの収集 - 機能安全(ISO26262) - センシングデータ無線収集システムの開発:オープンデータとして公開 - 位置情報による自動ラベル付け □まとめ 情報科学的二輪車研究Bikeinformatic * 二輪車に車載したセンサにより、車体運動・移動経路・路面状況をセンシング * 多方面に利用可能なセンシングデータベースの作成 □質疑応答 <質問者1> 自動二輪は四輪車にくらべて、極限環境に置かれやすいが、その対策は? (エンジン振動。雨風など) <回答> エンジン振動はそのまま。オフセットでのフィルタリングを行っている。 しかし、その他の手法はまだ行っていない。 現在、ノイズ除去の技術は望まれている。 <質問者2> bikeinformaticsの研究がもたらす経済効果はどの程度か? <回答> 道路管理の維持管理コストが削減が最も大きい。 道路行政からするとうれしく、日本よりマレーシアなどの新興国で望まれる。 <質問者3> 参加型センシングを行う場合に、 個人がセンサーをつける為の動機が弱いのではないか。 <回答> 参加型センシングの場合はライダーに付ける動機が弱いのは間違いない。 しかし、ジョギングアプリやのようにログを ユーザーにフィードバックすることでユーザー側へのメリットを生み出せる。 また、それらのデータを利用して運転技術の向上の為にアドバイスなど を行うこともできる。(ブレーキのタイミングや車体の倒しこみなどの指導) 道路行政側からお金をフィードバックするのも一案。(道路税の減額など) <質問者4> 走行情報を監視されることをユーザーが懸念する問題はどう考えているのか。 例:ETCでスピードを監視されてる疑惑など <回答> ユーザーへのプラスの側面でいうと、 一般的に事故時にバイクの人が悪者扱いになりやすいので、 ドライブレコーダーとして証明材料として利用できる。 仰るとおり、ユーザーへのマイナスの側面として、スピードの監視は議論の対象。 現在、警察研究所の人曰く、制限速度の取り締まりに利用するつもりはない。 今後の要相談項目ではある。