****************************************************************************************************************************** セッションS4-c チュートリアル1 テーマ:マルチコプタ型ドローンのための制御と組込み技術 講師:三輪 昌史 氏(徳島大学) 日時:2015/8/28 13:00〜14:20 参加人数:約30人 ****************************************************************************************************************************** ・ドローンとは  センサーで得た情報をリアルタイムに送ることができる無人機を指す。これには地上の車両や、 自動操縦及び遠隔操縦のものを含む。テレビなどでドローンと言われているものは、マルチコプタのことである。 ドローンという名称は、1939年に販売されたデニー模型飛行機をアメリカ陸軍が標的機ターゲットドローンとして採用した時に使われ始めた。 元々は雄の蜂、蜂の発する音を意味する言葉であり、模型飛行機の音がこれと似ていることから名付けられたと考えられている。 ・マルチコプタとは  ヘリコプターの一種である。公式記録で世界初のヘリコプターといわれているのはマルチコプタであった。 1999年頃にアメリカのベンチャー企業が開発、販売し始めたのが最近のマルチコプタの始まりと言われている。 その後2007年頃にドイツで作られたマルチコプタが話題となり、流行となるに至った。 マルチコプタは基本的に無人航空機であるが、有人化の研究も進んでいる。 ・無人航空機とは  UAV、無人機ともいう。人が乗って操縦しない航空機のことであり、ラジコン飛行機全般を指す。 市販されているマルチコプタ、ドローンは基本的にこの無人航空機に該当し、ラジコンヘリコプタとして扱う必要がある。 ・マルチコプタの構造  複数のロータプロペラがあり、その配置によって十字型、X字型に分類される。ラジコンのトランスミッター(送信機) から送られてくる命令をレシーバー(受信機)で受け、その後は通常のラジコンの様に直接モーターに命令を送らず、 フライトコントローラーと呼ばれるコンピュータに送られる。ここで各モーターの出力の計算を行い、飛行の制御をする。 さらに、GPSを用いて、地図上で指定された座標に飛ばす事もできる。 ・マルチローターヘリコプタの制御  機体の傾きの制御、及び高度の制御に推力を、機体方向の制御に反トルクを使用している。移動方向の制御は基本は姿勢制御であり、 水平を維持するとその場でホバリング、機首を上げると後退、下げると前進、右に傾くと右にスライド、左に傾くと左にスライドとなる。 機体特性の式の算出は資料(PDF)P13〜P16を、送信機の説明は資料(PDF)P19〜P20を参照。 ・基本的な機体の構造  三輪氏が開発した機体をスライドで映しながら紹介し、その構造、センサ等を説明した。 ・マルチコプタの制御  姿勢を傾けることで、機体は移動するという特性を利用し、姿勢制御系を構成することで、無人航空機の操縦が簡単になる。 さらにこの姿勢制御系にGPSを用いて目標位置と現在位置の誤差を計算し、誤差に応じた目標姿勢をあたえると、自動航行することができる。 ・研究中の機体の紹介  三輪氏の研究室で開発した機体を紹介した。以下の様な内容であった。   ・機体の上に縦長の物体を載せてある機体の映像    …本来はバランスが取りづらい機体でも制御出来る。   ・任意の機体の傾きで飛行できる機体の映像    …狭い隙間など、状況に応じて飛ぶことが出来る。   ・荷物を自動で運ぶ、操縦をなるべく減らした機体の映像    …手で押す、荷物を乗せる等を制御系に組込み、難しい操作を減らすことが出来る。      ・実験トンネル内で機体に装備してあるカメラの映像を見ながら操作し、障害物を避けながら課題をクリアする映像 ・無人機の運用に関する法律  関連するものとして以下の法律がある。   ・航空法    …飛行機の安全運用のため、飛行機の邪魔になるようなことはしてはいけない。   ・電波法    …免許や周波数、出力などに注意し、他の電波を扱う機器の邪魔をしてはいけない。   ・道路交通法    …車にぶつかる等により交通の邪魔となるため、道路の上では飛んではいけない。   ・民法    …他人の土地の上を勝手に飛んではいけない。   ・地上自治体の条例    …人の安全を考慮するため、公園等人の多い場所で飛ばしてはいけない。 ・航空法の改正について  7月14日の閣議において航空法改正案が承認され決定された。本延長国会にて審議議決される。   1.1平方キロメートルあたりの人口が4千人以上の地区は国土交通省令でいうところの、 人または家屋の密集している地域に該当するために、飛行禁止空域となる”可能性が高い”。     http://www.stat.go.jp/data/chiri/gis/did.htm     例:東京23区はすべて飛行禁止空域     例:徳島大のグラウンドも飛行禁止空域   2.ただし、国土交通大臣が安全が損なわれるおそれがないと判断した場合はそのかぎりではない。     国交省航空局の考えではミニサーベイヤーコンソーシアム会員のように安全ガイドラインを設けて、     技能検定も厳格に実施している団体所属の会員は申請すれば飛行禁止空域でも飛行許可を取得できるとのこと。   3.したがって、飛行を予定している者は、飛行許可の申請をする必要がある。1回承認されると     最大1年間有効である。それ以降は再度許可申請を行う(期間延長も検討中)。     これに違反した場合は罰則が適用され、50万円以下の罰金が科される。 航空法改正案が国会で可決されると、3か月の猶予期間を経て、施行される。この3か月の間に飛行許可申請が必要。 ホビーと業務で分ける可能性がある。しかし、屋内での飛行は規制されないため、簡単な実験等は屋内で出来る。 ・マルチコプタの使用例  以下の様な例が紹介された   ・空撮    …エアロサービスという企業の空撮専門の機体のプロモーションビデオ、三輪氏の実家の山の撮影をしている映像をみた。     任意の場所に飛ばして撮影をすることが出来る。ただし法律改正により有視界に限る。   ・橋梁検査    …エアロサービスという企業の機体をつかった橋梁検査の映像を見た。     現在は法律上、目視で検査をしなければならないが、技術が向上すればドローンによる検査のみで済むかもしれない。 その他、農薬散布、光ファイバーケーブルの敷設が例としてあげられた。 ・無人機のリスク  空を飛ぶものは落ちるということを考え、確実に電源を確保すること、メンテナンスを適切に行うこと、 落ちても問題ない場所で飛ばすこと、保険に入ることなどが必要である。 例…モータの要求電流に対しアンプが対応できず、破損・発火を防ぐために停止、墜落した。 ・マルチコプタ運用での問題点  マルチコプタ用フライトコントローラーの高性能化・低価格化により、操縦が簡単になったため、 経験・知識・技量がなくても運用可能なった。これにより無茶な飛行が増加した。  ・名古屋でのテレビ塔付近での空撮と墜落   …電波を確保できずに墜落した  ・お台場 観光客頭上でのガンダム空撮   …人の多いところでは墜落した時に危険  ・吉野川花火大会での花火開花半径内での空撮   …花火が直撃したら墜落 ・安全性に対する意識の違い  ホビーとしての従来のラジコン飛行機、ラジコンヘリコプタは訓練しないと飛ばすことができないため、 基本的に決まった場所で実施する。よって自然にルールを学び、それを守る様になるため安全対策はできる。 これに対し、マルチコプタ習熟がほとんど不要であるため、どこでも飛貼せてしまう。 よってルールを学ぶ機会が少なく、安全対策が不足しがちである。  また、業務としての空撮では撮影対象は不特定の場所であるため、ホビー以上の安全対策に加え、事前の通報や許可申請等が必要である。 さらに、依頼者はたいてい危険性を認識しない、できないため、運用者は自己防衛も兼ねて安全管理する、 運用者の方から依頼者に危険性の指摘をする必要がある。 例…公園で行われるイベントの撮影の際は、主催者の他に公園の管理者、市役所、県警の許可をとる、飛行計画を提出する、 イベント保険に加入する、ロープによる繋留をするなどを行った。 ・UAV関連団体  ・一般社団法人 日本ラジコン電波安全協会 http://www.rck.or.jp/contents/index.html  ・日本産業用無人航空機協会 http://www.juav.org/  ・ミニサーベイヤーコンソーシアム http://mini-surveyor.com/  ・一般社団法人 日本UAS産業振興協議会 http://uas-japan.org/ ○質疑応答 <質問者1> ラジコンが操縦者と通信できる範囲から出てしまい、操縦が出来なくなってしまった場合、安全対策の一環として どのような処理をさせるのが一般的なのか? また、同様に電池の残量が少なくなったら? <回答> その場で降りる、GPSが使えるなら戻って降りるなどがある。飛んできたとおりに戻るという処理も研究中であるが、 電池が持つかわからないという問題がある。 電池が少なくなったら警告が出るようにしてある。どうしようもなくなったらその場で降りるようにしている。 <質問者2> マルチコプタの有人化の研究が進んでいると聞いたが、もし有人化が実用されたら航空法が適用されるのか? 公園で勝手に飛ぶのはまずい? また、1ミリでも飛べば航空機とみなされるのか? ちょっと浮く自動車とみなされる可能性は? 機体の広さは? 大きいと慣性が大きくなる? <回答> 航空法が適用される。 プロペラ付きハンググライダーの範疇(ウルトラライトプレーン)であるため、許可があれば公園等でも飛ぶことが出来る。 1ミリで航空法が適用されるかは分からないが、有人マルチコプタの実用化に向けて交渉中である。 道路交通法によれば自動車とみなされることはない。特殊車両として道路を走れる可能性はあるかもしれない。 広さは2m×3mほど。 慣性は大きくなるが、制御出来る範囲である。 以上。