********************************************************************** セッションS1-a テーマ:ワークショップによる開発プロセスの振り返り コーディネータ:木元 峰之(きもと特急電子設計) 参加人数:9名(終了時) 日時:2012/8/30 21:15〜23:30 ********************************************************************** ■はじめに 6人1チーム形式で開始(最初の参加者は6人) 本ワークショップは技術的な話よりも、参加者が普段仕事の中で行っていることと関係がある 本ワークショップの課題:意思決定 例1)ソフトウェアの仕事においてAとBのどちらの仕様ををとるか? 例2)作業が予定より遅れている場合、リリース日を遅らせるべきか? 仕事では個人またはチームでの意思決定を行わなければならない。 本日のワークを通して、どうすれば質の高い意思決定を行うことができるかを考える ■ワーク準備 準備として参加者全員に簡単なテストを行う テストについて ・参加者は個人で政治経済のテスト(難関中学入試レベル)を解く ・解答時間:15分 ・点数は気にしない ・A〜Dの4択の中から1つをチーム全体の答えとして選ぶ場合の選択方法はどうするか  →例:投票(選挙など)の場合、A:1票、B:0票、C:3票、D:2票ならばチーム全体の答えはC テストの解答用紙と問題用紙を配布 解答時間中に参加者が2人増えたため、4人ずつの2チーム制に変更 採点してチームごとの平均点を算出 採点している間にチームごとのリーダーを選出(選出方法は各チームで検討)し、 1.リーダーが他3人のチームメンバーの意見を一人ずつ聞き、チームとしての解答を作成  (制限時間15分+延長5分) 2.チーム内でディスカッションし、少なくとも全員が同意できるレベルまで議論した上で  チームとしての解答を作成(制限時間20分)  →多数決などは不可、その解答にした理由・裏付けが必要(「わからないからなんとなく勘で」は有効) 自分と違う意見があったら議論をし、チーム全体で納得できる結論を出すことが重要 ディスカッション中にさらに参加者1名増加したものの、4人×2チームのまま続行 こうして4種類の点数を算出 A:チームの平均点 V:各問題のチーム内投票(最も票が集中した解答を抜き出したもの) L:リーダーと個別にディスカッションした結果をまとめたもの C:グループ全体でディスカッションした結果をまとめたもの ■結果発表 チームⅠ A:40(振れ幅:34〜50) V:49 L:50 C:56 リーダー個人の点数:34点 チームⅡ A:56(振れ幅:49〜69) V:65 L:62 C:62 リーダー個人の点数:56点 ■この結果を受けて どちらのチームもチーム平均(A)よりチーム内投票(V)の方が点数は上 リーダー個人の点数よりもチームの人と協力した時の方が点数が上 チームⅠはチーム全体でのディスカッションによって個人の最高点よりもさらに上の点数になった ■話し合ってみての感想 自分で気づいていない点に議論を通して気づくことができた 自分の知らない情報を得られたことで、その解答を選んだ理由に納得がいった 個人でやるよりも話し合った方が有意義だった 単に正解を選ぶだけでなく、他の選択肢を除いた理由も理解でき、解答に対する自身が補強された ある問題でディスカッション前は3人がA、1人がBを選ぶという状態だったが、互いにその選択肢を 選んだ理由について納得いくまで話し合った結果、チームとしての解答はBに落ち着いた →話し合うことで色々意見は変わる →意思決定の方法は色々ある! ■他に気付いたことなど ・(リーダーをやってみて)制限時間が迫ってくると話し合いよりも多数決に持っていきそうになった  (上司が部下から意見を聞く場合も同様になりがち) ・本セッションのメンバーは実際の会社組織とは異なり、互いに何の利害関係・力関係も無い初対面同士 だったので非常にフラットに話し合えたが、現実の会社の中では中々こうはいかない ・話し合いの時間がもっと欲しい 先ほど皆が苦戦していた問題(衆院・参院の議員定数は幾らか?)について各自の解答を投票形式にした場合 ・利点  ・多数派の意見が反映される  ・全員に機会が与えられる  ・機械的に処理できる  ・時間が読める ・欠点  ・少数意見が無視される  ・多数派がいいとは限らない  ・自分の考えを人に伝えられない ■「強いリーダー」の場合 ・利点  ・トップダウン形式に物事が進むので意思決定が速い(それでも投票よりは遅い)  ・一貫性がある ・短所  ・途中で方針を変更しにくい  ・リーダーの独断専行になるのでリーダー個人の最高点以上にはならない  ・意見の取りまとめに時間がかかる  ・場合によっては重要な大多数の意見が無視される  ・リーダーの負担が大きい ■コンセンサスの場合 ・利点  ・話し合いに全員が納得しているのでチーム全体の責任感がある  ・チーム全員の意見を取り入れることができる  ・途中で方針変更がし易い  ・他の人の意見を聞くことで見直した時に自分のミスに気付く  ・全員の発言機会が平等  ・自分の意見をきちんと聞いてもらえる ・欠点  ・集団責任になるので責任の所在が曖昧になってしまう  ・意見の取りまとめに時間がかかる  ・全員の負担が重くなる  ・元々正しい方向に向かっていたものが、話し合うことで間違った方向に妥協してしまう場合もある   (チームの結果が好例) ■もし話し合い時間が短かったらどうするか? ・分担する ・各自で解いて結果を投票 →現実の会社での場合は?  ・その分野に長けた人に一任  ・入札形式 本ワークショップは明確な正解があるわけではなく、参加者が自分の会社で同じような状況になった時に、 本ワークショップで感じたことを少しでも生かせられれば良い、というスタンス ■どうすれば質の高い意思決定ができるか? ・現実の会社ではある問題に対して、その問題に関連した分野が得意な人がある程度判明していることが多い  そのような場合はコンセンサスよりもその得意な人に任せた方が速いうえに確実 ・1人に頼むと→優秀な人に負荷が集中 ・1人に任せるのは目先の利益重視  対して話し合い→目先の利益重視傾向 ・重要な意思決定の場合は複数人参加の話し合いで決定 話し合いでの最高点数上げには上限がある(知識の限界) →更なる調査・勉強が必要 実際の仕事では事前にある程度リサーチをした上で話し合いを行うが、今回のテストでは事前調査なしで 行われたので一概に比べることは出来ないのではないか?  (意思決定は1回では終わらない事が多々ある)  →例:東日本大震災で半導体供給元が変化した。供給元がR社とA社の2択の場合、どうやって決定するか?    →シミュレーションを行う    →投票も一つの手 ・この場合の各決定方法の欠点  投票→「自分にも責任がある」という意識が希薄  話し合い→時間がかかる 実際の仕事での意思決定方法例? ・CMMI ・スピード重視の直感or安定重視の平均 ・組織内ではフラットな話し合いは難しい→やり方を工夫することで改善できるか? ・「声が大きい人」以外の人の意見を尊重 ・案1と案2の折衷案を採る ※「平均とコンセンサスは違う」 ・コンセンサスでも声の大きい人の意見に引っ張られる/妥協してしまうと質の高い決定はできない? ↓ 誰が発言したかわからないようにする →少数派が出てこられない 「全員一致」ならば質の高い決定が可能? 例:閣議は全員一致が原則 →しかし「全員一致」は決定までに時間がかかる 時間に追われると「速く意思決定する」ということに集中して決定の質が落ちる 投票の場合、多数が正しいことが多い→多数決の有効性 しかし、多数派が間違っていることもある 本ワークショップは結論を求めるものではない 時間の都合により、以降は参加者の感想を述べて終了とした ■参加者の感想 参加者1「CMMIについて興味を持ってもらえるとありがたい」 参加者2「SWEST初参加だが良い経験になった。現場でこの経験を生かしていきたい」 参加者3「フラットな議論ができて面白かった。本ワークショップはメンバーのモチベー      ションが高いので意義深かった」 参加者4「コンセンサスの効果が数字で見えたのがわかりやすかった。良い経験になった」 参加者5「研修でもコンセンサスは行ったが、やはり自分の力が足りない時に誰かの力を      借りるというのは勉強になる上、良いモノを作っていくためにも必須だと思った」 参加者6「リーダーの差がこの点数に繋がったと思う。チーム全体の意見をうまく集約で      きていなかったのは自分の力が及ばないためかと思った」(※リーダー個人の 点数よりは上がっているので今回のコンセンサスは成功) 参加者7「コンセンサスについて改めて考える機会を得られて意義深かった」 参加者8「自分はまだ学生で、今までこういう意思決定の機会はあまりなかったので、本 ワークショップは新鮮だった」 参加者9「自分も学生で、こうしてチームで動くという経験があまりなかったが、今日の 経験を通して今後の研究活動などに生かしていきたい」 ■木元氏よりまとめ この内容でのワークショップは今回が初めてで、どんな結果が出るかは自分にもわからな かった。自分からもっと議論を提供できたらよかったと思う。普段、開発をしているとな かなか振り返る機会のないものをいちいち考える機会が無く、それがどんな結果を生んで いるか考えることも無い。このことをまた取り上げてそれがどんな影響を与えているのか、 というテーマのワークショップをこれからも行っていきたい。 参加者に本ワークショップについてのアンケートを行って終了 以上。