********************************************************************* セッションS2-a チュートリアル テーマ:エンジニアのためのサバイバルスキル‐認知を変え行動を変え厳しい局面を乗り切ろう 講師:酒井 卓也氏(SWEST実行委員会) 日時:2011/9/2 9:00〜10:20 参加人数:20名 ********************************************************************** 配布資料→アセスメントシート各1枚 ■アジェンダ  ・アイスブレイク  ・はじめに  ・産業カウンセラーとは  ・エンジニアを取り巻く環境  ・認知を変え行動をかえる  ・自己分析ワーク  ・対処法(コーピング)  ・まとめ ■アイスブレイク:異心伝心  二人ペアになる  送り手が相手に伝えたい気持ちを伝えようとする  受け手は送り手から受け取った気持ちを言葉にする  一致すればOK  <一致したペアへの問いかけ>   一致したときどういったことを思ったか    →嬉しかった   読み取るときにどんなことを考えていたのか    →雰囲気から予想   決め手は    →目  人間は、なぜか伝わりあったら嬉しくなる ■趣旨  カウンセリング手法の「認知行動トレーニング」をエンジニアなりの捉え方で紹介する  自分の物事の捉え方と、自分自身の反応を自己分析し、問題の対する対処法を立てる  持って帰ってもらうもの   ・厳しい局面を生き抜く技   ・後輩指導での1つのヒントとして ■産業カウンセラーとは  産業の場においてカウンセリングの知識・技法などを用いて、    職場生活に関係する問題に心理学的援助を行う専門家 活動領域  メンタルヘルス対策への援助  キャリア開発への援助  人間関係開発の援助 ■エンジニアを取り巻く状況  業種別のメンタル不調者としては、医療福祉が1番、情報分野が2番目に多い  メンタル不調者が少ない林業に比べて違いはどこにあるのか  このような状況だからこそ、エンジニアのメンタル不調者を少なくしていきたい ■とあるエンジニアの事情(フィクションによる事例)    あるエンジニアの身に降りかかった出来事  3年付き合った彼女と結婚・引越し  →景気悪くなって移動  →家に帰るのが遅くなった  →妻が不安  →実家の親が亡くなった  →妻と母が合わない  <会場への問いかけ>  厳しいと思う人→挙手(挙手多数)  イベントがこれだけ重なると厳しく、乗り越えるのが難しくなる  理由は分からないが、人生にはイベントが集中することがある  イベントが集中した時に、潰れてしまわぬよう切り抜ける為の技術を  サバイバルスキルと定義 ■ライフイベントとストレス  起きたことがどれほどストレスになるのかを数値化したもの  ・配偶者の死  ・離婚  ・配偶者との別居、等々  仕事で成果を上げたことでもストレスになる  これらの数値を足し算して数値が大きいほどストレスフルな状態であると判定する  本人にとって喜ばしいことでも、ストレスになりえる ■認知を変え行動をかえる  一般的な情報システムのモデル   構成要素    ・ソフトウエア    ・ハードウエア(メカ)   外界または他のシステムと連携する。外の情報を取り入れ反応する   例:ETロボコン 入力した情報に即座に反応する →コースに沿ってライントレースを行う   私達が仕事で扱っているのは大体このようなシステム  認知行動トレーニングにおける人間のモデル   情報システムのモデルに対比して、認知行動トレーニングで扱う人間のモデルを説明   4つの構成要素    ・認知  外界の出来事をどう捉えるかという主観的な体験のこと  出来事に対する考え、出来事に対し想起されたイメージ    ・感情  外界の出来事が引き金となって、その人の中に沸き起こる気持ち、気分    ・身体  外界の出来事をきっかけに起こる、身体的な反応  体温が上がる等    ・行動  出来事に対して、自分が表現する行動、身体的な動作   個人と外界との相互作用モデル    人間も情報システムのように、外の情報を取り入れ反応する    状況とそこに関わる他人との間に相互作用がある    情報システムの情報処理過程は人が設計したものなので予測できる。しかし、人間では、4つの構成要素が相互に影響を与えながら、複雑な処理過程を経て結果を出す   認知を変え行動を変えるとは    自分を構成している情報処理過程を分析をして、新しい環境に対応できるように自分の考えをプログラムしなおすこと    認知と行動は自分で操作しやすい要素。厳しい状況を抜け出すために、自分でコントロールしやすい、二つの要素を使う    人間で言う認知の部分はシステムで言うソフトウェアと考える ■自己分析<ワーク>  <会場への問いかけ>  いまから言う状態になってください  ・笑ってください(行動)  ・体温をあげてください(身体)  ・怒ってください(感情)   →怒った振りはできるが、ないもない状態から瞬時に怒りの感情を持つことは難しい  ・スマフォを上げ、これはなんですか?(認知)  笑うという行動、スマフォの認知は、すぐにできたと思うが、体温を上げるという身体の状態、怒りの感情を持つのは難しい コントロールしやすいのは認知と行動であるという体験をしてもらった  分析作業(STEP1)外界の状況と内的プロセスの分析   最近あった身近な出来事について題材にする    外界の出来事の分析     ・どのような出来事がありましたか?(状況) ・誰から影響を受けましたか?(他者)    自己の内的プロセスの分析 ・何が頭のなかに浮かんできましたか?(認知) ・どのような気分、感情が湧きましたか?(感情) ・身体に何か変化を感じましたか?(身体) ・なにをしましたか?(行動)   記述したものを先ほどのモデルに当てはめる   なにがあったか客観的に整理するだけでも効果が得られる   過去の経験から認知の部分が作られている   認知の部分は階層的になっている   これはソフトウェアの仕様があってプログラムコードがあるとすると   ・仕様→信念   ・プログラムコード→思い込み   ・仕様通りにコードを書く→信念に従って思い込みが発生する   と捉える事が出来る。  分析作業(STEP2)認知の詳細分析   認知の分析   ・あなたが不都合を感じている認知(自動思考)はなんですか?   ・その認知(自動思考)を支えている信念は何だと思いますか?   ・信念によって作られた、あなたの思い込みは何ですか?  <会場からの質問>   ネガティブな考え方でないと意味がないのか?      ポジティブな分析結果なら、そのままか、更に良くするにはと、考えればよい。   同じ状況でも人によりネガティブと捉えるか、ポジティブに捉えるかの違いがある   自分にとって不都合か?を考え。不都合感じていることであれば改善すればよい    <ここまでのワークの感想、分析結果の発表>  ※発表者のプライバシーの配慮し概要のみ   最近気になっていたことがあった。分析前は相手に対して、何かあったのかもと漠然と考えていただけだったが、分析後では、原因となる自分の行動や、次はこうしてみようという考えが浮かんだ。 エンジニアは原因を分析するのが得意だが、人間的な問題の対処が苦手な可能性がある。分析してみるとその結果に合わせて考えなおす切っ掛けになる。 ■対処方法(コーピング)  コーピングとは  ・問題にうまく対処すること  ・心理的ストレス反応を低減することを目的とした認知的または行動的な対処法のこと  課題を分析して、問題解決をするのは、エンジニアの仕事と一緒  認知と行動に対してどういったことをすればいいのかを考える  先ほどのように、すぐに対処することはできない  認知と行動にしぼって問題を乗り越えることをする  認知系コーピング  ・自分を苦しめている原因となる、信念や思い込みの部分を見直すことで問題にうまく対処する  不都合があれば、どこを見直すかを考える  状況は変えられないものもある  例:父の子でありたくない   どうあがいても変更不可能なので、その事実を、どう捉えればいいのかを考える  行動系コーピング  ・実際に具体的な行動を起こすことで、問題に対処する   可能な範囲で状況を変える→自分が移動   少し待ってみて冷静になる   笑ってみると状況が変わる可能性もある   →嘘笑いでもいい  サポート資源   ・PCでいうと、メモリ、HDD容量のイメージ   ・課題解決のために使える資源のことを示す   ・人間で言うと“友人等”自分を支えてくれる、あらゆる資源    友人、家族、同僚、外部の機関、過去の思い出…etc    たくさんもっていたほうがいい ■コーピング<ワーク>  認知系コーピング   不都合な認知の分析を基に、不都合な信念や思い込みを見直す   ・あなたが理想とする(不都合を感じないと思う)自動思考は?   ・もし理想のために、自分の信念を変えるとしたら?(追加するとしたら?)   ・その信念の変更によって、あなたの思い込みはどのように変化しますか?   ・自動思考を変えることによって、あなたの感情、身体はどのように変化しますか?   自分のどこを仕様変更して設計を変えるか  行動型コーピング   生活習慣の改善、食事、睡眠、運動、休むときは休む   体さえ元気になればよい   解決できるものは解決できてしまう   どうしても解決できないものは解消する   身体的な疲れには、気晴らしの時間(レクリエーション)を持つ   精神的な疲れには、ゆったりした時間(リラクゼーション)を持つ ■まとめ  「認知行動トレーニング」をエンジニアの捉え方で紹介  実際に自分の物事の捉え方と自分自身の反応を自己分析し対処法を立てる体験をした  自分自身をリバースエンジニアリングして「仕様」を変更し、  「プログラムを変更することで」厳しい局面を乗り越えられるようになろう ■質疑応答  <質問者1>   コードは仕様変更は簡単にできるが、人間の感情は簡単に変更できない。現在学生の面倒を見ているが、どう導けばいいか分からない。  <回答>   学生の話をよく聞くことが重要。   自分の発した言葉を相手に伝え返す。自分のなら人の言葉より伝わりやすいので自分で自分を顧みるきっかけになる。。   どうしても無理ならスクールカウンセラーに行く  <質問者2>   仕様変更の結果が実現不可と思うものになる。どうしても解決できないものを解消するには?  <回答>   仕様変更時に裏返しの理論にする必要がない。   人を傷つけたくない→人を傷つけても良い   よりも、、   意に反して人を傷つけてしまうこともある   と変更するのも一つ。   実現可能な、自分に取ってより自由度のある仕様を探す。 以上