****************************************************************************** セッションS2-d 分科会 テーマ: パフォーマンスを高め,スマートな開発をするためのモチベーション ワークショップ コーディネータ: 渡辺 登 (アフレル) 日時:2010年9月3日(金)9:10〜10:20 参加人数: 約30人 ****************************************************************************** W氏:おはようございます!寝てしまわないように頑張っていきましょう. ○前置き ・教育や技術的なことをやっていると,最終的に行き着くのが個人のモチベーション ・その前は組織のモチベーションだった ・様々な知見を本セッションで紹介し,それを参加者の組織で広げてもらいたい ・それをさらに高いレベルまで到達してもらえればなお良い ○W氏の自己紹介 ・某電機機器メーカーに務めていたがアフレルに転職 ・具体的な経緯 ・現場にいたときに知らないメンバと共に仕事をすることがあった ・このときに,各個人の技術力が異なるなどの理由により,チームビルディング の難しさを経験 ・スキル標準を作り始め,経済産業省からお呼びがかかる ・組込みシステム技術者の人材育成を始める ・その中で,ソフトウェアエンジニアリングセンターの研究員として採用され, 某電機機器メーカーの方から出向し,その後転職 ・子供向けロボット教室やETロボコンなど,大学講師も経験 ・今ではテクニカルなところと人間系のところをどうにかしたいという思いが強い ○セッションの概要 ・何故モチベーションなのか? ・ジェネレーションとモチベーション ・モチベーションとエンジニアリング ・モチベーション3.0 ・最新のトレンドとして紹介したいので,急遽追加 ○何故モチベーションなのか? ☆産業視点での各国との比較(平成13年の資料から) ・日本の場合,組込みの業界ではロボットを作ることが盛んである ・しかし,ロボットの技術はまだまだ不充分 ・特に自立型ロボットは安全性や信頼線の面ではまだ改善すべきところが多い →産業として成り立っていないので,技術も思ったように進まない ・個々の要素技術にも様々な特徴がある ・日本は移動技術の脚や車輪は強い ・しかし,ソフトウェア技術が弱い ・ソフトウェア技術の弱さから投資も上手く行かない ・韓国やデンマークはロボットの研究開発に対して国がお金を与え,産業として 支えようと努力している ・これらの国ではソフトウェアの技術力が高いことが大きい W氏:ところで,光学系を仕事や研究としてやられている方はどのくらいいらっしゃ いますか? それでは,ロボット系は?それなら半導体装置などは? いませんね…というより,あえて『いないだろうな』ってのを質問してるん ですけどね(笑). 自動車って言っちゃうと…さすがに多いかな? ☆世界市場に占める日本企業のシェア ・唯一自動車だけは市場が増えている ・他の電気機器などは世界の市場の規模が延びているが,日本のシェアの割合は 落ち続けている ☆この現状から何を思ったか ・ソフトウェアエンジニアリングの知識を強化させたいという思いが強くなった ・例えば,マネージメントや教育訓練など ・SESSAMEや経済産業省で活動したのもこの思いがあったから ・現在もエンジニアの教育をどうすれば良いかをよく考えている ・そのため,ソフトウェアエンジニアリングを企業の教育に入れるように働きかけ ている ・だが,仮に教育の機会ができたとしても,残念ながら教育が上手くいかない ☆上手くいかないのは何故か ・我々がエンジニアとしての知識やスキルを発揮して行動することで良い製品を 作ることが出来る →このような知識やスキルや行動力向上させるような教育を行ってきた ・しかし,パーソナルスキルやモチベーションが不安定だと,ほとんど意味がない ⇒そこで,問題解決能力,ビジネススキル,コミュニケーション能力などのパーソ ナルスキルとモチベーションにも力を入れるようにした ・前者は力を入れ始めているが,その成果はまだわからない ・営利目的の企業だと,後者はなかなか触れられないという現実もある ☆能力を高める方法 ・OJT(On the Job Learning) ・仕事を通して様々な能力を身につける ・あわただしい現場を離れて,他の企業の人たちと共に教育を受ける機会を 設けた ・とても有意義で,良い経験になったようだ ・SD(Self Development) ・自己啓発で個人の能力を高めていく W氏:みなさんの会社の中で内のOJTはとても高い質を誇っているという自信のある方 はいらっしゃいますか. さすがに,自信を持っている!なんて言える人は少ないですよね. それでは,良い線はいっているんじゃないか,と思われる方はどうでしょうか. あまりいない…寂しいですね(笑). ☆OJTでの問題点 ・教育者の考えに左右されることが多い ・OJTとしての正規のセオリーに沿って指導されるべき ・OJTが形骸化してしまうことも多い ・例えば,きちんと計画表を書いて,しっかりモニタリングをする企業は少ない ☆自己啓発の現状 ・SWESTに来ている人ならおそらく大丈夫だろうが… ・自己啓発をしている人がいたとしても,周りのメンバーが全員自己啓発できて いるというわけではない ・忙しいなどの理由で啓発が出来ない人もいる ☆教育で実践すべきこと ・教育では,何を目的にして,どんなことをすべきかということを考えなければ ならない ・その際に,ソフトウェア設計のⅤ字モデルに近いことを行っている ・これをエンジニアリングの現場にも広めたい ☆教育の方法と,それらの改善プロセス ・OJT ・指導者ワークショップを実施することでより高い質のOJTが実施できることを 目指す ・SD ・モチベーションを如何に向上させるかが鍵 ⇒今回のセッションでは,このモチベーションの施策について取り扱いたい W氏:実はこれがモチベーションに関する初めてのセッションです.グダグダになって しまったら許してください(一同大笑い). とはいえ,このように踏み出すことは大きな意義を感じています. ○ジェネレーションとモチベーション ☆社会の変化 ・農業社会→工業社会→情報社会のように変化していった ・農業社会 ・縦型社会・共同作業がキーワード ・工業社会 ・ピラミッド型,キャッチアップなどがキーワード ・右肩上がりの成長を経験 ・今は情報社会の(が求められている)はずだが,工業社会のような組織が多い ・情報社会 ・組織はネットワーク型だが工業社会的な側面が未だに残っている ・だが,必ずしも右肩上がりの状況とはいえない ・世代間ギャップも多く感じられる ☆世代の分類 ・世代の種類 ・戦後世代 ・1939-45年(現在65-71歳) ・団塊世代 ・1946-50年(現在60-64歳) ・断層世代 ・1951-60年(現在50-59歳) ・新人類 ・1961-70年(現在40-49歳) ・団塊ジュニア ・1971-78年(現在32-39歳) ・バブル後世代 ・1979-83年(現在27-31歳) ・少子化世代 ・1984-93年(現在17-26歳) ・少子化世代やバブル後世代は先行不安がある ・新人類や断層世代は上昇経験あり W氏:ちょっとアンケートを取ってみましょうか. 戦後世代の方はいらっしゃいますか?団塊世代の方は?まだいらっしゃらない ようですね. 断層世代の方は?新人類の方は?このあたりから少しずつ出てきますね. 団塊ジュニアの方は?増えてきていますね. バブル後世代の方は?これも多いですね. 少子化世代の方は?あ!いらっしゃるんですね! 思ったより若い方が多いんですね.驚きました. ☆世代による価値観の違い ・生活や一般人の思いが世代によって変わってきている ・タイムリーな例として草食男子? ・モノの価値も今の人は体験のための道具などとしか捕らえない人が増えている. ・昔は車を買いたいという若者が多かったが現在はそうでもない ・モノに対する思いは工学部の人数にも見ることができる ☆工学部離れとモノとコト ・例えば1980年代までは工学部進学の学生は増えていった ・技術の発展に期待感があったから ・1990年代から工学部進学の学生は減っていった ・製品からサービスへ変わって行くことを予期していたためか ・代わりに医療系の学生が増えてきている ・景気に左右されないため? ☆マズローの欲求階層と世代 ・様々な欲求が存在 ・生理的欲求→安全の欲求→所属と愛の欲求→承認の欲求→自己表現の欲求 ・後者に行くほど最近の世代の欲求に合致する ・経済報酬と意味報酬 ・前者に行くほど経済的な報酬を意味 ・後者が意味的な報酬 ☆世代の移り変わり(やや余談) ・年を経る度に世代の割合が変わっていく ・自分と若い人たちと話が合わなくなるのが不安 ・これまでに経験した文化が世代によって異なることが原因 ☆報酬の代表:お金と仕事 ・お金に関するモチベーションは昇給が要因 ・一時金として金銭の報酬を与えることは可能だが,昇給は簡単ではない ・仕事は意味の報酬を感じられるかどうかが重要 ・これまで以上に重要なミッションを与えることでモチベーションを向上 ・責任だけが大きくなるようだものはダメ ・自分の成長を実感できるかどうかが大きな意味を持つ ・新しい技術が必要なミッションを与えることでモチベーションを向上 ・得意分野を伸ばしたり広げることが大事だが,教育機会を増やすことが必要 ☆経済報酬と意味報酬 ・経済の報酬 ・右肩上がりが崩壊しているので,これまで通りにはいかない ・ポストの減少から先行きの不明感がある ・スキルや価値観の多様化でジェネレーションギャップが進んでいる ・意味の報酬 ・時代と共に変化 ☆モチベーションを上下させる言葉 ・モチベーションが上がる言葉 ・がんばったね ・ありがとう ・君のおかげで助かったよ などなど ・逆にモチベーションが下がるNGワード ・ちゃんとやれ ・こんなこともできないの? などなど →新しく来たメンバーに対してはこういうことを言いたくなってしまいがち なので気をつける ○モチベーションとエンジニアリング W氏:今回の主題として,「モチベーションとエンジニアリング」について紹介して いこうと思います. これはこの5年ぐらいで出てきた新しい考え方だと思います. このモチベーションとエンジニアリングの考え方で気に入ったのは, ソフトウェアエンジニアリングに対して取り組まれていて, 我々がやるときに再現性があると思ったところです. そのため,今回のセッションではぜひ広めていきたいと思います. ☆デ・モチベーター ・モチベーションを下げる要因 ・未来への不安感:理念 ・仕事への閉塞感:仕事 ・風土への既決感:理念 ・待遇への不満感:特権 ・上司への失望感:人材 ・職場への無力感:仕事 ・モチベーションを考える上で大事なこと:理念,仕事,特権,人材 ・この4つの要素4Pと呼ぶ ・意味報酬を細分化したものと考えられる ☆キャリアアップとモチベーションの例 ・組織の推移(例:某電気機器会社→IPA/SEC→Afrel)に伴って4Pは変化する ・周りの人間の数や職場の環境などに起因 ・モチベーションを考える上で必要な思い ・マイカンパニー,アイカンパニー ・自分の会社だと思っているか,一つの会社として行動できるか ・ライフワーク,ワークライフ ・働かされる毎日では辛い→自分の人生におけるミッションだと思えるか ・キャリアデザイン,キャリアドラフト ・キャリアを設計すること ☆モチベーション分析 ・できること,やりたいこと,なすべきことをこれまでの立場ごとにまとめる分析. ・例:20代中 ・立場:若手 ・できること:プログラミング ・やりたいこと:サッカー ・なすべきこと:交換機開発 →ネガティブやマイナスな自分に気付くことも ・精神的に不安定な場合には実施しないほうが良い ・棚卸しの際はポジティブなフォローをする ・立場が変わるに従って,できること,やりたいこと,なすべきことが変化 ・できること,やりたいこと,なすべきことが一致するのが一番の幸せ ☆ワークショップ ・参加者が以下のことをまとめる(10分) ・キャリアとモチベーションの推移をシートに書き込む ・何年前に,どのような4Pがあったか ・これまで経験してきた立場ごとのモチベーションの分析 ・各立場で「やるべきこと」「やりたいこと」「できること」をまとめる ☆モチベーション分析の結果について ・以下のことが分かる ・やるべきこととやりたいことが一致するが,できることが外れる →能力が及ばない ・やるべきこととできることが一致するが,やりたいことが外れる →やりたくない ・やりたいこととできることが一致するが,やるべきことが外れる →役割外である ・以上の結果から今後どうするかを考えるための「気付き」となる W氏:今回のモチベーション解析の結果,自分から動けるところがあるんじゃないか ということに気がつきやすくなります. 上手く行けば,モチベーションに対して新しい「気付き」が得られるのでは ないかと思います. 特権がないなぁと思ったら,そこからじゃあどうすればいい?とか, そのような方向に繋げられればいいと思います. ○モチベーション3.0 ☆3つの要素:自立性,熟達,目的 ・自立性:自分からやりたいことのできる環境ができると良いが,普通の社員は そんなことするのが難しい ・といっても,会社の人間がそういった環境を作って行くことは重要である ・熟達:やりたいことがあったとしても,それを自分がやれるのか ・そういうのがないと熱中することが出来ない ・目的:今時分がやっていることにどういう目的があるかどうか ・「石を積む」ではなく「教会を建築するために石を積むんだ」といえるように したい ・会社の利益を追求するだけでなく,会社の利益からこういうことをするという ところまで話せるとかなり良い ・その他 ・飲みニケーションなどで親交を深めて思いを共有することも必要である ☆ETロボコンでのやる気に関するいい話 ・とある企業の社長のお話 ・社長がロボットを一緒に作ったメンバーに囲まれた写真を見て「個人的にこの1枚 の写真が撮れただけでも満足」と言われた →この言葉で多くの若手がやる気を後押しされたと思う. W氏:最後に,まわりの人のモチベーションを上げていくようにがんばって行きま しょう ○質疑応答 Q:「ジリツ」という言葉があったが「自律」なのか「自立」なのか A:自律です.説明が足りなかった. ○まとめ ・モチベーションは教育を効果的に受けたり,自己啓発には必要不可欠である ・モチベーションは,4Pの観点や「やりたい/できる/やるべきこと」などの観点 から分析することがきっかけで改善することが出来る. ・今後をより良くするためには,周りの人のモチベーションが向上できるような活動 をしたい 以上.