********************************************************************** セッションS1-f 分科会 テーマ:DA技術の変遷と今後 コーディネータ:坂主 圭史(大阪大学) 日時:2010/9/2 21:00〜22:30 参加人数:40名前後 ********************************************************************** 1.概要 DA技術の変遷と今後について5つのお題を提示し、それぞれへのDAシンポジウム参加者 の意見を聞き、各々自由に議論をしていく。 流れとしては、事前に行った参加者へのアンケートをスライドで発表しながら、それを 足がかりにして議論を進めていく。 2.内容 5つのお題について議論していきましょう。 明確に答えが出せるようなお題ではないので、参加者の皆さまに事前にアンケートをし、 それらの回答をもとに議論をしていければいいと思います。 ※アンケートでは、それぞれの立場を産業、大学教員、学生、その他の4つに分けて回答 してもらった。 2.1.DA技術の変遷 どういうアンケートかというと、いわゆる下流といわれるレベル(レイアウト、マスク、 トランジスタレベル)、上流といわれるレベル(ビヘイビア、システムレベル)。「この各 レベルについて1950年から10年刻みで2010年まで、どのように研究領域などが関わってき ているか」というもの。 予想では、下流から始まりだんだん上流へ向かっていく、とした。 ○結果 ・学生の回答結果は大学教員の回答と類似している点が多い →やはり学生は教員の研究内容にひきづられているからか ・一般的に、産業界では2〜3年先の研究を、大学では5〜10年先の研究開発をしていると いわれている →確かに回答結果から、大学が5年ほど先行していることが分かる ○まとめ ・「より上流から」の設計。(「より上流へ」の設計ではない) ・今後はどのレベルにも満遍なく研究・開発者が必要 [質問]レベル的に言うと、どこからDAと呼ばれているのか? [回答]非常に難しい質問である。一応、1960年代にIBMが360を出したあたり。デザイン オートメーションというものが乗ったのがその360くらいからだから。 2.2.コストダウンの弊害として新しい技術が育たない? [発言]どんどん技術開発して、コストダウンし性能向上するのが理想であるが、なかなか うまくいかないうちに、コストダウンしていくと市販ツールの方が安上がりとなってしま う。 コストダウンが先行してしまい、技術開発には時間がかかるもので、その実現まで待って もらえない。いかにすばやくコストダウンできる技術を開発できるか。ということが重要 だと日々考えている。 [発言]企業と言うのは、赤字でつぶれる。EDAというのはコンティビションできない。 自分自身はEDAではなくトランジスタシミュレータ開発をしていました。 使っていく上でメンテナンスとサポートをしていかなければならない。それが企業として 負担できなくなっている。これらを以下に解決するかが重要になってくると思う。 [発言]コストダウンを戦場にするのは間違いではないか。なぜアップルは売れてるか? →アップルは安い製品をアセンブルしている。企画がよければ儲かる。 残念ながら日本人はそういった頭がないから、安い中国とか韓国に負けてるのでは。 [発言]コストダウンのコストダウンとは何だろうか? 経費削減と、企業などでは製品をつくったときのにいかに安く仕上げるか、という2つの 意味が取れるかと思う。 企業で、2,3ヶ月で達成できれば評価される。1年もかかっていたら評価されない。 個人的には、真に高価なるアイデアがほしい。 [発言]企業は90年代にアメリカのベンダーにだまされたと思います。メンテナンスは共通 化したほうが安いとか。 だが、製品が売れなければ意味がない。 80年代半ば、自分たちの作る価値はCADも含めて、企業の中のものだったという明確な方 向があったが、薄まってきた。 コストダウンの弊害としては、新しい技術が育てられない。 そうして、大学ではインパクトのあるソリューションが出せなかった。大学は唯一コスト なしで、製品が作れるところである。そこで、アプローチの仕方などでアメリカとの差が 出てしまったのでは。 [発言]1971年に半導体のDAをやっていました。 最初にやった仕事は、マスクレベルのデータを処理するといものです。 レイアウト担当者として、自動レイアウトのツール作成。 スペンシングを自動でチェックする1970年代、このころは自分で作るしかなかった。 レイアウトをシンボルで入力する、70年台の後半。 半導体についていえば、DAにかかるコストなんてコストのうちに入らない、ほとんどが製 造コストである。 DAのリソースは限られている。半導体メーカは半導体を売らなければ商売にならない。 技術ということで、80年代から89年ではDAコンファレンス(権威のある発表会)に日本も参 加していた。90年代にはほとんどアメリカ。アメリカの大学が5割、アメリカのメーカが 2割、ヨーロッパがその他、日本がごくわずか。 結局、コストという面から見るよりも、日本の産業として何を押し上げるか?プロモート するか?が重要。 DAは所詮インフラ、サポートなのです。半導体が売れてこそコストも回収できるし、貢献 できる。いかに技術内容が優れていても、最終的には半導体用のDAである。 業界では、94年からインテルトップ。90年代では、トップ3に入ってるのは東芝だけ。 どういう競争力を日本がつけられるか。 ○まとめ コストダウンの弊害として新しい技術が育たないというめんもあるかもしれないが、 しっかりとした戦略があれば育つ。 育たない理由を経費削減で逃げ道にしていないか? 2.3.日本でもEDAベンダーを育てたほうがいいのか? [発言]大手半導体メーカが癌である。 満遍なく研究をすればいいというのが問題ではないか。企業として半導体メーカーとして 力を入れるべきところがあるのではないか。 海外に押されている状況で満遍なく研究していていいのか?と。企業側からすると強く思う。 企業と大学との結びつきがアメリカとかは強い。それに対して、日本は結びつきが弱いの では。とも個人的に思う。企業と大学がもっと連携しないと、EDベンダーを育てることは 難しいのではないか。 [発言]難しい質問ですね。 個人的には無理して育てる必要なし。無理してもうまくいかないだろう。学生がEDAの 技術を学んで企業に入ったときに、よかったと思えるように教育する。活躍できる場所 をつくってあげるというのが重要。 [発言]選択と集中がいい。韓国のサムスンはその点で良い。一方で、満遍なくやっておく と時代がガラッと変わったときに対応できる。 日本において、大学の立場では、科研日は何をやってもいい。利益に直接結びつかない研 究をしてもいい。こういう研究をよくなく思う人もいるが、社会が変わったときに対応で きなくなるかもしれない。 昔のIBMのように満遍なくやっていると、いい時代が来るかもしれないし、選択と集中で やったほうが勝ち残れるかもしれない。 EDAベンダを育てたほうがいいのか、というのは企業の方針で。 また、必ずしも、選択と集中路線が正解だとは思わないです。 [発言]選択と集中を極めることがいいこともある。基礎技術的には穴埋め的にやっていく のがいいのではないか。 個人的には、企業と連携したいと思っている。 大学のほうから企業へのアピールをしなければならないし、企業からも大学へ頼むことに もっと期待をもてるように、両者の積極的な歩み寄りが必要。 [発言]EDAベンダを無理して育てる必要はない。 いずれにせよ必要であることは確かなので、必要があれば研究開発すればいい。 ケイネス、シノプスに無理に対応する必要はなく、プラットフォームを特定すると新しい PFターゲットに対するEDAっていうのはこれからますます研究する価値はあると思う。 ○結論 国内に強いEDAベンダーがあるのは日本にとってメリットが大きい いずれグローバル企業になる必要 [発言]「育てたほうがいいのか」というお題に疑問がある。そもそも育てたほうがいいと いう結論になったときに、果たして育てられるのか? 「育てられるのか」というお題のほうがいいのでは? 日本でなぜ育たないか→ 1.セットベンダとして育てるが、自社専用に育てすぎる 2.日本は品質の低いものを売ることができない。こんな恥ずかしいもの売れなと考えて しまう。 2.4.各社で独自の内製ツールを開発したほうがいのか? [発言]70年代は作るしかなかった。 時代が変わって、80年代。内製ではなくなりどこのツールを使うかが問題に。 いまの技術教育で、内製してもビジネスというかコストとか競争力にはもってけない。 しかし、全部外からツールを買ってると、ブラックボックス化してしまう。 結局、技術力を下げていくことになってしまう。 例を出すと、日本の米はうまいが、高い。ということである。 1つの案:オープンソースというのは、世界中がメンテナンス契約。ひょっとしたらEDAも… ライブラリを完全にオープンにする。 2.5.大学における教育としてのDA技術と研究としてのDA技術について [発言]個人的には、特別区別する必要はないと思う 半導体とは戦略技術である。それを作る技術としてのDAは重要である。輸入できなくなっ たらどうする、と考えたことがあるでしょうか。評価できる人がいなかったってのは問題。 我々が開発しようと思うと、非常に分かりやすい例題。産業的に非常に重要な分野である ので、DAほど教育に適するものはないのではないかと考えます。 [発言]DAは本当に役に立つ。コンピュータサイエンスを発展させるうえで非常に重要な役 割を持つと思う。いい分野であり続けるべき。 [発言]ベンダーからツールが買えなくて困るのは日本ではないだろうか。国として持って いないというのがまずいと思う。 [発言]EDAってのは所詮ツールである。昔は、半導体が小さく作れば作るほど付加価値が 付いていたが、いまはそういう時代ではない。どういうサービスを提供するのか、と考え たほうが企業としては良い。 [発言]EDAベンダーを育てるべきか、ではなくて、育てるにはどうしたらいいか?という 問題設定のほうがいいのでは。大学研究にてEDAを盛り上げるにはどうしたらいいか、 など。 さらに、このDAシンポジウムで議論すべきかどうかを憂慮すべきでは。 〜べきかを、〜べきだと宣言してもらえるとありがたい。 [発言]大学ではDA技術というのは非常に重要。 さらに、企業の協力も必須である。 ○結論 EDA、アルゴリズムの基本を体系立て DAの応用、使用経験を積む 企業の協力も必要 3.全体まとめ DA頑張りましょう。 一流はツールにこだわる  −バットやグラブにこだわる野球選手が多い  −並み居るトップクラスの選手の中で、差別化するために道具にこだわっている    −市販バットで200本安打を達成できるだろうか 韓国も台湾もがんばってるので、負けないように、日本もさらにDA技術をもっと磨くべき である。 以上。