********************************************************************** SWEST/DAS共同基調講演 テーマ:「人工衛星プロジェクト〜本命ミッションは人づくり!〜」 コーディネータ:竹内修 日時:2009/8/27 13:26〜14:50 参加人数:100名程度 ********************************************************************** 13:26 開始 ○自己紹介 皆様、こんにちは。 東大阪の人工衛星プロジェクトで去年まで理事長をしていた竹内と申します。 本日はお招きいただきましてありがとうございます。 話は後にさせていただいて、簡単に先に見てもらおうと思います。 ○プロジェクト紹介 SOHLA(ソーラ)とは、スペースオリエンテッド東大阪リーリングアソシエイション の略です。 この名前は学生たちがつけたもので、頭文字をとってSOHLAと私たちは呼んでいます。 このプロジェクトのスタートは、今から七年くらい前不況真っ只中の2002年でした。 なにかこの不況を乗り切る手段はないか、元気のでる話はないか、 それで人工衛星やったらどうだろうということで、スタートしました。 ○人工衛星SOHLA-1とSOHLA-2 我々は、二つの衛星を今作り上げています。 一つ目がもうすでに宇宙を飛んでおります、まいど一号。 これがSOHLA-1と呼ばれる一番目の衛星です。 そして、今開発中のSOHLA-2。 ○二機の違い SOHLA-1とSOHLA-2は何が違うのか。 SOHLA-1は、初めての試みであるので古きを取り入れて新しきを知るというコンセプト で作りました。 要するに、今までの作り方を、衛星の作り方を学ぶといういうことです。 ほとんどJAXAさんの指導で作ったものです。 一方、SOHLA-2は、我々のコンセプトで作り上げています。 ○SOHLA-2の開発コンセプト これは、どう違うのかといいますと、 まず、我々の東大阪のリソース、資源というのは本当はなんなんだろうと、 技術だなんだといいますけれども、僕は違うと思います。 恥をかける能力です。 これは宇宙を志すものにとってこれが世界初の仕組み。 例えば二本のJAXAさんを例にすると。 新しいチャレンジをして部品を作ったとして、たぶん大丈夫であるが、 信頼性にやや不安のある部品ができた場合、もうこれは使わない。 不良を起こす確立が1/20であっても使わない。 なぜならば、何億もかけて作った人工衛星が何万円か安い部品を使ったために、 全体が壊れた、機能しなくなったということが起こると、 JAXAさんの場合、これはだれの責任だ、こうゆう部品を選んだのは誰の責任だという ことになります。 皆さんもエンジニアなら経験があると思います。 わざわざ回りくどいことしなくても、ここまでやらなくてもいいと思うほど、 やらなければならない。 ところが、我々は素人ですから、大阪弁で言いますと「へぇ、すんません」で終わる。 そうならおもいっきりチャレンジャーでいることができる。 こんないい加減なことが、言える組織は、世界広しといえどないだろう。 このような雰囲気の中で作ってみようというのがSOHLA-2です。今はまだ待機状態に あります。 ○SOHLA-2の紹介 スライドの図の右は打ち上がった後の図です。 パネルを展開しなければいけないのですが、スペースが足りないので 打ち上げ時には折りたたんだ状態で、打ち上げ後に展開する。 各パーツを通信用のパネル、あるいはCPUのパネル、姿勢制御のパネル、 必要に応じて、ミッションごとにパネルを分けて、あとで足し合わせようというような 感じであります。 今回は、技術的な部分については、お話するつもりはないです。 なぜかといいますと、たいしたことないからです。 賢そうに見えますけど、賢くないです。 SOHLA-2とは、このようにチャレンジャブルなものであります。 通信は、ノンシェアバンドとエスバンド。 最低運用期間6ヶ月。 ○まいど一号の設計 今上がっております、まいど一号は、運用期間は3ヵ月という設計です。 すでに打ち上げましたのが1月23日ですから、もう壊れるという自信がある。 もっといえば、それほどうまい設計なら、壊れてくれなければ困る。 ですが、まだ壊れない。 ちょっと設計に余裕がありすぎたんだなと思っています。 ○雷観測 まいど1号からの雷観測です。 右側の図がそうですが、それがどうしたということはありません。 地上でも取れるのですが、それを特定しようということです。 ○打ち上げ方法 打ち上げの方法というのは相乗りです。 要するにJAXAさんに上げてもらうんです。 H-IIAロケットはどれくらいの衛星を打ち上げる能力があるのかといいますと約2トン あります。 これをオーバーしますと軌道には乗れないので、それよりも小さい衛星を作ります。 けれども、ちょっと余りがある。ジャストフィットにはならない。 今まではどうしていたかというと、足りない部分は鉄の塊を乗せて、重さを調節して 打ち上げていた。 ダミーを乗せるくらいだったら、我々の衛星を載せてくほしいと要望しました。 それも一つだけだと足らないから、何種類を乗せようと、東京大学等が作成し、 合わせて七つの衛星を載せてもらった。 メインの衛星として、地球の環境、大気観測をする衛星あるんです。 その横に乗せてもらう、それで宇宙に連れて行ってもらう。 ○テスト 物理的に壊れてしまうと、メインの衛星に影響がでるということで、テストを行いました。 ○写真による解説 1、打ち上げシークエンス 2、「いぶき」よりみたSOHLA-1 打ち上げの成功を確認し、まいど一号と命名。 3、まいど一号からの写真 日本列島を撮影した写真で、四国と和歌山が確認できます。 3、「まいど1号」の自画像 自分で自分を撮影したもの。 90度開くはずだったパネルが45度で止まってしまった。 ○打ち上げ当日の話 ざっと申し上げましたけれど、先ほど打ち上げの日1月23日ですけれども、 東大阪では、万歳万歳、お祭り騒ぎ 私は種子島に入っていたので、すごくいやな気持ち、合格発表の前日の気持ちであった。 JAXAさんは上げることは上げる。JAXAさんに衛星を上げてもらった後本当に動くのか、 安全を期したつもりでも、心配事はいっぱいある 二時間前くらいには、たまらくなり、どかっと落ちてよという気持ちになった。 落ちたら私のせいではないから。 (会場笑い) カウントダウンは始まり、約180秒前 電源はロケットの内部電源に切り替わるんですが、 そのとき、もう俺の手の届かない場所に行ってしまったよと思いました。 打ち上げが行われ、上がってしまうよどうしよう、成功し、二段目OK。 とんとんとシークエンスが進み いぶき切り離し成功 オーストラリアの南側で、SOHLA1切り離し成功 電波でるか、通信できるか不安。電源などは、どうなっているかわからない 何周かしないと安定しないので、状況が分からない。 大阪に帰ってみると、電波らしきものが出ていた。 翌日、通信の確立が確認された。 ○当時の東大阪の状況 2002年の状況は不景気であった。 12,000社あった会社が7,000社に減った 当時私は、なんとかしなければならないと思い、花火をあげよう 花火の一番でかいのをあげよう、花火の一番でかいのは何だ、ロケットだ。 ロケットを上げよう。言うだけは簡単だった。 ○相乗りで人工衛星を打ち上げることになったきっかけ よく分からないから、商工会議所に聞きにいったが、そこでも分からなかった。 そこで、大阪府立大学に聞きにいった。 「ロケットは無理だけど、人工衛星ならなんとかなるかもしれない。」 と、先生が口を滑らした 「それだ!」と、思った。 定義を言うと、人工衛星は人工物が衛星軌道に投入されれば人工衛星である。 下駄でも長靴でもなんでもいい。むずかしいことではない。 JAXAさんに打ち上げてもらえばいい。 ○問題の発生 ただここで問題が発生した。 コンセプトがない。目的もなし。 どうするのか?と聞かれれば、がんばる!と答えるしかない。 どうするのかはみんなで考えようという話になった。 東大阪の人がいう「みんな」には、自分が入ってない。誰も考えてくれない。 いつまで経っても、話が進まない。 やっています。がんばっていますというけれども、実際は何も進んでいない。 このような状況ではやっている方はたまらない。 ○技術者全員から辞表 がんばれ!といわれるだけではどうしようもない。 技術者全員から辞表が出てきた。 こうなっては仕方ないから、でっち上げでいこうと思いました。 私自身の会社も住所ももう東大阪にはなくよそ者なんですが、 ちょっと首を突っ込んで、冷やかしている間に、引きずり込まれてしまった。 まず、問題点を上げてみました。 「東大阪には歯ブラシからロケット部品までなんでもある」とよく言います。 だから、これを組み合わせれば、ロケットだって人工衛星だってできるよと、いいます。 十分力はあるんだと、そういう発想で作りました。 ○東大阪に足りないもの 足りないものがあります。コンセプトです。 やっているうちに思いつく、そういうもの。 工作機械がはあるが、設計図がない。 東大阪の人たちは、図面もってこいというが、図面がない。仕様書もない。 技術系の教育を受けた人が少ない。 気合で何とかなるという人が多いが、そうはいかない。 もう一つ、下請けが多いということで、 不具合がおきても責任を取ろうという気概がない。 何かが起きても図面の通りやっただけだとなってしまう。 なんでもある大阪でないもの ・コンセプト ・設計図 たとえると東大阪は国語辞典の町である。 確かに単語はすべてある 単語をどう組み合わせたら、芥川賞ノーベル賞が取れるのか 単語があるだけでは、国語辞典の域を出ないではないか 匠の町というが、字を書くのがうまい匠ではないのか 書く者は書くが、でもその文章を作ったのはだれなのか このへんの問題がきちっとできない。 なんでもあるというのは、実は一番大切なものがないんだろうと これが一番の原因 ○冷たい情熱が必要 開発は冷たい情熱がいるから、見せ掛けの情熱はいらない。 ○夢とほらの違い マスコミが大好きなのは、夢がある話。 ここで考えてほしいのは、夢とほらの違い。 夢もほらも最終目的は同じである。 ただ、ほらはいっているだけ。 夢は、その最終目的のために、今日明日することに胸がときめく状態である。 知り合いの奥さんは息子のことを夢があるといいます。 将来は松坂かイチローかというが、それはほらだと思う。 本当に松坂かイチローになるならこんなところでいないで練習しているはずだ。 ロケットをあげるのが子供のことからの夢だったという人がいた。 でもそれはほらだと。 数学も物理もやる必要があるが、子供のときからいくらでもチャンスがあったが それをやっていない。 明日からもいっぱいやることがある。 いってるだけではほらで、明日することがあるなら夢 夢という言葉について、気に入らない。 思いつきでいっているだけ。 私の知り合いの女性の娘さんが結婚するときに、その人には弟がおりました。 その結婚相手に、聞くと超一流企業の部長になるになるのが夢だといっている。 その男と結婚するなと。夢が小さいと、俺の夢は世界をまたにかけるファッションを出す。 俺を見ろといったら、結婚をやめた。 今その男はニートのままである。いっているだけであった。その男はなにもしない。 ほんとにマスコミは夢が好きで、僕はマスコミ四点セットと呼んでいます。 ・夢 ・チャレンジ ・苦労 ・ネバーギブアップ これをいえばマスコミは喜び、取り上げてくれる。 夢というのはややこしい。 ○作るとはどういうことか マスコミは、東大阪はものづくりの町で、その町に住むひとがひどい目にあっていると 報道します。 私はそうは思わない。作ることはどうゆうことなのか。 新聞を作ってるのはだれか、印刷機を回している人か、違う編集者だ。 でも、彼らは自分たちが作っていると思っている。 どっちが作ってるのか、その辺の議論がまだできていない。 建物のときは、設計者のことを作ったといわずに、 最後にセメントを流し込んで形を作った人のことを作ったと言ってしまう。 技術と技能の区別もできていない。 東大阪はやはり技能の町である。 ○日本から失われたもの 日本からものづくりの精神が失われたというが、自動車を見てみろと、最近はちょっと 調子が悪いですが。 ほぼ世界一なったんですよ。世界一の自動車を製造していた。 そんな国がものづくりの精神を失ったと言えるのか。僕はものづくりの精神は失われて いないと思う。 確かに失われたのは手作りの精神。 今でいうものづくりとは、 ・企画 ・設計(ソフトウェア・ハードウェアとも) ・生産技術 である。 ○なにがものづくりなのか 形が変わるところ、特に目に見える形が変わるところをものづくりというのは 間違っている。 昔は、手作業でやっていたことをものづくりと呼んでいた。 例えば、缶をけづっているところをソフトウェアで書き自動化すると、 ものづくりではなくなるんだと。 ものづくりはなんなのか。システム設計、生産技術、ソフトウェアも全部 ものづくりである。 ○マスコミの言うものづくり 特にマスコミなんか見ていると、しょっちゅうインタビューに来るんですが、 彼らは映像に移る姿が大好き。 したがって、何かが形を変える部分が大好き、なぜならテレビに映るから。 ソフトウェアであろうと、設計図であろうと、テレビカメラに移してもなんにも インパクトがない。 そんな方向に日本のものづくりがなっていったのは、変なことだと思います。 ものづくりっていまは、マスコミで言われているものづくりは手作り。 ものづくりが失われいるとは、手作りがなくなってきているという意味 確かに、手作りがなくなるのは寂しいが、それは郷愁である。 これは技術革新、流れの中にあっては、廃れていくものである。 それをなんとかしなければといっても無理である。 ○手作りは必要ないのか 手作りは廃れていいのかというと、そんなことはない。 宮大工さんすばらしい。でもみんな宮大工でいいのか。 そんなに宮大工要らない。建てるものがない、今はマンション。 ○手作りは供給過剰 東大阪でも、私たちの仕事を奪ったのは誰だと言う声を聞くことがある。 ほんとに悪いのは機械。 手作りは機会作りに置き換わっていく。 今まで人がやっていたところが機械がやっている。 匠の技を機械がやっている。 NCマシンの部品を作っている会社の人がそんなことを言うことがあります。 誰が悪いのかといったら、あなたが悪いのだと。 NCマシンはあなたの仕事を奪うのに、なぜその部品を作っているのかと。 ○手作りが機械に置き換われる例 ものづくりというが、いろんなことがある。 例えば、ロケットの先端 東大阪の職人が、手作業で回しながら作っていく。 マスコミに言わせると、この技術が無かったらロケットは上がらない。 それなら、アメリカや北朝鮮のロケットもすべて作っているのかと。 機械でもやれるんです。 最近では、新幹線N700系の先端部 その職人が引退したらどうなったのか、いなくなったら新幹線ができなくなるのか。 そんなことはない、旋盤で削りだせる その方がコストが安い。 三菱の自動車工場の30年前と今を比べると ある部品のラインが二千人くらいいたが、今は七人でやっていた。 七人は部品の型を変えるのが仕事であった。 生産量はどうなのかというと、当時の十倍にはなっているのではないか。 効率は2000/7であると言える。人はいらないといえる。 ○東大阪を手作りの町からシステムの町に 先ほどの話のなかで、二年間ほど無駄というか何もなく 実はとうとうSOLHAの技術者全員から辞表が出てしまった。 どうするんだという話になったが、打ち上げるという話になっているのだから、 なんとか形を整えないといけないと。 人工衛星はどうでもいいから、そのプロセスで技術者を作っていこう、 よし、人を作っていこうと決めた。 これは人工衛星のコンセプトではありません。だから、人工衛星作りを通して、 人を作っていこう。 まず、東大阪の人たちが変わろうとしていることにはやはり無理がある。 町がどんどん元気になるというのは、他から人がどんどん入ってくるということ。 例えば、アメリカのシリコンバレーは自動車産業あるいは半導体産業のメッカです。 シリコンバレーはほんの数十年前まではただのブドウ畑であった。 じゃあ、ブドウ畑のおっちゃんが技術者になったのか 違う。環境を整えてただけである。 東大阪を手作りの町からシステムの町に変えようと環境整備をしよう で、スタートさせた。 ○おっちゃんのすべきこと 東大阪の組合のおっちゃんが騒いだんですが、 若い技術者に任せろ、今まで知ったことを忘れろと言った。 まずプロジェクトを進める上でどんなリソースがいるかを考えた。 まず、情熱がいる。 マスターやドクターを辞めてまで来ている若者がいる。 そんな情熱はあるかと聞けば、おっちゃんはないと答える。 知能指数で勝てるかというと、勝てないと答える。ということは、ほとんど若いやつに 任しておいたほうがいい 「わしらには経験がある」YES。でにその経験が災いして、12000社が7000社 になったんじゃないか。 減ったということは、経験が災いしたのではないか。 ただね、若いやつは暴走することがあるし、 実際、システムをくみ上げたやつが少ないから、扱う量を考えようねとあれもやりたい これもやりたいだけではできない。 その暴走だけを抑えよう ○10メートルのものは、1メートルの物差では計れない 実際に若者が来てくれない うちの会社には優秀な者が来てない これは東大阪でよく聞く言葉ですが、来てるんです。 わからないだけ。 どうゆうことか、10メートルのものは1メートルの物差では計れない。 自分よりも能力が優れた人が社員に来たとき、あいつはわからんことをいうやつだと いって、首にすることもある。 わけの分からんことを言うだけで、首にするのか。 アインシュタインなんかが、もし入社試験に来ても誰も理解できない。 時間が止まる、何を言っているのかわからない。 わけのわからないことをいうから、だめだといっていいのか。 考えてみるとわけの分からないことを納得している 相対性理論か、波動方程式とか、そう考えるとおっちゃんが教えることはもうない 口出さんようにしよう。 ○責任を取る どうせ、若いから失敗する。 変わりに恥をかこう。これを世間では責任をとるといいます。 だれも取らないと思うかもしれませんが、ごめんなさいと頭を下げること、 東大阪のひとはこれがうまい。 これは才能である。それだけだ。 ○技術者に変わって行ってほしいもの これは私の思いであるが、たしかに今の日本には変わってほしいと思っている。 それを変えるのはエンジニアの才能だと思っています。 心からなにかをしようというのはすばらしいこと。 でも、世間もコントロールしなければ、自分の大きな夢を実現することはできない ですから、私は人文科学、社会科学、歴史、経済を含めて、 心得た技術者が世間を変えていくと思っている。 両方心得のある技術者これが欲しい。 できるできないはしらない。 今ここにいる。これがスタート。 ○「なんで」ということ なんで俺がこんなんやらなければいけない思うことがある。 答えは簡単で、宇宙ができてるからある。なぜなら生まれていないならそう思わないから。 なんでというのは、常に自分の都合のいい歴史を紐解いているに過ぎない。 組合が悪い、理事長も悪いし、商工会議所も悪い、政治家も悪い、 先生も悪い、総理大臣も悪い、JAXAもみんな悪い。 それでどうするのか いっているだけなのか われわれはここにもうスタートしてしまった。 人間5000年の歴史の中ですべての整合性が取れた社会ないのだから、人間五十年の中で いくらでも失敗はある そこで、私はなにをするんだという観点に立つと。 コンセプトを作れる技術者になろうな 衛星が上がったとかでごちゃごちゃいうな。 ○人生は所詮プロセス 人生は所詮プロセスである。 成功失敗は神の手の中にある 賢くない人が賢くみえる方法がある。 「なにか不具合はないのでしょうか、何か不都合はないのでしょうか」と言うことである。 あるに決まってる。 ○人間は充実感を欲しがる 楽をしたいという人がいるが、それなら死んだらいい。楽でしょ。 私たちが充実感を欲しがる。 子供とテニスしてもなにも面白くない。勝つに決まってるから。 プロのテニスとしてもなにも面白くない。 誰々と試合したといって自慢できるかもしれないが、なんにも充実感はない。 面白いといえるのは合格したとき。 それは自分がフルに充実感を得られる。 仏教流にいえば、死ぬと極楽か地獄に行くしかないが、どちらにも充実感とときめき はない。 充実感とときめきはない。 技術開発なら、工夫して、極楽は商売すればかならず儲かる。 気楽にやって音楽を聴いているればいい。 ○涙を流せないような仕事はしない 衛星ができて、成功失敗は問わない。 打ち上げが終わって、涙を流せない人は許さない。 もちろん、失敗しても涙、成功しても涙。 泣けないような仕事はするな 高校野球4400校と同じです。彼ら全部勝ちに来ている。 そして、負けたときに涙を流す。そして砂を持って帰る。 あの涙はなんだ、あれは自分への感動。 私のすべてを、120%使い切ったひとが、この結果が私のすべてであると、 その思いと感動が甲子園の涙であると。 そのような仕事をして欲しい。だから、泣けないような仕事はするな。 なぜ、こんな苦労をしているのかではなく、何のために、今ここに来ているかです。 ○がんばると言うのは思考停止である すぐにがんばるという人がいるが、がんばるということは思考停止である。 がんばるということはどうゆうことか、がんばるとはいやなことを無理にしようと すること。 普通の場合、がんばるは額に汗するということを言う。 でも、技術者はそうはいかない、額の中で汗をかくのだ。 やれることはなにか、どんなアイディアがあるのか。 具体的な姿を作るのは技術者、これでものを作っている。 われわれはある制約条件のなかで自分たちの思いをどのようにものを作り上げていくか。 誰々は能力があってできると思って頼んだ。そんな無責任なことはやめよう。 見栄ははるな。ベストを尽くせ。胸を張ろうね。 世界恐慌のときに自動車の燃費を大幅に向上させようというプロジェクトがあった。 ノッキングを解消しよう。でもノッキングがなぜ起きるのかよくわからん。 そうすると燃焼プロセスを見たい。超高速の燃焼プロセスを見てみよう。 当時のGMには不況の中そのようなプロジェクトがありました。 このときのスローガンが、見栄ははるな。ベストを尽くせ。胸を張ろうね。 ○学生たちのその後 衛星が上がりまして仕事が終わったときは、リーマンショックの前だったので みんな良いところへ就職できました。 その学生たちには東大阪をひいきにしてねといっておきました。 学生たち数十人が中心となって今会社をやっている。 一期生が卒業して就職しました。 三年くらいものづくりといいますか、設計の手伝いをしていると・・・。 ちょっと時間が無くなったので、あと一つだけ話をします。 ○初心忘れるべからず 去年の夏はクーラーがなかった。CO2とかって話ではない。 8月22日は、たとえ大企業にはいっても、六本木ヒルズに本社を構えることになっても、 8月22日はクーラーなしの日にしようと、 それは初心を忘れるべからず。素朴な胸をときめくようなことを忘れてしますから、 それを思い出すように8月22日としようではないかと。 ○最後に 私は技術者ですから、くやしいですが、文型にやられてばっかりであるから、 百年に一度の不況のなかですから、人文科学や社会科学を心得た技術者になってください。 今日はありがとうございました。 14:50 終了 -- 質疑応答 Q1:お話の中で涙の出せないやつは許さんということばが感慨に残った言葉なん    ですけれど、学生たちが新しく会社を起こしたという話の中で、会社名の正式名    がよく分からなかったので、もう一度正確な名前を教えてもらえるとうれしいの    ですが。 A1:ASTREX。    私は「そんな苦労して会社建てても仕事無いよ」といったのですが、    「大丈夫です、お金はいらない。コンビニでアルバイトすればよい。」    と言っていました。    でも、50万、400万とお金が集まっていった。結局は前途有為な青年をコンビニ    でアルバイトさせるわけには行かないと。    わしらも人肌脱ぎたい。結局自分たちもそうのようになりたいだけなんだと    思います。    でも妻子がいる、社会が許さない、お金が必要だ、俺の変わりにやってよと    そういう感じだったと思います。 Q1:未来のために若者を育てているんだなというところに思い入れが強いんだなと    感じ、うれしく思います。    私もそのように思っています。ありがとうございました。 Q2:これからのエンジニアで人文科学を知っている人がいいのではないかと    おっしゃっていましたが、元々エンジニアになられる人が、人文科学系に    あまり興味が無くて工学系が好きな人が多いと思うが、    そういった人たちにも興味を持ってもらうにはどうしたらよいか。 A2:興味がなくても、こんな機械を作りたいと思ったら、お金がいる。    ほんとに作りたかったら、上司をだますことも必要。    そうすると上司をだますテクニックも必要ですよね。    ほんとに作りたければ、総合力がぜひ必要になってくる。    僕が社長をやってるときに、社員十数人が徒党を組んでやってきたことがある。    話を聞いてみてるとあるソフトが素晴らしいと言う。    で、そのソフトは3,000万もする。    途中で全部分かった、お前ら全部組んでいるでだろと。    どうしてと聞くと、社長はソフトウェアに3,000万も払わないと思ったので    ついては策を講じました、と答えた。    わかった。そんなに使ってみたいソフトがあるなら買ってやろうと。    つまり、社長をだますくらいの気概がほしい。そういうわけです。 Q2:エンジニア的には使えるものはなんでも使うということですね。    ありがとうございます。 以上。