********************************************************************** セッションS4-b チュートリアル テーマ:組込み機器×クラウド=??? 講師:太田 寛 氏 (マイクロソフト) 日時:2009/8/28 14:00〜15:20 参加人数:29名(終了時) ********************************************************************** O氏:組込みシステムとクラウドコンピューティングについて話させていただきたいと 思います. ○クラウドコンピューティング(以下クラウド)のイメージ  ・巨大なデータセンターがあり,それに接続されている様々なサービス    ⇒インターネットブラウザ    ⇒グーグルマップ  ・このようなものをイメージされる人が多い傾向がある.    ⇒これらは従来から存在するコンピューティングモデルの単なる置き換え・言い     換えであり本質ではない ○コンピューティングモデルの進化の振り返り  ・メインフレーム  ・パーソナルコンピュータ  ・クライアントサーバー  ・WEB/インターネット  ・SOA  ・ソフトウェア+サービス  このような流れの後にクラウドが誕生した. ○クラウドの構成要素  ・ネットワークがあることが前提.  ・ネットワークにサービスコンシューマやサービスプロバイダが接続.    ⇒簡単に言ってしまえば構成要素はこれくらいである. ○他にクラウドを成り立たせているもの  ・ネットワークインフラ    ⇒接続コストの低下とネットワーク環境の普及.  ・コネクティビティ    ⇒ネットワークプロトコル.    ⇒Webサービスの標準化.    ⇒データ交換フォーマットの整備.  ・ユーザエクスペリエンス    ⇒リッチなUI構築基盤.    ⇒ハードウェアの活用.  ・開発環境    ⇒アプリケーション開発の容易化. ○クラウドとは何か  ・キーワードとして以下の言葉がよく用いられる.    ⇒SaaS:Software As A Service      ・ソフトウェアがサーバから提供され,使いたいだけ提供するサービス.    ⇒PaaS:Platform As A Service      ・プラットフォーム的なものを使えるサービス.    ⇒HaaS:Hardware As A Service      ・巨大なデータセンターなどのハードウェアを貸し出すサービス.    ⇒DaaS:Desktop As A Service      ・デスクトップを仮想化して,必要なときに,       あたかもPC上でデスクトップを操作しているかのようなものを与える       サービス.    ⇒他にもXaaSは多数存在する.  ・要はサービスとして様々な仮想環境を提供すること. ○クラウドのポイント  ・使いたいときに使いたいだけ利用する.    ⇒クライアントにプログラムをインストールせずにサーバ上のサービスを利用する.  ・ではクラウドが全て?    ⇒従来のサーバ,従来のクライアントプログラムなども活躍できる.    ⇒結局クラウドが全てというわけでもない.  ・次世代IT実現に向けてはクラウドを含めて,ソフトウェアとサービスの概念が   融合すると良い. ((ここで,あらゆる環境で用いられたクラウドのイメージングビデオが流される)) ○ソフトウェア+サービスのコンセプトとは  ・コンピューティング環境がいろいろなところに隠れている.    ⇒壁や床.時には窓も.  ・デバイスがたくさん登場している.    ⇒新聞紙に使われるような紙素材も.  ・全てのものがネットワークでつながっている.    ⇒組込みシステムの場合,クラウド技術を成り立たせているネットワーク     基盤・技術が重要な要素となってくるのではないか. ○クラウドによって,ユーザの選択肢が増えた  ・クラウドを使いたい場合は使えばよいし,必ずしも使わなくても良い.   要は適材適所である ○Windows Azure  ・クラウド向けWindowsプラットフォーム  ・昨年10月にリリース。今年末に商用利用開始 ○ソフトウェア+サービスのデバイス  ・生活の様々な場所でが存在する.    ⇒これらはネットワークを介し,サーバーやデスクトップに接続している状況に     ある.  ・これらにより,新たな価値が得られる可能性がある.日本は組込み機器大国である   から、賢く利用するべきであろう。 ○コネクティビティ標準  ・WS-Profile    ⇒ネットにおいて相互接続をするための標準.  ・XML    ⇒データ交換のための標準.  ・Web Service    ⇒クライアントから見るとホストの相手がクラウドだろうがサーバーだろうが     関係ない. ○SOAP  ・かっちり決まったWeb Service I/F標準  ・メソッド指向のI/F  ・業界標準などで利用  ・RPCのWeb版 ○REST  ・緩い標準、あるいは、I/Fの様式  ・全てはURIでリソースとして一意に指定可能  ・データモデル系  ・クラウド上のサービスは柔軟性が求められるため、こちらが主流  ・Visual Studioを使うと、RESTもSOAPも含め、簡単にWebサービスのサーバー、   クライアントが開発可能であることをデモで披露 ○クラウドの概念  ・インターネットレベルを包括する概念.  ・最適なプロトコルなどはサービスに応じて変わってくる. ○家の玄関の施錠開錠などを行う例の紹介  ・場所と,鍵が開いてるか開いてないかを保持するデータベースが存在する    ⇒鍵にネットワークとセンサがついており,開いてるか開いてないかをネット上     にサービスとして存在している  ・鍵の開け閉めには,それぞれメソッドが存在し,それらを実行することで実現される    ⇒個人が今までに行ってきたようなプログラムの延長的なもの. ○クラウドオペレーティングシステム  ・スケーラブルで高い可溶性,管理の自動化に特化している.  ・ブロブ,テーブル,キューなどを用いてストレージ環境を実現する.  ・クラウド上のサービスを開発するための開発環境 ○ライブメッシュ  ・クラウドの仮想環境にデータのシェアリングスペースがあり,それぞれの端末で   支援するためのもの.    ⇒シェアリングスペースににデータをアップするに連れて派生していく.  ・あるファイルを更新すると他のパソコン、デバイスでも更新される.  ・クラウド上のオブジェクトを共有したアプリケーションをプッシュ・共有すること   も可能 ○クラウドの留意点  ・ポスティング環境    ⇒相互接続性,基本サービス,認証,コンポジットサービスなど  ・開発環境なども考える必要がある ○クラウド側から組込みシステムを見た場合  ・仮想空間と実世界をつなぐ窓口    ⇒対人間,対環境など  ・組込み機器の場所と,取り巻く環境が重要である ○組込みシステム側からクラウドを見た場合  ・標準化され,低コストのネットワークインフラと見ることが出来る    ⇒対ITサービス,対その他の組込み機器をサービスの対象と見ることが出来る  ・無限のサーバリソース    ⇒農場の温度などをデータとして取っていくと膨大のデータになるが,     クラウドがスペースを提供することによって保存することが可能となる. ○組込み機器とクラウドを連携する場合の留意点  ・アドホックな連携が可能  ・断続的な接続が可能  ・インタフェースの対象が機械制御や空調制御などになることも.    ⇒要するに人とは限らないということである.  ・ハードウェアの制約があることも注意したい    ⇒3Dを体感したいならそれ相応のPCを用意する必要があるのと同じようなイメージ ○クラウドの活用シナリオ  ・産地直送,生産地情報    ⇒これくらいの環境で育てられたから美味しい,などの宣伝も.  ・薬の注意喚起    ⇒事故が起きたときにすばやく対応することが可能となる.  ・ダイエットの支援    ⇒時計にセンサがついていて,どれだけ運動したかなどの情報がサービスとして     用いることができ,     レストランなどで「今はこのメニューはダメです」などと言われる,     ということも.    ⇒こうなると痩せざるを得ない?(そこまでやると逆に使われないかも)  ・渋滞情報の提供など ○クラウドで重要な三要素  ・コネクティビティ    ⇒クラウド時代に適した技術の選択    ⇒セキュリティの問題    ⇒サービスへの採用機会増加    ⇒SOAP,RESTFULなどがある  ・location context awareness    ⇒環境情報のセンシング    ⇒センシングした場所  ・ユーザインタフェース    ⇒様々なコンテキストへの適合 ○WCF:Windows Communication foundation  ・3要素:アドレス,バインディング,コントラクトから成る ○クラウドのセキュリティ  ・アプリケーションサーバと通信をした際に第3者のサーバによって認証を行う  ・デバイス自体がセキュリティホールになることもあるため,対策が必要 ○クラウドのアーキテクチャ  ・All in one から distributedへ    コンポジットアーキテクチャ  ・複雑で膨大な計算量のロジックは別のマシンで動かせることもアーキテクチャ上   考慮が必要    ⇒別のデバイス上のユーザインタフェースで操作    ⇒情報は外のストレージに格納 ○クラウドのポイント  ・一から全て作る時代は終わっている  ・すでにある標準やサービスをなるべく活用する  ・自分がうれしいと皆がうれしいような状況にする  ・従来のトレンドでダメ出ししない  ・ひとつのパーツを変える,加えると何が追加できるか・何が可能になるかを考える O氏:ITの技術の進歩として,クラウドコンピューティングの活用について説明させて   いただきました.    以上でセッションを終了します.ありがとうございました. 関連サイト: http://blogs.msdn.com/hirosho http://www.microsoft.com/japan/powerpro/TF/column/ho2_01_1.mspx 時間オーバーのため質疑応答はなかった. ■まとめ 本セッションではクラウドコンピューティングの概要についての説明がなされた. クラウドは組込み機器にとって,無限のサーバリソースであり, 逆にクラウドにとっての組込み機器は現実世界と仮想世界の窓口であるため, 組込みシステムは今後クラウドと関わっていく可能性がある. 実現の上ではセキュリティなどの問題を考えていく必要がある. 以上.