********************************************************************** セッションS3-b 分科会 テーマ:不況の今こそ人材養成 コーディネータ: 山本雅基(名古屋大学NCES) パネラ: 石川賢司(富士通ラーニングメディア), 近森満(サートプロ), 中島徹(中部経済産業局), 原田久光(原田車両設計), 久住憲嗣(九州大学), 足立久美(デンソー) 日時:8/28 10:15-11:50 参加人数:約25人(開始時16人) ********************************************************************** 1970年代は不況でしたが、自動車メーカーは先行投資をして研究開発を行っていまし た。それが花開き1980年代の躍進につながりました。現在も不況ですが、やはり先行 投資をすべきです。人材育成をしていくべきです。人材育成への投資を活性化するこ とが、このパネルセッションを企画した思いです。まずは各パネラの方に発表をして いただきます。 *** 各パネラの発表 *** ---------------------------------------------- 中島徹(中部経済産業局) 人材育成のパネルセッションということで、組込みソフトウェア技術者の現状、 人材育成策を3つ紹介します。 2003年より実施されているIPAの調査結果(2009年度版)を用いて、組込みソフトウ ェア技術者の推移を紹介します。 職種別構成ではソフトウェアエンジニアが一番多くテストエンジニアと続きます。 現在、組込みソフトウェア技術者の不足は年々回復していますが、相変わらず、プロ ダクトマネージャが一番不足しています。さらに、QAスペシャリスト、プロジェクト マネージャはまだまだ不足しています。 政府の調査では、組込みソフトウェア技術者の人材育成が最も重要だと考えている人 が25%ほどいます。 続いて、3つの育成策を説明します。 1つめは高度組込みソフトウェア開発技術者についてです。 19年度、20年度に、国の委託事業である産学連携中核人材育成事業により組込み人材 育成に係るカリキュラムを、名古屋ソフトウェアセンターを中心としたCIETとして構 築しました。 21年度からは自立し、CIETが独自で5つの教育プログラムを実施しています。 1講座数十万円ほどですが、政府からの支援により中小企業では受講料が無料(教材 費のみ数千円負担)です。 2つめは地域経済情報化基盤整備補助金についてです。 対象は中小のITベンダーであり、その連携を促します。 開発力強化と営業力強化の事業では、人材育成などへの補助を行っています。 3つめは地域企業立地促進等事業費補助金についてです。 企業立地促進法に従い基本計画を立てていただき、国の認定をいただくことで、補助 金を得ることができます。 宮城県の例を用いて紹介させていただきます。 宮城県では、自動車関連産業、高度電子機械産業の人材育成事業の取り組みを行って おり、こちらのカリキュラムでは、ETSS1〜2レベル対象の研修講座などが無料とな っています。 中部では、ASIF(車載組込みシステムフォーラム)があります。 横のつながりができますので、入会していただくといいと思います。 組込み実態調査は、IPAのホームページに2009年度のものがあります。 全国での動き、地域毎での動きなどで質問などありましたら、 経済産業省中部経済産業局までお問い合わせください。 ---------------------------------------------- 石川賢司(富士通ラーニングメディア): 厳しい状況の中でお客様が人材育成をどのように行っているか、ヒアリングした事例 内容を中心に発表をしたいと思います。 発表内容は ・富士通ラーニングメディアの紹介 ・企業の不況下での人材育成の事例 ・まとめ となっています。 富士通ラーニングメディアはIT系の教育サービスを提供している会社です。富士通グ ループと富士通グループ以外の一般のお客様にも研修サービスをご提供しております。 集合研修は約600コースですが、eラーニングを含めると850コースほどご提供してお ります。 IT系全般に関してコースを提供していますが、コースのカテゴリの1つとしまして、 組込みソフトウェアのコースを提供しています。 2008年度までは、組込みソフトウェアの受講は毎年2倍で拡大していましたが、2009 年度は減少の見込みです。製造業の業績悪化や、お客様が望まれている研修ニーズへ の対応が遅れたことなどにより減少すると考えています。 今回の発表を機会として、14社の人材育成担当の方々に対しヒアリングし、結果をま とめました。代表的な例を3件簡単にご紹介します。今回、ヒアリングをした企業で は、補助金を申請しているところはありませんでした。 まずA社の例です。人材育成に関して、集中と選択をしている例です。A社は経営面で は厳しい状況であり、人材育成費用を縮小されておられます。厳しい環境下でも、ソ フトウェア開発の重要性が今後益々高まると考えており、ソフトウェア開発の改革を 推進しています。4ヶ月にわたる大規模な研修を集中的に行い、これを3年間継続して 実施することで、若年層からボトムアップで改革を推進している例です。 次にB社の例です。ETSSとUISSを参考にして、独自のスキル体系を作り上げ、スキル 診断を2、3年継続して実施されています。継続することで、スキルの伸び具合から研 修の効果を把握し、教育に対する投資の必要性を認識されている例です。その他、こ の会社のヒアリングでは、メタスキル、メタ知識の養成が重要だとの意見を頂いてい ます。 次がC社の例です。製造業の例です。直近の課題としては、営業力の強化、マネジメ ント力の強化、QCDの達成を目指すプロジェクトマネジメント力の強化が課題と考え ています。また、この企業の場合、不採算部門から組込みソフトウェア分野への人材 の職種転換が進められています。ソフト開発の現場の技術ノウハウのマニュアル化に より職種転換された方へ、知識を如何に早く伝えるかに力を注いでいます。また、メ ンタリング/OJTという制度を適用し、教育で学んだ得たものを現場で活用できる ように、上司からフォローを行い、プロジェクトのロス削減に結び付けています。 14社をヒアリングした中で、大企業、中小企業、あるいはメーカー系、独立で受託開 発を行っている会社など、いろいろな種類の企業をヒアリングしました。それぞれ抱 えている課題は異なり、それぞれの会社が必要としている教育を捉えることが重要で す。メーカー系では、ハード部門からソフトウェア部門への職種転換が行われていま す。受託系組込み企業ではメーカーからの発注が減っています。厳しい状況であり、 組込み系から業務系へシフトしている会社もあります。受託系企業では、いかに信頼 感を得られる高スキルの技術者とか、複数のプログラミング言語にも対応できるマル チスキルの技術者を育てることが課題となっています。 次の図は、ヒアリングした人材育成での取り組みを整理したものです。厳しい状況の 中では、集中と選択を行い、質を落とさずに如何に効率的に人材育成を行うか、企業 の人材育成担当の方は苦労されています。 次の図は、実施されている教育の種類をまとめたものです。売上げを如何に上げるか、 損益分岐点を如何に下げるかを観点として、各種研修が行われています。売り上げ拡 大としては営業マンの教育が重要ですし、損益分岐点を下げる点に関してはQCDを改 善していくことが重要です。この2つの観点に加え、短期的な損益の改善には結びつ きませんが、新たな製品を創造するための先行投資、つまりイノベーションを促進す るための人材育成が重要と考えています。 いろいろな教育を単に実施していくだけでは追いつかない部分もあります。ヒアリン グした14社のうち2社から、メタスキルやメタ知識を高め、人材を自立的に向上させ ることが重要であるとの意見を頂きました。学ぶための力を付けること、または失敗 などの経験から振り返りを行い自分のやり方を見直していけることが重要とのご意見 です。 「自助努力で成長する」ことが人材育成の基本であると多くの人材育成担当がおっし ゃっていました。良い会社・強い会社にするためには個人を強くし、それにより組織 を強くすることです。組織が強くなることで、また個人が強くなるような、互いに刺 激しあえる成長のスパイラルを作ることが重要です。そのために、学びの環境を整え ることが会社の役割であります。図では学びの環境を階層的に3階層で書いています が、特定のテーマで研修を受講できる環境から始まり、スキルの保有状況や目標スキ ルなど人材育成の現状を数値的にとらえる人材育成のマネジメントシステムを回せる 環境を構築したり、更に個人と組織が互いに刺激しあえる成長のスパイラルを回せる 環境など、いくつかの段階があると考えています。 自社でも、謙虚に学びながら新しいことに果敢に挑戦し、失敗や得たことを互いに 教えあい、それを元に共に成長していくスパイラルを回す、フロネシス・ラーニング を実践しています。フロネシスは、実践的知恵、賢慮などと約されます。知識経営で 有名な野中郁次郎先生が、フロネシス・リーダという考えを提唱され、その考え方を 弊社でも活用させて頂いています。 ---------------------------------------------- 原田久光(原田車両設計): 始めに会社の概要を説明します。 16年前に個人で創業し11年前に会社の形態にした若い会社です。 経営理念は、世のため、人のため、地域のために製品開発を通して明るく楽しく快適 な生活環境をつくるために貢献します、となっています。 私は、経営者の塾「盛和塾」の塾生です。 塾長は、京セラの創業者、稲盛和夫氏です。ボランティアで指導して頂いています。 そこでは考え方を変えなさいということを学んでいます。 創業当時は自動車部品の設計中心の事業でした。 その後試作部品の製造をおこなってきました。 車載部品ではソフトウェアが必要不可欠であるため、2005年にソフトウェア開発を開 始しました。 そのきっかけは、i-swingの開発です。そこで、ソフトウェアの重要性を知り、ソフ トウェア開発を行っています。 ** ここで、i-swingの紹介 ** 会社の人材育成のポリシーは、開発を任せていただける人材を育てることを目標にし ています。 不況下の中でも投資は必要であり、企業で大事なのは人です。 人の成長なくして企業の成長はないと考えています。 その方がどれだけ必要とされる人に成長するかが重要だと考えています。 不況時の経営判断ということでは、あらゆる経費を見直していますが、人材育成のポ リシーは変えていません。 どのように費用を捻出し、セミナー、展示会に参加するかを考えています。 会社では全社員に経費を公開し、費用が偏よらないようにしています。 その中で費用の捻出方法ですが、通信費、サーバー委託先の変更、ハードウェア 保険の低減などを行い育成に費用を回しています。 現在、組込みに関する社員は103名中2名だけです。 今回SWESTには2名とも参加しています。 ASIFではCANの勉強会のリーダーをやらせていただいています。 現在は時間があるため、社内のオリジナル商品の開発に取り組んでいます。 初めて設計とソフトウェアが関わりあう開発に取り組んでいます。 自助努力ということで、資格試験への挑戦を薦めています。 自主的な活動ですが、基本情技術者試験、エンベデッドシステムスペシャリスト試験 に挑戦しています。 みなさんから頼りにされる人材となって欲しいと願っています。 ---------------------------------------------- 久住憲嗣(九州大学): 社会人向けのセミナー事業として、組込みソフトウェア等の教育を行っています。 大学でも実践的なプロジェクトマネージメントの内容を含めて、補助金をいただいて 教育を行っています。 気軽に使っていただける教育を提供することが大切と考えており、セミナー形式の講 義を提供することが重要だと思っています。 一方で、企業の方にフルコースの講義に参加されることも良いことだと考えています。 日本と違い、北欧では就職後に大学へ戻り、人材が流動的に動いており、大学も企業 も両方にとって良いことです。 技術者の幅を広げるためにも、大学院を活用していただけると良いと思います。 ---------------------------------------------- 近森満(サートプロ): テーマとしまして、組込み技術者の育成とその評価方法について述べます。 私は組込みシステム技術協会ETEC運営事務局として組込み技術者のスキルや知識を測 る試験を行っています。 不況になった今、人材育成をどうするかを考えています。 物作りの人材は少ないと20年以上前から言われています。 今でも改善されていないのは、人材育成が難しいからだと思います。 その中で組込みスキルに関しては、2005年にETES:組込みスキル標準が策定され、さ らにETECと呼ばれる試験が作られました。 ETECが採用されている組込み技術者養成コースは、厚生労働省からの委託事業として、 のモデルカリキュラムを作成しました。 テキストなどの作成ではなく、シラバスの作成となっています。 2ヶ月のOFFJTと4ヶ月のOJTからなる新入社員研修モデルで2009年4月から実施してい ます。 OJT指導者の養成を行うためのカリキュラム、評価制度としてはジョブカードを使用 したもの、我々の試験を利用したものを協会として作成しました。 それを企業に対して実施しました。 私は助成金により「無料で人材育成をすること」が教育の本質ではないと考えていま す。 助成金制度は全体から見れば一部であり、企業は自助努力で教育を行っているのです。 不況下で人材育成のために国が予算を投じると言っています。 一方で、助成金による人材育成を知らない企業の方もいます。 手続きの複雑さや内容がしっかりと伝わっていないなどが原因だと考えています。 企業が助成金をもらいながらでも人材育成や技術者確保を行っていくことが課題だと 思いますので、助成金を活用していただきたいです。 ETEC(組込み技術者試験制度)は組込みシステム技術協会(JASA)で行っています。 現在は延べ4,000名ほどの受験者がいます。 試験は90分のスコア方式試験です。 点数制の試験のため自分の現状を把握できるようになっています。 ベンダー試験と呼ばれるIT技術者向けの試験はたくさんありますが、組込み技術者向 けの試験は少ないです。 試験を通して、自分がどのようなポジションにいるのかを知ることが、成長を助ける ために企業にとっても個人にとっても良いことだと思っています。 組込み技術者は幅の広い知識が要求されます。 過去の試験結果を見ますと、経験年数が増えるとスコアの平均点が上がっています。 知識の試験ではありますが、組込みでは経験から得られる知識があり、若年層と経験 者を知識だけで比較しても差が出てきます。 新入社員研修での教育格差がスコアに表れ、将来の差になると予想しています。 そのため、若手の時に知識を学ぶ機会を与えることが重要だと思います。 しかし時間は限られているため、如何に勉強できる時に勉強していただくかが重要だ と思います。そのためには学び方を学ぶことも必要です。 協会としましては、企業が人材育成の場を与えるツールとして、教育用テキストや試 験制度を提供しています。 これらを通じて人材育成が行われると良いと思っています。 ---------------------------------------------- 足立久美(デンソー): 私は入社以来20年ほど現場にいましたが、今は現場を離れて、全社の現場の横串活動 をする立場にあります。 自動車にマイコン搭載の組み込み製品の開発が始はじまったころは、ソフトウェア担 当者とハードウェア担当者の区別はありませんでした。 また、ソフトウェアは、一人もしくは少人数で全てを担当しており、開発環境、開発 手順等の改善は自分たちで業務の中で本業として一緒に行っていました。 このようなことから、自分で考えて仕事をする風土が醸成されていました。また、マ イコン搭載の組み込み製品の黎明期でもあり、危機感がありました。 しかし、受注が増え電子化が進むにつれて、業務の効率化を図るために、分業化が進 んだことにより、仕事がカプセル化されるなど、現在では業務の全体を見通すことが 難しくなってしまいました。また、危機感も薄れがちになってしまったと思います。 さらに、規模の増大、高度・複雑化等により、慢性的な工数不足に陥るなどにより、 目の前の仕事をこなすのに精一杯といったことも多く見受けられます。 最近虫目線エンジニアが増えたと思いませんか?  (虫目線エンジニア:担当部分は理解しているが、全体は理解していないエンジニ ア、また与えられた環境の中で、与えられた仕事を単にやっていればそれでいいと考 えているエンジニア) 虫目線エンジニアはなぜ増えたのでしょうか? 理由は多々あるとは思いますが、私は分業化、標準化を無機質に進めてきた弊害が大 きいといえると考えています。 分業化や標準化は仕事を効率よく行うために導入され、それなりの成果を出してきま した。、しかしながら、分業化は「分業して効率良く仕事をこなそう」が、いつのま にか「自分のことだけをすればいい」、標準化は「標準通りやりなさい」がいつのま にか「標準通りやればいい」といったようにすり変わってしまったと考えています。 さて、以上のように行き過ぎた分業化、標準化からは、どのような弊害が出るのでし ょうか?  ・分業化→たこつぼエンジニア:自分の担当だけをすればよい  ・標準化→指示待ちエンジニア:言われたことだけをすればよい といった考えを持つ人が増え、環境変化に鈍感になってしまうと考えます。 環境変化に鈍感になってしまうと、知識があっても応用が利かなくなったり、論理思 考能力が弱くなったり、指示待ち人間やルールを守っていればよい人が増え、危機セ ンスが少なくなります。 つまり、分業化や標準化は良いプラクティスではあるが、私たちが、行き過ぎた分業 化、標準化を知らず識らずのうちにしてしまうことにより、現場の人たちを考えなく てもよいようにし向けてきてしまったのではないかと言ことです。 そこで、これに対処するためには、行き過ぎた分業化、標準化を是正することも大切 ですが、考えてもらう教育を行い、考えなくなってしまったゆでガエル状態の人たち に気づきのきっかけの場を提供することがと良いと考えました。 その一つの方法が、覚える、教える中心の教育からの脱却です。テーマを決めてチー ム内でグループ討議をし、チーム間で全体討議を行うというワークショップ形式の、 実際に考えてもらう教育を実施するのです。 具体的な実施方法は、20名程度の参加者を3チームに分けて、  テーマの説明→グループ討議→グループ発表→講評 の順に行います。 ここで、忙しいエンジニアが参加しやすい最大時間として、全体の時間は2時間とし ています。教材は会社の不具合ではなく、新聞のスクラップ記事などです。 教材について各チームで議論し、議論した結果をKPT(Keep,Problem,Try)を使って 書いてもらいます。今までに中華航空機炎上事故や上越地震などをテーマとして行っ ています。 =============== 以上でパネラの発表を終了 ==================== コーディネータ: パネラの方への質問があればきいてください。 質問1: (ETECについて)実績とスコアの関係があると言われていたが、スコアから何年くらい の経験があるかは分かりますか? 回答1: そのようなものがあるとは考えています。 どのような経験を得たから点数が取れるのかを調べる必要があるし、企業毎の仕事 内容が異なります。 そのため今後調査を進めて行きたいと考えています。 質問2: (ETECについて)例えば、500点だとしたらどのような人だと分かるようにしたいです か? 回答2: 500点平均の人がわかるとしたら、企業としては目指すべき指標を作ることができる と考えています。 質問3: (考える教育について)どのようにして教育の結果を評価したらよいのか? 回答3: 効果をどのように評価するのかは、現時点ではあまり考えていません。 受講者がどの程度意欲をもって参加したのかなどを把握し、次回の教育に反映するこ とはしていますが、定量的に何らかのメトリクスを用いて測ることは現時点ではして いません。社内でこの教育方法をすこしずつ広めようとしています。あくまでも目的 は、教育を受講したことがきっかけになり、「自分の意見・考えを主張でき、自ら考 え、動き、解決できる人材」に成長してもらうことが狙いです。 質問4: 研修ニーズへの対応遅れとありますが、提供している教育とニーズの差を感じたこと はありますか? 回答4: 弊社(富士通ラーニングメディア)では、ETSSの枠組みに沿って、開発技術、技術要 素、マネジメントの枠組みで提供しています。現状では、開発技術では初級レベル( 新入社員向け)のコースが多くを占めていますが、オブジェクト指向やモデリングな ど中級以上の教育が求められています。ソフト開発手法の改革や、設計力を強化して いきたいというニーズがあます。また、更に上流の、開発の出発点である要求仕様を 明確化する教育はないのかという要望が多くの企業でありました。 組込みというと技術系の教育になりそうですが、組込みの技術者でもコミュニケーシ ョン能力が重要だと言っている企業があります。受託企業の場合、メーカーに常駐し て開発するケースがありますが、この不況でメーカー側に残っている人と戻ってきた 人の差は、コミュニケーションスキルだと言われていました。コミュニケーションス キルは単に挨拶するスキルではなく、開発業務の中で相手の立場に立って考え、提案 できるスキルを持つことです。お客様の更に先のお客様のことを考えて提案を行い、 お客様の一員になってチームビルディングができる人が残っているようです。 さらに、多くの企業で重視していたものとして、不況下で損益を改善することが重視 されていますので、マネジメント能力の強化も求められています。 質問5: メタスキル、メタ知識とあったが、勉強の仕方の勉強だと思うのですが、それを学習 させる方法はありますか? 回答5: 学び方を如何に学ぶかを高めることと、自分の失敗に対して原因を一歩下がって冷静 に受け止め、やり方を見直してもう一度やってみることが大事です。資料には、キー ワードとして、意識変容の学習と書かせて頂きました。大人の場合、多くのことを新 たに知識として吸収する学習ではなく、意識変容の学習になると言われています。自 分の考え方、ものの見方の枠組みは中々変えにくいものです。大人はよっぽど痛い目 に遭わないと価値観などを変えません。そのため枠組みを如何に変えて行くかが大事 です。そのための方法の一つが、自分の行った結果に対する深い振り返りではないで しょうか。自分自身での反省も必要ですが、他の人からの自分とは異なる視点や考え 方、価値観にたいして謙虚に受け止め、自分自身を変えていくことが重要です。周り の人から意見をいただき、「気づき」を如何に得るかが重要となります。互いにフィ ードバックを与えて、気づきを得て次の行動に変えることが重要と考えます。 =============== パネラの総括 ==================== N: 国が全面にたち人材育成を先導していくべきだと思いました。 PR不足などがあると思いますので、隅々まで人材育成が行き渡るように展開して いきたいです。 I: デンソー様の「考える教育」の例を聞き、如何に思考力を高めていく教育が重要であ るかと感じました。 H: 今回の講演を聞き、助成金を活用した教育も考えられるのかなと思いました。 教育と聞くと受け身ととらえがちですが、教育を受ける側の意識が能動的に変わるこ とでより良い学びになると思いました。 K: 大学でも自発的に動く、自分たちで学べる環境をどのように作るかを考えています。 C: 人を育てるということは大変なことだと思っています。 自分たちが経験したことを如何に後進の為に役立てるかが重要だと思います。 教育はギブアンドテイクですので、分かり易く後進に伝えることです。 A: 責任のある立場にたち、一生懸命頑張らないといけないです。 その人がやりたいと感じているものを見つけてやり、そこに振ってあげることが重要 です。 コーディネータまとめ。 組込みのソフトウェア技術者のスキルはたくさんあります。 自分がやりたいことが絶対どこかに見つけることができますので、それを一生懸命に やっていけばいい人材が育つと思います。人材育成を継続してください。 人材育成はお金がかかりますが、その間も会社を経営していく必要があります。 透明性の高い補助金などの活用が必要です。 以上 コーディネータは、自身のブログに、本パネルの紹介を行っている。 http://www.nces.is.nagoya-u.ac.jp/NEXCESS/blog/index.php?itemid=276