********************************************************************** セッション S5-d 「Hamana-5 〜育成につかえるか?〜」 コーディネータ:大西秀一(ヴィッツ) 参加者:約25人 (○は参加者からの質問,意見) ********************************************************************** 15:15 開始 ■議題: Surveyor HAMANA Project は技術者育成に使えるか ○Hamana-5とは モデルロケットによる環境観測プロジェクト. 真の目的はエンジニア教育である. ○Seuveyor HAMANA Projectの概要 運営委員会により方針が決定され,実行部隊がプロジェクトを遂行する. 組み込みシステム開発技術者を育成するプログラムであり, 全体を通して開発できる技術者,大きな視野を持った技術者を育成する. モデルロケットに搭載する環境観測機器の開発を行う. 観測機器にはGPS,加速度センサ,地磁気センサ,ジャイロセンサなどを搭載する. 参加者による発表も行う. ○Hamana-5のゴールライン 50点ライン 複数チームによるコンペティションの成功 → 今回は達成 100点ライン 参加全チームが開発を終了すること → 進行中 最高ライン 宇宙開発に応用できる技術の開発 ○われわれは目標に到達できたのか? 議題1 Hamana-5は有効だったか? 参加チームからの報告を交えてディスカッションを行う. 議題2 Hamanaプロジェクトは有効か? Hamana-1 〜 5 の経歴を報告し,総括する. ■議題1 Hamana-5は有効だったか? 本日は全5チーム中3チームが発表 両刀使い(株式会社ヴィッツ) ウサギとはち(YDKテクノロジーズ) TMR(東海ソフト株式会社) ●両刀使い 古川氏,原氏(ヴィッツ) ○背景 ヴィッツでは,新人研修の一環としてHamana-2からHamanaプロジェクトに連続参加している. 全ての開発を新入社員で行う. ○開発体制 開発従事者 7人 開発期間 4ヶ月 ○ペイロード基板 ペイロード基板の制約(高さ90mm×幅40mm 50g)を満たす基板を考案した. 円形4層 直径 35.5mm×43mm 表面実装部品を活用し,省スペース化を図った. パソコンとの通信は別基板で作成した. ○ソフトウェア リアルタイムOS TOPPERS/ASP 1.3.1 を搭載した. H8/3069Fに対応するASPが公開されておらず,移植作業から行った. 入社当時はRTOSの知識がなく,調査に時間がかかった. ○デバイスドライバ A/Dコンバータ,EEPROM,UART,LEDのデバイスドライバを作成した. テスタの使い方からわからず,苦労した. ○制御アプリケーション 動作モードをDIPピンにより指定する. 動作確認→フォーマット→データ計測→データ確認 ○実験 ペイロード基板を搭載して打ち上げる.基板はパラシュートにより回収する. ○結果 本日の早朝の打ち上げで,加速度,温度,気圧のデータを取得することができた. 加速度のグラフから,逆噴射直前が最高到達点であることがわかった. 高度は130.618mであった. ○まとめ 加速度データの計測に成功した.静止時,燃焼中,逆噴射時の加速度を計測できた. 気温データの計測に成功した.おおよそ安定した値をとれている. 気圧データは,値はとれているようだが,安定していない. 値の触れ幅が大きく,着地後に値が急激に落下している. ○感想 プログラミングだけでなく,プロジェクト全体の流れを学べて, 研修として非常に大きな経験ができた. 複数人で行う開発の難しさを実感した. 正確な気圧データを取得できなかったので,最終試射(10月)までに原因を究明し, 正確なデータを計測する. ○質疑 ・マイコンとEEPROMの階層が違うのはなぜ?データの流れる素子は 近くに配置したほうが良いのでは. →考慮していなかった.今後の課題とする. ・常温でのセンサ計測は行ったか?気温データのブレが大きいが, 常温時の動作も同様か? →常温でのセンサ計測は行った.気温データのブレは,常温時も同様に発生した. ノイズの影響だと考えている. ・気圧データが取れなかった原因は? →究明中である.気圧センサの故障だと考えていたが, 早朝の試射ではデータを取得できた. ●ウサギとはち 松本氏(HAMANA実行委員) ○HAMANA5参戦 予算が確保でき,就業時間中の活動許可が降り,CPUボードが用意されていた. すぐにスタートできそうであったので,5月末に参加表明した. ○プロジェクト始動 6月初めにキックオフミーティングを行った.参加者は3名. ○しかし,進まない 毎週ブログに状況を報告するはずだが,8月初めの時点で書込みが2回のみであった. 今後どうするか検討する. ○まだ未完成 根性で完成させる.リタイヤ?フェードアウト?乞うご期待. ○質疑 ・情報共有の手段はブログだけか? →特に手段は決まっておらず,現時点ではブログのみである. ・参加者の役割は決まっているか? →PMは決まっている.キックオフ時に役割分担は伝えたうえで開始している. ●チームTMR 服部氏(東海ソフト) ○なぜHAMANAに参加したか? 組み込みソフトウェアの肥大化・分業化が進んでおり, あっと驚く体験や,物を動かす楽しみを感じる機会が減っていると感じた. ○目的 新人教育の一環としてHAMANA-5を活用する. 若年層実践的組込みソフトウェア開発研修 ○メンバーの感想 ・マニュアルの大切さがわかった. ・レジスタや割込み処理など,組込み処理に関わる知識が深まったと思う. ・ソフト・ハードの両面を同時に設計することで,意識あわせの重要性を認識,実践できた. ・柔軟な作業形態で業務に当たることができた. ・新入社員だけで動作までこぎつけることができ,すばらしいと思う. ○課題 ・ペイロード基板の動作安定化.回路設計の見直しも含む. ・デバッグがまだできていない. ・業務との兼ね合いで時間を見繕うことが難しい. ○来年に向けての要望 ・紫外線計測,高度計測などの観測機能の追加 ・チーム単独でのロケット打ち上げができる機材の提供 ・ロケットのカラーリングの工夫 ○まとめ 新人教育の材料として有効に活用できた. 来年の新人教育に活用するには課題も残っているが,ぜひ活用したい. ○質疑 ・デバッグができていないようだが,動作確認もできていないということか? →プログラムは数日前に完成した.しかし,ハードウェアのトラブルにより 動作確認できていない. ・計測機能は実装したか?データは取れているか? →まだ未実装である. ・システム構成やペイロード構成を簡単に教えてほしい. →加速度センサからデータをUARTでPCに転送する構成である. ●ディスカッション Hamana-5の参加チーム状況からHamana-5を分析する. ・今日発表していない2チームの様子は? →1チームは音沙汰がない.もう1チームはまだ完成していない. ・「両刀使い」のリーダーから見て,メンバーの新入社員が自発的に プロジェクトに取り組んでいる印象を受けた. コストがかかるプロジェクトだが,経験と学べるものは非常に大きいと思う. ・うまく進んでいないチームの原因は何だと思うか? →なぜ進まないか,自分たちもわからない. 「ウサギとはち」では,就業時間内にHamanaをやってもよいが, 月20時間以内という制約を与えた. 進行そのものについては一切手を貸していない. 問題があったときに,聞くか聞かないかの差だと思っている. やる気がないかも,とも思っている. ・仕事が忙しすぎるんじゃないか.月20時間とされても,直近の仕事を やらざるをえないのでは? →そこのスケジュール管理も,自分の中でやってほしいという思いがある. ・開発期間と実験環境の制約が非常に厳しいのではないか? →たしかに厳しいが,室内で可能なこと以上のことができるのは強みだと考える. ・シミュレーション環境の提供により,実験環境の制約が緩くなるのではないか? →Hamanaでは,実環境におけるテストを非常に重視している. 大阪の企業が開発したロケット「まいど1号」も,実環境テストの徹底により 開発に時間がかかった. ○実行委員から総評 チームにより進捗の差が大きいのが気になるが,スケジュール管理は 各チームに任せているので,仕方のないことではある. 今年で5回目となるので,そろそろやり方の工夫をしたい. シミュレーション環境の提供など. 基本は教育プログラムであることを改めて念頭に置くべき. ○Hamanaは新人教育に有効であったか? 有効であるチームもあるが,有効でないチームもある. ■議題2 Hamanaプロジェクトは有効か? ○今朝の報告 パルパル駐車場にてHamana実行委員会用ロケットを打ち上げた. 基本的なハードウェア構成は「両刀使い」と同じで, ソフトウェアは「両刀使い」のものを使用した. 最大高度54m,最大加速度9.12Gであった. エンジンチャートより,これらが適正な値であることを確認した. ○Hamanaプロジェクト一覧 Hamana1:有志チームによる運営 GPS搭載 Hamana2:3チーム参加 加速度センサ,地磁気センサによる位置変化の取得 Hamana3:3チーム参加 加速度センサ,ジャイロセンサによる位置変化 Hamana4:3チーム参加 加速度情報の無線通信.自律期間を目指した飛行型ロケットの開発 Hamana5:5チーム参加 システム開発部門とペイロード開発部門を設け, それぞれ2チーム,3チームが参加 Hamana1〜3では,Hamanaプロジェクトの頭にSWESTの名が付いていたが, Hamana4からは付いていない. 参加チームが少数なのは,ロケット打ち上げまで全て行うことが足枷に なっていると思われる. ○ロケット打ち上げの様子 Hamana1:浜名湖に向けてロケット試射,水面で回収 使い捨てであったため, 2以降では地上回収に変更 Hamana2:悪天候により打ち上げ失敗 Hamana3:打ち上げ,データ取得に成功 Hamana5:複数チームによりモデルロケットシステムを開発 能代宇宙イベント, SWEST10で打ち上げ成功 最終打ち上げを中田島砂丘にて実施予定 ○われわれ実行委員会は・・・ エンジニアを育成できたか?経験値は上がったが,レベルは上がったか? プロジェクトの中で,組み込みシステム開発者に必要な技術を身につけたか? ○所感 実行委員会だけで盛り上がっているのでは,と危惧している. 参加チームも盛り上げてほしい! 日本モデルロケット協会会長は絶賛している. ○過去5年間のHamanaプロジェクトを俯瞰した結果,どうだったか? ・実行委員会の動きが見えづらいので,もっと公表してほしい. ・Hamanaを通して,モデルロケットの打ち上げが面白いと思った人はいるか? 自分もやってみたいと思った人はいるか? →私が実行委員を4年もやっているのは,単純に楽しいからである. ロケットに物体を搭載して打ち上げようと試みているのは,Hamanaだけである. モデルロケットが打ちあがっていく様を,みなさんに報告することを, 継続していきたい. ・Hamanaのロケット打ち上げを通し,組込みに目覚めた. ・プログラミングを学生レベルでやった程度の人たちに, 期間4ヶ月でロケット打ち上げさせるのは無謀だと思う. テーマと負荷のコントロールをもう少し考えるべきでは. 今回はシステム開発部門とペイロード基板部門を設ける工夫をしたようだが, もう一押しほしい. ■まとめ Surveyor/Hamana Project は継続すべきプロジェクトである. エンジニアたる心構えを伝え,考え方の飛翔を実体験させることができた. 当初の目的を見失わず,組込みシステム開発者育成を継続することが重要である. 16:50 終了