1. 基調講演(その1) 大阪工業大学 情報科学部 松本吉弘 1.1 前半: 「組み込みシステムの過去・現在・未来」 組み込みシステムの技術は、3世代に分かれていて、現在は第2世代である。 第1世代は、工業プロセスや各種の第1次,第2次産業のためのシステムを対象 としていて、それぞれの顧客に応じて固有のシステムを設計し、かつサポート していく必要があった。 そのような対応は、どうも米国各企業は苦手らしく、日本企業がほぼ世界 市場を制する形になっていった。 設計のスタイルとしては、アセンブラやバイナリでの設計が主で、RTOSなども すべて中身を理解した上で使用し、メモリ量やプロセッサのパフォーマンスなど のきつい制約の中でミリ秒〜数百μ秒オーダの応答時間を競い合っていた。 そんな中で、アプリケーションジェネレータといった技術も発展していった。 第2世代は、LSI技術や通信技術の進歩に伴って、民生・家電品や、ロボット などのメカトロシステム、医療機器、オフィス機器、通信・交通システムなど 社会・経済システムを対象に多用な広がりを見せるようになった。 そういった中で、分散環境でのシステムの構成について検討や標準化が急速 に進んでおり、注目している。 また、組み込みシステムのターゲットプログラムの多くが、3層クライア ント方式をとっていて、設計のスタイルも、そのそれぞれの層で進んでいる 各種標準化を前提にしたものが主流となってきており、第1世代に比べ、より 米国各企業が得意とする方向になってきている。 第2世代は2010年ころまで続くと考えられる。 第3世代は、人文系システムや人の認知活動との連携が主な対象になるだろう。 LSI技術の更なる発展で、シン・クライアントでなく、(自分に関係あるものは 自分で保持しておくという)fat(太った)クライアント方式が主流になるかもしれ ない。 ただ、設計スタイルが、このままの汎用化・標準化路線だと米国主導の状態は 変わらないことが予想される一方で、第1世代と同様なビジネスモデルでは、 なかなか利益を出し難いことも事実である。 何か別の(あるいは中間の)ビジネスモデルが必要である。 1.2 後半: 「イディオムレベルのソフトウエアデザインパターン」 現在、「組み込みシステムの共通利用環境の構想」という取り組みを行って いて、そのひとつとして所謂"デザインパターン"についても、共通利用環境で 使えるようにできないか、検討を進めている。 巷でいうところの"デザインパターン"..より一般的には"パターン"は、 建築家のアレキザンダが提唱したもので、 局面(context),問題(problem),解(solutuion)の3つの部分の関係(relation) を表現(express)した法則(rule) をいう。問題には、解決するためのトレードオフが含まれており、解決では、 その妥協点について明示する必要がある。 パターンは、もっとも粒度の小さなイディオムといったレベルから中粒度の アーキテクチャパターンまであるが、現在主に検討しているのはイディオムの レベルである。 現在、共通利用環境を作成中であり、これは、パターンが発見されると、 これがレポジトリに登録され、使用されたり、検証されたりといったもので ある。環境には、netを通してあるいは、実際に身を運んでアクセスできる ようにしたいと考えている。 Q1. 検証の仕組みは? A1. できれば、エンジン制御システムの設計の現場でやられているように、 リアルタイム性が満足されているかなどを、実際のシステムを使って 検証できるような仕組みがほしいと思っているが、資金がない。 一般的なソフトの検証環境のみで行ってる。 Q2. メモリ消費量を減らすためのパターンとか、リアルタイム性を満足させる ためのパターンなど、実際的なパターンの検討はされているのか? A2. まだ、そこまで手が回ってないが、重要性は認識している。 作業手順などのパターンを検討するプロセスパターンなどの方向からも 検討できればと考えている。